独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation:NITE)は、新型コロナウイルスの消毒目的で利用が広がっている「次亜塩素酸水」について、2020年5月29日時点では有効性は確認されていないとする中間結果を公表しました。
独立行政法人製品評価技術基盤機構では、噴霧での使用は安全性について科学的な根拠が示されていないなどとして、控えるよう呼びかけています。
検証では、2つの研究機関で酸性度や塩素の濃度が異なる次亜塩素酸水が、新型コロナウイルスの消毒に有効かどうかを試験した結果、一部にウイルスの感染力が弱まったとみられるデータもありましたが、十分な効果がみられないデータもあるなどばらつきが大きく、有効性は確認できなかったということです。
今回特に注意を呼びかけていることとしては、次亜塩素酸水は噴霧することで空間除菌ができるとして販売されるケースが少なくないことについて、人体への安全性を評価する科学的な方法が確立していないことや、国際的にも消毒液の噴霧は推奨されていないことなどを紹介する文書を合わせて公表しました。
独立行政法人製品評価技術基盤機構は、"加湿器などで噴霧すること"、"スプレーボトルなどで手や指、皮膚に使用すること"は、安全性についての科学的な根拠が示されていないことから使用しないように呼びかけています。
そもそも消毒薬を空気中に噴霧して使うことはありませんし、本来の使用目的は「物の表面」の消毒です。
空気中に噴霧すると人が吸い込む可能性があり危険ですから行うべきではありません。
一部の販売業者は、"次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと違って安全です、食品にも使えるくらいですから"というセールスをしているようですが、食品に使った場合も食べる前には残留しないように除去することが決められており、完全に除去されています。
次亜塩素酸水は口に入れることを前提に使われるものではありません。
このように間違った宣伝をしているのは、次亜塩素酸水そのものの効能を理解していないのか、儲け主義で誤ったことも平然と言っているのかは定かではありませんが、使用者として我々は気をつけなければいけません。
最近では居酒屋チェーン店でも、入店前に次亜塩素酸水を浴びる謎の装置をくぐることを求められるお店もあるようですが、これは全く殺菌効果がない上に健康被害が出る恐れがあり危険ですし、更に企業や自治体においても次亜塩素酸水の噴霧器を置いて加湿器のようにミストで“空中除菌”をしているのを見かけますが、これは全く効果がなく、健康被害が起こるリスクが高いことです。
厚生労働省の結核感染症課は、「もし物に対する効果があるとしても、噴霧に効果はない」と効果を否定していますし、また「空中を漂う有効成分がウイルスと出合う確率は極めて低い」としたうえで、「感染予防に役立つ見込みがなく、濃度など条件次第では有害になりうるので使用はやめてほしい」と求めています。
実際病院での使用例も確認していないそうです。
その上現時点において、「次亜塩素酸水」の新型コロナウイルスへの有効性は確認されていません。
以上のことをまとめますと、
1.消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない。これは、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、感染者の飛沫や接触によるウイルス感染力を低下させることにはならない(WHOの見解)。
目の腫れや呼吸困難など健康被害とみられる国内の報告2例があります。
2.消毒剤噴霧は、空気や表面の除染のためには不十分な方法であり、一般衛生管理には推奨されない(CDCの見解)。
3.消毒液噴霧による人体への安全性については、確立された評価方法が存在していない。
4.液体の販売にあたって、製法(電気分解、混和等)や原料が明記されていないものが多い(品質に問題があるものが多く存在している)。
5.販売にあたって、製造日及び使用可能期間、使用可能期間中における次亜塩素酸濃度の低減について明記していないものが多い。
6.食品添加物であることを根拠として、人体への安全性を謳っているものがある(間違い)。
7.有人空間での「次亜塩素酸」等の噴霧によるウイルス対策が、公式に認められていると誤認させるような表示を行う例がある(過大広告)。
8.亜塩素酸水として販売されている製品は、製法(電気分解、混和等)や原料が明記されておらず、液性をpH値によって明記しないものも多く、安全性も根拠不明なものが多いと専門家や専門機関が指摘していますから、飛びついて使用することは避けるべきです。
9.次亜塩素酸水と従来から新型コロナウイルス対策として物品の消毒に使用することが推奨されている「次亜塩素酸ナトリウム」とは別のものです。