血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年3月20日月曜日

結核-4.検査その2-Tスポット.TB検査-

【Tスポット.TB検査検査とは】

結核の感染感染の診断を補助するインターフェロン-γ遊離試験(Interferon-Gamma ReleaseAssays:IGRA)のひとつです。

【検査材料】

ヘパリンを加えた血液

【検査にかかる日数】

3日~7日

【検査方法】

1.血液6mL以上を採血します(18~25℃で保管)
2.全血から末梢単核細胞(PBMC)を分離し、規定の細胞数となるよう調製します。
3.抗IFN-γ抗体を固相したマイクロプレートのウェルにPBMC検体を加え、結核菌特異抗原(パネルA抗原、パネルB抗原)と16~20時間反応させます。
4.ウェルを洗浄したのち、標識抗体試薬を加えます。
5.ウェルを洗浄して非結合の抗体を除去後、基質試薬を加えます。
6.IFN-γを産生したエフェクターT細胞の痕跡が暗青色の「スポット」として発現します。
7.この数をもって感染の有無を判定します。

【判定】

0~4スポット:陰性

8スポット以上:陽性

5~7スポット:判定保留

【感度】

97.5%

【特異度】

99.1%

【診断上の注意】

1. 交差反応

結核菌特異抗原として ESAT-6 および CFP10 の2種を使用しているため,BCG ワクチンや結核菌以外のほとんどの抗酸菌とは交差性は起こしませんが、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・ズズルイ(M.szulgai)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae) 感染では陽性の結果を示すことがあります。

従ってこれらの感染が疑われる場合には,他の診断方法を考慮する必要があります。

2. 感染から陽性化するまでの期間

Tスポット.TB検査は感染後,陽性化まで 8~10週さらに長期間経過後に陽性化することもあるので、検査実施時期や検査結果の解釈に際して考慮に入れる必要があります。

3. 感染時期

検査が陽性となっても最近起こった感染か,感染後長期間経過したかは判定することは出来ません。

この検査を発病事例の補助診断のために適用する場合は、Tスポット.TB検査が陽性であっても過去の感染を反映した結果で胸部X線異常は他の原因によることもあるので注意が必要となります。

※活動性結核と潜在性結核感染の区別は出来ず、また感染時期の特定も困難であるという制限を持つ検査です※

2017年3月12日日曜日

結核-3.検査その1-喀痰塗抹検査-

【痰とは】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物でその成分は、喉や咽頭・気道・気管支・肺から剥がれ落ちた細胞も含まれています。

喉や咽頭・気道・気管支・肺の細胞に炎症、細菌やウイルス感染、悪性腫瘍があれば、痰の中にウイルスや細菌、悪性細胞などが混ざり痰に変化があらわれます。

そのことから痰を調べれば、呼吸器のさまざまな情報を得ることができるのです。

【結核菌の喀痰塗抹検査】

採取した喀痰の一部を直接スライドグラス上に塗抹・染色して標本を作製し、顕微鏡で結核菌の有無を調べる検査です

【検査方法】

結核または結核の仲間の菌である抗酸菌を染色し、直接顕微鏡で観察する検査です。

染色には、特殊な抗酸菌染色である「チールニールセン染色」を行い顕微鏡で検査を行います

最近では判定しやすい蛍光顕微鏡を用いて結核菌を調べる蛍光法が多く採用されています。

【判定】

ガフキー0号 全視野になし
ガフキー1号 全視野に1~4個
ガフキー2号 数視野に1個
ガフキー3号 毎視野に1個
ガフキー4号 毎視野に2~3個
ガフキー5号 毎視野に4~6個
ガフキー6号 毎視野に7~12個
ガフキー7号 毎視野にやや多数(13~25個)
ガフキー8号 毎視野に多数(26~50個)
ガフキー9号 毎視野に非常に多数(51~100個)
ガフキー10号 毎視野に無数(101個以上)

【結核菌検査指針2007による判定】

蛍光染色標本での検査では明瞭な桿菌のみを陽性とし、球菌状のものは陽性としない。

前処理前の検体量当りに換算した検出菌数を、ガフキー号数に代えて1+(ガフキー2号)、2+(ガフキー5号)、3+(ガフキー9号)で記載する。

ガフキー1号は±(要再検)と記述し、同一検体からの塗抹標本を作り直すか、別の検体について再検査する。



新旧の判定法


【喀痰検査の感度】

結核菌の検出感度は分離培養法や核酸増幅法と比べて低いですが、患者発見の重要な手段のひとつの検査法であることと、結核菌を排菌しているかどうかを調べることが出来ることからして、結核患者の管理や治療効果の判定の上で重要な検査法です。

【塗抹検査陽性の場合の判定】

喀痰で結核菌が認められた場合は、結核菌を排菌している事になります。

結核菌か非結核性抗酸菌か鑑別できない場合もあります。

偽陽性反応…抗酸性に染まる他の細菌の可能性あり。

【塗抹検査陰性の場合の判定】

真に結核菌に感染していない。

痰に含まれる結核菌が少なければ、結核菌に感染していたとしても顕微鏡検査で結核菌が見つからない場合もあります。

【塗抹検査の欠点】

結核菌検出には喀痰1mL中に結核菌が5,000~10,000個以上いないと検出できません。

また結核菌以外の抗酸菌全般が染色されるため、結核菌と非結核菌の区別が出来ない欠点があります。

2017年3月6日月曜日

結核-2.結核菌とは-

結核菌は1882年ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(1843~1910)によって発見されました。

結核菌は抗酸菌の一種で、チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まり細長い棒状を示します。

※チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まった結核菌※

切手は1982年フィリピン発行の「結核菌発見100年記念切手」で、コッホとともにチールネルセン染色で鮮紅色に染まった結核菌が描かれていますので紹介します。

【結核菌の大きさ】

長さ2~10ミクロン、幅0.3 ~0.6ミクロンの細長の桿菌で、芽胞・鞭毛・莢膜はつくらない。

【結核菌の分類】

マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属しグラム陽性桿菌である抗酸菌と呼ばれる細菌の一種です。

【結核菌の種類】

以下の四種類が存在しますが、人に病原性を持つのはヒト型結核菌です。

1.結核菌:ヒト型結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)
2.ウシ型結核菌 (M. bovis)
3.マイコバクテリウム・アフリカナム (M. africanum)
4.ネズミ型結核菌 (M. microti)

稀にウシ型結核菌とマイコバクテリウム・アフリカナムが人に感染することがありますが、ネズミ型結核菌は人には感染しません。

【消毒方法】

日光の中の紫外線には弱いので殺菌灯(紫外線灯)が感染防止に利用されます。

乾燥・酸やアルカリおよび消毒剤に対してはかなり強い抵抗性を示す。

グルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムは消毒効果はない。

有効な消毒剤としては、クレゾール石鹸・両性海面活性剤・アルコール・ヨードホルム、およびグルタラールなどがある。

熱に対しては60℃で20~30分、70℃では5分で死滅する。


2017年2月27日月曜日

結核-1.結核とは-

【結核とは】

結核は、結核菌が体の中に入ることによって起こる病気で、毎年約18,000人が新たに発症しているわが国の主要な感染症のひとつです。

日本の結核罹患率は2010年に人口10万人あたり18.2人で、10人以下となっている欧米先進国に比べまだまだ結核は多く、世界の中では依然"中まん延国"とされています。

※2015年は24,995件の結核発生届(患者、無症状病原体保有者、疑似症患者)※

【結核菌の感染場所】

結核菌は主として肺の内部で増殖しますが、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。

【感染経路】

肺結核患者の咳やくしゃみなどによって、空気中に結核菌が飛び散り、その結核菌を吸いこむことにより感染します。

人から人へと感染します。

【潜伏期間】

生まれてはじめて結核菌を吸い込んだ場合は、10~15%の人はその後1~2年のうちに発症します。

それ以外の人の場合は、体内に入った結核菌は冬眠状態となり、体内に留まることになり、発症しなかった場合でも、加齢などで身体の抵抗力が落ちると、潜んでいた結核菌が活動を始め、結核を発症します。

この場合発症するのは、結核菌が体内に留まったケースの10~15%程度と言われています。

【症状】

咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪のような症状を呈することが多いです。

【死亡率】

治療をしない場合は、50%程度の死亡率と言われています。

現在は、医療の進歩によりかなり低くなってきていますが、髄膜炎を発症してしまった場合は、現在でも30%程度の死亡率となっています。

【HIVと結核の関係】

HIV感染によって免疫が低下してくると、結核菌に感染していて体内に結核菌が潜んでいる場合や、新たに結核菌の感染を受けた場合は、結核菌は増殖して結核が発症することになります。

1984年、結核が日本の3分の1に減少していた米国で結核の逆転上昇が始まり、その後の増加分の30%はHIV感染が原因とされています。

HIV感染者の多いアフリカでは結核の大爆発という悲惨な状況が展開されています。

2017年2月7日火曜日

梅毒迅速検査の落とし穴

梅毒の流行が以前止まりません。

そのことから梅毒迅速検査の落とし穴について解説してみます。

梅毒トレポネーマに感染すると、体の細胞の一部が破壊されてカルジオリピン抗体が血液中に出てきます。

カルジオリピン抗体は梅毒トレポネーマに感染して約1ヶ月で現れ、STS(Serologic Test for Syphilis)検査で見つけることが可能です。

TPHAなどのTP(Treponema pallidum)抗原検査に比べて早い時期に陽性となるため、早期診断に適しています。

この検査はカルジオリピンというリン脂質に対する抗体を調べているため、梅毒以外の原因でカルジオリピンが存在していると偽陽性となってしまいます。

例えば、妊娠、膠原病、肝疾患、梅毒以外の感染症などでもカルジオリピン抗体が陽性になることがあります。

これを生物学的偽陽性反応(Biological False Positive:BFP)といいます。

一方TP検査は、梅毒トレポネーマに感染して体内に出来る感染抗体であるTP抗体を見つける検査法です。

TP抗体を見つけることから偽の陽性反応を起こすことは殆どありません。

このTP抗体は梅毒トレポネーマに感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

最近梅毒迅速抗体検査を利用して、即日に検査結果がわかると保健所等では言っていますが、梅毒迅速抗体検査はTP抗原を利用したイムノクロマト法ですから、梅毒の早期検査には適していません。

不安な行為をしてから5週間後に受けないと梅毒トレポネーマに感染しても陰性(偽陰性反応)となってしまいます。

梅毒トレポネーマの感染を早期に発見したい場合には、4週間ではSTS検査を受ける必要があります。

2017年1月26日木曜日

臨床検査のデータの考え方とその読み方-1.臨床検査の位置づけ-

現代医学は臨床検査を的確に実施し、その検査結果を臨床にいかに活かすことが求められています。

このことは取りも直さず現代の医学は臨床検査なしでは成り立たないということです。

リアルタイムで次々と登場する検査をうまくこなすことは至難の業となっています。

医師や臨床検査技師、看護師はこれらの検査法を理解して正しい使い方に対する臨床的なエビデンスを習得する必要があります。

これらを怠れば不要な検査を実施し患者に経済的負担を与えたりするのと、検査の解釈の間違いから誤診を引き起こしているのが現実に存在します。

種々ある臨床検査は、ほぼ全てと言っていいくらい感度100%・特異度100%の検査法は存在しません。

その為に臨床症状と検査の異常をうまく捉えて、その裏に存在する病態とその原因となっている疾患を確定するのが"検査診断"です。

この"検査診断"に知っておくべき知識や落とし穴が多く存在します。

検査の原理・検査をする目的・異常値を示す理由・検査を実施する的確な時期・間違ったデータを引き起こす要因等を十分に理解して検査を実施する必要があります。

【語句の解説】

エビデンス・・・根拠・証拠

感度・・・ある疾患に感染している患者を検査してその患者中の検査陽性者の割合

特異度・・・ある疾患に感染していない患者を検査してその患者中の検査陰性者の割合

検査診断・・・臨床検査の検査結果から病気を診断する

病態・・・病気のぐあい・病状

臨床症状・・・医療において患者が、実際に呈している症状

2017年1月15日日曜日

梅毒感染に気をつけて下さい!!!

2016年1年間の梅毒患者が4518人(速報値)を超えました。

この患者数は1974年以来42年ぶりのこととなります。

患者全体の約80%を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されていますが、女性は20代が女性全体の50%超を占め患者増加が際立っています。

最近の梅毒は男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、異性間での感染も広がり患者増加傾向が見られますが、この増加の原因は突き止められていません。

特に妊婦が梅毒トレポネーマ感染すると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し先天性梅毒となります。

これを防ぐには妊婦健診を必ず受けることです。

異性間性交による梅毒患者増加は、その裏にHIV感染者の増加が考えられます。

梅毒トレポネーマにに感染すれば、HIVの感染リスクが極めて高くなりますので、不安な行為をした場合には必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒はコンドームでは完全に予防できませんし、オーラルセックスでも感染することを認識しておく必要があります。

梅毒トレポネーマは、性行為で性器や肛門、オーラルセックスでも性器や咽頭に感染します。

梅毒検査のただしす受け方に関しては、当ブログに紹介しておりますから再度ご確認下さい。