血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2021年3月14日日曜日

新型コロナウイルスについて-17.新型コロナウイルスの変異株のE484Kとは-

 国立感染症研究所が、国際的なデータベースに登録したウイルスの遺伝情報を慶応大の研究チームが解析した結果、2020年8月と12月に採取された新型コロナウイルス2個の突起先端部に「E484K」と呼ばれる変異があったことを確認しました。


この変異株は日本国内で変異したと考えられていますが、現在流行しているこの変異株は海外から流入したのとは別に、国内で以前から広まっていたウイルスにE484K変異が入った可能性が高いと判断されています。


E484Kは、これまでの感染で体内にできた抗体やワクチンの効果を低下させると懸念されています。


この変異株が国内からも発生したとすれば、今後も同様の変異ウイルスが生まれる可能性があることから懸念されています。


新型コロナウイルスの変異は今後も起こり、これから使用するワクチンの効果が悪くなる可能性があることからして、変異したウイルスの早期発見と早期対策が叫ばれています。

2021年3月7日日曜日

新型コロナウイルスについて-16.新型コロナワクチンに対する日本感染症学会からのCOVID-19ワクチンに関する提言-

 2021年2月よりわが国でも遅ればせながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まりました。

これを受けて2021年2月26日、「日本感染症学会」は、『COVID-19ワクチンに関する提言」(第2版)』を同学会のホームぺージで公開してます。

この提言の内容について解説してみます。

第1版は既に2020年12月28日に発表され、ワクチンの開発状況・作用機序・有効性・安全性・国内での接種の方向性そして接種での注意点などが提言されています。

今回は、特にワクチンの有効性(変異株も含む)、ワクチンの安全性などに大幅に加筆が加えられ更に筋肉内注射に関する注意点の項目が新しく追加されています。

まずはワクチンの有効性についてですが、

○COVID-19ワクチンの有効性の追加についてですが、

(1)ファイザーの臨床試験として、55歳以下で95.6%、56歳以上で93.7%、65歳以上で94.7%の有効率が認められたとしています。

しかし、75歳以上では対象者数が十分でなく評価できていないと述べています。

(2)モデルナの臨床試験結果としては、65歳未満で95.6%、65歳以上で86.4%の有効率が認められたとしています。

しかしそれ以上の年齢層では評価されていないとも述べています。

(3)アストラゼネカの臨床試験結果としては、接種群における70歳以上の割合は5.1%にすぎず評価不十分と述べています。

※これらをまとめますと、いずれのワクチンも、75歳を超える高齢者での有効性については今後の検討課題であり、接種群で基礎疾患のある人の割合は、ファイザーの臨床試験で20.9%、モデルナで27.2%、アストラゼネカで24.7%と比較的多く含まれているものの、それぞれの基礎疾患ごとの有効性の評価は十分ではなく、今後検討が必要と結論づけています※

一番気になる変異株とワクチンの効果についてですが、

この提言では「SARS-CoV-2の変異速度は24.7塩基変異/ゲノム/年とされており、2週間に約1回変異が起き、その変異によってウイルスのタンパク質を構成するアミノ酸に変化が起こることがある」とされ、「とくにスパイクタンパク質のACE2との結合部位近くのアミノ酸配列に変化が起きると、SARS-CoV-2の感染性(伝播性)やワクチンで誘導される抗体の中和作用に影響が出る」と述べられています。

更にイギリス変異株については、「感染力(伝播力)が36%から75%上昇すると推定されているものの、ファイザーのワクチンで誘導される抗体による中和作用には若干の減少がみられるが、ワクチンの有効性には大きな影響はない」と述べられています。

南アフリカおよびブラジルの変異株は、「COVID-19回復期抗体の中和作用から回避する変異であることが報告され、ワクチンの有効性に影響が出ることが懸念されている」と述べられています

ワクチンの安全性について

海外の臨床試験では、「活動に支障が出る中等度以上の疼痛が、1回目接種後の約30%、2回目接種後の約15%に、日常生活を妨げる重度の疼痛が、1回目で0.7%、2回目で0.9%報告された」と紹介されています。

「この接種後の疼痛は接種数時間後から翌日にかけてみられるもので、1~2日間ほどで軽快。注射の際の痛みは軽微と思われる」と推定しています。

そして、海外での高齢者や基礎疾患を有する者への接種では、「現在のところ死亡につながるなどの重篤な有害事象は問題になっておらず、COVID-19に罹患して重症化するリスクに比べるとワクチンの副反応のリスクは小さいと考えられる」と考えを呈しています。

一方日本国内での臨床試験における有害事象につていは、ファイザーのCOVID-19ワクチン「コミナティ筋注」では、海外での臨床試験の結果と比べ、「局所の疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛はほぼ同等、悪寒の頻度がやや高くなっていると述べられています。

発熱に関しては、37.5℃以上対象(国内定義/海外定義は38℃以上)で1回目が10%、2回目が16%と高い頻度で認められたが、発熱者のほぼ半数を37.5~37.9℃の発熱が占めているため、その割合は海外の結果と大きな違いはなかったと述べられています。

・mRNAワクチンによるアナフィラキシーに関して、

 1回目接種直後のアナフィラキシーの報告について、米国での当初の調査では、「100万接種あたりのアナフィラキシーの頻度が、ファイザーのワクチンで11.1、モデルナのワクチンで2.5と、すべてのワクチンでの1.31に比べて高くなっている。

両ワクチンのアナフィラキシーに関する報告をまとめると、女性が94.5%を占め、アナフィラキシーの既往をもつ者の割合は38.7%、接種後15分以内に77.4%、30分以内に87.1%が発症している。

その症状は、ほとんどが皮膚症状と呼吸器症状を伴うもので、アナフィラキシーショックを疑わせる血圧低下は1例のみであった。

なお、その後の米国の調査で、アナフィラキシーの頻度は両ワクチン合わせて100万接種あたり4.5と報告されています。

この提言では、ワクチンの有効性と安全性を評価したうえで、ワクチン接種を望む一方で、「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではなく、接種しても一部の人の発症、無症状病原体保有者として人に感染を広げる可能性があること」についても注意をうながし、COVID-19の蔓延状況が改善するまでは、マスク、手洗いなどの基本的な感染対策の維持を推奨しています。

日本感染症学会の提言の全文は以下を参照してください。

  ↓

日本感染症学会