コリンエステラーゼは、肝臓の細胞のみでつくられる酵素で、肝臓のはたらきが低下すると産生量が低下します。
コリンエステラーゼは、コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解することによって、たんぱくをつくりだしています。
コリンエステラーゼには、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2つの種類があります。
1.アセチルコリンエステラーゼ
真性コリンエステラーゼとも呼ばれ、赤血球や筋肉、神経組織の中に含まれています。
2.ブチリルコリンエステラーゼ
偽性コリンエステラーゼとも呼ばれ、血清や肝臓、膵臓、腸、肺などに含まれています。
健診などでは肝機能検査の一つとして、この偽性コリンエステラーゼを測定しています。
そのことから血液中のコリンエステラーゼ値をはかることで、たんぱくをつくり出す肝臓の機能をみることができます。
【検査目的】
コリンエステラーゼはアルブミンと同様に肝臓だけで産生されているので、コリンエステラーゼはほかの肝機能検査に比べていち早く異常値を示すので肝機能検査として広く利用されています。
コリンエステラーゼとその他の肝機能検査をあわせてみることによって、肝臓の障害されている程度が良くわかります。
要するに慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査です。
【基準値】
男性:234~493IU/L
女性:200~452IU/L
※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※
※一般に女性は男性より値が低めで、月経前や月経中でもコリンエステラーゼが減少します※
※妊娠時も低下します※
【異常値】
低値の場合・・・・劇症肝炎、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝硬変、転移性肝がん
高値の場合・・・・脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機亢進症、高血圧症、糖尿病
極定値の場合・・・有機リン中毒、遺伝性ChE欠損症
【コリンエステラーゼは低値のときが重要】
肝細胞での合成能力下低下していることを反映しています。
肝臓疾患であれば、GOT・GPT、γ-GTP、A/G比、ICG試験などの血液検査や、尿ウロビリノーゲン、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹腔鏡検査、肝生検などを行なう必要があります。
肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復することはまずありえません。
【コリンエステラーゼのみが低値になる】
農薬や殺虫剤などに含まれる有機リンはコリンエステラーゼを失活させるため、肝疾患以外で著しい低下を認めた場合、有機リン中毒が疑われます。
他に異常がない場合にコリンエステラーゼのみ低値または高値となることがありますが、低値の場合はコリンエステラーゼ欠損によるコリンエステラーゼ遺伝性欠損症が疑われます。
高値はコリンエステラーゼ変異による本態性家族性高コリンエステラーゼ血症が疑われます。
いずれも症状がなく普段の生活には何ら支障はありませんが、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があります。
逆に本態性家族性高コリンエステラーゼ血症では麻酔抵抗性(麻酔が効きにくい)を示す可能性があるといわれています。
【おまけ】
コリンエステラーゼの値を下げる薬剤も存在します。
下記の薬剤を服用している患者は、コリンエステラーゼの値が低くても肝臓の状態とは無関係の場合もあります。
抗うつ剤・・・・ルジオミール錠、テトラミド錠など
緑内障の点眼薬・・・・眼圧を下げるための点眼薬(コリンエステラーゼを抑える成分が含まれている為)
アルツハイマー型認知症・・・・神経伝達を活性化するために、コリンエステラーゼ阻害剤を服用する場合があります。