血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年12月22日日曜日

血液検査パニック値-1.血液検査パニック値とは-

血液検査は医療機関の規模の大小を問わず、全国各地の施設で幅広く実施されていて、診察だけでは気付けない身体的変化を検査値により知ることができます。

血液検査パニック値とは、「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」を指しますが、間髪を容れずに直ちに治療を開始すれば救命可能となりますが、そもそも臨床的な診察だけでは把握が困難で検査によってのみ可能と定義されています。

パニック値を放置すると患者の予後に著しい悪影響を及ぼすため、臨床検査技師から検査オーダー医師への迅速かつ確実な報告が必要となります。

【血液パニック値の特徴】

1.基準値から極端に逸脱した値であること

2.直ちに治療を開始しなければ生命に危険が及ぶ可能性があること

3.臨床的な診察だけでは診断が困難で、検査によってのみ診断が可能であること

【パニック値が出た場合の対応】

パニック値が出た場合の対応は、医療機関によって異なりますが、一般的には以下の流れになります。

1.検査技師から医師に速やかに報告

2.医師は患者の状態を速やかに把握し、必要な対応を迅速に決定する

3.必要に応じて緊急治療

※ただし、前回の検査結果を確認することも重要で数日間同じような値であれば、担当医が状況を把握している可能性が高く、緊急連絡は不要な場合もあります※

【血液パニック値に対する注意点】

1.パニック値は、あくまでも検査値の一つであり、それだけで診断が確定するものではありません。

2.パニック値が出たからといって、必ずしも重篤な状態であるとは限りません。

3.最終的な診断は、医師が患者の状態を総合的に判断して行います。

【まとめ】

血液パニック値は、生命の危機を示唆する重要な指標です。パニック値が出た場合は、速やかに医師に報告し、適切な対応をとることが重要です。

続く


2024年12月15日日曜日

マイコプラズマ肺炎2.マイコプラズマ肺炎の現状-

【2024年の報告数】

1999年以降最多

【年齢別の報告数】

5~9歳が43.5%、10~19歳が30.9%

【性別別の報告数】

男性が53.9%

【マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数】

2週連続で減少しましたが、過去5年間の同時期の平均と比較してかなり多く、都道府県別の上位3位は福井県(7.00)、青森県(4.67)、岡山県(4.60)となってといます。

【2014年かな2024年の第31週から35週までの定点あたりの報告者数】



【参考資料】

2024年12月8日日曜日

マイコプラズマ肺炎1.マイコプラズマ肺炎とは-

 マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という病原体によって引き起こされる呼吸器感染症でこの病原体は自己増殖可能な最小の微生物であり、細胞壁を持たないのが特徴です。


分類は細菌に分類されています。


幼児や若い人々での肺炎の原因として、マイコプラズマ肺炎は比較的多いです。この病気は全年齢で報告されていますが、特に学童期から青年期にかけての感染例が目立ちます。

【症状】


1.発熱は、微熱から高熱まで人によって様々です。


2.全身倦怠感があり、だるさや体が重い感じがします。


3.強い頭痛:で頭が痛みます。


4.乾いた咳が特徴で、熱が下がっても長期間続くことがあります。


5.咽頭痛:があり喉が痛みます。


【診断法】


1.血液検査 肺炎マイコプラズマに対する抗体検査(IgMやPA抗体)を行います。


2.咽頭拭い液や喀痰などの検体からマイコプラズマ・ニューモニアエを分離する検査 PCR法や抗原検査などによってマイコプラズマのDNAや抗原を検出します。


3.胸部X線検査 肺炎の有無や程度を調べます。


※初期段階ではX線の写真上に明確な異常が見られないことも多く、進行するにつれて、両側肺に斑状陰影*が現れ始め重症例では、より広範囲に浸潤影が見られるようになります※


【治療】


1.マクロライド系抗生物質などが有効です。


2.対症療法としては、解熱剤、鎮咳剤などを用いて症状を緩和します。


【感染予防対策】


1.こまめな手洗いは、感染予防の基本です。


2.人が多い場所ではマスクを着用することで、感染リスクを下げることができます。

2024年12月1日日曜日

Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)について

 Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)とは、リスク行為後の24~72時間以内にドキシサイクリン(ビブラマイシン)を内服することで、梅毒やクラミジア、淋病を一定の効果で予防する性病の予防法です。

ビブラマイシン(一般名:ドキシサイクリン塩酸塩水和物)とは、グラム陽性菌・グラム陰性菌をはじめクラミジア属の細菌に対しても幅広く抗菌作用を発揮するテトラサイクリン系の抗生物質です。

【ビブラマイシンについての参考資料】

 Doxy PEPは日本国内ではまだあまり馴染みのない予防法ですが、徐々に知名度が上がってきており、その有効性を実感している人も増加しつつあります。


 Doxy PEPが推奨されない理由としては、以下があります。

理由1:薬剤耐性菌の増加

Doxy-PEP(ドキシペップ)の広範な使用により、性感染症を引き起こす細菌だけでなく、その他の細菌に対しても抗菌薬耐性が増加する懸念があり、これにより以前はこれらの薬剤で管理可能だった感染症の治療が困難になる可能性があります。

理由2:副作用と細菌叢への影響

抗生物質の濫用は副作用があり、体の正常な細菌叢(例えば、消化管、皮膚などの元々いる細菌で体の中でバランスを保っているもの)を乱すことがあります。

これは性感染症の予防を超えて他の健康問題を引き起こす可能性があります。

理由3:国による推奨の違い

Doxy-PEP(ドキシペップ)の使用に関するガイダンスは、米国では有効性が認められて推奨されていますがイギリスやオーストラリアなどでは抗菌薬耐性の懸念と長期的なデータの不足を理由にその実施を推奨していません。

理由4:日本における抗生剤市販の歴史

日本でも以前に内服の抗生剤が市販されていたことがあり、容易に手に入れやすいということがありましたが、現在は全て中止されています、その理由は薬剤耐性菌が生まれやすくなるためです。

今回は医師が処方するという違いはありますが、現在自己輸入で抗生剤(正規の安全なものかどうかは不明)を購入することも出来ることからして、このような内服方法が正しいと誤解を与える流れを医療機関や医療者が作るべきではない指摘する専門家も多数存在します。

理由5:感染拡大のリスク

薬剤耐性菌を作り出した場合、自分だけの問題ではなく、パートナーにもその薬剤耐性菌を感染させてしまうことになります。


以上の理由からDoxy-PEP(ドキシペップ)を勧めない医療機関も存在しています。

以上により、個々の医院の考え方によってDoxy-PEPが実施されないこともあります。