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2016年12月25日日曜日

ヘルペスウイルスについて-7.HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)ー

【HHV-4とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種です。

HHV-4は、伝染性単核球症(伝染性単核症)を引き起こすウイルスです。

日本では2~3歳までに70%が感染し、 20代では90%以上がこのウイルスの抗体を持つという調査結果があります。

HHV-4の感染者の約15~20%は、無症状の状態でウイルスを持っており、唾液中に排泄している事からして、感染予防を行うことはまず不可能です。

言い換えれば、ほとんどの成人はすでに、小児期に感染して、抗体を持っていることからして、 特に感染予防法は無いのが実際です。

一度感染して症状が治まれば、再感染はしませんが、ヘルペスと同じように免疫力が低下した場合、発病することもあります。

【HHV-4の感染源と感染経路】

思春期以降は唾液を介して感染することから、多くはディープキスによって感染することから"キス病"とも呼ばれています。

ディープキスや飲み物の回し飲みなどから、唾液を介して口から感染します。

小児期に感染していない人が、HHV-4を含む唾液が口の中にはいると、ほぼ100%感染し、50%の人が発病します。

【HHV-4の感染の症状】

一般に、「発熱」、「咽頭痛」、「リンパ節腫脹」の三徴を特徴する症状が現れます。

1~2歳程度の幼少児の初感染では、発熱と口蓋扁桃の膿栓(白苔)を伴った腫脹・発赤が見られる程度の症状を呈さないことからして、この年齢の幼少児の初感染では伝染性単核球症と診断されないことが多く咽頭炎または扁桃炎と診断されている症例が多いのが実情です。

青年期あるいはそれ以上の年齢で初感染した場合は、発熱・全身倦怠感・口蓋扁桃の発赤腫脹・咽頭痛・全身特に頚部のリンパ節腫脹・肝脾腫を引き起こします。

【HHV-4の治療】

幸いな事にほとんど自然に治ってしまいます。

思春期以降に感染した場合、約50%が発病しますが、約4~6週間で症状は自然になくなると言われています。

6ヶ月以上症状が続く場合は重症化している可能性があり、注意が必要ですので受診されることです。

【検査を受ける時期】

唾液を介するオーラルセックスの後、4~6週後に症状が出ますので、その際に受診して検査を受けることです。

しかし、感染しても症状が出ない人もありますから、検査を受ける時期を判断するのは難しいです。

【HHV-4の検査】

血液検査では、ほとんどの症例でAST・ALT値の上昇が見られることから、肝炎と診断を誤ることがあります。

白血球総数は、正常かやや増加、好中球数は正常かやや減少し、リンパ球の著しい増加、異型リンパ球の出現(5%以上になることが多い)が特徴的です。

抗EBV EA-IgG抗体または、抗EBV VCA-IgM、抗EBV VCA-IgG抗体、抗EBNA-IgG抗体の抗体価を測定する。

抗EBNA抗体が初感染後、数ヶ月を経ないと出現しないのに対し、抗EA、VCM抗体は急性期にも出現します。

【感染パターンの分類】

1.初感染パターン

抗EBNA抗体陰性、抗VCA-IgGまたは/かつIgM抗体陽性となりますが、抗EA抗体は偽陰性が多いが、EA陽性ならば急性感染の可能性が高い。

2.既感染パターン

抗EBNA抗体陽性、他の抗体は(通常)陰性となれば、このような場合は症状の原因としてEBV感染は考えにくい。

EBウイルスについては、抗CMV-IgGおよびIgMを調べたり(IgM陽性例は急性感染の可能性が高い)、血液中のEBウイルスDNAを核酸増幅法(PCR)で調べることもある。

【治療】

伝染性単核球症に特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。

抗生物質は、伝染性単核球症それ自体には効き目がありません。

しかし、伝染性単核球症になると、比較的高率に細菌による混合感染を起こすことがあるので、血液検査所見から細菌による混合感染が疑われた場合には、抗生物質の投与を行います。

発熱が長期に持続する、全身状態が著しく不良である、血球減少が見られ血球貪食症候群の合併が懸念される、などの重症で例では、副腎皮質ステロイド投与やガンマグロブリン大量投与が行われることもあります。

【HHV-4とHIVの関係】

HHV-4感染は、性行為感染症でありませんので、HHV-4に感染してもHIVに感染しやすくなることはありません。

2016年12月19日月曜日

ヘルペスウイルスについて-6.HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス)ー

【HHV-5とは】

ベータヘルペスウイルス亜科に属し、ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV)と呼ばれています。

※サイトメガロウイルス(CMV)とも呼ばれます※

※本稿ではサイトメガロウイルス(CMV)と呼ばずにHHV-5として解説していきます※

宿主の細胞の核内に光学顕微鏡下で"フクロウの目(owl eye)"様の特徴的な封入体を形成する特徴があります。す。

※封入体とは、ウイルスに感染した細胞の核内にみられる顆粒状の異常な構造物のことをいいます※

このウイルスは種特異性が強く、ヒト以外の動物には感染しません。

日本人の場合、乳幼児期の感染率が高く大多数の人が感染し抗体を持っていることから再感染することはありませんが、ヘルペスと同様に再発することはあります。

健康な人は感染しても症状が出にくいですが、乳幼児期に感染していない人で、性的に活発な若い成人層に感染が多いとされています。


【HHV-5の感染源と感染経路】

HHV-5は、感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出され、これらの体液との密接な接触により感染します。

したがって性行為・オーラルセックスによって感染する。

以上のことから性行為感染症のひとつに分類されています

感染方法としては、

1.先天性感染

妊娠中に母親が初めて感染して、それが胎盤を通して胎児に感染した場合に、出産時に異常がある場合が1割程度あります。

2.後天性感染

感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出されるこれらの体液との密接な接触により感染します。

ただし、乳幼児期などに一度感染していれば再度感染することはありません。

一度感染すると再度感染しませんが、体内にHHV-5が潜んでいるため免疫力が低下すると症状が出ることがあります。

【HHV-5の感染の症状】

男女ともに同じような症状が出ます。

主な症状としては、

倦怠感(だるさ)
発熱
のどの痛み
首のリンパ節のはれ
湿疹が出る
肝臓や脾臓の拡大、肝機能異常など

【HHV-5の治療】

治療薬としてはガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬、抗CMV高力価免疫グロブリン、ヒト型抗CMV単クローン抗体などあります。

【検査を受ける時期】 

ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に症状が出ますが、感染しても全く症状のでない人もあります。

検査を受ける時期としては、ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に受ける必要があります。

また、何らかの自覚症状を感じたら医療機関で早期診断を受ける必要もあります。

【HHV-5の検査】

1.mRNAを検出するNASBA (nucleic acid sequence based amplification )法
2.ウイルス抗原を検出するantigenemia 法
3.DNA 検出するPCR 法
4.直接ウイルスを分離する方法
5.抗体検査

【抗体検査の判定方法】

○IgM陰性、IgG陰性の場合・・・過去・現在において感染なし。

○IgM陰性、IgG陽性の場合・・・過去にCMVに感染経験があり、既にCMVに対する免疫を保持しており、CMVは体内に潜んだ状態になっていると考えられる。

○IgM陽性、IgG陰性の場合・・・最近CMVに初めて感染したこと考えられます。。

○IgM陽性、IgG陽性の場合・・・比較的最近CMVに感染したと考えられますが、それが初感染か再感染または再活性化かの区別はできません。

【HHV-5と妊娠】

妊娠中にHHV-5に初感染すると、胎児に先天性の障害が発生する可能性があります。

最近では、妊娠可能な年齢の女性における抗体保有率が90%~70%まで下がっていることが明らかになっていることから、妊婦の間でHHV-5の初感染者が増えていまする。

したがって妊娠前にはHHV-5に感染した既往があるかを知っておく必要があります。

【HHV-5とHIVの関係】

AIDSで死亡した人の約70%以上にHHV-5感染が見られています。

HHV-5に感染しているとHIVに感染しやすくなるのではなく、HIVに感染して体の免疫機能が低下することにより、 HHV-5に感染しやすくなると言うことです。

2016年12月12日月曜日

ヘルペスウイルスについて-5.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その2.帯状疱疹について-ー

【帯状疱疹の感染源】

水痘が治癒した後に脊髄知覚神経節に潜伏感染したHHV-3が回帰発症して起こります。

また加齢、免疫抑制剤の使用等、細胞性免疫の低下によって潜伏しているHHV-3が再活性化し発症します。

※体内に侵入して感染したHHV-3は、感染者が免疫不全や体調不良に陥ると体内に潜むHHV-3は、再び目覚め(再活性化する)帯状疱疹を引き起こします、これを回帰発症と言います※

【帯状疱疹の症状】

ほとんどの場合、体の左側か右側のどちらか片方の神経に沿って帯状にあらわれ、体の両側にまたがることはほとんどありません。

虫に刺された様な、あるいは虫に噛まれたような痛みと赤いひとつの発疹が出来るのが最初です。

その後チクチクとした痛みが増し、痛みを感じた場所にブツブツとした赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなって帯状に広がっていきます。

この症状は、特に胸から背中、腹部などによくみられ、顔や手、足にも現れます。

この症状が現れるのは体の左右どちらか片側だけ、一度に2ヵ所以上の場所に現れることはほとんどありません。

約1週間水疱は痂皮形成し、2~3週間で色素沈着を残して治癒します。

【帯状疱疹の治療】

対症療法により2~3週間で治癒します。

薬剤としてはアシクロビル、ビダラビン(Ara-A)が有効です。。

※帯状疱疹治癒後の後遺症として,三叉神経第1枝や肋間神経に生ずる持続性で刺すように痛みが続くヘルペス後神経痛(「帯状疱疹後神経痛」)が起こることが多いです※

治りにくく1年以上も痛みが続くこともあります。

【帯状疱疹は他人に感染するのか】

帯状疱疹が他人に感染することはあまりありません。

しかし、水疱の中にはHHV-3が存在し、水痘にかかったことがない人には感染する可能性もあります。

この場合の感染は、帯状疱疹の症状ではなく、水痘と同じ症状が出ます。

帯状疱疹の水疱が治るまでは、水痘に感染したことのない赤ちゃんや子供、妊婦には接触しないようにする必要があります。

【水痘・帯状ヘルペス検査】

水痘・帯状ヘルペス抗体検査にはCF法、EIA法によるIgM抗体とIgG抗体検査があります。

初感染である水痘を疑う場合は、IgM抗体またはCF法ペア測定を行います。

再活動の帯状疱疹ではIgG抗体ペア測定を行います。

リアルタイムPCR検査もあります。

【ワクチンについて】

帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)は、日本では使用されていません。

アメリカで使用されている帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)と、水ぼうそうに使われるワクチン(Varivax)では濃度が全く異なります。

Zostavaxの濃度はVarivaxの10倍以上含まれています。

そのことから帯状疱疹ワクチン(Zostavax)を、水痘予防のために子供に接種することはありません。

水痘ワクチン(Varivax)を帯状疱疹の予防のために使用することもありません。

日本においては、帯状疱疹専用のワクチンは存在しますが、未だ広く認識されていないことから、費用は自費負担(2016年4月の時点)となり、およそ6,000~9,000円のところが多いようです。

※2016年3月から、現在まで水痘の予防の目的で使われていた乾燥弱毒生水痘ワクチン(「ビケン」)が、50歳以上の人に限って、帯状疱疹の予防にも使えるようになっていますので、帯状疱疹の予防について心配な方は、医師に相談されることです※

次回はHHV-6(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)について解説いたします。

2016年12月5日月曜日

ヘルペスウイルスについて-4.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その1.水痘について-ー

水痘・帯状疱疹ウイルスは、α-ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスで、HHV-3と呼ばれますが別称としてVZV(Varicella Zoster virus)とも呼ばれています。

ヒトに対して水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。

このウイルスは、初感染としては水痘を発症します。

水痘が治癒した後は、脊髄後根神経節に潜伏し続け何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。

顔面神経の膝神経節に潜伏していたものが再発した場合は、皮膚症状・顔面神経麻痺・難聴・めまいを引き起こします。

【水痘の感染】

患者の鼻腔粘液、水疱からでる浸出液との接触で感染します。

典型的な症状を引き起こす1~2日前から空気感染(飛沫感染)します。

潜伏期は11~21日です。

【水痘の症状】

顔から発疹が出始め、有髪頭部から体全体に出現し、やがて手足全体にも出現します。

発熱は発疹の出現する最初の3~4日のみ認めることが多いです。

発疹の出始めは、小さい紅疹で数時間で丘疹となりやがて水泡に変化していきます。

痂皮の脱落まで1~2週間かかります。

※すべての発疹が痂皮となれば、他人に感染させることはありません※

【痂皮とは】

皮膚の表面出来た小水疱、水疱あるいは膿疱が炎症を起こし破れ、壊死塊またはびらん面の分泌物が凝固して一時的に表面を覆ったものを言います。  

【水痘の終生免疫】   

HHV-3に感染して水痘となり、完治すれば終生免疫を獲得し、二度と水痘になることはありません。

しかし、回帰発症と言われるものがあります。

それが帯状疱疹です。

【水痘の合併症】

髄膜炎、脳炎、神経炎、肺炎。催奇形性あり。

※免疫抑制剤を使用中(免疫抑制状態)の時にHHV-3に感染すると、無数の水疱が出来出血することからは重症化しやすく(出血性発疹)死亡率が高くなります。

【検査】

体液性免疫の有無を見る血液検査と、細胞性免疫を調べる方法としての皮内テストがあります。

血液検査としては、水痘ウイルスの抗体を調べる検査としてELA法が一番多く用いられています。

水痘の抗体が血清中に残っていなくても、細胞の中に抗体がある場合もあることから、皮内テストも合わせて行います。

皮内テストは、水痘・帯状疱疹ウイルスの一部から作られた水痘抗原を皮内接種して反応を見るテストで、結核の抗体を調べるツベルクリン反応と同じ原理です。

※水痘の判断は視診が主となります※

現れた症状を見て行う場合がほとんどで、水痘による水疱は特徴的ですから発症後2~3日で診断はつきます。

子供の水痘の診断のために、上記のような検査を実施することはまずありません。

【治療】

ヘルペスウイルスなので、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルが有効です。

水痘、帯状疱疹とも同容量を使用します。

【予防】

水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチンを接種します。

日本では長く任意接種ででしたが2014年より定期接種となっていることから、1歳になってから間隔をあけて2度の接種を行う。

【大人の水痘予防について】

水痘の感染発症が心配なときは、抗体検査を受けるのではなく予防接種を受けることです。

仮に既に水痘に感染していて水痘に対する抗体があったとしても、予防接種を受けても健康上の問題はありません。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)の帯状疱疹について解説いたします。

2016年11月28日月曜日

ヘルペスウイルスについて-3.HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型)-

【HHV-2とは】

主に性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎、ヘルペス脊髄炎の原因となりうるウイルスで仙髄の脊髄神経節に潜伏感染する。

【感染者の実態】

5~10%の人が感染していると言われており再発を繰り返すのが特徴です。

推定年間72,000人が感染していると言われています。

そのうち、男女とも20代以降の性的活動が活発になる年代に感染者が多く、どの年代でも男性より女性の患者数が多く、女性がかかりやすい病気です。

HHV-2に感染している人のうち、60%は何らかの症状があるのに本人は気づいていないと言われています。

自覚症状がない場合も多く、患者本人が病気に気がつかないまま、性行為を通して感染が広がっているのが現状です。

【HHV-2の感染力】

HHV-2は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は仙髄の脊髄神経節に潜伏感染し、一生そこに棲みつき生体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

【感染場所と症状】

接触や飛沫による感染が一般的です。

男性の場合は亀頭や陰茎体部が多く、太ももやおしり、肛門周囲、直腸粘膜に症状が出ることもあります。

最初は患部の表面にヒリヒリ感やむずかゆさなどを感じ、2~10日ぐらいでかゆみを伴った赤いブツブツや水ぶくれが出来、やがてそれが破れて潰瘍ができると強い痛みがあり、発熱を伴う場合もあります。

更に太もものリンパ節の腫れや痛みもみられる場合もあります。

女性の場合は、外陰、腟の入口とおしりが多く、子宮頸管や膀胱まで感染が広がることもあります。

患部に水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みで排尿が困難になったり、発熱を伴ったりすることもあり、同時に太もものリンパ節の腫れや痛みがみられることもあります。

男女ともに、再発の場合は小さな水ぶくれや潰瘍ができるだけの軽い症状ですむのが一般的です。

再発の前には神経痛のような症状が出たり、局所がムズムズする違和感を感じたりすることがあります。

【体内に侵入したHHV-2は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-2を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-2の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法とHHV-2の抗ウイルス薬】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

バルトレックス、ゾビラックス、アラセナAなどがあります。

5~10日間、処方された薬を内服または軟膏塗布します。

何れも医師の処方を必要とします。

性器ヘルペスの薬と成分が似ている口唇ヘルペスの市販薬や、個人輸入代行業者を介した薬をインターネット等で入手した薬を使用すると危険な場合があります。

医師の診断のもとに処方された薬を使用しないと、かえってウイルスが広がったり、症状が悪化したりする恐れがあるので素人療法は厳禁です。

【再発に注意】

薬の使用により患部の症状が治まれば治療は終了ですが、性器ヘルペスにかかった場合、1年以内に80%以上の人が再発すると言われているので、その後も体調管理などの注意が必要です。

再発を頻繁に繰り返す場合は、「性器ヘルペス再発抑制療法」という治療法もあります。

【HHV-2の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうことがあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-2が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-2に感染した人は体内にHHV-2を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-2が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

身の回りのものは共用しないことです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-2の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査しています。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過しているものや再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法がありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

結果は5日程で分かります。

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-2を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-2が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在その区別は出来ません※

【注意】

HIVや一部の性行為感染症はコンドームで予防可能ですが、現実ヘルペスに限って言えばそれほど高い効果は得られません。

なぜなら、コンドームは男性の性器を包むだけで、性器の周囲は無防備ですしコンドームに包まれている部分以外の箇所に病変があれば、感染してしまいます。

【HHV-2とHIVの関係】

性器ヘルペスに感染すると感染した性器に炎症など起こし、そこからHIVが侵入しやすくなります。

粘膜局所に炎症があると、正常な場合の2倍から5倍感染しやすくなり、まして潰瘍があると50倍から数百倍感染しやすくなります。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)について解説いたします。

2016年11月20日日曜日

ヘルペスウイルスについて-2.HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型)-

【HHV-1とは】

口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、カポジ水痘様発疹症、角膜ヘルペスなどを引き起すウイルスです。

【感染者の実態】

日本人の場合、HHV-1には50~70%、2型には5~10%の人が感染していると言われており、どちらも再発を繰り返すのが特徴です。

【HHV-1の感染力】

接触や飛沫による感染が一般的です。

HHV-1は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は体内の神経節(※)に潜り込み、一生そこに棲みつき体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

※神経節は、神経細胞が集まっている場所※

【症状】

唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさから始まり、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができます。

そして水ぶくれは破れてかさぶたとなり、2週間程度で治ります。

初感染(初めて感染した場合)の場合は、高熱などの重い全身症状を伴うことがあります。

もし感染してしまった場合にも、症状を悪化させずに早期に治療すること、人に感染させないこと、そして再発を予防していくことが重要となります。

【体内に侵入したHHV-1は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-1を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-1の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

全身症状が現れるなどの重症例や免疫不全の人に対する治療では、入院した上で抗ウイルス薬の点滴静脈注射を行います。

【HHV-1の抗ウイルス薬】

アシクロビル(経口薬・軟膏・点滴)、塩酸バラシクロビル(経口薬)、ビダラビン(軟膏)があります。

【HHV-1の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうこともあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-1が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-1に感染した人は体内にHHV-1を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-1が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-1の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査します。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過している場合や再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、HHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法があります。

結果は、即日から5日程で分かります。

※但、以上の抗体検査ではHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません※

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-1を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-1が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在しその区別は出来ません※

次回はHHV-2(性器ヘルペス)について解説いたします。

2016年11月13日日曜日

ヘルペスウイルスについて-1.その種類-

人に感染するヘルペス科ウイルスは以下の8種類が知られています。

1.アルファヘルペスウイルス亜科

HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型=herpes simplex virus-1)

HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型=herpes simplex virus-2)

HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス=VZV:herpes simplex virus-2)


2.ベータヘルペスウイルス亜科

HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)

HHV-6(突発性発疹を引き起こす)・・・HHV-6AとHHV-6Bに分類される

HHV-7(突発性発疹を引き起こす)


3.ガンマヘルペスウイルス亜科

HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)

HHV-8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス=Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus:KSHV)

次回からこれらヘルペス科ウイルスについて順次解説していきます。

2016年10月20日木曜日

梅毒検査の適切な受け方

梅毒の流行が止まりません。

このことから、梅毒検査の適切な受け方を急遽ご紹介します。

多くの方が既に理解されており、何を今更と言われそうですが、再度ご一読下さい。

そして、不安な行為をしてしまった場合には必ず梅毒検査を正しく受けることをお勧めします。

梅毒患者の増加は、HIV感染者の増加に結びつくことを、夢々お忘れなく!!

梅毒の検査は、血液中に脂質抗体または、TP抗体があるかどうかで判定します。

※脂質抗体とは、梅毒トレポネーマが感染し、その結果体の組織が壊れて出てくるカルジオリピンに対する抗体※

※TP抗体とは、生体が創りだす梅毒トレポネーマの感染抗体※

1.脂質検査

STS検査と呼ばれ、カルジオリピンを抗原として、脂質抗体を見つけ出します。

脂質抗体は、感染後1ケ月で陽性となります。

但偽陽性反応をよく起こすので、TP抗体検査で偽陽性か真の陽性かを調べます。

2.TP検査

梅毒トレポネーマを抗原として検査をします。

TPHAが最もポピュラーです。

その他多くのTP検査が開発されていますが、TP抗体は感染して5週以降にできますから、早い時期に受ければ偽陰性反応を起こします。

TP検査で早く信頼できる結果を得るには、IgM-FTA-absを受けることです。

この検査、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

検査方法は、脂質抗原法とTP抗原法の2種類を組み合わせて総合的に判断するという。

TP検査は一度感染して陽性となるとと、一生陰性化することはないため、治療の具合を調べたり、完治した後に、再度感染した可能性がある場合は、脂質抗原法で検査する必要があります。

梅毒検査も受け方により間違った結果となってしまいますので注意が必要です。

2016年10月6日木曜日

電解質検査-6.マグネシウム(Mg)-

電解質のひとつであるマグネシウム(Mg)について解説いたします。

マグネシウム(Mg)は、体内では4番目に多い電解質です。

血液中には僅かしか存在しておらず、ほとんどは骨の中にあります。

【マグネシウム(Mg)の働き】

役割としては骨や歯を作るのにはなくてはならないもので、更に神経、筋肉を正常に働かせるためにも必要です。

酵素の働きにもマグネシウムが必要とされます、マグネシムがないと酵素はうまく働いてくれません。

マグネシウムは人間の体で3000以上の酵素の補酵素としてはたらいていることから、マグネシウムが不足すると人間のほとんどすべての臓器が正常に働かなくなります。

また、心臓や血管が正常に働くのも、マグネシウムがあってこそです。

善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減少させる働きをし、腸では水分を集めることで便通をよくすることも認められています。

更にマグネシウムはカルシウムと同様に、神経、筋肉の興奮に大切なミネラルです。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

マグネシウム(Mg)…1.4~2.1mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

高マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が2.1mEq/L(1.05mmol/L)を上回る

主な原因としては、

・腎不全

症状としては、低血圧,呼吸抑制,心停止を引き起こすことがある。

※グルコン酸カルシウムを静脈内投与する※

※腎臓が正常に機能していない場合や、高マグネシウム血症が重症である場合は、透析が必要となる※

低マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が1.4mEq/L(0.70mmol/L)未満

原因としては,

・大量のアルコール摂取により、食物の摂取量が減少しその結果マグネシウム摂取量も減少するとともに、マグネシウムの排出量が増加する。

・長期間の下痢によりマグネシウムの排出量が増加し、不足に陥る。

・アルドステロン、抗利尿ホルモン、甲状腺ホルモンの濃度の上昇により排出量が増加し、マグネシウムが減少する。

・マグネシウムの摂取不足および吸収不足

・高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加

※欠乏症が現れたとき、もしくは症状が持続するときは、マグネシウムを経口で投与する※

※アルコール依存症の患者にはもれなくマグネシウムを投与する※

※マグネシウム濃度が非常に低く、重度の症状が起きている場合や、口からマグネシウムを摂取できない場合は、筋肉または静脈に注射で投与する※。

【おまけ】

マグネシウムの不足は、筋細胞や神経細胞の情報伝達に影響を与え、筋肉の痙攣を引き起こすと考えられています。

従って日常生活や運動時にマグネシウムが不足すると、筋肉の痙攣や筋疲労の原因となりますから不足しないようにマグネシウムの不足には気をつける必要があります。

毎日80~210mgのマグネシウムを摂取する必要があります。

マグネシウムを豊富に含む食物やサプリメントで補う必要があります。


2016年9月26日月曜日

電解質検査-5.クロール(Cl)-

電解質のひとつであるクロール(Cl)について解説いたします。

【クロール(Cl)の働き】

クロールは、細胞外液の総陰イオンの約70%を占める電解質成分の内のひとつで、ナトリウムと同様に主に食塩として摂取されて体内に取り込まれ、大部分は尿中に排泄され、一部は糞便や汗などと一緒に排泄されます。

クロールの主な働きは、他の電解質と相互関係にあり、水分の平衡と浸透圧の調節などに関与し、血液中におけるクロールとナトリウムの比率は100:140で、普通はこの比率のもとで濃度が変わって行きます。

健常者の場合、狭い範囲でしか変動しません。

クロールを調べる際は、単独で行われる事は少なくナトリウムとの比率を確認します。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

クロール(Cl)…95~108mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

※クロールの値は一日の内での変化や運動などの影響は殆どありませんが、食後は胃酸として分泌されるので若干の低下があります※

【異常値】

クロールが高値…脱水症、腎不全、過換気症候群、低アルドステロン症、下痢、過換気症候群、呼吸性アルカローシス



クロールが低値…アジソン病、慢性腎炎、肺気腫、慢性腎炎、嘔吐、呼吸筋障害、呼吸性アシドーシス、水分過剰投与


2016年9月19日月曜日

電解質検査-4.カルシウム(Ca)-

電解質のひとつであるカルシウム(Ca)について解説いたします。

体内のカルシウムの99%は骨や歯に蓄えられおり、その残りが細胞内や血液中に存在します。

カルシウムの役割は、骨と歯の大元であり、筋委縮を働きかけ、体中の酵素を正常に作用させ、血液の凝固に関係し、そして、心拍数を正常に保ちます。

特に副甲状腺ホルモンは、骨を刺激することで血液中にカルシウムを送り出し、腎臓から尿へ出されるカルシウム量を減らし、消化管を刺激することでカルシウムの吸収量を増やし、それを助けるために、腎臓でビタミンDの働きを活性化するなど、血液中のカルシウム濃度の上下に応じて、副甲状腺が作るホルモン量も変化します。

【カルシウム(Ca)の働き】

骨や歯の形成・神経刺激の伝達・血液の凝固などの働きをしています。


【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。


【基準値】

カルシウム(Ca)…96~110mEq/l

カルシウム(Ca)…8.5~10.2mg/dL(アリレセナゾⅢ法)

※検査方法や施設によって若干異なります※

※範囲内は極めて狭い範囲で、実際にカリウム濃度の高低が、不整脈、心停止などを起こすことがあります※

【異常値】

カルシウムが高値…悪性腫瘍や多発性骨髄腫など骨代謝の異常、副甲状腺機能亢進症が疑われます

カルシウムが低値…甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、サルコイドーシスなどの内分泌異常が疑われます。

【高カルシウム症】

高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態です。

副甲状腺機能亢進、カルシウムのとり過ぎ、ビタミンDのとり過ぎ、腎臓や肺、卵巣の癌細胞が、副甲状腺ホルモンと同様にカルシウムの血中濃度を上げるタンパク質を大量に分泌する場合、骨の疾患(骨が分解されたり破壊されたりしてカルシウムが血液中に放出される)、運動不足などが原因となります。

【低カルシウム血症】

尿中に多量のカルシウムが排出された場合や、骨から血液中に流入するカルシウムの量が不十分な場合によく発生します。

血液中のカルシウム濃度がある程度低下しても、症状は直ぐには出ずに時間とともに低カルシウム血症が徐々に脳に影響を及ぼし、錯乱、記憶喪失、せん妄、うつ、幻覚といった神経や心因性の症状を引き起こす場合があります。

これらの症状は血液中のカルシウム濃度が回復すると消失します。

カルシウム濃度が極端に低くなると、唇、舌、指、足にチクチクした痛みが生じ、筋肉痛、呼吸困難、筋肉の硬直やけいれん(テタニー)、発作、不整脈が起こります。

消化の障害、喉の渇き、多尿が発生し、重症化すると生命にかかわる場合があります。

【カルシウム不足となる原因】

インスタント食品や清涼飲料水などに含まれている食品添加物であるリンが、カルシウムの吸収を妨げているのではないかと考えられています。

インスタント食品を多く食べたり、清涼飲料水をよく飲む人はカルシウム不足に気をつける必要があります。

【カルシウムを摂取するには】

一日の当たりの必要な摂取量は、約600mg~700mgと言われています。

血液中の濃度が足らなくなると、カルシウムは骨から血液中に溶け込みます。

これは飲食などで必要量のカルシウムを摂っていないと、骨からカルシウムが代謝・移行することで弱くなり、骨粗しょう症を引き起こすことになります。

カルシウムを摂れる食品の中でも吸収率が最も高いのは乳製品です。

カルシウムが多く含まれる野菜は、小松菜、ほうれん草です。

また注意点として、カルシウムだけを単独で摂取してもあまり意味がなく、カルシウムの吸収を高めるマグネシウムと一緒に摂取する必要があります。

カルシウムとマグネシウムは2:1でバランスを取るのが最も理想的とされています。

※カルシウム不足だからといって、カルシウムばかり摂ってしまい、マグネシウムが不足すると『マグネシウム欠乏症』を引き起こしてしまう可能性があります※

2016年9月12日月曜日

電解質検査-3.カリウム(K)-

電解質のひとつであるカリウム(K)について解説いたします。

カリウム(K)は主に細胞内液中に分布していて、ナトリウム(Na)とともに大切な物質交換を営みエネルギー発生にも関与するミネラルのひとつです。

【カリウム(K)の働き】


1.心臓機能、筋肉機能を調整する。

2.細胞内液の浸透圧が一定に保たれるように調節する。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。


【基準値】

カリウム(K)…3.5~5.0mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

※範囲内は極めて狭い範囲で、実際にカリウム濃度の高低が、不整脈、心停止などを起こすことがあります※

【異常値】

カリウムが高値…急性腎不全、慢性腎不全、アジソン病など

カリウムが低値…呼吸不全症候群、アルドステロン症、クッシング病など

【高カリウム症】

血液中のカリウム濃度が異常に高くなることを言います。

腎臓への血流を低減するものや、腎臓からのカリウム排出を阻止する薬を服用することにより起こります。

腎不全は高カリウム血症を起こします。

アジソン病(副腎が壊されることで起きる疾患)が高カリウム血症を起こすこともあります。

多くのカリウムが細胞から血液中に放出されると、腎臓に大きな負担を与えることになり、その結果命に影響する高カリウム血症になることもあります。

心電図の変化と不整脈が見られ、基準値の上限5.5mEq/lを超えると心電図上の変化が起きます。

6.5mEq/lを超えた場合には、結節性、心室性の不整脈が現われ、最終的な形として、心室細動、収縮不全が起こることがあります。

また、四肢の痺れや頻脈、心停止、筋力低下、吐き気などが見られます。

【低カリウム血症】

血液中のカリウムの濃度が低下することで発症します。

カリウムは消化管からの消失するのがほとんどです。

腎臓もその役割の一部を担っています。

一般的には、カリウム濃度が僅かな低下ぐらいでは症状が出てくることはありませんが、目立つようにカリウム濃度が低くなると、筋力の低下、痙攣、筋肉の収縮、麻痺に起こってきます。

更に心臓にも症状にも現れます。

要するに不整脈がそれです。

カリウム濃度が3mEq/lになると、筋力の低下、四肢麻痺、呼吸不全、さらに線維束性収縮、麻痺性イレウス、低換気、低血圧、テタニー、横紋筋融解症などが起こります。

持続性低カリウム血症になりますと、腎濃縮能の障害が見られ、二次性の多飲症を引き起こす多尿症となることがあります。

【カリウム不足となる原因】

ナトリウムを摂り過ぎると尿や汗として排出するとき、同時にカリウムも失われることから、カリウム不足になっている可能性があります。

カリウムの摂取量については、厳密に定義された推奨量はありません。

目安としては、1日あたり 成人男性:2500mg 、成人女性:2000mg とされています。

【カリウムを摂取するには】

バナナが一番です。

バナナには100gあたり540mg程度のカリウムが含まれていることから、

バナナ1本の重量はおよそ120gなので、カリウムの含有量は1本で550mg以上摂取することが出来ます。

その他、アボカド(1個約880mg含有)・キウイフルーツ(200g約290mg含有)・みかん類(1個300mg)。

カリウム不足を補うにはこれらの果物を食するのが手っ取り早いです。

2016年9月1日木曜日

電解質検査-2.ナトリウム(Na)-

電解質のひとつであるナトリウム(Na)について解説いたします。


ナトリウムは、身体にはなくてはならない電解質のひとつで、そのほとんどは血液や体液の中に存在しています。

体内の水分バランスを保持することと、神経、筋肉が正常に働くようにすることなどの重要な役割を担っています。

ナトリウムは、日々食べる食物や飲み物から体内に取り込まれます。

そして尿や汗とともに体外に出ていきます。

腎臓は尿の排出をコントロールすることで、体内のナトリウム濃度の数値が一定にするように働いています。

ナトリウムが高くなりすぎると、心臓、血管、腎臓にある感覚器官がそれを察知し、腎臓を刺激してナトリウムの排出量を増やし、それによって血液量を正常に戻します。

逆に、ナトリウム濃度が低くなりすぎると、感覚器官は血液量を増やすしくみを作動させます。

【ナトリウム(Na)の働き】

からだの水分を調節することです。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。


【基準値】

ナトリウム(Na)…135~150mEq/l(イオン選択電極法)

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

ナトリウムが多すぎると、これを薄めるために体内に水が溜まることになり、むくみや高血圧の原因になります。

高値・・・嘔吐、下痢などによる脱水症、尿崩症、糖尿病、アルドステロン症、クッシング症候群など

低値・・・腎不全、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下、心不全など

注意・・・下痢や嘔吐を繰り返した時や利尿薬を利用している場合も値が低くなります。

【注意】

ナトリウムは大切であるかを摂取するために塩分を摂らなくてはと意識する必要は全くありません。

なぜなら私たちは普段の生活でむしろ塩分を摂りすぎの可能性が高いからです。

ナトリウムの1日の摂取基準は食塩相当量で【男性8.0g未満】、【女性7.0g未満】。

しかし平成21年の国民健康・栄養調査の結果によりますと、1日当たりの食塩摂取量は成人全体で11.4gとなっており、基準量よりもかなり多くの塩分を取っていることになります。

2016年8月23日火曜日

電解質検査-1.電解質とは-

人間の体はおよそ60%の水分で出来ています。

この水分は細胞内液や血漿などの体液として存在しています。

体液はさらに、水に溶けて電気を通すミネラルイオンであるナトリウムイオンや塩素イオンなどの電解質と、水には溶けるが電気は通さないブドウ糖や尿素などの非電解質とに分類されます。

【電解質とは】

電解質(イオンとも呼ばれます)は、身体の細胞の浸透圧の調節や筋肉・神経細胞の働きを円滑にするために必要不可欠なものです。

また電解質は、多すぎても少なすぎても細胞や臓器の機能が低下し、命にかかわることがあります。

【電解質の役割とは】

身体は電解質が神経や筋肉を調整することで維持されており、さらに、酸と塩基、水分のバランスを調整、維持しています。

身体が正常に働くためには、体液のバランスが必要なのです。

体液のバランスを保つためには、電解質の濃度、つまり電解質平衡を維持することが重要となります。

【電解質の種類】

主な電解質には、ナトリウム(Na)・カリウム(K)・クロール(Cl)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・重炭酸イオン(HCO3)があります。

これらは5大栄養素であるミネラルに属し、ミネラルは水に溶けると陽イオンと陰イオンに分類されます。

一例を揚げますと。塩化ナトリウム(NaCl)は、水に溶けるとナトリウムイオン(陽イオン)とクロールイオン(陰イオン)になります。

【電解質を調べると何がわかるのか】

陽イオンと陰イオンは、バランスを保ちながら体液中に存在し、血液の浸透圧を保っていることから、体液中のイオン濃度を測定することにより、バランスの崩れを調べて体内の障害を診断することが出来ます。

病気になるとこのバランスが崩れ、体内が酸性(アシドーシス)、アルカリ性(アルカローシス)に傾きます。

【電解質の検査方法は】

血液を自動分析機で検査します。

次回から各種電解質について詳細に解説していきます。

2016年8月15日月曜日

ジカ熱-3.ジカ熱とセックス-

流行地から入国(帰国を含む)した男女は、ジカウイルス病の発症の有無に関わらず、最低8週間(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えることが推奨されています。

つい最近までは、ジカウイルスに感染した男性の精液の中に感染から2ケ月間にわたってジカウイルスの存在が認められていました。

ところが2016年8月11日付の感染症専門誌「ユーロサーベイランス」に、ジカウイルスが6ケ月以上も男性の精液中に残存していた事例が報告されています。

この30代の男性は発症から188日後に精液中にウイルスの遺伝子が検出されたということです。

この事について研究チームは、世界保健機関(WHO)が感染拡大防止のために性行為を控えるよう勧告した期間について「延長が必要になるかもしれない」と指摘しています。

今後ジカウイルスが男性の精液に残存する期間について研究を進める必要がありそうです。

これまで公式に報告された最長期間は93日で、今回の例は2倍になります。

ジカウイルスが各体液の中に感染のどの段階から、どのくらいの期間、どのくらいの量存在するのかについての詳細は分かっていません。

今後の研究で明らかにされていくでしょう。

2016年8月1日月曜日

ジカ熱-2.検査と治療法および予防法-

【検査】

特異的な臨床症状・検査所見が乏しいことから、診断のための検査は、血液または尿からのジカウイルス分離または PCR法によるジカウイルス遺伝子の検出により行います。

また、血清学的検査による診断としては、IgM抗体または中和試験による抗体の検出により行います。

IgM抗体を用いて診断を行う場合は、患者が感染したと考えられる地域で流行中のその他のフラビウイルス属ウイルス(デング熱、黄熱、ウエストナイル熱、日本脳炎等)による先行感染又は共感染がないこと、半年以内の黄熱ワクチンの接種歴がないことを確認する必要があります。

ジカウイルス以外のフラビウイルス属ウイルスによる先行感染又は共感染を認める場合は、ペア血清によるIgM抗体以外の方法による確認試験を実施する必要があります。

これらのことからして血清学的検査による診断は、かなり難しいといえます。

【ジカウイルスを含むもの】

血液、精液、尿、唾液、子宮の頸管粘液、母乳、眼球内の房水から検出されています。

【性行為による感染】

性行為によるジカ熱の感染で男性が感染源となる事例が米国などで多数報告されています。

性感染対策の項目では米国で男性から女性への感染に加え、男性から男性に感染したケースがあったことを指摘しています。

この時点では女性から性行為によってパートナーへ感染した事例は報告されていませんでしたが、2016年7月米国CDCは、性交渉で女性から男性に感染した例を初めて確認したと発表し、注意を呼びかけています。

更にジカウイルスに感染した男性の精子で感染から93日後にもウイルスが確認されたとする論文が発表されています。

【臨床症状・徴候】

潜伏期間は3~12日で、不顕性感染率は約80%と考えられています。

過去の流行では詳細な症状の解析ほとんどされていません。

最近の調査では、発熱(38.5℃を超える高熱は比較的稀)、斑状丘疹性発疹、関節痛・関節炎、結膜充血が半数以上の症例に認められ、筋肉痛・頭痛、後眼窩痛、その他にめまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振などが認められています。

また、ギラン・バレー症候群や神経症状を認める症例が報告され、ブラジルの流行では妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染し、小頭症児が多発している。

胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウイルスRNAが検出され、小頭症で死亡した新生児の脳の病理組織からもウイルスが検出されています。

ジカ熱そのもので健康な成人が死に至ることは稀ですが、何らかの基礎疾患があり免疫力が低下している場合は死に至ることもあるので注意が必要です。

【治療法】

対症療法のみで効果的な治療法は存在しません。

痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤を投与する程度にとどまることがほとんど、脱水症状が強い場合は輸液も実施します。

【予防】

感染予防ワクチンは存在しません。

日中に蚊(ヤブカ)に刺されない工夫が大切です。

具体的には、長袖服・長ズボンの着用、昆虫忌避剤(DEETを含むものが効果が高い)の使用などがあります。

※特に妊婦あるいは妊娠の可能性のある女性はジカ熱流行地への渡航を避けるべきです※

2016年7月18日月曜日

ジカ熱-1.ジカ熱とは-

いま騒がれていますジカ熱について紹介していきたいと思います。

【ジカ熱とは】

ヤブカ属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症です。

【いつ発見されたのか】

ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ森林のアカゲザルから初めて分離され、ヒトからは1968年にナイジェリアで行われた研究の中で分離されています。

【流行地域】

中央および南アメリカ大陸、カリブ海地域では20の国や地域に流行が見られます。

【病原体】

デングウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです。

【感染経路】

1.蚊からの感染

2.母子垂直感染

3.性的接触からの感染

4.輸血や血液製剤による血液感染

【媒介する蚊】

媒介蚊はヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介蚊として確認されています。
※日本に生息するヒトスジシマカも媒介可能な日の一種です。

【症状】

軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。

2016年7月4日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-9.ダイナスクリーン・HIV Comboの判定(陰性事例と判定無効事例)

陰性・・・・・コントロール判定窓だけに赤色ラインが現れ、抗原判定窓及び抗体判定窓には赤色ラインが認められない場合。



判定無効(再検査)・・・コントロール判定窓に赤色ラインが認められない場合は、陽性・陰性とは判定できず判定無効とし、再度検査を実施する。

(左)抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(左より二番目)抗原判定窓(AG)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(左より三番目)抗原判定窓(AG)と抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(右端)抗原判定窓(AB)と抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認めらなく陰性と判断できそうですが、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められないことから陰性ではなく判定無効。









2016年6月29日水曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-8.ダイナスクリーン・HIV Comboの判定(陽性事例)

検体滴下20分後にコントロールラインと抗原判定ライン及び抗体判定ラインを肉眼で観察し、赤色ラインの有無を確認して判定する。

1.陽性・・・抗原及び抗体判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

(1)HIV-1のp24抗原陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めら、ABの抗体判定窓に赤色ラインが認められない。


(2)HIV抗体陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、ABのHIV抗体判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めらない。


(3)HIV-1抗原とHIV抗体が共に陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓とABのHIV抗体判定窓の両方に赤色のラインが認められる。


C・・・コントロールライン
AG・・・抗原ライン
AB・・・抗体ライン

2016年6月21日火曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-8.ダイナスクリーン・HIV Combo

イムノクロマトグラフ法による第四世代の抗原抗体検査法で、血清、血漿及び全血中のHIV-1 p24 抗原及びHIV-1・HIV-2抗体の検出をおこなう迅速HIVスクリーニング検査試薬です。

【販売メーカ】

アリーアメディカル株式会社から販売されています。

【検査原理】

イムノクロマトグラフ法を原理とするHIV-1p24抗原と抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体を検出する試薬です。

検体中にHIV-1p24抗原が存在する場合は、抗原はテストストリップのビオチン化抗HIV-1p24リコンビナント抗体、セレニウムコロイド標識抗HIV-1p24マウスモノクローナル抗体と結合し、固相化されたアビジンにビオチンが結合することにより、抗原判定窓に赤色のラインが形成されます。

また、検体中に抗HIV-1又は抗HIV-2抗体が存在する場合、抗体はセレニウムコロイド標識HIV抗原と結合し、固相化されたHIV抗原に結合して抗体判定窓に赤色のラインが形成されます。

この形成される赤色ラインを肉眼で観察して血中にHIV-1p24抗原及び抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体の有無を判定します。

【検査方法】

1.検体(血清・血漿)を50μLを検体滴下部位に滴下後、20分間静置。

2.検体が全血の場合は、50μLを検体滴下部位に滴下して、染み込むまで1分間静置してから、全血展開液を1滴滴下して19分間静置。

3.20分が経過してから肉眼でラインの有無を判定する。

【非特異反応の出現率】

肉眼で赤色ラインを判定することから、1~5%前後の偽陽性反応が見られます。

【感度】

適切な時期に受けることで、抗原及び抗体は、ほぼ100%検出可能です。

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1抗原

HIV-1 group M subtype A、B、C、D、F、G、H 、CRF01-AE、CRF02-AG、HIV-1 group O の全てのHIV-1抗原。

HIV抗体

HIV-1 group M subtype A、B、C、D、F、G、H、J、K、CRF01-AE、CRF02-AG、CRF03-AB CRF05-DF、CRF09-A/U、CRF11-cpx、HIV-1 group O、HIV-2の全てのHIV抗体。

【日本での普及率】

2015年6月に厚生労働省に認可され、2015年12月より販売されましたから、同じ抗原抗体検査のエスプラインHIV Ag/Abに様に普及していないと考えられています。

今後保健所や医院で採用されるものと考えられます。

【測定結果の判定法】

検体滴下20分後にコントロールラインと抗原判定ライン及び抗体判定ラインを肉眼で観察し、赤色ラインの有無を確認して判定する。

1.抗原陽性・・・抗原判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

2.抗体陽性・・・抗体判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

3.抗原抗体が共に陽性・・・抗原判定窓、抗体判定窓及びコントロール判定窓に赤色ラインが現れた場合。

4.陰性・・・・・コントロール判定窓だけに赤色ラインが現れ、抗原判定窓及び抗体判定窓には赤色ラインが現れない場合。

5.判定無効(再検査)・・・コントロール判定窓に赤色ラインが現れない場合。

※判定ラインの赤色の強さは、HIV抗原または抗HIV抗体の力価を定量的に反映していませんので、ラインの色が濃いいから抗原や抗体が多く血液中にあるとは限りません※

【検査時の注意】

検体滴下20分後に肉眼で判定する。

40分を超えて判定することは出来ません。

※反応時間が40分を超えた場合は、誤判定を招く恐れがあるので再度検査をし直す必要があります。

【検査費用】

保険点数

実施料121点+検体検査判断料144点で265点

※この点数に初診料等が加算されます※

※自費診療の場合は、個々の医療機関によって異なります※

【検査を受ける時期】

1.HIV-1抗原は、不安な行為より30日から50日前後で受けることにより信頼できる結果が得られます。

※50日以上経過して受けると、血液中のHIV-1抗原の量が少なくなっていていることから、陽性であっても偽陰性反応を呈することがあります※

2.HIV-1及びHIV-2抗体は、不安な行為から12週以降に受けることにより信頼できる結果が得られます。

2016年6月6日月曜日

AIDS指標疾患

今回はAIDS指標疾患について解説いたします。

AIDS指標疾患とは、HIV感染者がこの疾患を発症した段階でAIDS患者と診断される、23種類の疾患を指します。

当然HIV検査及びその確認検査で陽性であることが前提となります。


A. 真菌症    

 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
 2. クリプトッコカス症(肺以外)
 3. コクシジオイデス症
 4. ヒストプラズマ症
 5. ニューモシスチス肺炎

B. 原虫感染症

 6. トキソプラズマ脳症(生後1カ月以後)
 7. クリプトスポリジウム症(1カ月以上続く下痢を伴ったもの)
 8. イソスポラ症( 1カ月以上続く下痢を伴ったもの)

C. 細菌感染症  

 9. 化膿性細菌感染症
10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
11. 活動性結核(肺結核又は肺外結核)
12. 非結核性抗酸菌症

D. ウィルス感染症

13. サイトメガロウィルス感染症(生後1カ月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
14. 単純ヘルペスウィルス感染症
15. 進行性多巣性白質脳症

E. 腫瘍

16. カポジ肉腫
17. 原発性脳リンパ腫
18. 非ホジキンリンパ腫(a. 大細胞型・免疫芽球型、b. Burkitt型)
19. 浸潤性子宮頸癌

F. その他

20. 反復性肺炎
21. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
22. HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎)
23. HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

日本国内において1985年から2014年までの統計によるAIDS指標疾患の上位3位は、以下のとおりです。

1位 ニューモシスチス肺炎

2位 カンジダ症

※カンジダ症は食道、気管、気管支、肺に発症するカンジダ症で、性器カンジダ症や口腔カンジダ症は含みません※

3位 サイトメガロウイルス感染症

1~3位の疾患で全体のおよそ68%を占めています。

2016年5月31日火曜日

いきなりエイズとは

HIVに感染しても、すぐにAIDSを発症しません。

一昔前までは、HIVに感染後8~10年でAIDSを発症していましたが、最近では発症時期が早くなり早い場合は3~5年で発症しています。

これはHIVの変異によるものと考えられています。

HIVが体内に侵入すると免疫細胞を破壊することにより、徐々に感染者の免疫力を低下させていきます。

免疫力がある程度以上に下がると健康なときには感染しないような感染症(日和見感染症)をはじめとした、HIVに特徴的な疾患(AIDS指標疾患)に感染しやすくなります。

HIV感染者の免疫力は、CD4陽性リンパ球の数値で判断しますが、この数値が一定以下に下がったり、数値に関係なくAIDS指標疾患に感染した状態が、AIDSと呼ばれます。

日本におけるHIV感染症の特有な特徴として"いきなりエイズ"があります。

要するにHIVに感染するような危険な行為をしてもHIV検査を受けること無く放置し、体調が悪くなった時に医療機関を受診しその時に日和見感染症をきっかけにHIV感染が発見される、いわゆる"いきなりエイズ"の報告数が多いことです。

日本ではHIV・AIDS患者の新規報告数に占めるAIDS患者(=いきなりエイズ患者)の報告数の割合は、30%程度の高値で推移しています。

この高い数値は日本以外の先進国では見られません。

HIVに感染しても、早期に診断されれば、抗HIV薬でHIVの増殖を抑え、免疫力の低下を未然に防ぐことでAIDSの発症をおさえることが可能となっています。

そして普通の人と同様の社会生活を送れ、天寿をまっとうできる様になってきています。

更に自分がHIV感染者であると知っていれば、性交渉などにおいても適切な予防対策をとることができ、他人への感染を防げることにもなります。

HIV/AIDSに関する医療はこの10年で著しく発展し、一昔前までは「HIV感染イコール死」とされていましたが、HIVに感染したからといってすぐに生死に関わるといった病気ではなくなってきました。

HIV感染を早期に発見し早期治療がより重要なのです。

感染に気づくこと無く"いきなりエイズ"になって初めてHIV感染に気づき、治療を開始しても良い効果が得られません。

従ってHIVに感染するような行為をした場合には、必ず適切な時期にHIV検査を受けることが非常に重要となります。

リスクのある行為をした、心配な症状がある人は、ぜひ検査を受けに行くことをお勧めします。

当然HIVに感染しないように予防措置をとることは更に重要なこととなります。

2016年5月14日土曜日

HIV検査の原理について

HIV検査には、抗原抗体検査・抗体検査がありますが、これらの検査には種々の検査原理が利用されています。

今回はHIV検査に利用されている検査原理について解説いたします。

HIV検査には以下の検査原理が利用されています。

1.化学発光免疫測定法(CLIA:Chemiluminescent Immunoassay )

2.化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescence Enzyme Immunoassay)

3.蛍光酵素免疫測定法(FLEIA:Fluorescence Enzyme Immunoassay)

4.酵素免疫法(EIA:Enzyme Immunoassay,ELISA :Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)

5.ラテックス凝集法(LA:Latex Agglutination)

6.イムノクロマト法(IC:Immunochromatography)

7.人工担体凝集法(PA:Particle Agglutination)

※1~7の検査原理は、第三世代抗体検査、第四世代抗原抗体検査に利用され、各メーカから種々の検査キットが販売されています。

※1~5は、全自動の検査機器によって自動的に検査されます。

※6~7は検査技師や医師が手で検査を行い肉眼で判定します。

※リアルタイムPCR検査は、1~7には含まれていません※

HIV検査を受ける際には、上記に記載されたどの検査原理で検査するのかを必ず確かめておく必要があります。