血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年11月26日木曜日

肝機能検査-8.ロイシンアミノペプチダーゼ-(LAP:leucine aminopeptidase)

ロイシンなどのタンパク質を分解するはたらきを持つ酵素の一種で、肝臓や腎臓、膵臓、腸管、子宮、睾丸、脳などの細胞に含まれています。

肝臓障害などで胆道がつまって胆汁がうまく流れなくなる(胆汁のうっ滞)と、胆汁が逆流してロイシンアミノペプチダーゼが血液中に流れこむことによって血中の値が著しく上昇します。

【検査目的】

胆道閉塞を起こす病気の診断に有用な検査です。

この検査だけでは診断しきれないので、他の肝機能検査と組み合わせて検査を実施します。

【基準値】

20~70U/L

※検査方法にはさまざまな種類があり、測定単位も異なり、基準値も異なりますので注意が必要です※

【異常値】

軽度の上昇(70~200U/l)・・・胆石、慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変など

高度の上昇(200U/l以上)・・・肝臓がんや胆道系のがん、胆石、すい臓がんなどによる胆道閉塞、子宮がん、卵巣がんなど

低値の場合・・・・・・・・・特に問題なし

【アイソザイム】

α1、α2、βの3種類のアイソザイムが存在します。

1.α1が高い場合は何らかの原因で胆道が詰まっていることが多い。

2.α2が高い場合は妊娠している場合に多く見られる。

3.βが高い場合は、肝臓病の他、白血病や自己免疫疾患、悪性リンパ腫や感染症が疑われる。


【おまけ】

1歳未満の子供では高値を示しますが、それ以降は成人に向かうに従い安定します。

性別や食事、運動による影響はほとんどありません。

飲酒などアルコールの摂取が多いとγ-GTPと平行して上昇する場合もあります。

胎盤に多く含まれているので妊娠中は高い値を示します。

2015年11月18日水曜日

肝機能検査-7.コリンエステラーゼ(ChE:Cholinesterase)-

コリンエステラーゼは、肝臓の細胞のみでつくられる酵素で、肝臓のはたらきが低下すると産生量が低下します。

コリンエステラーゼは、コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解することによって、たんぱくをつくりだしています。

コリンエステラーゼには、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2つの種類があります。

1.アセチルコリンエステラーゼ

真性コリンエステラーゼとも呼ばれ、赤血球や筋肉、神経組織の中に含まれています。

2.ブチリルコリンエステラーゼ

偽性コリンエステラーゼとも呼ばれ、血清や肝臓、膵臓、腸、肺などに含まれています。

健診などでは肝機能検査の一つとして、この偽性コリンエステラーゼを測定しています。

そのことから血液中のコリンエステラーゼ値をはかることで、たんぱくをつくり出す肝臓の機能をみることができます。

【検査目的】

コリンエステラーゼはアルブミンと同様に肝臓だけで産生されているので、コリンエステラーゼはほかの肝機能検査に比べていち早く異常値を示すので肝機能検査として広く利用されています。

コリンエステラーゼとその他の肝機能検査をあわせてみることによって、肝臓の障害されている程度が良くわかります。

要するに慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査です。

【基準値】

男性:234~493IU/L

女性:200~452IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

※一般に女性は男性より値が低めで、月経前や月経中でもコリンエステラーゼが減少します※

※妊娠時も低下します※

【異常値】

低値の場合・・・・劇症肝炎、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝硬変、転移性肝がん

高値の場合・・・・脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機亢進症、高血圧症、糖尿病

極定値の場合・・・有機リン中毒、遺伝性ChE欠損症

【コリンエステラーゼは低値のときが重要】

肝細胞での合成能力下低下していることを反映しています。

肝臓疾患であれば、GOT・GPT、γ-GTP、A/G比、ICG試験などの血液検査や、尿ウロビリノーゲン、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹腔鏡検査、肝生検などを行なう必要があります。

肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復することはまずありえません。

【コリンエステラーゼのみが低値になる】

農薬や殺虫剤などに含まれる有機リンはコリンエステラーゼを失活させるため、肝疾患以外で著しい低下を認めた場合、有機リン中毒が疑われます。

他に異常がない場合にコリンエステラーゼのみ低値または高値となることがありますが、低値の場合はコリンエステラーゼ欠損によるコリンエステラーゼ遺伝性欠損症が疑われます。

高値はコリンエステラーゼ変異による本態性家族性高コリンエステラーゼ血症が疑われます。

いずれも症状がなく普段の生活には何ら支障はありませんが、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があります。

逆に本態性家族性高コリンエステラーゼ血症では麻酔抵抗性(麻酔が効きにくい)を示す可能性があるといわれています。

【おまけ】

コリンエステラーゼの値を下げる薬剤も存在します。

下記の薬剤を服用している患者は、コリンエステラーゼの値が低くても肝臓の状態とは無関係の場合もあります。

抗うつ剤・・・・ルジオミール錠、テトラミド錠など

緑内障の点眼薬・・・・眼圧を下げるための点眼薬(コリンエステラーゼを抑える成分が含まれている為)

アルツハイマー型認知症・・・・神経伝達を活性化するために、コリンエステラーゼ阻害剤を服用する場合があります。

2015年11月11日水曜日

肝機能検査-6.アルカリフォスファターゼ(ALP:Alkaline Phosphatase)-

ほとんどの臓器に含まれ、主に肝臓、骨、腸でつくられているリン酸化合物を分解する酵素です。

肝臓で作られて、胆汁の成分として胆管を通って、胆嚢に貯蔵されたあとに十二指腸に排出されます。

肝臓のALPは胆汁に排出されるので、肝臓や胆道系の病気で胆汁が流れる経路に異常が出ると血液中に増えます。

さらに骨や腸に障害が起こっているときも値が高くなります。


【検査目的】

慢性肝炎、急性肝炎、閉塞性黄疸など肝臓や胆道の病気のほか、甲状腺機能亢進症骨軟化症など骨の病気の検査に用いられます。


【基準値】

80~260IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【異常値】

●軽度から中等度上昇 260~600IU/L

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、肝内胆汁うっ滞、胆道感染、薬物性肝障害、脂肪肝、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝がん、悪性リンパ腫、転移性骨髄腫、サルコイドーシス、骨肉腫、慢性腎不全など

●高度上昇 600IU/L以上

顔が黄色くなるような明らかな黄疸が見られます。

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、転移性骨腫瘍、肝膿瘍、悪性リンパ腫、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進、アミロイドーシス

●基準値より低い 80IU/L以下 

体調による一時的な低下で特に問題ない。

稀に遺伝性低ALP血症の可能性もあります。

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【ALPアイソザイム】

肝臓型、骨型、小腸型の三つの型6種類があります。

6種類のアルカリホスファターゼを検査することで、病気を特定していきます。

これは"ALPアイソザイム"と呼ばれる検査方法で、ALPはalkaline phosphatase(アルカリホスファターゼ)の略で、アイソはiso(同じ)、ザイムはzyme(酵素)という意味です。

1.ALP1(肝由来)・・・胆道の閉塞性疾患や肝疾患で高い値を示す

2.ALP2(肝由来)・・・肝疾患や胆道疾患で高い値を示す

3.ALP3(骨由来)・・・骨芽細胞が増殖する病気や骨腫瘍、甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症などで高い値を示す

※成長期の小児の場合、骨芽細胞の活動が盛んなことから、小児におけるALPの値の主体がこのALP3に由来しています※

4.ALP4(胎盤由来)・・・妊娠後期に出現します。
稀に肺がんや卵巣がんで高い値を示す

5.ALP5(小腸由来)・・・B型・O型の一部の人に、脂肪食摂取後に高値を示す場合があります

肝硬変、糖尿病、慢性腎不全などの病気で高い値を示す

6.ALP6(免疫グロブリン結合型)・・・免疫グロブリンと結合したALPで潰瘍性大腸炎などのとき上昇


【ALPアイソザイムで疑われる疾患】

ALP1の出現・・・閉塞性黄疸、限局性肝疾患(肝膿瘍、転移性肝癌、胆道胆石症)

ALP2の増加・・・急性・慢性肝炎(ウイルス性、薬剤性)、胆道系疾患(肝内胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変)

ALP3の増加・・・骨疾患(骨転移癌、クル病、骨軟化症)、副甲状腺機能亢進症

ALP4の出現・・・妊娠後期、悪性腫瘍の一部(肺癌、すい癌、白血病など)

ALP5の出現・・・肝硬変、慢性肝炎、糖尿病、慢性腎不全

ALP6の出現・・・潰瘍性大腸炎の活動期


【おまけ】

B型、O型の一部の人は食後に高い値を示すことがあるので、空腹時で採血をして下さい。

2015年11月4日水曜日

肝機能検査-5.LDH-

LDH(乳酸脱水素酵素は、からだの中でブドウ糖がエネルギーに変わるときにはたらく酵素で、血液細胞、肝臓、腎臓、肺、心筋、骨格筋など全身のほとんどの細胞に含まれていています。

これらの臓器や細胞がダメージを受けると、血液中に流れて高値になります。


【検査目的】

肝臓病、心臓病、血液の病気やいろいろな臓器のがんなどで高値になることが多く、これらの病気のスクリーニング検査として用いられています。

LDHはいろいろな臓器に含まれているので、この検査で異常値がでても、どの臓器に障害があるかまでは分かりません。

LDHの値は妊娠、運動などでも一時的に上昇します。
 
【基準値】

120~245IU/L

※基準値の範囲よりも低くなっている場合は、基本的に問題はありませんが、極端に数値が低い場合は、極めて稀なケースとして先天的に乳酸脱水素酵素の量が少ない場合もあります※

【異常値】

軽度の上昇:245~350IU/L・・・心不全、心筋症、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、関節リウマチなど

中等度の上昇:245~350IU/L・・・悪性リンパ腫、慢性白血病、悪性腫瘍、急性肝炎、心筋梗塞など

高度上昇:350~500IU/L以上・・・悪性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、急性肝炎、心筋梗塞、悪性貧血など

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

【LDHアイソザイム】

LDHには、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムが存在します。

このアイソザイムは、病気によって増える種類が異なります。

LDHの値が高いの場合は、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムを調べて、壊れた細胞や臓器がどこかを調べます。

※LDHアイソザイムの検査でもがんか否かを診断することは出来ません※

LDH1とLDH2が上昇・・・心筋梗塞、溶血性貧血、悪性貧血

LDH2とLDH3が上昇・・・白血病、多発性筋炎、筋ジストロフィー

LDH3とLDH4とLDH5が上昇・・・転移がん

LDH5が上昇・・・急性肝炎、肝細胞癌、子宮がん


【おまけ】

LDHが一番上昇するのは、悪性リンパ腫と白血病の場合が多い