血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年5月28日火曜日

性行為感染症アラカルト-2.クラミジア・トラコマチス感染症 その1-

クラミジア・トラコマチス感染症は、クラミジア・トラコマチスが引き起こす性行為感染症のひとつです。

クラミジア・トラコマチスはトラコーマを引き起こす病原体で一昔前まではトラコーマを引き起こす眼感染症でしたが、現在では性行為感染症の病原体として知られています。

クラミジアは、性行為感染症の中で最も多い性行為感染症で、最近の報告では18歳から19歳の女性の10人に3人が、20代では20人に3人が感染しているという調査報告があります。

更に世界中で感染が問題となっています。

【感染経路】

性交・オーラルセックス・キスなどにより粘膜に感染する。

【感染確率】

クラミジアは感染力が非常に強く、感染者との1回の性交渉で50%以上の感染するとの報告があります。

【感染場所】

感染部位は、男性は尿道、女性は膣内に感染し、咽頭や直腸には男女ともに感染する。

相手が咽頭感染している場合通常の口づけでは感染する可能性は低いが、ディープキスの場合は感染率が高くなる。

クラミジアの感染は、クラミジアが存在する場所に接触することによって感染しますので、性器に感染していても口中にクラミジアがいなければキスで感染することはありません。

【潜伏期間】

感染して1~3週間後に症状が現れる。

【症状】

1.男性

比較的サラッとした尿道分泌物や軽い排尿痛が出現します。

痛みや激しいかゆみなどの症状があれば病院を受診し治療が行われますが殆どの場合、全く無症状のない場合が多いことから感染に気付くことはまずありません。

尿道にクラミジア感染がある場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は4~13%と報告されています。

2.女性

おりものが増える事がありますが、自覚症状が殆どないことからやはり感染に気付くことはまずありません。

感染機会後1~3週間後で、帯下が多少増加する子宮頸管炎を発症し、放置すると卵巣や卵管の周りに癒着を起こし、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎を発症します。

この場合下腹部痛が見られることもありますが、女性でも無症候感染が半数以上で見られ、知らないうちに卵管周囲の癒着を起こし、将来の子宮外妊娠や不妊症の原因となることもあるので注意が必要です

喉頭感染では喉が痛くなり痰が増えたりしますが、やはり無症状のことが多く感染に気付くことはまずありません。

子宮頸管からクラミジアが見つかった場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は10~25%と報告されています。

※海外では咽頭クラミジアの感染は、男女差は認められませんが、日本では女性の方が咽頭クラミジアの感染は多い傾向にあります※

2019年5月21日火曜日

性行為感染症アラカルト-1.膣トリコモナス症-

性行為感染症についての正しい知識としての症状・検査法・予防法・注意点などを習得して感染予防に役立つように解説していきます。

初回は膣トリコモナス症について解説していきます。

単細胞生物であるトリコモナス原虫は,腟トリコモナス,口腔トリコモナス,腸トリコモナスが知られており,それぞれの形態学的な区別は難しく感染部位に特異的な性質をもっています。

性行為によって生殖器に感染し,また明らかな病原性をもっているものは腟トリコモナスだけで、膣トリコモナスが引き起こす人の性行為感染症のひとつです。

【感染経路】

殆どがコンドームなしの性行為で感染しますが、下着やタオル、便座や、出産時に母から感染する可能性もあります。

【感染場所】

男性の場合は尿道、女性の場合は膣と尿道。

【潜伏期間】

感染して10日前後で症状が現れる。

【症状】

膣炎・子宮頸管炎・尿道炎を引き起こし、悪臭を伴う、黄白色の泡沫状の帯下、性交・排尿時の不快感、掻痒感、灼熱感、下腹部の痛みなどが発現する。

男性の場合殆どが無症状ですが、稀に尿道にかゆみを感じたり、排尿・射精時に軽い痛みを感じたりする場合もあります。

男性の場合治療せずに放置していると、前立腺癌のリスクを高めると言われています。

またトリコモナスに感染している男性は前立腺炎を有しているケースが多いという報告があります

女性の場合は、最悪、不妊症や早産等の原因となり、妊娠中に女性が感染すると、早期破水や早産を引き起こすことがあります。

膣炎ではトリコモナスだけが原因ではなく,臭いの原因となる嫌気性菌や大腸菌、球菌の増殖による混合感染の形態をとることが一般的で,膣炎の病態,臨床症状はこの混合感染によって起きています。

【検査】

男性の場合は、尿沈渣や前立腺分泌物中に運動する虫体の存在を顕微鏡で調べる。

※男子の尿からは培養法による検査を行う必要がある※

女性の場合は、膣から綿棒で粘膜を採り、スライドグラス上に塗布しギムザ染色を行って顕微鏡で調べる。

核酸増幅法TMA(Transcription Mediated Amplification)法を用いた,「Aptima トリコモナス ヴァギナリス Assay」が最近利用されつつあります。

【治療】

メトロニダゾールやチニダゾールなどの抗原虫薬を用いる。

男性は1回の投与による治療が効果的かどうかは不明ですが、通常は抗菌薬を5~7日間投与すれば治癒します。

女性の95%は、抗菌薬のメトロニダゾールかチニダゾールを1回、経口で投与することで治癒します。

【日本人の感染実態】

女性の5~10%、男性の1~3%が感染しているといわれていますが、実際はもっと多くの感染者が存在していると言われています。

【感染予防】

コンドームを使用することで感染予防が可能と言われています。

【HIV感染との関連性】

膣トリコモナスに感染して性器粘膜や尿道の粘膜がただれていることから、HIVの感染リスクが極めて高くなることが報告されています。

2019年5月14日火曜日

風疹について-4.風疹ウイルス遺伝子検出法について-

急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿からRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などの方法で風疹ウイルスの遺伝子を検出する方法がありますが、この検査法は早期診断に有用ですが、検査を受けられる医療機関は少ないのが実情です。

【風疹ウイルス遺伝子検出法の特徴】

どの検体を使用しても発疹出現時期に近いほど検出率が高く, 特に咽頭ぬぐい液や尿では7日目程度まで検出可能です。

その一方, 血液中の風疹ウイルスは抗体の出現とともに急速に検出率が低くなります。

特異的IgM検出で偽陰性になりやすい発疹出現後0~3日目が, ウイルス遺伝子検出に適した時期であるため, 両検査を実施することでより正確な検査診断が可能となります。

【風疹ウイルス遺伝子検出法の種類】

風疹ウイルス遺伝子検出法としてリアルタイムRT-PCR法とコンベンショナルRT-nested PCR法があります。

RT-nested PCR法は検出感度がリアルタイムRT-PCR法よりも若干高いものの, 操作が多く, 結果を得られるまでにより時間を必要とすることと共に実験室コンタミネーションの危険性が非常に高いために偽陽性反応が起こりやすいことから 適切な環境で熟練した検査担当者が十分に注意して実施する必要があります。

逆にリアルタイムRT-PCR法は, RT-nested PCR法と比較して実験室コンタミネーションの危険性も低く, 検出に適した時期の検体を使用することや複数種の検体を使用することで, RT-nested PCR法と同様に十分に信頼のおける結果を得ることが出来ます。

このような理由からして 現在診断目的にはリアルタイムRT-PCR法を使用する医療機関が増加しています。

2019年5月7日火曜日

風疹について-3.風疹ウイルス抗体検査の解釈について-

風しん抗体検査の試薬としては、日本国内では10社から販売されています。

検査方法としては、以下のものがあります。

赤血球凝集法(HI法)
酵素免疫法(EIA法)
蛍光酵素免疫法(ELFA法)
ラテックス免疫比濁法(LTI法)
化学発光酵素免疫(CLEIA法)
蛍光免疫測定法(FIA法)など

【抗体価】

各メーカの検査キットによって異なります。

一般的には赤血球凝集法で風疹HI抗体価によって以下のように解釈します。

・8倍未満は陰性

・16倍以下では発症予防効果はあるが体内でのウイルス増殖が起こる

・32倍以上では体内でのウイルス増殖を抑制する

【風疹IgM特異抗の出現時期】

風疹ウイルスに感染して発疹出現から28日以内の血液中に風疹IgM特異抗体検出が出現します。

この風疹IgM特異抗体を調べることによって風疹の診断が可能となります。

【ペア血清とは】

ペア血清とは、とは同一患者から採取されたペア血清(ぺあけっせい、英: paired serum)とは同一患者から採取された1組の急性期血清および回復期血清のことを言います。

要するに同一患者から採血した急性期血清および回復期血清を使用して抗体検査を実施します。

ペア血清を用いて、CF、HI試験、ELISA法などで4倍以上の上昇が認められれば風疹ウイルスに感染していると判断します。