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2016年11月28日月曜日

ヘルペスウイルスについて-3.HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型)-

【HHV-2とは】

主に性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎、ヘルペス脊髄炎の原因となりうるウイルスで仙髄の脊髄神経節に潜伏感染する。

【感染者の実態】

5~10%の人が感染していると言われており再発を繰り返すのが特徴です。

推定年間72,000人が感染していると言われています。

そのうち、男女とも20代以降の性的活動が活発になる年代に感染者が多く、どの年代でも男性より女性の患者数が多く、女性がかかりやすい病気です。

HHV-2に感染している人のうち、60%は何らかの症状があるのに本人は気づいていないと言われています。

自覚症状がない場合も多く、患者本人が病気に気がつかないまま、性行為を通して感染が広がっているのが現状です。

【HHV-2の感染力】

HHV-2は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は仙髄の脊髄神経節に潜伏感染し、一生そこに棲みつき生体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

【感染場所と症状】

接触や飛沫による感染が一般的です。

男性の場合は亀頭や陰茎体部が多く、太ももやおしり、肛門周囲、直腸粘膜に症状が出ることもあります。

最初は患部の表面にヒリヒリ感やむずかゆさなどを感じ、2~10日ぐらいでかゆみを伴った赤いブツブツや水ぶくれが出来、やがてそれが破れて潰瘍ができると強い痛みがあり、発熱を伴う場合もあります。

更に太もものリンパ節の腫れや痛みもみられる場合もあります。

女性の場合は、外陰、腟の入口とおしりが多く、子宮頸管や膀胱まで感染が広がることもあります。

患部に水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みで排尿が困難になったり、発熱を伴ったりすることもあり、同時に太もものリンパ節の腫れや痛みがみられることもあります。

男女ともに、再発の場合は小さな水ぶくれや潰瘍ができるだけの軽い症状ですむのが一般的です。

再発の前には神経痛のような症状が出たり、局所がムズムズする違和感を感じたりすることがあります。

【体内に侵入したHHV-2は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-2を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-2の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法とHHV-2の抗ウイルス薬】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

バルトレックス、ゾビラックス、アラセナAなどがあります。

5~10日間、処方された薬を内服または軟膏塗布します。

何れも医師の処方を必要とします。

性器ヘルペスの薬と成分が似ている口唇ヘルペスの市販薬や、個人輸入代行業者を介した薬をインターネット等で入手した薬を使用すると危険な場合があります。

医師の診断のもとに処方された薬を使用しないと、かえってウイルスが広がったり、症状が悪化したりする恐れがあるので素人療法は厳禁です。

【再発に注意】

薬の使用により患部の症状が治まれば治療は終了ですが、性器ヘルペスにかかった場合、1年以内に80%以上の人が再発すると言われているので、その後も体調管理などの注意が必要です。

再発を頻繁に繰り返す場合は、「性器ヘルペス再発抑制療法」という治療法もあります。

【HHV-2の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうことがあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-2が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-2に感染した人は体内にHHV-2を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-2が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

身の回りのものは共用しないことです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-2の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査しています。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過しているものや再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法がありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

結果は5日程で分かります。

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-2を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-2が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在その区別は出来ません※

【注意】

HIVや一部の性行為感染症はコンドームで予防可能ですが、現実ヘルペスに限って言えばそれほど高い効果は得られません。

なぜなら、コンドームは男性の性器を包むだけで、性器の周囲は無防備ですしコンドームに包まれている部分以外の箇所に病変があれば、感染してしまいます。

【HHV-2とHIVの関係】

性器ヘルペスに感染すると感染した性器に炎症など起こし、そこからHIVが侵入しやすくなります。

粘膜局所に炎症があると、正常な場合の2倍から5倍感染しやすくなり、まして潰瘍があると50倍から数百倍感染しやすくなります。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)について解説いたします。

2016年11月20日日曜日

ヘルペスウイルスについて-2.HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型)-

【HHV-1とは】

口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、カポジ水痘様発疹症、角膜ヘルペスなどを引き起すウイルスです。

【感染者の実態】

日本人の場合、HHV-1には50~70%、2型には5~10%の人が感染していると言われており、どちらも再発を繰り返すのが特徴です。

【HHV-1の感染力】

接触や飛沫による感染が一般的です。

HHV-1は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は体内の神経節(※)に潜り込み、一生そこに棲みつき体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

※神経節は、神経細胞が集まっている場所※

【症状】

唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさから始まり、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができます。

そして水ぶくれは破れてかさぶたとなり、2週間程度で治ります。

初感染(初めて感染した場合)の場合は、高熱などの重い全身症状を伴うことがあります。

もし感染してしまった場合にも、症状を悪化させずに早期に治療すること、人に感染させないこと、そして再発を予防していくことが重要となります。

【体内に侵入したHHV-1は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-1を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-1の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

全身症状が現れるなどの重症例や免疫不全の人に対する治療では、入院した上で抗ウイルス薬の点滴静脈注射を行います。

【HHV-1の抗ウイルス薬】

アシクロビル(経口薬・軟膏・点滴)、塩酸バラシクロビル(経口薬)、ビダラビン(軟膏)があります。

【HHV-1の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうこともあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-1が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-1に感染した人は体内にHHV-1を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-1が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-1の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査します。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過している場合や再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、HHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法があります。

結果は、即日から5日程で分かります。

※但、以上の抗体検査ではHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません※

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-1を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-1が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在しその区別は出来ません※

次回はHHV-2(性器ヘルペス)について解説いたします。

2016年11月13日日曜日

ヘルペスウイルスについて-1.その種類-

人に感染するヘルペス科ウイルスは以下の8種類が知られています。

1.アルファヘルペスウイルス亜科

HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型=herpes simplex virus-1)

HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型=herpes simplex virus-2)

HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス=VZV:herpes simplex virus-2)


2.ベータヘルペスウイルス亜科

HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)

HHV-6(突発性発疹を引き起こす)・・・HHV-6AとHHV-6Bに分類される

HHV-7(突発性発疹を引き起こす)


3.ガンマヘルペスウイルス亜科

HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)

HHV-8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス=Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus:KSHV)

次回からこれらヘルペス科ウイルスについて順次解説していきます。

2016年10月20日木曜日

梅毒検査の適切な受け方

梅毒の流行が止まりません。

このことから、梅毒検査の適切な受け方を急遽ご紹介します。

多くの方が既に理解されており、何を今更と言われそうですが、再度ご一読下さい。

そして、不安な行為をしてしまった場合には必ず梅毒検査を正しく受けることをお勧めします。

梅毒患者の増加は、HIV感染者の増加に結びつくことを、夢々お忘れなく!!

梅毒の検査は、血液中に脂質抗体または、TP抗体があるかどうかで判定します。

※脂質抗体とは、梅毒トレポネーマが感染し、その結果体の組織が壊れて出てくるカルジオリピンに対する抗体※

※TP抗体とは、生体が創りだす梅毒トレポネーマの感染抗体※

1.脂質検査

STS検査と呼ばれ、カルジオリピンを抗原として、脂質抗体を見つけ出します。

脂質抗体は、感染後1ケ月で陽性となります。

但偽陽性反応をよく起こすので、TP抗体検査で偽陽性か真の陽性かを調べます。

2.TP検査

梅毒トレポネーマを抗原として検査をします。

TPHAが最もポピュラーです。

その他多くのTP検査が開発されていますが、TP抗体は感染して5週以降にできますから、早い時期に受ければ偽陰性反応を起こします。

TP検査で早く信頼できる結果を得るには、IgM-FTA-absを受けることです。

この検査、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

検査方法は、脂質抗原法とTP抗原法の2種類を組み合わせて総合的に判断するという。

TP検査は一度感染して陽性となるとと、一生陰性化することはないため、治療の具合を調べたり、完治した後に、再度感染した可能性がある場合は、脂質抗原法で検査する必要があります。

梅毒検査も受け方により間違った結果となってしまいますので注意が必要です。

2016年10月6日木曜日

電解質検査-6.マグネシウム(Mg)-

電解質のひとつであるマグネシウム(Mg)について解説いたします。

マグネシウム(Mg)は、体内では4番目に多い電解質です。

血液中には僅かしか存在しておらず、ほとんどは骨の中にあります。

【マグネシウム(Mg)の働き】

役割としては骨や歯を作るのにはなくてはならないもので、更に神経、筋肉を正常に働かせるためにも必要です。

酵素の働きにもマグネシウムが必要とされます、マグネシムがないと酵素はうまく働いてくれません。

マグネシウムは人間の体で3000以上の酵素の補酵素としてはたらいていることから、マグネシウムが不足すると人間のほとんどすべての臓器が正常に働かなくなります。

また、心臓や血管が正常に働くのも、マグネシウムがあってこそです。

善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減少させる働きをし、腸では水分を集めることで便通をよくすることも認められています。

更にマグネシウムはカルシウムと同様に、神経、筋肉の興奮に大切なミネラルです。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

マグネシウム(Mg)…1.4~2.1mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

高マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が2.1mEq/L(1.05mmol/L)を上回る

主な原因としては、

・腎不全

症状としては、低血圧,呼吸抑制,心停止を引き起こすことがある。

※グルコン酸カルシウムを静脈内投与する※

※腎臓が正常に機能していない場合や、高マグネシウム血症が重症である場合は、透析が必要となる※

低マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が1.4mEq/L(0.70mmol/L)未満

原因としては,

・大量のアルコール摂取により、食物の摂取量が減少しその結果マグネシウム摂取量も減少するとともに、マグネシウムの排出量が増加する。

・長期間の下痢によりマグネシウムの排出量が増加し、不足に陥る。

・アルドステロン、抗利尿ホルモン、甲状腺ホルモンの濃度の上昇により排出量が増加し、マグネシウムが減少する。

・マグネシウムの摂取不足および吸収不足

・高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加

※欠乏症が現れたとき、もしくは症状が持続するときは、マグネシウムを経口で投与する※

※アルコール依存症の患者にはもれなくマグネシウムを投与する※

※マグネシウム濃度が非常に低く、重度の症状が起きている場合や、口からマグネシウムを摂取できない場合は、筋肉または静脈に注射で投与する※。

【おまけ】

マグネシウムの不足は、筋細胞や神経細胞の情報伝達に影響を与え、筋肉の痙攣を引き起こすと考えられています。

従って日常生活や運動時にマグネシウムが不足すると、筋肉の痙攣や筋疲労の原因となりますから不足しないようにマグネシウムの不足には気をつける必要があります。

毎日80~210mgのマグネシウムを摂取する必要があります。

マグネシウムを豊富に含む食物やサプリメントで補う必要があります。


2016年9月26日月曜日

電解質検査-5.クロール(Cl)-

電解質のひとつであるクロール(Cl)について解説いたします。

【クロール(Cl)の働き】

クロールは、細胞外液の総陰イオンの約70%を占める電解質成分の内のひとつで、ナトリウムと同様に主に食塩として摂取されて体内に取り込まれ、大部分は尿中に排泄され、一部は糞便や汗などと一緒に排泄されます。

クロールの主な働きは、他の電解質と相互関係にあり、水分の平衡と浸透圧の調節などに関与し、血液中におけるクロールとナトリウムの比率は100:140で、普通はこの比率のもとで濃度が変わって行きます。

健常者の場合、狭い範囲でしか変動しません。

クロールを調べる際は、単独で行われる事は少なくナトリウムとの比率を確認します。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

クロール(Cl)…95~108mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

※クロールの値は一日の内での変化や運動などの影響は殆どありませんが、食後は胃酸として分泌されるので若干の低下があります※

【異常値】

クロールが高値…脱水症、腎不全、過換気症候群、低アルドステロン症、下痢、過換気症候群、呼吸性アルカローシス



クロールが低値…アジソン病、慢性腎炎、肺気腫、慢性腎炎、嘔吐、呼吸筋障害、呼吸性アシドーシス、水分過剰投与


2016年9月19日月曜日

電解質検査-4.カルシウム(Ca)-

電解質のひとつであるカルシウム(Ca)について解説いたします。

体内のカルシウムの99%は骨や歯に蓄えられおり、その残りが細胞内や血液中に存在します。

カルシウムの役割は、骨と歯の大元であり、筋委縮を働きかけ、体中の酵素を正常に作用させ、血液の凝固に関係し、そして、心拍数を正常に保ちます。

特に副甲状腺ホルモンは、骨を刺激することで血液中にカルシウムを送り出し、腎臓から尿へ出されるカルシウム量を減らし、消化管を刺激することでカルシウムの吸収量を増やし、それを助けるために、腎臓でビタミンDの働きを活性化するなど、血液中のカルシウム濃度の上下に応じて、副甲状腺が作るホルモン量も変化します。

【カルシウム(Ca)の働き】

骨や歯の形成・神経刺激の伝達・血液の凝固などの働きをしています。


【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。


【基準値】

カルシウム(Ca)…96~110mEq/l

カルシウム(Ca)…8.5~10.2mg/dL(アリレセナゾⅢ法)

※検査方法や施設によって若干異なります※

※範囲内は極めて狭い範囲で、実際にカリウム濃度の高低が、不整脈、心停止などを起こすことがあります※

【異常値】

カルシウムが高値…悪性腫瘍や多発性骨髄腫など骨代謝の異常、副甲状腺機能亢進症が疑われます

カルシウムが低値…甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、サルコイドーシスなどの内分泌異常が疑われます。

【高カルシウム症】

高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態です。

副甲状腺機能亢進、カルシウムのとり過ぎ、ビタミンDのとり過ぎ、腎臓や肺、卵巣の癌細胞が、副甲状腺ホルモンと同様にカルシウムの血中濃度を上げるタンパク質を大量に分泌する場合、骨の疾患(骨が分解されたり破壊されたりしてカルシウムが血液中に放出される)、運動不足などが原因となります。

【低カルシウム血症】

尿中に多量のカルシウムが排出された場合や、骨から血液中に流入するカルシウムの量が不十分な場合によく発生します。

血液中のカルシウム濃度がある程度低下しても、症状は直ぐには出ずに時間とともに低カルシウム血症が徐々に脳に影響を及ぼし、錯乱、記憶喪失、せん妄、うつ、幻覚といった神経や心因性の症状を引き起こす場合があります。

これらの症状は血液中のカルシウム濃度が回復すると消失します。

カルシウム濃度が極端に低くなると、唇、舌、指、足にチクチクした痛みが生じ、筋肉痛、呼吸困難、筋肉の硬直やけいれん(テタニー)、発作、不整脈が起こります。

消化の障害、喉の渇き、多尿が発生し、重症化すると生命にかかわる場合があります。

【カルシウム不足となる原因】

インスタント食品や清涼飲料水などに含まれている食品添加物であるリンが、カルシウムの吸収を妨げているのではないかと考えられています。

インスタント食品を多く食べたり、清涼飲料水をよく飲む人はカルシウム不足に気をつける必要があります。

【カルシウムを摂取するには】

一日の当たりの必要な摂取量は、約600mg~700mgと言われています。

血液中の濃度が足らなくなると、カルシウムは骨から血液中に溶け込みます。

これは飲食などで必要量のカルシウムを摂っていないと、骨からカルシウムが代謝・移行することで弱くなり、骨粗しょう症を引き起こすことになります。

カルシウムを摂れる食品の中でも吸収率が最も高いのは乳製品です。

カルシウムが多く含まれる野菜は、小松菜、ほうれん草です。

また注意点として、カルシウムだけを単独で摂取してもあまり意味がなく、カルシウムの吸収を高めるマグネシウムと一緒に摂取する必要があります。

カルシウムとマグネシウムは2:1でバランスを取るのが最も理想的とされています。

※カルシウム不足だからといって、カルシウムばかり摂ってしまい、マグネシウムが不足すると『マグネシウム欠乏症』を引き起こしてしまう可能性があります※