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2017年6月21日水曜日

性行為感染症についてー3.梅毒性ぶどう膜炎-

梅毒性ぶどう膜炎は、梅毒トレポネーマに感染した結果、眼に引き起こされる病気で、
第1期では,眼瞼下疳・結膜下疳、第2期では視神経炎・虹彩毛様体炎を引き起こしその結果急激な視力低下が起こります。

第3期では瞳孔異常・視神経炎・網脈絡膜炎を引き起こし、視力低下が起こります。

第4期には視神経萎縮を合併します。

梅毒トレポネーマ感染による眼疾患はここ30数年来、2~3例しか発生していませんでしたが、ここ数年来増加しつつあるとの報告がなされています。

これはここ数年来の梅毒患者の増加に比例しているものと考えられます。

梅毒性ぶどう膜炎の症状としては後極部に限局した病変が見られ、硝子体混濁を伴いやすく、視神経乳頭炎など網膜血管炎を合併するなどの特徴があるとされていますが、角膜実質炎,硝子体炎,視神経炎や瞳孔異常などを引き起こすこともあります。

しかし現実はその症状は極めて多彩で、眼所見からだけの診断は困難で梅毒血清反応検査を行うことが必要となります。

要するに眼所見だけで梅毒を疑うことは極めて困難なのです。

眼梅毒の患者のおよそ40%は、神経梅毒を合併していることからして腰椎穿刺を施行する必要があるのと、HIVの検査も全例に対して行うべきとされています。

何故ならHIV感染者では発症が急速であることと、治療に対する反応が遅いなど、HIV感染者でない者と臨床像が異なると報告されています。

急激な視力低下、かすみ眼をきっかけに受診し、梅毒性ぶどう膜炎を指摘される場合が多く発生しています。

不安な行為の後、急激な視力低下、かすみ眼が起こるようになった場合は、眼科を受診することと梅毒検査を受けることをおすすめします。

治療法としてはステロイド点眼を行い、梅毒に対する全身的な治療(ペニシリン投与)をを行います。

現在の梅毒による眼疾患の増加の裏には、HIV感染者の増加が危惧されています。

2017年6月12日月曜日

性行為感染症についてー2.硬性下疳と軟性下疳の違いー梅毒トレポネーマに感染後に出る症状の落とし穴ー

梅毒トレポネーマに感染すると、3週間前後に梅毒トレポネーマが侵入した場所(性器や肛門、唇、咽頭など)に痛みのない小豆程度の大きさの赤いしこりが出来ます。

これを"硬性下疳"と言います。

硬性下疳は潰瘍で、この潰瘍は痛みがないのが特徴です。

触ると字の如く軟骨様の硬さがあり、硬性下疳の潰瘍の表面をこすって刺激し出てくる分泌液には多量の梅毒トレポネーマが存在し感染源となります。

硬性下疳に触れることにより梅毒トレポネーマに感染します。

硬性下疳を放置しておくと崩れてただれたようになりますが、何もしなくても直ぐに消失することから何もなかったと勘違いし感染を見逃すことになります。

その後梅毒トレポネーマはリンパ管を通って移動し、太ももの付け根などのリンパ節が腫れますが、この場合もやはり痛みは殆どありません。

鼠径部のリンパ節が、片側または両側ともに痛みもなく,また化膿することもなく腫れてきます。

痛みがないことからこれを"無痛性横痃(むつうせいおうげん)"と言います。

※無痛性横痃を"よこね"とも言います※

これが第1期です。

梅毒トレポネーマ感染による第1期の症状は、治療しなくても1月前後で消失することから感染のことは忘れてしまうことになります。

そして感染のことを忘れかけた3ケ月後頃には、梅毒トレポネーマは全身に広まり、全身の皮膚や粘膜にバラ色の発疹が出来ます。

これを"バラ疹"と言います。

このバラ疹は、手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れる事もあります。

やはりこのバラ疹も治療しなくても1ヶ月程度で殆どの場合消失してしまいます。

これが第2期です。

第2期の症状も何もしなくても殆どの場合消失してしまいますが、梅毒トレポネーマは体内に存在し梅毒は進行し第3期、第4期へと進行していきます。

梅毒感染の落とし穴はここにあります!!

即ち第1期でも2期でも、何もしなくても症状は消えてしまうことにあります。

また、症状の出ない無症候性梅毒もあります。

最近流行している梅毒は、無症候性梅毒が多いと報告されています。

梅毒に感染しても第1期、第2期の症状は放置しても消失することから感染に気づくことがなく、知らず知らずに第三者に感染させてしまい流行が広がっています。

また、梅毒患者増加の裏にはHIV感染者の増加が隠れていることを忘れてはなりません。



従って梅毒トレポネーマ感染の判断は、症状から判断することは難しく、適切な時期(STS検査は不安な行為から4週以降・TP検査は不安な行為から6週以降)に梅毒検査を受けるしかありません。

2017年6月2日金曜日

性行為感染症についてー1.硬性下疳と軟性下疳の違いー

【軟性下疳とは】

軟性下疳菌(ヘモフィルス・デュクレイ)の感染により、性器部に出来物を形成する性行為感染症のひとつです。

現在日本においては感染者は非常に少なく、東南アジアやアフリカに多い性行為感染症です。

最近では両羽先の東南アジアや南アフリカで感染し、帰国後に感染が判明するというケースが稀に見られます。

海外旅行で羽目をはずし、感染しこれを日本国内に持ち込む可能性は十分あり、このことから国内流行が懸念されています。

出来物の中身は膿で、放置すれば痛みは強くなり、潰れやすいから、すぐに潰瘍になってしまいます。

男性の場合は、包皮、カリ、亀頭、睾丸に膿のある米粒大のコブができ、痛みを伴い、触るとすぐ潰れ潰瘍になりますが、男性の半数は潰瘍がひとつしかできません。

女性の場合、ほとんどが大陰唇に膿のある米粒大のコブができ、痛みも伴い、触るとすぐ潰れ潰瘍になりますが、女性の半数以上は潰瘍が4つ以上出来ることが多いです。

しかし、男女ともに潰瘍からの膿が付着して周囲に潰瘍が多発することもあります。

初発症状出現後2週間内外に鼠径部リンパ節が赤く腫れて化膿することがあり、有痛性横痃(おうげん) とよばれている股の付根のリンパ腺が腫れます。

男性、女性、ともに同じような症状が出ます。

※性器に強い痛みを伴う壊疽性潰瘍が生じることや、鼠径リンパ節の化膿性炎症が起きることが特徴的です※

軟性下疳は激しい痛みを伴うため感染者は性行為はまず出来ません。

潜伏期間が短いため、パートナーへ感染することはめったにありませんし、発症するのも早く、梅毒やクラミジアと違ってすぐに発見されます。

軟性下疳では潰瘍が出来、感染防御バリアが完全に破壊されることからHIV感染のリスクが極めて高くなります。

従って症状が治まった後には必ずHIVの検査を受ける必要があります。

【硬性下疳】

梅毒トレポネーマに感染して10~90日、平均で21日前後で感染した箇所に赤い丘疹(盛り上がった発疹)として現れるものを言います。

硬性下疳は痛みがないのが特徴です。

硬性下疳は急速に潰瘍(えぐれたような傷)となり、潰瘍から出る浸出液にはたくさんの梅毒トレポネーマが存在しています。

この浸出液に性器や傷のある皮膚が触れるといとも簡単に感染してしまいます。

硬性下疳は1~51週間前後出現していますが、そのうち消失してなくなってしまいます。

しかし、硬性下疳(chancre)が消失しても、決して治ったわけではなく、適切な治療が行われなければ、梅毒の第二期へと進行します。

まとめ

【軟性下疳と硬性下疳の違い】

※軟性下疳は激しい痛みがある※

※硬性下疳は痛みはない※

何度も申し上げていますが、2017年6月現在も梅毒の流行が収まっていません。

梅毒トレポネーマに感染すると、性器粘膜が爛れてHIVに感染するリスクが数十倍から数百倍高くなります。

梅毒トレポネーマに感染する可能性のある行為をすれば、必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒の流行は、HIV感染者の増加に深く関係しています。