血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年3月12日日曜日

結核-3.検査その1-喀痰塗抹検査-

【痰とは】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物でその成分は、喉や咽頭・気道・気管支・肺から剥がれ落ちた細胞も含まれています。

喉や咽頭・気道・気管支・肺の細胞に炎症、細菌やウイルス感染、悪性腫瘍があれば、痰の中にウイルスや細菌、悪性細胞などが混ざり痰に変化があらわれます。

そのことから痰を調べれば、呼吸器のさまざまな情報を得ることができるのです。

【結核菌の喀痰塗抹検査】

採取した喀痰の一部を直接スライドグラス上に塗抹・染色して標本を作製し、顕微鏡で結核菌の有無を調べる検査です

【検査方法】

結核または結核の仲間の菌である抗酸菌を染色し、直接顕微鏡で観察する検査です。

染色には、特殊な抗酸菌染色である「チールニールセン染色」を行い顕微鏡で検査を行います

最近では判定しやすい蛍光顕微鏡を用いて結核菌を調べる蛍光法が多く採用されています。

【判定】

ガフキー0号 全視野になし
ガフキー1号 全視野に1~4個
ガフキー2号 数視野に1個
ガフキー3号 毎視野に1個
ガフキー4号 毎視野に2~3個
ガフキー5号 毎視野に4~6個
ガフキー6号 毎視野に7~12個
ガフキー7号 毎視野にやや多数(13~25個)
ガフキー8号 毎視野に多数(26~50個)
ガフキー9号 毎視野に非常に多数(51~100個)
ガフキー10号 毎視野に無数(101個以上)

【結核菌検査指針2007による判定】

蛍光染色標本での検査では明瞭な桿菌のみを陽性とし、球菌状のものは陽性としない。

前処理前の検体量当りに換算した検出菌数を、ガフキー号数に代えて1+(ガフキー2号)、2+(ガフキー5号)、3+(ガフキー9号)で記載する。

ガフキー1号は±(要再検)と記述し、同一検体からの塗抹標本を作り直すか、別の検体について再検査する。



新旧の判定法


【喀痰検査の感度】

結核菌の検出感度は分離培養法や核酸増幅法と比べて低いですが、患者発見の重要な手段のひとつの検査法であることと、結核菌を排菌しているかどうかを調べることが出来ることからして、結核患者の管理や治療効果の判定の上で重要な検査法です。

【塗抹検査陽性の場合の判定】

喀痰で結核菌が認められた場合は、結核菌を排菌している事になります。

結核菌か非結核性抗酸菌か鑑別できない場合もあります。

偽陽性反応…抗酸性に染まる他の細菌の可能性あり。

【塗抹検査陰性の場合の判定】

真に結核菌に感染していない。

痰に含まれる結核菌が少なければ、結核菌に感染していたとしても顕微鏡検査で結核菌が見つからない場合もあります。

【塗抹検査の欠点】

結核菌検出には喀痰1mL中に結核菌が5,000~10,000個以上いないと検出できません。

また結核菌以外の抗酸菌全般が染色されるため、結核菌と非結核菌の区別が出来ない欠点があります。

2017年3月6日月曜日

結核-2.結核菌とは-

結核菌は1882年ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(1843~1910)によって発見されました。

結核菌は抗酸菌の一種で、チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まり細長い棒状を示します。

※チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まった結核菌※

切手は1982年フィリピン発行の「結核菌発見100年記念切手」で、コッホとともにチールネルセン染色で鮮紅色に染まった結核菌が描かれていますので紹介します。

【結核菌の大きさ】

長さ2~10ミクロン、幅0.3 ~0.6ミクロンの細長の桿菌で、芽胞・鞭毛・莢膜はつくらない。

【結核菌の分類】

マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属しグラム陽性桿菌である抗酸菌と呼ばれる細菌の一種です。

【結核菌の種類】

以下の四種類が存在しますが、人に病原性を持つのはヒト型結核菌です。

1.結核菌:ヒト型結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)
2.ウシ型結核菌 (M. bovis)
3.マイコバクテリウム・アフリカナム (M. africanum)
4.ネズミ型結核菌 (M. microti)

稀にウシ型結核菌とマイコバクテリウム・アフリカナムが人に感染することがありますが、ネズミ型結核菌は人には感染しません。

【消毒方法】

日光の中の紫外線には弱いので殺菌灯(紫外線灯)が感染防止に利用されます。

乾燥・酸やアルカリおよび消毒剤に対してはかなり強い抵抗性を示す。

グルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムは消毒効果はない。

有効な消毒剤としては、クレゾール石鹸・両性海面活性剤・アルコール・ヨードホルム、およびグルタラールなどがある。

熱に対しては60℃で20~30分、70℃では5分で死滅する。