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2023年5月21日日曜日

梅毒アラカルト-1.梅毒の由来-

 現在世界的に梅毒が流行していて、特に我が国においてはここ数年来大流行していて、未だに収まる気配はありません。


そこで今回から数回に分けて梅毒について、分かりやすく尚且つ興味ある話をさせていただきますのでお付き合い下さい。


梅毒はクリストファー・コロンブス(1451~1506)が新大陸から持ち帰ったとされています。


京都の医師武田秀慶(?~1528)が1512年(永正9年)に著した『月海雑録』に外国から来た皮膚病という意味で「唐瘡(とうそう)」と書かれたのが最初とされています。


海外から新しく伝来したため、「瘡(かさ)」「楊梅瘡(ようばいそう)」、「黴瘡(ばいそう)」「ひえ」、「しつ」などと


結城秀康(1574~1607)・黒田官兵衛(1546~1604)・加藤清正(1562~1611)・間宮林蔵(1775~1844)なども梅毒とされています。


特に結城秀康は、梅毒で鼻がそげ、木製の鼻をつけていたそうです。


江戸時代の名医杉田玄白(1733~1817)も、1000人の患者を診るとその7~8割が梅毒患者と記しています。


昔の梅毒は鼻部の軟骨炎のために鞍鼻(あんび)や鼻の欠損になることがあり、夜鷹などには「鼻欠け」が多かったので、「鷹の名にお花お千代はきついこと」などと川柳に詠われています


“お花お千代”は“お鼻落ちよ”にかかっている。


江戸時代の梅毒の治療薬としては、山帰来(サンキライ)[別名:土茯苓(ドブクリョウ)]が広く用いられていましたが当然のことながら効き目はありませんでした。


江戸時代の医書に『梅毒の重症患者は山に捨てられる風習があったが、土茯苓を服用すると治癒し、山から帰って来たので"山帰来"とも名付ける』と記載されています。


当時山帰来は日本には自生しておらず、中国や朝鮮から輸入していました。


山帰来は貴重なものでしたから、山帰来に似たケナシサルトリイバラと呼ばれるユリ科の植物を代用していました。







2023年5月14日日曜日

サル痘についての再認識-6.サル痘の現状と今後-

 2023年5月11日世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「サル痘(エムポックス)」について、感染者の減少が続いているとして、2022年に宣言した「緊急事態」の終了を発表しました。


テドロス事務局長は記者会見で"エムポックスは引き続き公衆衛生上の大きな課題で、忍耐強い対策が必要だ」"と述べ、警戒を怠らないよう訴えています。


アフリカの一部地域で発生していたサル痘は、2022年5月ごろから欧米などに感染が拡大し、日本では2022年7月に感染者が初確認されています。


世界保健機関によると、2022年8月には1週間当たりの世界の新規感染者が7500人を超えましたが、ここ数カ月は100人前後で推移しています。


日本においても世界保健機関の「緊急事態」の終了を受けて2023年5月12日外務省は、全世界を対象に出していた渡航や滞在に十分な注意を促す「感染症危険情報」(レベル1)を同日付で全て解除すると発表しました。


※レベル1の危険度は、4段階のうち最も低いレベル※


世界的にみると感染者数は減っていますが、日本では2023年に入ってから患者の報告が増えています。


2023年5月2日時点で129人の感染が確認されています。


国立感染症研究所は、これまで報告された感染者のうち、100人は発症前21日間に性的接触があったことが確認されていることから「国内でも男性同士の性的接触による感染伝播が起こっている可能性が示唆される」としています。


日本ではことし2023年以降に感染者が増え3月にピークを迎えた後、少し感染者は減り、いまは横ばいの状況が続いています。


海外と比べてなぜ、遅れて感染が広がったのかは明確になっていませんが、人と人との接触が何らかの理由で増えたのではないかと推察されますので、日本では今後も感染者が増えていく可能性もあり、海外の専門家やメディアなども日本の感染状況を注視しています。


各人がサル痘に対する正しい知識を持ち、正しく感染予防を行う必要が当分はあるようです。

2023年5月7日日曜日

サル痘についての再認識-5.サル痘の感染予防対策-

サル痘とは、病原菌である痘瘡ウイルスによって引き起こされる感染症です。


ここでは、サル痘の感染対策について詳しく解説します。


1. ワクチン接種


サル痘の感染を防ぐためには、ワクチン接種が最も効果的な対策です。


現在、サル痘のワクチンは、病原体を弱体化させたものや蛋白質の一部を人工的に合成したものが用いられています。


ワクチン接種は、感染予防だけでなく、発病した場合の症状緩和にも効果があります。


サル痘のワクチン接種には、一般的に2回の接種が必要で、初回接種後、通常は2週間から4週間程度の期間をおいて、2回目の接種が行われます。


初回接種で免疫が十分に発現していないため、2回目の接種によって免疫力を高めることが目的となりますが、接種間隔はワクチンの種類や対象となる人の免疫状態によって異なる場合がありますので、医師の指示に従うことが重要です。


また、サル痘ワクチンは、一般的には感染予防だけでなく、発病した場合の症状緩和にも効果がありますが、接種後に即座に効果が現れるわけではありません。


当然のことですがワクチン接種後、免疫力が高まるまでには時間がかかります。


一般的には、2回目の接種後1週間から2週間程度を経過すると、免疫力が十分に高まり、感染に対する防御力が向上するとされています。


なお、サル痘ワクチンの接種については、各国の保健衛生局や医療機関の指示に従うことが重要です。


2022年8月2日の薬事承認内容の改定にて、天然痘の予防に加えて、サル痘の予防に使用することなどが承認されました。


【参考資料】


乾燥細胞培養痘そうワクチンの効能追加承認について


2. 衛生管理


感染症の予防には、衛生管理が欠かせません。


特に、サル痘は接触感染が主な感染経路となるため、手洗いやアルコール消毒などの適切な衛生管理が必要です。


また、感染が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、感染源を特定して適切な治療を行うことが大切です。


3. 感染源の管理


サル痘の感染源となる動物(主にサル)との接触を避けることも、感染対策の一つです。


特に、野生動物との接触は感染症リスクが高いため、野生動物に近づかないことが必要です。


また、動物園や展示施設などでの動物との接触も、感染症リスクを考慮して行われることが多くあります。


4. 感染者の隔離


感染者の隔離も、感染対策の一つで、感染者がいる場合は、その人を隔離して感染が広がらないようにすることが必要です。


更に感染者と接触した人には、適切な検査や処置を行うことが必要です。


以上のように、サル痘の感染対策には、ワクチン接種や衛生管理、感染源の管理、感染者の隔離などが必要です。感染リスクが高い場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。


2023年4月30日日曜日

サル痘についての再認識-4.流行国と非流行国でのサル痘患者の実態-

 従来から流行している地域と今回新たに流行が始まった非流行国でのサル痘患者の症状と感染経路は異なっています。


1.非流行国のサル痘患者は、発熱や悪寒の前駆症状がなく突然皮疹が現れ、皮疹が現れたあとから発熱・悪寒・リンパ腺の腫れなどが現れる場合と、皮疹が1~数カ所に出るのみで他の症状が現れない患者も存在します。


2.流行地でのサル痘の皮疹は、顔め手のひら・足の裏が好発部位ですが、非流行地の患者では性器・肛門周囲に皮疹が現れ、顔や手足にはあまり現れません。

更に流行地でのサル痘は、直腸炎を伴う直腸痛を訴える患者が多くいます。


3.この様に昔からアフリカで流行していたサル痘と症状が異なるのは、患者の多くがゲイや両性愛者で男性と性交交渉のある男性であり、感染経路がアフリカでの感染経路と異なる事によることによると考えられています。


4.また、非流行国の初期症状によっては梅毒やその他の性感染症と誤診される可能性が高いことも指摘されています。


上記のごとく従来のサル痘と新たに流行が始まったサル痘とは異なった所見が見られます。

2023年4月23日日曜日

サル痘についての再認識-3.サル痘は性感染症に分類されるのか-

 世界16カ国528例の報告では、症例のうち98%が男性とセックスをする男性(MSM)であり、年齢の中央値は38歳でした。


この528例のうち95%が性交渉に関連した接触による感染が原因と考えられており、これらの感染者は性交渉のパートナーが多いという特徴があります。


サル痘は性感染症には分類されていませんが、米国で報告された症例のほとんどに、何らかの性行為がかかわっていたとされています。


WHOは男性同士の性的接触による感染が拡大していることを受け、パートナーの数を減らして新しいパートナーとの性的関係を再考するよう呼びかけています。


WHOの報告によると、感染者のほぼ全員が男性で、かつ男性同士の性的接触が原因となっていたとされています。


しかしながら女性の患者も報告されています。


WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。


報道を見ると確かにMSMの人が多いようですが、それは発見当初のエイズがそうであったように、たまたま目立っているだけで、男女間のセックスでも感染すると考えるべきでしょう。


【参考資料】

『16カ国におけるヒトのサル痘ウイルス感染 — 2022年4月~6月』

2023年4月16日日曜日

サル痘についての再認識-2.サル痘ウイルスの種類-

サル痘ウイルスは、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のウイルスで、遺伝子的に異なる2種類が存在していてましたが最近では更にもう1種類存在していることが判明し3種類に分類することが提唱されています。


【1.コンゴ盆地型】


ザイールで流行しているもので、致死率は最大で15%前後です。


クレードⅠ(clade Ⅰ)と分類されています。


【2.西アフリカ型】


小児・妊婦・免疫不全者が感染すると重症化するリスクはありますが、感染者の殆どが軽症で回復して致死率は1%以下です。


クレードⅡa(clade Ⅱa)と分類されています。


【3.西アフリカ型と遺伝子的に少し異なるウイルス】


2017年からナイジェリアで流行していて致死率は、0~3.3%です。


クレードⅡb(clade Ⅱb)と分類されています。


※現在非流行国でヒトからヒトへの感染によって流行しているサル痘は、ナイジェリアで流行しているclade Ⅱbのサル痘ウイルスで、比較的軽症例が多いですが免疫不全者は重症化します※


※サル痘ウイルスは、アフリカのげっ歯類が宿主と考えられね人獣共通感染症であることからして、多くの動物に顕性感染することから根絶は困難と考えられています※


【げっ歯類とは】


物をかじるのに適した歯と顎を持ち、上顎・下顎の両方に伸び続ける2つの門歯と、犬歯を持たないことを特徴とする哺乳類で、ネズミ・ハムスター・ヤマアラシ・シマリス・モルモットなどですが、ウサギはげっ歯類ではありません※


2023年4月9日日曜日

サル痘についての再認識-1.日本国内でのサル痘増加!!-

サル痘についての正しい知識を得ていただくために再度サル痘について解説させていただきますのでお付き合いください。


2023年に入ってサル痘(エムポックス)の日本国内の感染者が急増し、2022年夏以降の累計で100人に迫っています。


サル痘は2022年、欧米を中心に拡大し世界保健機関によると、2023年4月4日までに86000人以上が感染、112人が死亡しています。


2022年夏のピーク時には1週間当たり7000人超の感染が確認されていましたが、最近では100人前後で推移しています。


現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。


日本国内では2022年7月25日に初めて感染者を確認ご、昨年は計8人でしたが、2023年1月以降、海外渡航歴がない人の感染が増加し、4月4日時点で昨年からの累計は95人と増加しています。


感染経路は、飛沫感染と接触感染です。


サル痘患者の発疹や水疱、かさぶたに触れる、それらの病変部と接触した物や衣類、寝具に触れる、感染者の唾液や体液に触れる等の行為で感染する可能性があります。 


サル痘の潜伏期間は6~13日(最大5~21日)とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が0~5日続き、発熱1~3日後に発疹が出現、発症から2~4週間で治癒するとされています。


発熱、発疹等、体調に異常がある場合には身近な医療機関に相談するとともに、手指消毒等の基本的な感染対策を行ってください。