血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2021年1月31日日曜日

新型コロナウイルスについて-11.変異株と変異種の違いとは-

変異株と変異種とは全く概念が異なります。

変異株を説明する前に突然変異について解説しておく必要があります。

突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。

突然変異の結果、新しい性質を持った子孫ができることがあります。

この子孫のことを変異株と呼びます。

変異株そのものは、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化していますが、もともとの生物の種類は変化していません。

従って変異株は、同じウイルスの複製産物に過ぎないことからして、ウイルスの名称は変化しません。

英国や南アフリカで新たに発見された新型コロナウイルスは、突然変異によるこウイルスの変化したものですから変異種ではなく変異株ということになります。

一方変異種とは、極まれに近縁の生物種の間で多くの遺伝子組み換えが起きると、ふたつの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生することがあります。

これを変異種と呼称します。

この場合は、新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が与えられることになります。 

2021年1月27日、日本感染症学会は報道機関向けに声明を発表し、新型コロナウイルスの"変異株"を"変異種"と表記しているメディアに対して「これは学術的には誤用となりますので、今後は変異"株"と正しく表記していただきたくお願い申し上げます」と要望しています。 

2021年1月24日日曜日

新型コロナウイルスについて-10.ネットで販売されている新型コロナウイルス抗体検査についてのご注意-

 現在ネットを見ると、新型コロナウイルス抗体検査キットは数多く販売されています。

これらの検査キットの説明文には「15分で自宅にいながらすぐに結果が陽性か陰性かがわかる」、「病院に検査しに行って逆に感染するリスクをなくせます」と、紹介されています。

そもそも抗体検査キットは、体内にウイルスの抗体があるかどうかを調べるもので、PCR検査のように感染の有無を診断するものではありません。

これら抗体検査キットは、研究用試薬で、感度や特異性がはっきりわかっていません。

厚生労働省も抗体検査キットについて、「研究用試薬で精度がわからない」として注意を呼びかけています。

また、2020年12月時点、厚生労働省によって医薬品として承認されている抗体検査キットは存在していません。

抗体検査キットで感染を正確にリアルタイムで知るのは無理なのです、なぜなら血液の中に感染を示す抗体があるなしの判定しかできません。

感染して、まだ症状が出始めた時、そういう感染初期の早い時期にはまだ抗体はてきていませんし、仮にできていても量が少ないことから検査は陽性にはなりません。

こたこのキットで検出された抗体の種類は、

1.感染したことを示す感染抗体

2.感染を防ぐ感染予防抗体(中和抗体)

の区別をすることができません。

抗体検査で感染を正確にリアルタイムに知ろうということは、不可能なのです。

現在巷で売られている抗体検査キットは、信頼性はないと考えて利用することを控えるべきです。

【追加】

新型コロナウイルスの抗体検査キットをウイルス感染の判定に利用できるとうたって販売したのは景品表示法に触れる恐れが強いとして、消費者庁は2020年12月25日、業者6社に表示の修正を求める行政指導を行った。

同庁は「抗体検査は感染歴の傾向を調べる疫学調査目的では利用されているが、感染判定には適さない」と強調し、販売している6社の商品は認可を得ていないことなどを説明しておらず、消費者が誤解する恐れが強いとした。

※これらのキットいずれも中国製で、抗体の有無をきちんと判定できる保証もないという※

感染拡大を受け、ネット上では安価な抗体検査や無認可のPCR検査、抗原検査のキットも多く販売されている。

同庁担当者は「偽陽性や偽陰性の判定で感染拡大や医療逼迫(ひっぱく)を加速させかねない。必要な場合に限り、医療機関で検査してほしい」と話している。