血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年1月26日木曜日

臨床検査のデータの考え方とその読み方-1.臨床検査の位置づけ-

現代医学は臨床検査を的確に実施し、その検査結果を臨床にいかに活かすことが求められています。

このことは取りも直さず現代の医学は臨床検査なしでは成り立たないということです。

リアルタイムで次々と登場する検査をうまくこなすことは至難の業となっています。

医師や臨床検査技師、看護師はこれらの検査法を理解して正しい使い方に対する臨床的なエビデンスを習得する必要があります。

これらを怠れば不要な検査を実施し患者に経済的負担を与えたりするのと、検査の解釈の間違いから誤診を引き起こしているのが現実に存在します。

種々ある臨床検査は、ほぼ全てと言っていいくらい感度100%・特異度100%の検査法は存在しません。

その為に臨床症状と検査の異常をうまく捉えて、その裏に存在する病態とその原因となっている疾患を確定するのが"検査診断"です。

この"検査診断"に知っておくべき知識や落とし穴が多く存在します。

検査の原理・検査をする目的・異常値を示す理由・検査を実施する的確な時期・間違ったデータを引き起こす要因等を十分に理解して検査を実施する必要があります。

【語句の解説】

エビデンス・・・根拠・証拠

感度・・・ある疾患に感染している患者を検査してその患者中の検査陽性者の割合

特異度・・・ある疾患に感染していない患者を検査してその患者中の検査陰性者の割合

検査診断・・・臨床検査の検査結果から病気を診断する

病態・・・病気のぐあい・病状

臨床症状・・・医療において患者が、実際に呈している症状

2017年1月15日日曜日

梅毒感染に気をつけて下さい!!!

2016年1年間の梅毒患者が4518人(速報値)を超えました。

この患者数は1974年以来42年ぶりのこととなります。

患者全体の約80%を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されていますが、女性は20代が女性全体の50%超を占め患者増加が際立っています。

最近の梅毒は男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、異性間での感染も広がり患者増加傾向が見られますが、この増加の原因は突き止められていません。

特に妊婦が梅毒トレポネーマ感染すると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し先天性梅毒となります。

これを防ぐには妊婦健診を必ず受けることです。

異性間性交による梅毒患者増加は、その裏にHIV感染者の増加が考えられます。

梅毒トレポネーマにに感染すれば、HIVの感染リスクが極めて高くなりますので、不安な行為をした場合には必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒はコンドームでは完全に予防できませんし、オーラルセックスでも感染することを認識しておく必要があります。

梅毒トレポネーマは、性行為で性器や肛門、オーラルセックスでも性器や咽頭に感染します。

梅毒検査のただしす受け方に関しては、当ブログに紹介しておりますから再度ご確認下さい。


2017年1月2日月曜日

ヘルペスウイルスについて-8.HHV-8(カポジ肉腫ウイルス)-

【HHV-8とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種で、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8:human herpesvirus 8)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス,または単純にカポジ肉腫ウイルスと呼ばれています。

HHV-8は他のヘルペスウイルスとは異なり,カポジ肉腫や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発症と関連していることが最大の特徴です。

カポジ肉腫を発症するのは、主に地中海系またはユダヤ系の高齢の男性、アフリカの一部地方出身の小児と若い男性、臓器移植を受けて免疫抑制剤を投与されている患者、そしてエイズ患者です。

【感染経路】

HHV-8の感染経路は正確に把握されていません。

男性の同性間性的接触者(MSM)で感染率が高いことや,感染者の唾液にHHV-8が検出されることから,男性の同性間性的接触のアナルセックスや唾液から感染することが疑われています。

外国ではMSMに感染者が多いといわれ、特に米国ではMSMの8~24%がHHV-8に感染しています。

日本人の健常者でもおよそ1%が感染していますが、その殆どは感染経路が不明です。

ほかのヘルペスウイルスと同様一度感染したら生涯ウイルスは体内に潜伏すると考えられています。

健康な人であれば、感染しても何も症状は出ることがありませんので治療の必要はありません。

殆どの人は感染しても一生、発症しないで終わります。

非常に稀ですがHHV-8が原因で悪性リンパ腫などの悪性腫瘍を発症することがあります。


【HHV-8とHIVの関係】

HHV-8に感染している人がHIVに感染し、エイズを発症したり、何らかの理由で免疫不全になるとカポジ肉腫を発症する可能性があります。

日本ではエイズの人のおよそ5%がカポジ肉腫を発症しているといわれています。

【カポジ肉腫とは】

血管のがんの一種で、エイズの男性同性愛者に多いという特徴があります。

エイズの代表的な合併症として重要な疾患"エイズ関連カポジ肉腫"として知られています。

皮膚や口の中に赤茶色の斑点ができて、これが大きくなり、さらに肺や消化管などの内臓に発症すると死亡することもあります。

日本では外引くに比べて非常に少ないですが、HIV感染者の男性の同性間性的接触(MSM)のHIV感染者が増加し、カポジ肉腫も増えています。

"エイズ関連カポジ肉腫"は、殆どが男性の同性間性的接触(MSM)で、女性に発現することは極めて稀です。

ごくまれにですが、エイズとは関連がなく、高齢者や移植などの免疫不全症の人に発症する場合もあります。

【治療】

カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術または液体窒素で凍結させて除去します。

多数できている場合は放射線療法を実施します。

HIVを抑える薬が、カポジ肉腫にも有効であることがわかっています。

患者の免疫能が回復すると消退する症例もあり、プロテアーゼ阻害薬を含むAZT, ddIなどの強力な抗レトロウイルス療法(HAART:highly active anti-retroviral therapy )には抗カポジ肉腫効果も期待できます。

何れにしてもこれらの治療は初期の病変にはよく効きますが、進行した病変では効かないことがあります。

【検査】

HHV-8は健康な人でも約1%は感染しており,感染していても健康な人では症状はありませんので,一般的には検査は不要です。

HHV-8の検査には抗体検査とDNA検査があります。

1.抗体検査

一度でもHHV-8に感染すると血液中にHHV-8に対する抗体が存在しますのて、過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

この検査はこの血液中のHHV-8に対する抗体をエライサ法や免疫蛍光法で調べます。

過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

2.DNA検査

血液中のHHV-8を直接、PCRと呼ばれる方法で検出します。

DNAの検査はカポジ肉腫などを発症している人を対象にします。


【カポジー肉腫の種類】

1.古典的カポジ肉腫

エイズとは無関係に風土病的に発症するカポジ肉腫で、地中海沿岸のほか、世界各地に認められています。

2.アフリカ風土病型カポジ肉腫

アフリカの小児に発生するカポジ肉腫です。

3.エイズ関連カポジ肉腫

エイズ患者に合併するカポジ肉腫で、男性の同性間性的接触者(MSM)に限られる。

4.医原性カポジ肉腫

臓器移植など免疫抑制剤投与に関連して起こる医原性のカポジ肉腫。

2017年1月1日日曜日

迎春

明けましておめでとうございます。

皆様方のご健康とご多幸をお祈りいたします。

旧年中は皆様方にご利用いただきありがとうございます。

本年も皆様方のお役に立てるよう頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

平成28年 元旦 血液の鉄人