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2025年12月9日火曜日

季節性インフルエンザ特集-6.インフルエンザ感染後の「ワクチン」接種は無意味それても意味があるのか?-

 💡 インフルエンザ感染後のワクチン接種:医学的・疫学分析


1. 💉 感染後のワクチン接種は「強く推奨」される。

結論:インフルエンザに一度感染した後でも、ワクチン接種は強く推奨され決して無意味ではありません。

根拠:現在使用されているインフルエンザワクチンは、主要な4種類(A型株2種、B型株2種)に対応した4価ワクチンで自然感染で得られる免疫は、「かかった特定の1つの型」に対するもののみですのでワクチンを接種することで、まだ感染していない他の3種類の型に対する予防効果が得られます。

疫学的意義:同一シーズン中に、異なる型のインフルエンザに連続して感染する(例:A型→B型)リスクを低減し、公衆衛生上の流行拡大を防ぐ一助となります。


2. 🛡️ 異なる型の再感染リスクと重症化の可能性

感染リスク:インフルエンザウイルスはA型とB型が主に流行し、それぞれ複数の系統が存在することから一度A型に感染してもその免疫はB型には効きませんので、短期間のうちに異なる型で「別の感染」を起こすリスクは十分にあります。

小児疫学:特に子どもは免疫システムが未熟なため、同一シーズンにA型とB型の両方にかかるケースは小児科の現場で珍しくありません。

重症化:2回目の感染が1回目より軽症になるとは限りません最初の感染で得た免疫は、次にくる異なる型の重症化を防ぐ助けにはならないため、それぞれの感染は「別々の病気」として扱う必要があります。

2回目の感染で高熱が続いたり、合併症を併発したりして重症化する可能性もあります。


3. 🗓️ ワクチン接種の適切なタイミング

原則:インンフルエンザ感染の急性期(高熱や倦怠感が強い時期)には接種できません。

接種の目安:**「完全に回復してから1〜2週間後」**が目安で解熱し、咳や鼻水などの症状が落ち着き、食欲が戻って普段通りの元気な状態に戻ってから、体調の良い日を選んで接種します。

注意点:最終的な接種可否とタイミングは、必ず接種を行う医師(かかりつけ医)が判断し罹患時に使用した抗インフルエンザ薬の種類によっては、ワクチン接種までの期間が変わる可能性があるため、事前に医師に相談が必要となります。


4. 🚑 重症化予防のための早期治療の重要性

治療の原則:ワクチン接種は重症化予防の「最大の盾」ですが、万が一感染した場合は早期発見・早期治療が非常に重要です。

抗インフルエンザ薬:インフルエンザが疑われる症状が出たら、発症から48時間以内に医療機関を受診し、タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなどの抗インフルエンザ薬の投与を検討しこれにより、ウイルスの増殖が抑えられ、発熱期間の短縮や重症化予防の効果が期待できます。

対策の柱:早期治療に加え、高熱時の十分な水分補給(脱水対策)と安静による休養が必須です。


5. ⚠️ 合併症のサインと緊急受診の基準

最大の脅威:インフルエンザの本当の怖さは、インフルエンザ脳症や肺炎などの重篤な合併症です。

緊急サイン:以下の**「重症化のサイン」**が見られた場合は、夜間や休日であっても直ちに救急医療機関を受診する必要があり、具体的なサイン:* 呼吸器異常: 息が荒い、ゼーゼーする、呼吸困難、顔面蒼白。* 意識障害: 呼びかけに反応しない、意味不明な言動、ぼんやりしている、けいれん(ひきつけ)。

脱水重症化: 水分が全く取れない、半日以上尿が出ない。

全身状態の悪化: ぐったりして動かない。


2025年12月7日日曜日

季節性インフルエンザ特集-5.インフルエンザワクチンを接種するかどうかの判断-

 ワクチン接種は、自分自身を守るだけでなく、周囲の人々を守る公衆衛生上の役割もあります。

・家族や同僚への感染予防: 自分が感染してウイルスをまき散らすリスクを減らすことで、特に乳幼児や高齢者など、ワクチンを打てない・効果が出にくいハイリスクな人を守ることにつながります。

・医療従事者: 病院や施設でのクラスター発生を防ぐため、医療・介護従事者は強く推奨されます。


◎⚖️ 接種を躊躇する要因と副反応

ワクチン接種をためらう主な要因は、副反応(副作用)や有効性への懸念です。

・主な副反応: 接種部位の腫れや痛み、発熱、頭痛、倦怠感などがありますが、通常は軽度で数日以内に治まります。

・重大な副反応: アナフィラキシーなどの重篤な反応は極めて稀です。

・有効性: ワクチンの効果は、流行する株とワクチンの株の一致度によって変動しますが、前述の通り重症化予防効果は概ね安定しており、感染自体を防げなくても接種する意義は大きいです。


◎🗓️ 接種のタイミングと抗体獲得

インフルエンザは例年12月~3月に流行のピークを迎えます。

・最適な時期: 10月下旬から12月中旬までに接種を完了することが理想的です。

・抗体ができるまで: 接種後、効果が現れるまでに約2週間かかり、効果は約5ヶ月間持続します。


【結論】

基礎疾患や高齢などハイリスク要因がある場合は、接種のメリット(重症化予防)が副反応のリスクを遥かに上回るため、接種を強く推奨します。

健康な方でも、社会的なインフルエンザワクチンを接種するかどうかの判断は、個人のリスクと利益、そして社会的な役割を考慮して行うべきです。


💡 インフルエンザワクチン接種の判断基準


1. 🛡️ ワクチン接種の最大のメリット:重症化と合併症の予防

ワクチンは感染自体を完全に防ぐことはできませんが、最も重要な役割は以下の通りです。

・重症化の予防: インフルエンザによる入院や死亡といった重症化のリスクを大きく低減します。

・合併症の予防: 肺炎や脳症などの重篤な合併症の発生率を下げます。

特に、高齢者や基礎疾患(慢性呼吸器疾患、心臓病、糖尿病など)を持つ方は、インフルエンザが重症化しやすいため、接種のメリットが極めて大きいです。


2. 👥 接種が強く推奨されるハイリスクグループ

以下の人々は、インフルエンザの感染や重症化のリスクが高いため、優先的に接種することが推奨されます。

65歳以上の高齢者

慢性疾患を持つ方(心臓病、腎臓病、呼吸器系疾患、糖尿病、免疫不全状態など)

乳幼児(生後6ヶ月以上)

妊婦


3. 💼 社会的な役割と周囲への影響(間接的な防御)

自身を守る、周囲の人を守るという観点から、接種を前向きに検討することが望ましいです。

受けるか受けないかはメリットとデメリットを十分理解してご自身で判断すべきですが、最終的な判断を下す前に、ご自身の健康状態についてかかりつけの医師にご相談ください

2025年12月4日木曜日

季節性インフルエンザ特集-4.⚠️ インフルエンザ急性脳炎の増加に関する5つの重要ポイント-

 1. 流行拡大に伴う急性脳炎の急増と懸念

現状の傾向: インフルエンザの流行が拡大するのに伴い、インフルエンザを原因とする急性脳炎(脳症)の報告例が急増しています。

疫学的動向: 今シーズン(2025/26)は、インフルエンザの定点当たり報告数が警報レベル(30)を超えた時期(第46週)とほぼ同時期に、急性脳炎の報告数も第45週に14件と急増しました。

これは昨シーズン(2024/25)のパターンと類似しており、今後さらに患者数が増加する可能性が強く懸念されます。

統計的な位置づけ: 第45週時点の累積報告数30件は、近年のシーズンと比較しても多い部類に入ります。


2. インフルエンザ急性脳炎の臨床的特徴

好発年齢: 2025/26シーズンの報告例(第45週時点)では、**10歳未満が全体の66.7%**を占め、低年齢層で最も多く発生しています。

平均年齢は11.5歳と、過去のシーズン(2023/24シーズン11.3歳)とほぼ同水準です。

注意すべき点: 報告例は低年齢層に集中していますが、50代、60代、70代といった成人・高齢者層からも報告があり、全年齢層で発症のリスクがあることに注意が必要です。

原因ウイルス: 今シーズンは、急性脳炎例の96.7%がインフルエンザA型によるものと特定されており、A型ウイルスが重症化に大きく関与していることが示唆されます。


3. 流行ウイルス亜型の変化と死亡例の関連

流行亜型: 過去のシーズン(2024/25)ではA/H1pdm亜型が主流でしたが、今シーズン(2025/26)はA/H3亜型が主流となっています。

ウイルス型の影響: この主流となる亜型の違いが、これまでの報告時死亡例の発生状況に影響を与えている可能性が指摘されています。今シーズンは第45週時点までに報告時死亡例は確認されていませんが、警戒が必要です。

医学的背景: インフルエンザ急性脳炎・脳症は、ウイルスの直接的な感染だけでなく、**宿主(患者)側の過剰な免疫応答(サイトカインストームなど)**によって引き起こされる重篤な病態と考えられています。


4. 入院患者の増加と重症化の懸念

入院患者の動向: インフルエンザによる入院患者の届出数は、流行拡大に伴い月を追うごとに急増しています(9月287例、10月994例、11月前半2354例)。

重症化の指標: 入院患者の概況(第46週)では、ICU入室例、人工呼吸器の利用例、頭部検査例(急性脳炎・脳症の疑いを含む)がそれぞれ増加しており、これはインフルエンザ重症例の増加を強く示唆しています。

臨床的対応: これらのデータから、医療現場ではインフルエンザ患者、特に小児や基礎疾患を持つ患者に対して、重症化の兆しを可能な限り早期に把握し、急性脳炎・脳症などの致死的合併症への迅速な対応が求められています。


5. 医療現場への要請と予防の重要性

早期診断と治療: インフルエンザ流行拡大期においては、インフルエンザ急性脳炎の発症者数の増加を念頭においた診療が不可欠です。

重症化のサイン(意識障害、けいれん、異常行動など)を見逃さず、迅速な鑑別診断と治療(抗ウイルス薬の早期投与など)が求められます。

予防対策: 最も重要な対策は、インフルエンザワクチンの接種による発症および重症化の予防です。

一般の方へ: インフルエンザに罹患した場合、特に小児で異常な言動や意識レベルの変化が見られた場合は、単なる高熱とは考えず、直ちに医療機関を受診することが、急性脳炎・脳症の予後を改善するために重要です。

2025年12月2日火曜日

季節インフルエンザ特集-3.👃 フルミスト(経鼻生インフルエンザワクチン)の医学的ポイント-

 1. ワクチンの種類と特徴

フルミストは、日本で今シーズンから本格導入された経鼻投与型の生ワクチンです。

・投与経路:注射ではなく、鼻にスプレーするため、注射の痛みがなく、特に小児にとって大きなメリットです。

・免疫応答:鼻粘膜でウイルスが増殖し、主に粘膜免疫(IgA抗体)と全身性の免疫(IgG抗体)の両方を誘導します。この粘膜での免疫応答が、実際の感染防御において重要と考えられています。


2. 主要な副反応とその頻度

経鼻生ワクチンの副反応は、主に局所反応として現れます。

・鼻症状の頻度:接種後に約60%の方が鼻水や鼻づまりを経験することが報告されています(日本小児科学会)。これは、弱毒化されたウイルスが鼻粘膜で増殖し、免疫システムが働く過程で生じる局所的な炎症反応と考えられています。

・この症状は軽度で、多くは数日間で自然に軽快します。

なお、プラセボ(生理食塩水など)を投与した場合でも約50%が鼻症状を経験するというデータもあり、特に風邪をひきやすい小児では、必ずしもすべてがワクチン由来ではない可能性もあります。

・全身症状:発熱などの全身症状は1~10%程度と低く、通常は2~3日で軽快します


3. ワクチンの有効性

フルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)は、小児においてインフルエンザに対する一定の有効性が期待されています。

・特に、注射の不活化ワクチンが主に全身性の免疫(IgG)を作るのに対し、経鼻ワクチンは**感染の初期段階である鼻腔・気道での粘膜免疫(IgA)**を強く誘導するため、感染防御効果が高い可能性があります。

・接種回数は、通常、注射の不活化ワクチンと同じく、接種歴や年齢に応じて1回または2回接種となりますが、日本人小児での臨床試験では1回接種での有効性も期待されています(最終的な接種回数は医師の判断が必要です)。


4. 副反応への理解と対処

接種後の軽い鼻水・鼻づまりは想定内の反応であり、「軽い鼻風邪症状」と捉えても差し支えありません。

・鼻症状と効果の関連:鼻水の量や症状の程度と、ワクチンが獲得される効果の高さが比例するわけではありません。

・注意すべき症状:以下の症状が見られる場合は、ワクチンの副反応以外の感染症の可能性も含め、速やかにかかりつけ医を受診してください。

高熱が続く(通常2~3日で解熱)

1週間以上、強い鼻症状が続く

呼吸が苦しそう(喘鳴や多呼吸など)


4. 副反応への理解と対処

接種後の軽い鼻水・鼻づまりは想定内の反応であり、「軽い鼻風邪症状」と捉えても差し支えありません。

鼻症状と効果の関連:鼻水の量や症状の程度と、ワクチンが獲得される効果の高さが比例するわけではありません。

注意すべき症状:以下の症状が見られる場合は、ワクチンの副反応以外の感染症の可能性も含め、速やかにかかりつけ医を受診してください。

高熱が続く(通常2~3日で解熱)

1週間以上、強い鼻症状が続く

呼吸が苦しそう(喘鳴や多呼吸など)


5. 接種の適応と選択

インフルエンザワクチンは、お子さんの健康状態を考慮して、かかりつけ医と相談の上で選択することが重要です。

メリット:注射の痛みを避けたいお子さんには非常に良い選択肢です。

・接種が難しい場合:

喘息などの基礎疾患があるお子さんでは、経鼻生ワクチンではなく、注射タイプの不活化ワクチンが選択されることがあります。

その他、特定の疾患や薬剤の使用状況によっては接種できない場合があります(禁忌事項)。

2025年11月30日日曜日

季節性インフルエンザ特集-2.🔬 インフルエンザ迅速抗原検査:最適なタイミングと注意点-

 1. 検査の基本と限界:偽陰性の存在

・検査法: 主流なのは、抗原抗体反応を利用した**イムノクロマト法(迅速抗原検査)**でこれは簡便で短時間で結果が得られる利点があります。

・偽陰性の問題: この検査の最大の限界は、インフルエンザに罹患していても陰性と判定される**「偽陰性」**が一定数存在することでこれは、検査の検出感度(ウイルスを見つけ出す能力)に限界があるために発生します。

・発症直後や症状が乏しい場合:約60%が偽陰性となる可能性があります。

・最適なタイミング(後述)でさえも:約25%が偽陰性となる可能性があります。


2. 最適な検査のタイミング

・推奨時間帯: 発症(発熱や咳などの症状出現)から12時間以降、48時間以内が最適な検査のタイミングです。

・医学的根拠: この時間帯が、鼻腔や咽頭に存在するウイルス量が最も多くなり、検査キットがウイルス抗原を検出できる確率(陽性になる確率、すなわち検査の精度)が最大になるためです。


3. 発症直後の検査が不確実な理由

・時間経過の重要性: 症状が出始めてすぐ(特に発症から6時間以内)に検査を受けると、体内のウイルスがまだ十分に増殖しておらず、検査に使う検体中のウイルス量が少ないため、偽陰性となる可能性が極めて高くなります。

・臨床的対応: 発症直後に受診し陰性だった場合でも、医師の判断により、時間を空けて(例:12時間後)の再検査や、臨床症状に基づいた診断的治療が選択されることがあります。


4. 治療効果を最大化するための受診

・治療薬の開始: インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)は、発症から48時間以内に服用を開始することで最も高い効果を発揮します。

・診断の意義: 迅速抗原検査で陽性診断を得ることは、この治療薬を確実に開始するために重要ですから治療のタイミングを逃さないためにも、発症後12~48時間以内の受診・診断が極めて重要となります。


5. 重症化リスクと医療機関受診の優先

・症状が重い場合: 高熱、強い倦怠感、呼吸困難など、症状が重い場合や重症化のリスクが高い方(小児、高齢者、基礎疾患のある方など)は、検査のタイミングに関わらず、直ちに医療機関を受診すべきです。

・最終的な判断: 市販の検査キットで自己検査を行う場合でも、検査結果の解釈や最終的な診断、適切な治療方針の決定は、必ず医療機関の医師の指示に従う必要があります。


2025年11月29日土曜日

季節性インフルエンザ特集-1.🚨 インフルエンザが「流行注意報」レベルに迫る:現状と今すぐ取るべき対策-

 現在、季節性インフルエンザの患者数が全国的に急増し、本格的な流行シーズンに突入しています。

特に、都市圏を中心に非常に高いレベルで感染が拡大しています。


1. 📈 全国の状況:流行が加速し「注意報」に迫る

インフルエンザの流行は過去に例を見ないスピードで加速しています。

・全国平均の急増: 1つの定点医療機関あたりの患者報告数は、51.12(前週37.73)に急増しこれは、10週連続での増加であり、流行の勢いが止まらないことを示しています。

※季節性インフルエンザの警戒レベルとは、定点医療機関からの報告数に基づき、地域ごとのインフルエンザの流行状況を示す指標で具体的には、注意報レベルは「1定点あたり10人/週」を超えた場合、警報レベルは「1定点あたり30人/週」を超えた場合に発令され、流行の拡大や継続を知らせるものです※


2. 📍 地域別リスク:全国レベルで警報レベルに突入

地域によっては、既に深刻な感染拡大が見られています。

警報レベルに達していない地域は、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の7県のみで、これらの県も程なく警報レベルに突入すると考えられています。

※2025年11月23日時点※


3. 🦠 医学的懸念:急増がもたらす重大なリスク

患者数の急増が医学的に意味するリスクは以下の3点です。

・重症化リスクの増加: 感染者数が増えるほど、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患を持つ方などの「ハイリスク層」が感染しやすくなります。その結果、インフルエンザ脳症や重症肺炎といった致死的な合併症を引き起こすリスクが飛躍的に高まります。

・医療体制の逼迫(ひっぱく): 短期間に患者が医療機関に集中すると、外来がパンクし、救急搬送の受け入れ困難や、本来行うべき他の重症患者への対応が遅れるなど、医療崩壊に近い状態になる懸念があります。

・ツインデミックの現実化: 現在のインフルエンザ流行期は、新型コロナウイルス(COVID-19)やその他の呼吸器感染症(RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど)の流行と重なり合う「ツインデミック」(同時流行)が現実のものとなっています。症状だけで区別が難しく、医療現場での迅速な診断や治療の判断(トリアージ)が極めて複雑になります。


4. 💡 今すぐ取るべき具体的な対策【最優先事項】

感染拡大を防ぎ、ご自身とご家族を守るために、以下の対策を徹底してください。

・予防接種の最優先: まだインフルエンザワクチンを接種していない方は、可能な限り早く接種を検討してください。接種から効果が出るまでに約2週間かかります。発症予防効果はもちろん、重症化や死亡を防ぐ効果が最も期待できます。

・基本的な感染対策の徹底:手洗い: 外出先からの帰宅時や調理・食事の前は、石鹸と流水で30秒以上の手洗いを徹底します。

・マスク: 混雑した屋内や公共交通機関を利用する際は、不織布マスクを正しく着用します。

・換気: 1時間に数回、数分間、窓を開けて室内の空気の入れ替えを行いましょう。


5. 💊 発症時の対応:早期治療の徹底

インフルエンザは治療開始のタイミングが非常に重要です。

・早めの受診: 発熱、強い倦怠感、関節痛など、インフルエンザが疑われる症状が出た場合は、必ず医療機関に連絡してから受診してください。

・早期治療の重要性: 抗インフルエンザウイルス薬は、発症から48時間以内に服用を開始することで最も効果を発揮します。重症化リスクが高い方は、特にこの時間を厳守することが予後を大きく左右します。

・自己判断を避ける: 症状が出た際は自己判断せず、医師の指示に従って検査や治療を進めてください。


2025年11月27日木曜日

RSウイルス-1.📝 RSウイルス(RSV)感染症の要点-

1.ほとんどが軽症だが、生涯再感染するウイルス

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus: RSV)は、呼吸器の感染症を引き起こすウイルスです。

ほとんどの人が2歳までに一度感染し、成人や年長児では鼻水や咳など軽い風邪に似た症状で済むことが多いです。

一度感染しても免疫が不完全なため、生涯を通じて何度も再感染を繰り返すのが特徴です。

2.乳幼児、特に低月齢児で重症化リスクが非常に高い

特に生後6ヶ月未満の乳幼児は重症化しやすく、細気管支炎や肺炎を引き起こします。

喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難、無呼吸発作などが起こり、入院が必要になるケースがあります。

3.重症化しやすいハイリスク者

生後間もない乳児に加え、低出生体重児、心臓や肺に基礎疾患がある小児、免疫機能が低下している高齢者は特に重症化しやすいことが知られています。

4.感染力が強く、飛沫と接触で広がる

感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染と、ウイルスが付着した物を触って目鼻口を触る接触感染によって広がります。

感染力が非常に強いため、保育園などでの集団感染に注意が必要です。

5.画期的な予防戦略:妊婦ワクチン(母子免疫)の導入

RSVには特効薬がなく治療は対症療法が中心ですが、予防法が進展しています。

特に画期的なのが、妊婦へのワクチン接種による予防です。接種でできた抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生後すぐの乳児の重症化を防ぐ「母子免疫」を付与します。

この妊婦ワクチンは、2026年4月から日本で定期接種が開始される方針です。


2025年11月25日火曜日

感染症速報 41.🦠百日咳の現状と薬剤耐性菌の問題:最新の日本国内状況-

 1.百日咳の流行状況

2025年11月9日時点で患者数は、85476人と報告されています。

百日咳は百日咳菌という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。

百日咳菌が体内に入ると、気道の粘膜に感染して毒素を放出し、激しい咳の発作を引き起こします。特に乳児やワクチン未接種の子どもは感染しやすく、重症化のリスクも高くなります。

※「百日咳」という名称は、強い咳が治まるまでに100日ほどかかることがあるという特徴に由来します※

患者の多くは10代以下の子どもで、特に乳児ではけいれんや呼吸停止、肺炎、脳症による死亡例も報告されています。

百日咳の症状の特徴は、数週間から数か月続く慢性的な咳です。

特に子どもの場合は、咳のあとに息を吸うと「ヒュー」と音が鳴ったり、激しい咳の後に嘔吐するケースも見られ、百日咳菌が作り出す毒素には抗生物質が効かないため、咳が長引き始めると治療が難しくなることもままあります。

百日咳の特有の咳は、「コンコンコン」と連続する激しい咳の後に、「ヒュー」という笛のような音を立てて息を吸い込む発作(レプリーゼ)が特徴です※


2. 薬剤耐性菌の増加

国立感染症研究所などの調査(2023年7~9月)により、患者から検出された百日ぜき菌の約8割が抗菌薬の継続がない「薬剤耐性菌」でした。

この耐性菌の遺伝子型は、2022年に中国で流行した型と近いことがわかっています。

耐性菌は、訪問日外国人など国内に認められた可能性が指摘されています。


3.治療への影響

新型コロナウイルス対策で人々の百日ぜき菌への免疫が弱まり、感染しやすくなっています。

薬剤耐性菌の増加により、従来の抗菌薬(アジスロマイシン、クラリスロマイシンなどマクロライド系)が効きにくくなり治療が困難な状況となっています。

※耐性菌対策としては2種類の抗菌薬を配合したST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤)が第2選択薬として推奨されています※

感染症研究所の専門家は「感染した菌が耐性菌かどうかはすぐに分からないが、全国で認められているため、治療時には耐性菌の可能性も考慮する必要がある」と指摘しています。


4. まとめ

百日咳は現在日本国内で大流行中で、特に子どもや乳児の重症化リスクが懸念されています。

薬剤耐性菌の割合が非常に高くなっており、治療が正しいため、早期の診断と適切な治療選択が重要です。

百日咳の予防には、ワクチン接種が最も効果的でワクチン接種を受けることで、百日咳にかかるリスクを80~85%程度減らせます。


2025年11月23日日曜日

感染症速報 40.🏥 2025年インフルエンザ流行:医学的・疫学的分析まとめ-

 全国の状況(第46週:11月10日〜16日)

・全国の拠点医療機関からの患者報告数は145,526人。

・定点当たりの報告数(定数)は37.73人/週。

・決定点当たり報告数が高い都道府県上位5位

宮城県– 80.02人/週

埼玉県– 70.01人/週

福島県– 58.54人/週

岩手県– 55.90人/週

神奈川県– 55.12人/週


1. 「無熱性インフルエンザ」の増加と医学的背景

医師も驚く「発熱がない陽性者」の存在は、医学的には「不顕性感染(症状が出ない)」や「軽症例」の一種ですが、背景には以下の要因が推測されます。

◎免疫の記憶と交差免疫: 過去の感染やワクチンにより、ウイルスを完全に防げなくても、激しい炎症反応(高熱)を抑え込んでいる可能性があります。

◎高齢者の免疫応答低下: 高齢者は免疫反応が弱く、熱が出にくい(Afebrile)傾向があります。

◎リスク: 「熱がない=ただの風邪」と自己判断しやすく、無自覚な「スーパー・スプレッダー(感染源)」としてウイルスを広げてしまうリスクが疫学的に最も懸念されます。強いだるさ(倦怠感)があれば、熱がなくても検査が必要です。


2. 「ワクチンの空白期間(Vaccine Gap)」を突いた流行

疫学的に見て、今回の流行の最大の問題はタイミングです。

◎抗体獲得のタイムラグ: インフルエンザワクチンは接種後、抗体ができるまで約2週間かかります。流行が11月上旬に警報レベル(定点30人超)に達したことで、多くの人が**「ワクチンを打つ前」または「打ったが抗体が未完成」の状態でウイルスに暴露**されています。

◎集団免疫の未成立: 学校行事(運動会など)と重なり、集団免疫が成立する前にクラスターが発生したことが、急速な拡大の主因です。


3. 主流株「A型香港型(H3N2)」の重症化リスク

記事にある「A型香港型」は、一般的に感染力が強く、症状が重くなりやすい傾向があります。

◎臨床的特徴: B型やA型ソ連型(H1N1)に比べ、高熱や全身症状が出やすく、特に入院リスクが高い株として知られています。

◎進化の速さ: 香港型は変異しやすく、ワクチンの予測株と実際の流行株がズレることもありますが、重症化予防効果は期待できるため、今からでも接種の意義はあります。


4. 小児の「異常行動」と神経学的リスク

「ベランダからの転落」という痛ましい事例が報告されていますが、これはインフルエンザ特有の**「異常行動」**への警戒が必要です。

◎インフルエンザ脳症の前兆: 異常行動(急に走り出す、飛び降りようとする、意味不明なことを言う)は、高熱が出た直後(発症から2日以内)に多く見られます。

◎薬剤との関連: かつてタミフル等の影響が疑われましたが、現在は**「薬を飲んでいなくてもウイルス自体の影響で起こりうる」**というのが医学的なコンセンサスです。


◎対策: 少なくとも発症から2日間は、小児・未成年を一人にしない見守りが必須です。


5. 気候変動と社会的要因による「季節性の喪失」

専門家が指摘する通り、疫学的な前提条件が変化しています。

◎温暖化の影響: 秋でも気温が下がらず人の活動が活発なまま推移し、接触機会が減りません。

◎インバウンドとグローバル化: 南半球(冬に流行)からのウイルス持ち込みや、年中流行している熱帯地域との往来により、インフルエンザの「冬の病気」という季節性が薄れ、通年化のリスクが高まっています。


💡 結論とアドバイス

今回の流行は「早い・熱がない人もいる・感染力が強い」という特徴があり「熱がないから大丈夫」という従来の判断基準を捨て、「急な強いだるさ」や「周囲の流行状況」を重視した行動が必要です。


2025年11月20日木曜日

感染症速報-39.インフルエンザ:2025-2026年シーズンの初期拡大とその医学的・疫学的分析-

 1. 流行状況の最新データと疫学的解釈


・日本国内では、インフルエンザの流行が例より早く、大幅に拡大して2025年第45週(11月3〜9日)の「定点当たり報告数」は21.82人です。 


こちらは前週(14.90人)から急上昇しており昨年、同週(2024年第45週)の1.06人と比べても圧倒的に高いレベルです ( https://works.medical.nikkeibp.co.jp/articles/66746/ )。


・特に東京都や神奈川県など複数の地域では警報レベル(30人/週)に近い報告数が観測され、流行の深刻さが増しています(https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2025/11/14/36618.html)。


・神奈川県では、同第44週(10月27日~11月2日)の定点当たり報告数が28.47人で、すでに「注意報レベル(10人/週以上)」を超えています(https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2025/11/14/36618.html)。


・東京では31の保健所のうち12か所が警報レベルにあり、地域的に広がっている深刻な流行状況が見られます (https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/11/2025111337)。


2. 流行の早さとその背景


・2025年10月には全国的にインフルエンザの流行が本格化し特に9月22〜28日の週に「定点当たり1.04人」を超えて流行開始とされ、10月には1.56人まで急増したことが確認されていますhttps://time.com/7324877/flu-asia-japan-india-singapore-influenza-strains-climate-epidemic-pandemic/


・このように例より5週間ほど早い流行開始は、過去20年でも早い部類に入り、今シーズンが異常なペースで進んでいることを示唆しています ()。


3. 医学的な背景と重視すべきポイント


・コロナ禍における徹底した感染防止策の影響で、ここ数年のインフルエンザの流行は抑えられてきました。その結果として、「免疫権利」により多くの人が自然な免疫を獲得できていない状態です。


・早期かつ急速な流行拡大の背景には、その間免疫の低さが一因として考えられ それに加えて、ウイルスの変異も警戒されており、日本では感染拡大とともにウイルス変異が進行している可能性が高まっています ( 🔗  m.economictimes.com )。


4. 公衆衛生の観点からの対応と推奨策


感染拡大を重視するには、厚生労働省や地域が取り組む以下の対策の徹底的が肝心です:


◎手洗い・うがい

◎マスク着用(症状のある人は特に)

◎室内の適度な加湿と換気

◎咳エチケットの実践

◎体調不良時の休養と自己管理


予防接種は最も有効な重症化防止策です 。効果が現れるまでに約2週間かかるため、早めの接種が推奨されます。


5. 要点まとめ


・流行の急速な進行:10月末には全国で爆発的な報告増加—第45週には決定点当たり報告数が21.82人に上昇。


・地域差の拡大:神奈川県、東京都をはじめ、関東・東北の複数県で警報レベルに近い深刻な状況。


・流行開始の早期化:例より5週間以上早く流行が始まり、市民・医療現場への注意が必要。

免疫低下とウイルス変異:コロナ対策による免疫障害と変異株の流行で、特に注意が求められる。

・予防対策の重要性:手洗い・マスク・換気・休養に加え、早めのワクチン接種が重症化防止と医療負担軽減に努めます。


このような現状を踏まえ、国民優先が高い警戒意識を持ち、基本的な感染対策と予防接種を積極的に行うことが、懸念のインフルエンザ流行を重視する鍵となります。

2025年11月18日火曜日

【危険な兆候を見逃すな】 「上の血圧」と「下の血圧」の差が示す動脈硬化の深刻度—脈圧を知らないと命取りになる5つの理由-

🔬 血圧の医学的分析と正しい理解のための5項目

1. 「高い/低い」で終わらせない:血圧は複雑な全身状態の指標

血圧の数値は、心臓のポンプ機能、動脈の弾力性(動脈硬化の程度)、自律神経(交感神経/副交感神経)、ホルモンバランス、そして体内の水分量など、多岐にわたる要素が複雑に絡み合った結果として現れます。

このため、たった1回の測定値だけで「健康か病気か」を判断するのは不十分であり、全身の血液循環の状態を映す鏡として捉える必要があります。


2. 診断基準:家庭血圧を重視し、変動を見る

日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧の基準値を以下のように定めています。

特に、環境に左右されにくい家庭での測定値を重視します。

測定場所 収縮期血圧 (上)  拡張期血圧 (下)

診察室     140mmHg 以上  90mmHg 以上

家庭      135mmHg 以上  85mmHg 以上

また、血圧は時間帯や日によって大きく変動するため、「年齢+90」といった簡易的な基準は推奨されず、日々の変動パターンを把握し、持続的な管理を行うことが重要とされています。


3. 【診断の視点1】血圧と脈拍の組み合わせによる循環状態の解析

血圧と脈拍(心拍数)を同時に見ることで、血圧変動の裏にある具体的な原因を推測できます。

1)高血圧 + 頻脈 (速い脈):交感神経の過剰な活性化 (ストレス、睡眠不足、過労、カフェイン過剰)、または甲状腺機能亢進症などの疾患。 

対策としては精神的な負荷の軽減、生活習慣の見直し。病気が原因の場合は治療が必要。

2)高血圧 + 正常脈:動脈硬化の進行、塩分過剰摂取による血液量増加。血管の弾力性低下、腎臓への負担。

対策としては減塩などの生活習慣改善。

3)低血圧 + 頻脈 (速い脈):循環血液量の低下 (出血、重度の脱水)。極めて危険な状態。血圧を上げようと心臓が代償的に速く拍動している状態。

対策としては失神・ショックのリスクがあり、直ちに医療機関を受診すべきです。


4. 【診断の視点2】脈圧(上の血圧と下の血圧の差)の重要性

「上の血圧(収縮期血圧)」と「下の血圧(拡張期血圧)」の差を脈圧といいます。

脈圧=収縮期血圧-拡張期血圧

脈圧の拡大(差が大きいこと、例:160/70)は、動脈硬化により大動脈の弾力性が失われ、心臓が収縮したときに圧力が過剰に上がり、拡張したときに圧力が維持できなくなることを示唆しており、動脈硬化の進行度や心血管病のリスクを評価する上で重要な指標の一つです。

◎脈圧とは?(定義と計算方法)

脈圧とは、心臓が収縮したときにかかる最も高い圧力(収縮期血圧、上の血圧)と、心臓が拡張したときにかかる最も低い圧力(拡張期血圧、下の血圧)の差のことです。

正常な脈圧の目安は、一般的に40~60mmHg**程度とされています。

例えば、血圧が120/80mmHgの場合、脈圧は120-80 = 40mmHgとなります。

この差が**60mmHgを超える**など、基準値よりも大きくなる状態を指します。

脈圧拡大がもたらす危険性

脈圧の拡大は、単なる数値の変動ではなく、すでに動脈硬化が進行していることの強いサインであり、将来的な心臓・脳血管病のリスクを予測する指標として、近年重要視されています。

1)脳卒中・心筋梗塞リスクの増大

脈圧が大きいほど、脳卒中(脳梗塞や脳出血)や心筋梗塞、心不全などの発症リスクが高まることが多くの研究で示されています。

これは、硬い血管に高い圧力が繰り返し加わることで、血管の内膜が損傷し、血栓ができやすくなるためです。

2)心臓の負担増(心肥大・心不全)

上の血圧が過度に高くなると、心臓は硬い血管に向かってより強い力で血液を送り出す必要があり、オーバーワークになりその結果、心臓の筋肉が厚くなる心肥大を起こし、最終的にポンプ機能が低下する心不全へと進行しやすくなります。

3)腎機能の低下

腎臓の細い血管にも大きな負荷がかかるため、血管が傷つき、腎機能が徐々に低下し、慢性腎臓病のリスクが高まります。

脈圧の拡大は、**「血管が老朽化し、心臓が過負荷になっている」**という状態を明確に示して血圧を測定する際は、上の血圧と下の血圧の差も確認し、この脈圧が60mmHgを大きく超える場合は、動脈硬化の進行を疑い、医師に相談することが重要です。


5. 【診断の視点】血圧の変動パターンを見る

血圧は常に変動しており、そのパターンを観察することが重要です。

早朝高血圧: 睡眠中から起床時にかけて血圧が急激に上昇するパターンは脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。

白衣高血圧: 診察室でのみ血圧が高くなる現象。

仮面高血圧: 診察室では正常だが、家庭や職場で血圧が高くなる現象。

これらのパターンを把握するためには、毎日決まった時間(例:起床後1時間以内、就寝前)に家庭で測定し、記録することが、単発の測定よりも遥かに重要で正確な診断につながります。

2025年11月16日日曜日

感染症速報-38.🦠 2025年インフルエンザ流行とワクチン効果:5つの重要ポイント-

 1. 異例の早期流行と**新変異株「K亜系統」**の出現

・異例の流行状況: 2025年のインフルエンザシーズンは、イギリスで例年より早く始まり日本を含め、世界的にA型インフルエンザ、特にA(H3N2)型が流行の主流となっています。

・急増の背景: H3N2型の中で「K亜系統」と呼ばれる新しいタイプの変異株がイギリスで優勢となり、日本でも検出されていることから、この変異株がインフルエンザの急激な増加の一因となっている可能性が指摘されています。


2. 懸念された**「ワクチンとウイルスのミスマッチ」**

・専門家の懸念: ワクチンは「K亜系統」が出現する前の古い株(J.2亜系統)を基に製造されたため、流行株との間にズレ(ミスマッチ)が生じているのではないか、という懸念が当初、専門家の間で広がりました。

・根拠: 実験室レベルの研究結果から、製造されたワクチンが新しい「K亜系統」に対して反応しにくい可能性が示唆されていたためです。


3. 最新データによるワクチンの有効性の確認

・懸念を払拭: 実社会を対象としたイギリスの最新調査の結果、懸念にもかかわらず、インフルエンザワクチンが引き続き有効であることが示されました。

・重症化予防: ワクチン接種者は、未接種者に比べてインフルエンザによる救急外来受診や入院のリスクが大幅に低いことが確認されました。


4. 年齢層別の具体的なワクチン有効性(重症化予防)

1)子供(2~17歳):ワクチンの有効性は70~75%で非常に高い予防効果が確認されました。

2)大人(18歳以上):ワクチンの有効性は30~35%で例年のワクチンの有効性の一般的な範囲内であり、重症化予防に貢献しています。

※※ これらの初期データは、ワクチンが特に高い効果を示した子供と、重症化予防に一定の効果を示した大人の双方にとって、接種の重要性を裏付けています※※


5. 変異株にも有効な理由(「効く」メカニズムの推測)

・子供へのワクチン接種: 子供に主に使われる「経鼻生ワクチン」は、免疫系を幅広く刺激し、ウイルスが少し変異しても防御できる交差防御効果を発揮したと推測されます。

・大人のワクチン: イギリスでは、鶏卵を使わない製法など、効果を高める工夫がされた高性能ワクチンが使用されており、これがウイルスの変異に対応し、有効性を維持することに貢献したと考えられています。


結論

2025-2026年シーズンのインフルエンザワクチンは、新しい変異株「K亜系統」の流行下でも有効であり、特に重症化を防ぐための最も重要な対策であるということが再確認されました。


【今回のイギリスの研究結果が示す重要なポイントをまとめ】


◎重要なポイントの再確認: 新しい変異株「K亜系統」が流行しているにもかかわらず、2025-2026年シーズンのインフルエンザワクチンは有効で、特に子供においては高い予防効果を示し、大人にとっても重症化を防ぐための重要な防御手段となっています。


◎ワクチン接種の推奨: この研究結果は、インフルエンザウイルスが変異を続ける中でも、ワクチン接種が自分や家族を重症化から守るための最も有効なツールの一つであることを再確認させるものでこの研究は、特に高い予防効果が確認された子供たちへのワクチン接種を、社会全体で推進すべき強力な根拠となります。


2025年11月9日日曜日

感染症速報37.🚨 なぜ? インフルエンザ**「異例の年内流行」**を徹底解説!😱-

 「インフルエンザは真冬の病気」…そんな常識が通用しない年になりました。

2025年の日本では、インフルエンザの流行が例年より約1ヶ月も早く始まり、東京をはじめ全国16都府県で流行開始の目安を超えています。

11月2日までの1週間に全国およそ3000の医療機関から報告されたインフルエンザの感染者数は、1医療機関あたり「14.90人」でした。

前週から2倍以上となり、11週連続で増加しています。

最も多いのは宮城県の「28.58人」で、次いで神奈川県の「28.47人」、埼玉県の「27.91人」となっているほか、25の都道府県で、注意報の基準となる「10人」を超えています。更に、インフルエンザの影響により、全国の2307の学校などで休校や学級閉鎖となっていて、こちらも前の週と比べて2倍以上増えています。

なぜこんなに早いのか? 最新の医学・疫学データに基づき、日本と世界の現状を交えながら、皆さんの「?」をわかりやすく解説し、今すぐ取るべき対策をお伝えします!


◎医学・疫学から見る「早期流行」の2大要因

今年の異例の早期流行には、医学・疫学的に納得できる明確な要因があります。

特に注目すべきは、ウイルスの生存環境と人々の移動の二点です。


1. 「記録的な猛暑」が招いた 乾燥と換気不足 🥵

インフルエンザウイルスが生存しやすいのは、**「低温」と「低湿度(乾燥)」**です。

1)医学的メカニズム

乾燥: 空気が乾燥すると、インフルエンザを含む呼吸器ウイルスの飛沫核(エアロゾル)が小さくなり、空気中に長く漂いやすくなりまた、乾燥は鼻や喉の粘膜のバリア機能を低下させ、感染しやすくなります。

猛暑の影響: 今年の記録的な猛暑により、多くの人が**「窓を閉め切り、長時間エアコンを使用する」生活を余儀なくされましたことにより、「乾燥」と「換気不足」**という、ウイルスにとって最高の環境を作り出してしまったのです。

2)疫学的影響

学校や職場など、多くの人が集まる屋内空間で、エアコンの冷風で空気が乾燥し、かつ換気が不十分な状態が続いたため、ウイルスの伝播(でんぱ)率が上昇しました。

夏休み明けの学校で学級閉鎖が去年の3倍以上と急増しているのは、この**「屋内の環境変化」**が大きく影響していると考えられます。


2. パンデミック後の 「免疫ギャップ」 と国際移動 ✈️

流行早期化のもう一つの大きな要因は、人々の免疫状況と国際的な人の流れです。

1)免疫ギャップ(Immunity Gap):

コロナ禍での徹底した感染対策(マスク、手洗い、外出自粛)により、ここ数年、多くの人がインフルエンザに感染する機会が激減しその結果、集団全体の免疫力(集団免疫)が低下している状態、すなわち**「免疫ギャップ」**が生じています。

免疫を持たない人が増えたため、一度ウイルスが侵入すると、例年よりも急速に、そして広範囲に流行が拡大しやすくなっていますがこれは、日本だけでなく、世界的な傾向です。

2)訪日外国人の増加(世界からのウイルスの持ち込み):

報道にもある通り、訪日外国人数は過去最多レベルで増加しています。

南半球(オーストラリア、南米など)は今の時期が冬であり、インフルエンザが流行中で、東南アジアなど熱帯地域では季節を問わずインフルエンザが通年流行しています。

これらの地域からの旅行者が増えることで、多様なインフルエンザウイルスが例年より早く日本国内に持ち込まれ、免疫ギャップの状態にある集団の中で火種となり、早期流行を引き起こしたと疫学的に分析されています。


🌎 世界と日本の最新状況 (2025年現在)

・世界全体:コロナ禍前のレベルへの復帰により世界保健機関(WHO)は、多くの国でインフルエンザの活動がパンデミック前の典型的な季節性パターンに戻りつつあると報告しています。

つまり、人々の行動が戻るにつれて、インフルエンザも本来の流行力を取り戻しています。

・南半球:2025年の南半球(特にオーストラリアなど)は、流行が例年より早く、かつ規模が大きい傾向が見られました。これは、日本への**輸入症例(ウイルスの持ち込み)**リスクを高める要因となり、日本の早期流行の一因と考えられます。

・日本においてはA型(H3N2)の優勢:現在、日本で多く検出されているのは、A型インフルエンザのH3というタイプでこの型は例年、高齢者などで重症化しやすい傾向があるため特に注意が必要です。


◎対策は**「先手必勝」**! 今すぐ始めるべきこと◎

「まだ寒くないから大丈夫」という油断は禁物です。

流行が1ヶ月早いということは、対策も1ヶ月前倒しで行う必要があります。

1. ワクチン接種の「超」早期化 💉

医学的理由: ワクチンを接種してから、インフルエンザに対する抗体ができるまでに約2週間かかります。

行動の指針: 例年のピークである12月〜2月よりも前に、しっかりと抗体を持っておくため、10月中の早い段階で接種を完了することが強く推奨されます。

特に、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ方、そしてそれらの人と接触する医療従事者や家族は最優先で接種してください。

2. 感染予防の 「基本の徹底」 を再開 ✨

✅ 換気の徹底: 暑さが和らいだ今こそ、定期的な窓開けや換気扇の使用を徹底し、屋内の乾燥した空気を循環させましょう。

✅ 手洗い・手指消毒: 外出から帰宅時や調理・食事前は、石鹸を使った正しい手洗いを徹底しましょう。

✅ マスクの使い分け: 混雑した場所や、医療機関を訪問する際は、改めてマスクの着用を推奨します。

✅ 体調不良時の休養: 発熱や喉の痛みなど、少しでも体調に異変を感じたら、無理せず休養し、周囲への感染拡大を防ぎましょう。

インフルエンザは誰もが感染する可能性がある病気で今年の早期流行は、**「季節に関係なく感染対策が必要な時代」**になったことを私たちに突きつけています。

この情報を共有し、一人ひとりが意識を変えて、この冬を乗り切りましょう!

2025年11月6日木曜日

感染症速報36.🚨【緊急警告!2024年冬、最悪のシナリオか】「隠れインフル」が猛威!週50万人超、コロナ・百日咳との“トリプル感染”で医療崩壊の危機迫る-

 今年のインフルエンザは、もはや「例年通り」では済まされません。

感染症の専門家は、現在の異常な流行状況に強い危機感を抱いています。


1. 異常事態!インフルエンザ、過去最速で「爆発的」流行期入り

厚生労働省の最新発表によると、インフルエンザの定点報告数は前週比1.9倍増を記録。

全国の定点医療機関からの報告総数: 24,276人

前週(第42週:10月13日~10月19日)の12,576人から、11,700人の増加(約1.9倍増)となりました。

定点あたりの報告数: 6.29人

この値は、全国約5,000カ所の定点医療機関から報告された患者数を、医療機関数で割ったもので、流行状況を示す指標です。


◎特に注目すべき点

・流行の加速: 報告数が前週から倍近くに急増しており、流行が急速に拡大していることがわかります。

・注意報レベル超え: 定点あたりの報告数が10.0人を超えると注意報レベルとされますが、この時期にすでに**千葉県(11.82人)、埼玉県(11.73人)、東京都(10.37人)、神奈川県(11.88人)、沖縄県(19.40人)**など、複数の都県で注意報レベルを超過しています。

・過去にない早さ: 2025年の流行期入りは10月3日と、例年に比べて1カ月以上早い異例の立ち上がりとなっています。

以上のことから、2025年10月末の時点で、インフルエンザは非常に早い時期に、急速な拡大期に入っていることが確認できます。


2. 【最重要警戒】なぜ流行が止まらない?「隠れインフル」の恐るべき正体

今年の異例の感染拡大を牽引しているのが、**「隠れインフルエンザ」**の存在です。

従来のインフルエンザといえば、38度以上の高熱、強い関節痛、全身の倦怠感が典型的でした。しかし、現在陽性者に見られる症状は、そのイメージを大きく覆しています。

🚨 症状の「医学的盲点」が感染拡大の引き金に

「隠れインフル」の多くは、熱が37度台前半で、咳や喉の痛みが中心です。この"症状の軽さ"が、最大の公衆衛生上のリスクとなります。

誤認と拡散の連鎖: 多くの人が「ただの風邪」と自己判断し、「寝込むほどではない」と市販薬でごまかしながら職場や学校に出勤し結果として、無自覚のままウイルスを周囲に広げ、地域全体での感染爆発を引き起こしています。


3. 「軽く済まない」3つの医学的リスク:命に関わる合併症

「隠れインフル」だからといって、決して油断は禁物で初期症状が軽いからと放置すれば、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。

リスク① 治療開始の遅れによる重症化: 抗インフルエンザ薬は**発症初期(48時間以内)**に服用することで最も効果を発揮しますが「隠れインフル」で受診が遅れると、薬の効果が限定的になり、病状がこじれて重篤な合併症を引き起こす恐れがあります。

小児におけるインフルエンザ脳症(記憶障害などの深刻な後遺症リスク)や回復後の咳ぜんそくなど、長期にわたる呼吸器症状。

リスク② COVID-19との「ダブル感染」の現実: 現時点でも、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が同時に多数存在しており、**週に1人は「ダブル感染」**している患者が見られ異なるウイルスが免疫システムに与えるダメージが重なり、症状が相乗的に悪化する危険性が極めて高いです。

リスク③ 百日咳を含む「トリプル感染」の危機:最悪の事態も想定 さらに、昨年から流行が継続している百日咳の感染者数も高水準です。

インフルエンザ、コロナ、そして百日咳の**「トリプル感染」が現実味を帯びています。

**今年のインフルエンザは咽頭痛や咳が強い特徴があるため、百日咳とダブル感染するだけでも気管の炎症が著しく悪化し、最悪の場合、気道閉塞による窒息死といった取り返しのつかない事態に発展する可能性も否定できません。


4. 医療体制崩壊の懸念と今後の見通し:週50万人超の悪夢か

昨年は寒波の到来とともに患者数が急増し、1週間で約31.8万人という過去最高の報告数を記録しました。

今年はすでに昨年の水準を大きく上回って推移しており、これから低温・低湿度の季節に入るにつれて、この数字は40万人、50万人と記録を更新する可能性が極めて高いと専門家は警鐘を鳴らしています。

医療体制がひっ迫し、本当に治療が必要な重症患者への対応が遅れる事態を防ぐためにも、私たち一人ひとりの**「今すぐの行動」**が極めて重要になります。


5. あなたの行動が命綱!重症化リスクの高い方を守るために

「自分は元気だから大丈夫」という安易な考えは、ハイリスク層にとっては命取りになりかねません。

特に高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患(糖尿病、心臓病、呼吸器疾患など)を持つ方、ステロイドや免疫抑制剤を使用している方への感染は絶対に避けるべきです。


💡 今すぐできる3つの防御策:あなたの選択が未来を変える

「熱がないから大丈夫」は禁物です! 咳や喉の痛みだけでも、インフルエンザを疑い、安易に出勤・登校を控えて体調が優れない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。

・基本の徹底を「再」強化:

・満員電車など高リスクな場所でのマスク着用は必須。

・帰宅時、調理前後のこまめな手洗い、うがいを徹底。

・免疫力を最大限に高める生活習慣:

・質の良い睡眠を十分確保し、体を休ませましょう。

・食事でビタミンB群、C、タンパク質をバランスよく摂取し、粘膜のコンディションを良好に保ち、ウイルスへの抵抗力を高めましょう。


今年の冬は、「隠れインフルエンザ」の蔓延と多重感染のリスクから、非常に警戒が必要なシーズンで私たち一人ひとりが責任ある行動を取ることが、感染爆発を食い止める唯一の道であり、大切な人の命を守ることに直結します。




2025年11月4日火曜日

感染症速報35.🚨【要注意!】「熱なしインフル」がパンデミックの引き金に!-

 🚨その「だるさ」、ただの疲れじゃないかも! 知らない間にウイルスをまき散らす「隠れインフルエンザ」の正体と緊急対策

🔥 なぜ危険?「隠れインフルエンザ」の恐ろしさ

現在、通常の高熱を伴わない**「隠れインフルエンザ」(非定型/軽症インフルエンザ)の感染が静かに、しかし確実に拡大しています。

典型的な症状がないため、「ただの風邪」「疲れ」と自己判断してしまいがちですが、これこそが公衆衛生上の最大の落とし穴**です。

◎最大の危機:無自覚な「流行の連鎖」

・無防備な行動: 感染者がインフルエンザだと気づかずに出勤や通学を継続することで、ウイルスをまき散らします。

・脆弱な層への波及: 感染を受け取った相手が高齢者、乳幼児、基礎疾患を持つ人であった場合、彼らは肺炎、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症を引き起こし、命に関わる事態に直結します。あなたの軽症が、誰かの重症化を招くのです。


🔍 あなたを欺く!「隠れインフルエンザ」の4つの特徴

熱がないから大丈夫」という常識が通用しません。以下のサインに警戒してください。

🚨 高熱が出ない:免疫力の高さやワクチンの効果で、発熱(サイトカイン応答)が抑制されている可能性があります。体は闘っているのに、アラームが鳴らない状態です。

💧 風邪そっくり:軽い咳、喉の違和感、鼻水など上気道症状が中心。ウイルスが全身に深く侵入する前に免疫が抑え込んでいる可能性があります。

😫 異常な倦怠感:高熱がないのに、体が鉛のように重い。これはインフルエンザウイルスが作り出す毒素や炎症性物質が、通常の風邪より強く全身に作用している証拠です。


💥 強めの痛み:ズキズキする頭痛や、節々が痛む関節痛・筋肉痛。これらはインフルエンザ特有の全身症状ですが、軽症と高熱なしで見過ごされやすいです。

🛡️ 免疫状態別:なぜ熱が出ないのか?熱が出ない背景には、個人の異なる免疫状態が関わっています。ワクチン接種者:ワクチンが重症化を効果的に防ぎ、発熱を伴う典型的な症状を抑えています。

免疫力が高い人(若年層など):ウイルスを初期段階で迅速に処理し、高熱が出る前に症状が収束に向かいます。

高齢者・免疫抑制状態の人:最も危険なケースで免疫が弱すぎて十分な発熱応答を起こせないまま、体内で感染が進行している可能性があります。


🏥 即行動!「隠れインフルエンザ」の緊急対処法

いつもと違う体調不良」「風邪にしてはだるすぎる」と感じたら、すぐに以下の行動をとってください。

1.📞 迷わず医療機関へ連絡

発熱がなくても、倦怠感、頭痛、関節痛などが2~3日以上続く場合は、必ず医療機関に連絡し、インフルエンザの検査を受けてください、発症後48時間以内の診断が鍵です。

2.💊 早期の抗ウイルス薬服用

発症から48時間以内に抗ウイルス薬(タミフル、ゾフルーザなど)を服用すれば、症状の期間を短縮し、重症化を効果的に防げます。

軽症でも、医師の指示に従い早期治療を開始することが重要です。

3.😷 徹底的な感染予防行動

受診時を含め、外出時は不織布マスクを必ず着用し、他者との接触を最小限に抑えてください。

手洗いうがい、手指消毒を徹底し、室内の加湿(湿度50~60%)と換気を継続しましょう。


💡 今こそ心に刻むべきこと**「いつもと違う倦怠感や体調不良」**を感じたら、それは「隠れインフルエンザ」かもしれません。**「自分は感染源かもしれない」**という意識を持ち、早期に検査を受けることが、あなた自身と、社会全体の命を守ることにつながります。

2025年11月1日土曜日

感染症速報34.😷 「隠れインフルエンザ」とは?医学・疫学に基づく最新解説と注意点-

「隠れインフルエンザ」は、医学的には**「非定型インフルエンザ」や「軽症インフルエンザ」**と呼ばれる病態を指し、典型的なインフルエンザ(突然の38℃以上の高熱と全身症状)と比べて症状が軽度・不明瞭である点が特徴です。

この軽症のインフルエンザは、自覚のないまま他者に感染を広げるという点で、公衆衛生上非常に注意が必要です。


🔍 隠れインフルエンザ(非定型インフルエンザ)の医学的特徴と症状


特徴1

発熱が軽度またはほぼない:症状が軽く済む原因の一つとして、サイトカイン応答の抑制が考えられます。免疫がウイルスに反応して発熱(炎症性サイトカイン)を起こしますが、免疫力が高い、またはワクチンで一部防御されていると、この反応が抑制され、高熱が出ません。


特徴2

一般的な風邪に似た症状:上気道症状(喉の違和感、軽い咳、鼻水)が中心となりこれは、インフルエンザウイルスが上気道にとどまり、下気道や全身への侵襲が抑えられている状態です。

特徴3

倦怠感・だるさ:高熱がなくても、インフルエンザウイルス自体が作り出す毒素や炎症性物質が全身に作用し、通常の風邪よりも強い全身性の疲労感(倦怠感)を引き起こします。

特徴4

頭痛・関節痛・筋肉痛:インフルエンザの特徴的な全身症状ですが、軽症例では高熱を伴わないため、「風邪のひどいもの」や「疲れ」として見過ごされがちです。


🛡️ 隠れインフルエンザが起こりやすい疫学的・免疫学的背景

インフルエンザの症状の出方には、ウイルスの病原性だけでなく、個人の免疫状態が大きく影響します。

1)ワクチンの接種歴

ワクチンは感染を完全に防げなくても、重症化を防ぐ効果が非常に高く接種者が感染した場合、抗体によってウイルスの増殖が一部抑えられ、典型的な高熱が出にくい軽症で済む可能性が高まります。

2)個人の免疫力の違い

健常な若年者など、普段から免疫力が高い人は、ウイルスに曝露しても速やかに免疫応答が開始され、重症化する前に症状が収束に向かうことがあります。

3)高齢者や免疫抑制状態

高齢者は免疫老化により、本来ウイルスに対抗するために必要な「発熱」という免疫応答を十分に起こせないことがありこのため、重症化していても高熱が出ないという、最も注意が必要なケースになります。

4)解熱剤などの服用

頭痛や喉の痛みで市販の鎮痛解熱薬を服用している場合、それが発熱を抑えてしまい、インフルエンザの典型的な症状を覆い隠してしまうことがあります。


🚨 最も注意すべき感染拡大のリスク

隠れインフルエンザの最大の危険性は、**「流行の連鎖」**です。

◎無症状/軽症による誤認:当人が「ただの風邪」と誤認し、出勤・通学・外出を続けることで、知らず知らずのうちにウイルスをまき散らします。

◎脆弱な層への波及:感染を受け取った相手が、免疫力の弱い高齢者、乳幼児、基礎疾患を持つ人だった場合、その人たちは肺炎やインフルエンザ脳症といった重篤な合併症を引き起こし、致死率が上昇する可能性があります。


🏥 隠れインフルエンザの最新対処法と対策

1)早期の受診と検査

発熱がなくても、「体がだるい」「通常の風邪より関節痛や頭痛が強い」「倦怠感が2〜3日以上続く」といった症状がある場合は、流行期にはインフルエンザを疑い、医療機関に相談してください。

抗原検査キットの精度が向上していますが、医師の診察と判断が最も確実です。

2)抗ウイルス薬の使用

インフルエンザは発症から48時間以内に抗ウイルス薬(タミフル、ゾフルーザなど)を服用することで、症状の期間を短縮し、重症化を防ぐことができ軽症であっても、この早期診断・早期治療が重要です。

3)感染拡大を防ぐ行動の徹底

受診する際は必ず不織布マスクを着用し、事前に医療機関に症状を伝えることで、院内感染を防ぐ配慮をしてください。

手洗やいうがいに加え、手指消毒の徹底、特に室内での加湿と換気(室温を下げすぎないよう注意)は、ウイルスの拡散を防ぐための基本です。


インフルエンザの流行期には、**「いつもと違う倦怠感や体調不良」を感じたら、「自分は感染源かもしれない」**という視点を持つことが、社会全体の感染拡大を防ぐ鍵となります。  

2025年10月30日木曜日

感染症速報-33.新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違い:医学的分析と実際の事例-

今回は、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違いについて解説していきますのでお付き合いください。

新型インフルエンザと季節性インフルエンザの最も本質的な違いは、「集団免疫の有無」にあります。

この違いが、医学的な特性(病原性や症状)と社会的な影響(感染拡大の規模)に大きな差を生じさせます。


◎新型インフルエンザ(パンデミック)

・新しいタイプのインフルエンザA型ウイルス。動物(主に鳥や豚)のインフルエンザウイルスが遺伝子変異し、ヒトへの感染力とヒトからヒトへの伝播能力を獲得したもの。

・大部分の人が免疫を持っていない(あるいは、ごくわずかな共通抗原に対する免疫しかない)。

・爆発的に感染が拡大する(パンデミック)。短期間で世界中に広がる。

・免疫がないため、重症化率や致死率が高くなる可能性がある(ただし、新型インフルエンザA/H1N1pdm2009のように季節性と同等か低い場合もある)。

・若年層や健康な人にも重症者や死者が出やすい傾向がある(従来の免疫が役に立たないため)。


◎季節性インフルエンザ(エンデミック)

・過去の流行株が**変異(抗原ドリフト)**しながら毎年流行しているもの(A型、B型)。

・過去の感染やワクチン接種により、ある程度の集団免疫が形成されている。

・毎年決まった時期(冬)に、ある程度予測可能な範囲で流行する。

・重症化するのは主に高齢者や基礎疾患のある人に限られる。

・高齢者や乳幼児など、免疫力の低い層が重症化しやすい。


【医学的なポイント:抗原性の違い】

新型インフルエンザは、ヒトの免疫システムがこれまで出会ったことのない、ウイルスの表面にある**ヘマグルチニン(HA)やノイラミニダーゼ(NA)**といった抗原が大きく異なっています。

・季節性インフルエンザ:小さな変異(抗原ドリフト)を繰り返すため、既存の免疫が部分的かつ継続的に作用する。

・新型インフルエンザ:大きな変異(抗原シフト)によって出現するため、免疫がほぼ通用しない。


2. 実際の事例による解説

新型インフルエンザの最も新しい事例として、2009年の新型インフルエンザA(H1N1)パンデミックと、通常の季節性インフルエンザを比較します。

・事例:2009年の新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009

・豚由来のウイルス株が変異し、ヒトに感染。2009年春に発生後、数か月で世界的なパンデミックに発展し多くの国で流行のピークが夏〜初秋にずれ込むという季節外れの流行が発生。

・当初、基礎疾患のない若年層や小児に重症者や死亡例が目立ちました。これは、高齢者の一部が過去の株との交差免疫を持っていたためと考えられます。

・症状季節性インフルエンザと類似していますが、下痢などの消化器症状が多い可能性が指摘されました。

・社会的影響世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言。学校の休校、外出自粛、医療体制の逼迫など、社会活動に大きな影響を与えました。


【事例が示す本質的な違い】

2009年の事例では、新型インフルエンザの致死率は当初懸念されていたほど高くありませんでしたが(多くの国で季節性と同等かそれ以下)、**「免疫のない集団への急速な拡大力」**が問題となりました。

・急速な感染拡大(パンデミック性):季節に関係なく、短期間で多数の人が罹患し、医療体制が一時的に麻痺する事態を招きました。

・既存のワクチン・治療薬の有効性:従来の季節性ワクチンがほとんど効果を持たないため、新しいワクチンの開発・供給が急務となりました。

・最終的に、2009年の新型インフルエンザは世界中に広がり、多くの人が免疫を獲得したため、2011年4月以降は「季節性インフルエンザ」の一つとして扱われるようになっています。


この変遷こそが、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの関係性を端的に示しています。 

2025年10月26日日曜日

感染症速報-32.💉インフルワクチン「注射」 vs 「鼻スプレー」どっちがいい?最新の日本情報を踏まえて徹底解説!😷🚨-

 インフルエンザ、例年より早く流行シーズン入り!積極的なワクチン接種を!厚生労働省の発表によると、今年のインフルエンザは2025年10月3日に流行シーズン入りしました。

これは例年よりも早いペースで提供されたデータ(2025年10月13日〜19日)では、定点医療機関からの患者報告数は12,576人と、前週から大幅に増加しています。

1万人を超えるペースが昨年より約1か月早いという事実は、感染拡大のスピードが速いことを示唆しています。

専門家が指摘するように、インフルエンザA型が流行し始めており、多くの方がまだワクチン接種を済ませていない状況ですでに大流行が始まってしまっています。


◎なぜワクチン接種が重要なのか?

インフルエンザが大流行すると、受診すべき患者さんが受診できなくなるという、医療崩壊にも繋がりかねない事態が最も避けたい状況です。

ワクチンの接種率低下は、大流行の引き金の一つとされていてインフルエンザワクチンの最大の目的は、重症化を防ぐことです。

特に、基礎疾患を持つ方や高齢者、小さなお子さんにとっては、重症化は命に関わるリスクがあります。

寒さに向かう季節を元気に過ごすためにも、積極的なワクチン接種が強く推奨されます。


◎💉 悩ましい選択!「注射」と「鼻スプレー」のメリット・デメリットを比較

「子どもが注射を嫌がる…」とワクチン接種をためらう親御さんもいるのではないでしょうか。

実は、インフルエンザワクチンには、従来からの**「注射(不活化ワクチン)」に加え、「鼻スプレー(生ワクチン)」**という選択肢もあります。

それぞれの医学的・疫学的な特徴とメリット・デメリットを比較してみましょう。

・注射の不活化ワクチンは、注射で不活性化したインフルエンザウイルスを体内に入れ、全身の免疫反応で抗体を作り、長年の実績とデータが豊富で安心でき接種対象が広いですが、注射の痛みがありことと針を刺した部位の腫れなどの副作用が強いことです。

・一方鼻スプレーは弱毒化したインフルエンザウイルスを使用した生ワクチンで、鼻からスプレー鼻やのどの粘膜に免疫を作り、感染予防効果もより高いことが期待されています。

また、注射の痛みがなく、子どもへの負担が少ないく粘膜免疫による高い感染予防効果が認められていますが、2歳未満は接種不可であることと日本での普及状況や保険適用に注意が必要となります。


🔍 日本国内での「鼻スプレー」の現状

鼻スプレータイプのワクチンは、注射の痛みがないため、お子さんの負担軽減に繋がる非常に魅力的な選択肢でまた、粘膜に直接免疫を作るため、感染自体の予防効果も高いと期待されます。

しかし、日本国内において、この鼻スプレータイプのインフルエンザワクチン(フルミストなど)は、現在、厚生労働省の承認を得ておらず定期接種の対象外です。


⚠️注意点: 日本では「自由診療(保険適用外)」として一部の医療機関で自費で接種が可能で医療機関によって導入状況が異なりますので、ご希望の場合は、かかりつけ医や接種予定の医療機関に事前に確認が必要です。


👶 子どもの接種で迷ったら?

痛みへの配慮を優先したい:費用や承認状況を確認した上で、鼻スプレーを検討しても良いでしょう。

・実績と広範な対象年齢を優先したい:長年使用され、データが豊富な**注射(不活化ワクチン)**が最も一般的な選択肢です。

・最終的には、お子さんの健康状態や生活環境、そしてかかりつけ医と相談して、最適なワクチンを選びましょう。


💡 まとめ:早く、そして確実に!今年のインフルエンザ流行はスピードが速いことが予想されます。

最も重要なのは、**「接種できるタイミングで、できるだけ早く接種する」**ことです。

インフルエンザワクチンは接種から効果が出るまでに約2週間かかるとされています。

本格的な寒さが到来し、インフルエンザの感染がさらに拡大する前に、ご家族全員で接種を検討し、準備を進めていきましょう!💪


2025年10月23日木曜日

感染症速報-31.2025/26年シーズン:インフルエンザワクチン接種で流行に備えましょう!-

 💉日本ワクチン学会は、2025/26年シーズンのインフルエンザワクチン接種を**「強く推奨する」との声明を発表しました。

昨シーズンはインフルエンザの報告数が過去最多**となり、国内外の人の移動増加も相まって、今シーズンも感染が拡大する懸念があります。

この記事では、インフルエンザワクチンの医学的な重要性と、最新の情報を分かりやすく解説します。


◎医学的視点:なぜインフルエンザワクチン接種が重要なのか?

インフルエンザは単なる「強い風邪」ではなく、インフルエンザウイルスは重症化すると、肺炎、脳炎・脳症、心筋炎などの深刻な合併症を引き起こし、命に関わることもあります。

ワクチン接種の最大の目的は、インフルエンザの発症そのものを予防することに加え、重症化や死亡を予防することにあります。

特に免疫力が低下しがちな方にとっては、身を守るための最も効果的な手段です。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が続くなか、インフルエンザとの同時流行を防ぎ、発熱外来などの医療機関の負担を軽減する「社会的意義」も非常に大きいとされています。

重症化リスクが高い方(接種が強く推奨される方)特に以下のグループは、インフルエンザが重症化するリスクが高いため、必ず接種を検討してください。

・65歳以上のご高齢者

・基礎疾患(心臓、腎臓、呼吸器、免疫機能などの慢性疾患や糖尿病など)を持つ方生

・後6ヶ月以上のお子様

・妊婦(胎児に影響はないとされており、重症化予防のメリットが大きい)


◎2025/26年シーズン:最新のワクチン情報と供給状況


1. 新型インフルエンザワクチンは「3価」に今シーズン、日本で主に供給されるインフルエンザワクチンは、従来の4価(A型2株+B型2株)から、B型株の一つが除外された**「3価ワクチン」**になります。

・A型株2種類*A/ビクトリア/4897/2022(H1N1)+A/パース/722/2024(H3N2)

・B型株 1種類B/オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)


【背景にある疫学的な変化】

1.B型インフルエンザウイルスには山形系統とビクトリア系統の2つがありましたが、近年、B型山形系統のウイルスが世界的にほとんど検出されなくなったため、国際的な専門家の推奨に基づき、ワクチンから除外されましたがこれは、ウイルス流行状況を反映した最新の対策です。

2. 供給は潤沢に見込み今シーズンのワクチン供給量は約5,293万回分と、昨シーズン(4,581万回分)を上回る量が見込まれており、供給不足の心配はないとされています。

さらに、例年通り9月下旬から医療機関への出荷が開始されるため、早期の接種準備が可能です。


◎新しいワクチンの選択肢

近年、特に免疫効果を高めるための新しいタイプのワクチンが承認され、選択肢が増えています。

1.高用量ワクチン特徴: 従来のワクチンよりも抗原量が約4倍多く含まれています。

対象は60歳以上の成人で、効果としては高齢者は免疫反応が弱くなる傾向があるため、抗原量を増やすことで、**より高い免疫効果(防御効果)**が期待されます。

2024年12月に承認されました。

2.経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト):鼻にスプレーして噴霧するタイプの生ワクチンで針を使わないため、注射が苦手な方や幼いお子様にとって大きな利点です。

対象:は一般的に2歳から19歳未満で、効果:は接種部位(鼻粘膜)で局所免疫(粘膜免疫)が誘導されることも期待されます。

2024年3月に承認されました。


💡アドバイス: これらの新しいワクチンが自分に合っているか、接種が可能かどうかは、かかりつけ医とよく相談して決めましょう。


最適な接種のタイミングとその他の予防策接種のタイミングインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬に始まります。

ワクチンの効果は接種後約2週間で発現し、その後約5ヶ月間持続するため、流行開始に間に合わせるためには、10月から11月中の接種が最も推奨されます。

日常生活で大切な予防策ワクチン接種と並行して、日頃からの基本的な感染対策を続けることが、インフルエンザの拡大を防ぐ鍵となります。

※手洗い、手指消毒、外出後や食事前は、石鹸と流水での手洗いやアルコール消毒を徹底しましょう。

※咳エチケットとマスクの着用は 症状がある場合はもちろん、混雑した場所ではマスクを着用しましょう。

※こまめに窓を開けるなどして、室内の空気を入れ替えましょう。

※規則正しい生活:をして十分な睡眠とバランスの取れた食事で、免疫力を高めておきましょう。


【参考資料】

『2025/26 シーズンに向けたインフルエンザワクチン接種に関する考え方とトピックス 』


【追加の話】

◎季節性インフルエンザは、ウイルスが少しずつ変異しながら毎年流行するもので、多くの人が免疫を持っています。

◎一方、新型インフルエンザは、抗原性が大きく異なる新しいウイルスが出現し、ほとんどの人が免疫を持っていないため、全国的に急速に広がり、社会に大きな影響を与える可能性があります。


2025年10月21日火曜日

感染症速報-30.😱【緊急警報】8万人超の異常事態!長引く咳、「百日咳」再拡大の医学的・疫学的真実と5つの対策-

 🚨はじめに:なぜ今、百日咳がここまで危険なのか?

現在、日本国内で百日咳(Pertussis)の感染報告数が記録的なレベルで急増しています。

2025年の累計患者数は10月14日時点で8万人を突破し、これは集計方法変更後の過去最大規模です。

パンデミック後の現在、「ただの長引く風邪」として見過ごされがちなこの病気が、公衆衛生上、なぜここまで憂慮すべき事態となっているのか。

その医学的・疫学的な背景と、私たちが今すぐ取るべき対策を最新情報に基づいて分析し、5つのポイントに絞って解説します。


1. 疫学的異常事態:「免疫の切れ目」と感染サイクル加速の脅威

【分析:疫学・公衆衛生】

百日咳の患者数が過去最高を更新している背景には、高齢化とは異なる疫学的要因が強く影響しています。

最大の要因は**「免疫の減弱(Waning Immunity)」**です。

小児期の予防接種(DPT-IPV)で獲得した免疫は、一般的に5~10年で徐々に低下し、現在の成人(特に思春期以降)は、集団として**「免疫の切れ目」にあり、これが感染の温床となっています。

また成人は軽症化しやすいため、診断されずに日常生活を送り、無意識のうちに感染源となり、最も重症化リスクの高いワクチン未接種の乳児**へと感染サイクルを加速させています。

さらに、COVID-19による非特異的感染対策(マスク、ソーシャルディスタンス)の緩和が、百日咳菌という飛沫感染を主とする細菌の伝播機会を一気に増やし、爆発的な感染拡大(アウトブレイク)を引き起こしています。


2. 医学的な最大リスク:乳児の「無呼吸発作」と重篤な合併症

【分析:医学・小児科学】

百日咳は成人にとって「しつこい咳の病気」で済みがちですが、特に生後6カ月未満の乳児にとっては生命を脅かす病気です。

乳児は気道が狭く、典型的な激しい咳発作(痙咳期)を起こす力が弱いため、むしろ咳発作がなく、代わりに呼吸が止まる「無呼吸発作」を起こしやすいという特徴があり、これは突然死に直結する危険な症状です。

さらに、重度の肺炎や百日咳脳症(菌が産生する毒素による脳障害)といった不可逆的な合併症のリスクも高く、早期の適切な診断と治療が必須です。

【最新医学情報】

この乳児を重症化から守るための国際的な戦略として、**「コクーン戦略(Cocoon Strategy)」と妊婦への接種(Tdap)**が推奨されています。

特に妊婦への接種は、胎盤を通じて抗体を乳児に移行させ、生後間もない時期の重症化を予防する最も効果的な手段として注目されています。


3. 成人の診断困難性:なぜ「長引く風邪」と誤診されるのか?

【分析:医学・診断学】

百日咳拡大の裏側には、成人の**「診断率の過小評価」**という重大な問題があります。

百日咳菌の毒素による咳は非常に特徴的ですが、成人では既存の免疫や再感染により症状が非典型的になりやすく、「咳が2週間以上続く」という遷延性咳嗽として扱われがちです。

カタル期の初期症状は普通の風邪と区別不能!!!

痙咳期も、成人では「ウープ」という笛のような百日咳特有の吸気音が出ないケースが多い

医療機関側も、長引く咳に対して一般的な呼吸器疾患の検査を優先しがち

この診断の遅れが、感染期間の長期化(百日咳の治療薬であるマクロライド系抗菌薬は咳発症から2~3週間以内の投与が最も効果的)と、知らない間に周囲へ菌を拡散させる原因となっています。


4. 緊急対策:ブースター接種の再評価と「疑う」意識の徹底

【対策:公衆衛生・予防医学】

この異常事態を収束させるには、以下の2点における意識改革と行動が必要です。

1)「疑いの閾値(いきち)」を上げる: 2週間以上続く咳がある場合、自身で「風邪」と断定せず、百日咳の可能性を強く疑い、医療機関を受診し受診時には「百日咳の検査を希望」と明確に伝えることが、PCR法や血清抗体法による早期診断と適切な抗菌薬治療開始(周囲への感染拡大阻止)に繋がります。

※「疑いの閾値(いきち)」とは、医学や疫学において、ある疾患の可能性を考慮し、検査や診断的介入を行うかどうかの判断基準となるレベルを指す言葉です※

2)成人へのブースター接種の検討: 現在、多くの先進国で成人や思春期への百日咳含有ワクチンの**追加接種(ブースター)**が推奨されています。

特に、医療従事者や、乳児・高齢者と日常的に接する機会の多い方は、自身の予防と、最も弱い世代を守る「守り手」としての役割を果たすため、かかりつけ医と接種の必要性について相談することが急務です。


5. 最新の知見:公衆衛生における「非特異的対策」の再認識

【分析:疫学・感染制御学】

COVID-19パンデミック中に徹底された**「非特異的対策」**(マスク、手洗い、換気)は、特定の病原体だけでなく、百日咳菌のような飛沫・接触感染する全ての呼吸器感染症に対して有効です。

感染対策の緩和は社会経済活動の回復には不可欠でしたが、その反動として百日咳の伝播が激化した事実は、公衆衛生の視点から非常に重要な教訓となります。

咳や鼻水などの症状がある際は、周囲への配慮として、咳エチケットの徹底と手指衛生の励行を習慣化し、社会全体で感染リスクを最小化する努力が、今後も求められます。


百日咳は治療可能な細菌性疾患で、各人の意識と行動が、感染の鎖を断ち切り、特に未来ある乳児たちの命を守ることに直結します。

2025年10月19日日曜日

感染症速報-29.【警鐘】新型コロナ、第41週の報告で「増加傾向」!油断禁物!特に子どもの感染と高齢者の重症化に警戒を!-

 皆さん、こんにちは。

今回のブログでは、2025年第41週(10月6日~10月12日)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況に関する報告書を、医学的・疫学的な視点から徹底分析し、最新情報とともにお届けします。

「5類移行で普通の風邪になった」と思っていませんか?データは**「まだ終わっていない」**と警鐘を鳴らしています。


🚨 発生状況の分析:全国的な「増加傾向」が明確に!

報告書によると、第41週の全国の報告数は14,303件、定点当たり報告数は3.72でしたが注目すべきは、昨年同期の2.38と比較して増加傾向にある点です。

これは、季節の変わり目である秋口に体調を崩しやすい人が増えることや、主流株が「NB.1.8.1株(ニンバス)」や「PQ.2株」などの感染力が高いオミクロン株系統に置き換わっていること(※最新の検索情報による)が影響している可能性があります。

専門家は、2025年に入っても感染者数は増加傾向にあることを示しており、基本的な感染対策を緩めるべきではないことを示唆しています。


🏢 地域差の拡大:三大都市圏とその周辺での警戒レベル

報告数が多いのは、**埼玉県(824件)、東京都(987件)、愛知県(848件)**など、大都市圏とその周辺地域です。

人口密度が高く、人流が多いこれらの地域では、感染拡大のリスクが引き続き高い状態にあります。

地域の実情に応じて感染対策レベルが異なるため、お住まいの地域や訪問先の感染状況を把握することが、個々人のリスク管理に不可欠です。


👦 👧 年齢別の傾向:「子ども」と「高齢者」に異なる警戒ポイント

1. 子どもたちの感染拡大(10歳未満の報告数が突出)

年齢別の定点当たり報告数では、10歳未満が0.59と最も高い数値を示しているのは、学校や園など集団生活の場での感染伝播が活発であることを示しており、子どもを持つご家庭は特に注意が必要です。

また、最新の知見(※検索情報による)では、現在の主流株の症状は喉の痛みや発熱など、従来の風邪と似た症状が中心ですが、中には後遺症に悩まされるケースも確認されています。

2. 高齢者の「重症化リスク」の現実

一方、入院患者の届出数は1,719件で、年齢別では80歳以上が最も多いという事実が報告されています(28,221件)。

ICU入室患者は49件、人工呼吸器利用は13件と、重症化の指標となる数値も確認されています。

このデータは、高齢者層における重症化リスクが依然として高いことを明確に示しており、高齢者や基礎疾患のある方への感染防御が最重要課題であることを裏付けています。


💡 今後の行動で気をつけるべきこと:最新の疫学データからの提言

この報告書は、2025年4月7日以降、サーベイランスの定点数が変更されているという注意書きがあります。

これは、過去のデータとの単純な比較は難しいものの、足元の感染増加傾向と重症者の構成を理解するための重要な資料となります。

多くの人の目につくように、今改めて、以下の行動を呼びかけます。

◎基本的な感染対策の徹底:マスク着用の有無にかかわらず、手洗い・手指消毒、咳エチケットは最も基本的な予防策です。

◎高齢者・基礎疾患のある方への配慮:重症化リスクの高い方と接する際は、特に体調管理に気をつけましょう。

◎体調不良時の対応:風邪症状(特に喉の痛み、発熱、倦怠感)がある場合は、無理せず休養し、重症化リスクに応じて早めの医療機関への電話相談・受診を検討してください。(※5類移行に伴い、医療費は自己負担が発生します。)

◎ワクチンの検討:高齢者や基礎疾患のある方は、重症化予防の観点から推奨されているワクチン接種(XBB.1.5対応など)について、改めて医療機関と相談することが重要です。

新型コロナウイルスは、決して「終わった病気」ではありません、流行は依然として続いています。

データに基づき、適切な知識と警戒心を持って、秋冬の感染シーズンを乗り越えましょう。

2025年10月16日木曜日

感染症速報-28.鼻にスプレーするだけの💉痛くないインフルエンザワクチン!?「フルミスト」を徹底解説-

【痛くないインフルエンザワクチン!?「フルミスト」とは】

毒性を弱めた生きたインフルエンザウイルスを使用し、作用メカニズムは弱毒化された生きたウイルスが、自然感染に近い形で鼻や喉の粘膜で増殖しこれにより、血液中のIgG抗体に加え、「分泌型IgA抗体」(粘膜の免疫)も作り出されます。

この抗体が、体内でウイルスが増殖するのを防ぎ、重症化を防ぐことが主な目的です。

◎粘膜免疫による感染予防効果: フルミストは、インフルエンザウイルスが侵入する鼻や喉の粘膜に直接免疫をつけます。これにより、感染そのものを防ぐ効果が期待できます。

◎細胞性免疫による重症化予防: 生ワクチンであるため、ウイルスに感染した細胞自体を破壊する細胞性免疫も作られ、抗体だけでなく重症化を防ぐ高い効果も期待できます。

◎対象年齢は2歳から19歳未満で、注射が苦手な子供に適していることから注射が苦手な子どもにとって大きな選択肢となりつつあります。

2024年から日本国内でも接種が可能になりました


👍 フルミストのメリットと注意点(デメリット)

✅ メリット

◎「痛くない」最大の利点: 注射の痛みやトラウマがないため、子どもにとって負担が非常に少ないです。

◎接種回数が少ない: 13歳未満でも1回接種で完了するため、通院の手間やコスト(交通費・保護者の休みなど)が削減できます。

◎株違いでも効果に期待: 粘膜免疫の性質上、予測と異なる株が流行した場合でも、ある程度の交差免疫が期待できます。


⚠️ 注意点(デメリット・接種できないケース)

◎費用が高め: 自由診療のため医療機関によりますが、一般的に注射2回分よりやや高くなる傾向があります(約8,000円が目安)。自治体の助成制度を確認しましょう。

◎副反応: 注射部位の腫れや痛みはありませんが、鼻水や鼻づまりが起こることがあります(程度は軽度)。

◎接種不可のケース:重症のぜんそくの方(刺激で発作誘発の可能性)・免疫不全(病気や治療によるもの)の人・ゼラチンアレルギーがある人・アスピリンなどの一部の解熱鎮痛剤を服用している人。


【アレルギーについて】 

どちらのワクチンも製造過程で鶏卵を使用しますが、フルミストは注射型より卵成分がやや多く残る可能性があります。

重症な卵アレルギーや、ワクチンの成分に重いアレルギーがある方は、必ずかかりつけ医にご相談ください。


💡 まとめ

フルミストは、注射の痛みがなく、感染予防に高い効果が期待できる革新的なワクチンですが、接種対象や体調によっては適さない場合もあります。

お子様の健康状態や生活スタイルに合わせて、かかりつけの小児科医とよく相談し、最適な予防接種の方法を選びましょう。

あなたのお住まいの自治体では、フルミストの費用助成はありますか?調べてみる価値がありそうですね。













2025年10月12日日曜日

感染症速報27.異例の早期流行!インフル・新型コロナワクチンは接種すべきか否か?-

 🚨 2025年秋、異例の「ダブル流行」に警戒!

今年の秋は、例年とは違う感染症の状況にあります。

◎インフルエンザは、流行開始の目安を2週連続で超え、例年より約1ヶ月早い異例の早期流行となっています。

学級閉鎖も増加しており、今後の本格的な流行に備える必要があります。

◎新型コロナウイルスは、報告数は減少傾向にあるものの、依然として少なく特に高齢者層では入院が続いており、季節性のウイルスとして弱者に重い打撃を与えるリスクは残っています。

インフルエンザも新型コロナも症状だけでは区別が難しく、両方の検査が行われています。

※この「ダブル流行」の状況では、特に警戒が必要です※


🛡️ ワクチンが果たす「重症化予防」という大切な役割

こうした状況を踏まえ、インフルエンザと新型コロナ、それぞれのワクチンはどのような効果が期待できるのでしょうか?

※インフルエンザの場合成人の医療機関受診リスクが36~54%(米国/日本) 低下し、入院リスクも41~55%低下、更に感染しにくくなり重症化もしにくくなる。

※新型コロナは、65歳以上の入院予防効果(日本)63.2%、救急受診予防効果(米国)33%低下し、特に重症化や入院リスクを低下させる。

いずれのワクチンも「感染を完全に防ぐ万能薬」ではありませんが、重症化や医療機関への受診・入院のリスクを有意に低下させるという高い有効性が確認されていることからしてこれは、個人を守ると同時に、医療システムを守る上でも非常に重要です。


📢 なぜコロナワクチンの接種率が低いのか?

新型コロナウイルスは弱毒化しているものの、日本感染症学会など3学会は共同で見解を発表し、接種を強く推奨しています。

その理由は、新型コロナによる年間死亡者数がインフルエンザよりも依然として多いためです。

しかし、昨シーズンの新型コロナワクチンの接種率は、インフルエンザワクチンの半分以下という自治体が多く、このギャップが課題となっています。


✅ 接種の判断は「メリットがあるか」で

ワクチン接種は、決して**「正しいか/間違いか」の二択ではなく、「自分や家族にとってメリットがあるか/ないか」**という意思決定です。

接種を強く推奨される人は65歳以上の高齢者、慢性呼吸器・心疾患、糖尿病、肥満など基礎疾患のある人、免疫抑制状態にある人。

接種を検討すべき人とは、あくまでも個人判断となり、若年者層、医療機関や介護施設に頻繁に出入りする人(自他を守るため)。

接種後には一時的な発熱や倦怠感などの副反応が起こることもありますが、ハイリスク者においては「感染した際の重症化リスク」と「ワクチンの副反応リスク」を比較し、重症化を避けるメリットの方が大きいと判断するのが医学的・公衆衛生的見解です。


💡 まとめ:冬に備えて今すぐできること

インフルエンザが早期流行し、新型コロナも継続的に存在する今シーズンは、感染対策の「ガードを上げる」ことが求められます。

1)ワクチン接種: 特にハイリスクの方は、インフルエンザと新型コロナの両方のワクチン接種を強く検討しましょう(同時接種も可能です)。

2)基本的な感染対策の徹底: 手洗いやうがい、マスク着用(必要な場面で)、換気や湿度の管理を徹底しましょう。

※異例の流行に備え、適切な予防行動で自分と大切な人を守りましょう※

2025年10月5日日曜日

感染症速報26.🚨 【全国で流行入り】インフルエンザが「異例の早さ」で本格シーズン突入!-

厚生労働省は2025年10月2日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表しました。

これは、全国の定点医療機関あたりの患者報告数が、流行開始の目安とされる1.0人を超えたことを意味します。

注目すべきは、この流行入りが**「去年より約1か月早い」**という異例のタイミングである点です。

ではなぜ、これほど早くインフルエンザの波が押し寄せたのか。医学的・疫学的な最新分析を踏まえ、その重要性と私たちが今すぐ取るべき対策を解説します。

1. 異例の早期流行を招いた「2つの疫学的な要因」

例年、インフルエンザの流行シーズンは12月頃に始まり、ピークは1月~3月頃ですが、2025年は季節が深まる前に感染が拡大しています。

専門家が指摘する主要な要因は以下の通りです。

(1) 免疫負債(Immunity Debt)の影響

新型コロナウイルスのパンデミック期間中、徹底的な感染対策(マスク、手洗い、活動制限)により、インフルエンザウイルスへの自然な暴露機会が激減しました。

その結果、特に子どもたちを中心に、集団全体のインフルエンザに対する免疫(防御力)が低下しています。

この「免疫負債」があるため、例年より少ないウイルス量や早い時期でも、感染が広がりやすくなっていると考えられます。

(2) 季節外れの環境と国際的な往来

専門家は以下の点を指摘しています。

猛暑と空調環境: 猛暑により、多くの人がエアコンを強く効かせた屋内で過ごす時間が増えました。

インフルエンザウイルスは、**「乾燥し、温度が下がる」**環境で活性化し換気が不十分な冷房の効いた部屋は、ウイルスの拡散リスクを高める温床となり得ます。

国際的な人の移動: 大阪・関西万博など国際イベントの開催や、水際対策の緩和により、海外からの観光客が増加しています。

すでにインフルエンザが流行している国からの入国者がウイルスを持ち込み、国内の早い流行開始の引き金になった可能性が考えられます。

2. 今シーズンのインフルエンザの重要性とリスク

「インフルエンザなんて毎年かかるもの」と軽く見てはいけません。

早期流行は、以下の点で特に警戒が必要です。

重症化リスクの集中: 流行が早まることで、ワクチン接種が進んでいないタイミングで感染が拡大し、特に高齢者や基礎疾患を持つ方、乳幼児などの重症化リスクが高い層が大きな影響を受ける可能性があります。

医療機関の逼迫: 例年より早い時期にインフルエンザ患者が増えることで、新型コロナウイルスやその他の季節性感染症の患者と重なり、地域の医療機関に大きな負荷がかかることが懸念されます。

3. 最新情報を踏まえた「最優先の感染対策」

厚生労働省は、手洗いやマスク、換気などの基本対策を呼びかけていますが、この早期流行の状況において、特に注力すべき対策があります。

✅ 最優先事項:インフルエンザワクチンの早期接種

日本では例年12月~3月が流行期のため、12月中旬までに接種を終えることが推奨されていますしかし、今年はすでに流行期に入っています。

接種のメリット: ワクチンは発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化や合併症を防ぐ上で最も有効な手段です。

接種タイミング: 流行の波に乗り遅れないよう、特に重症化リスクの高い方は、かかりつけ医と相談の上、できるだけ早く接種を検討してください。

✅ 環境対策:換気の徹底

猛暑が落ち着いた今も、空調を使用している室内では換気が非常に重要です。

定期的に窓を開けて空気の入れ替えを行うか、換気扇や高性能フィルターを活用し、室内のウイルス濃度を下げましょう。

✅ 基本対策の再徹底

◎手洗い: 外出後や食事前だけでなく、こまめに石鹸と流水で手を洗う習慣を再徹底しましょう。

◎咳エチケットとマスク: 咳や症状がある場合は必ずマスクを着用してください。また、人混みや混雑した場所へ行く際も、マスクの着用は有効な防御策です。


【まとめ】


インフルエンザの全国的な早期流行は、季節の変わり目における公衆衛生上の大きなサインです。

過去数年で免疫状況が変化している中、一人ひとりの意識的な行動が、自分自身と大切な人を守ることにつながります。

この情報を参考に、今一度、ご家族や職場の感染対策を見直しましょう。

2025年10月3日金曜日

感染症速報-25.🚨 早くも到来!東京のインフルエンザ流行シーズンを医学的・疫学的に検証-

 東京都が発表した「インフルエンザ流行シーズン入り」は、例年と比較して極めて早い時期の到来であり、公衆衛生上の懸念が高まります。

当ブログでは、この早期流行の背景を医学的・疫学的な観点から分析し、最新の情報を踏まえた感染対策を詳しく解説します。

1. 流行シーズン入りの基準と今回の状況の特殊性

💡 流行開始の定義

インフルエンザの「流行シーズン入り」は、定点医療機関あたりの患者報告数が1.0人を超えたときが目安とされてこれは、地域内でインフルエンザの感染が広がり始めたことを示す重要な指標です。

📈 東京の状況(最新情報に基づく検証)

元の文章にある「先月28日までの1週間で1.96人」という報告数は、流行開始の目安(1.0人)を大幅に上回っており、都内でインフルエンザがすでに勢いよく拡大していることを示しています。

極めて早い流行期入り: 例年、日本でのインフルエンザの本格的な流行は12月〜3月頃にピークを迎え、流行シーズン入りも11月以降となることが多いですが、今年は10月に流行シーズン入りしたということで、これは過去のパターンから逸脱した異常な早期流行と言えます。

過去の早期流行としては、2023年度も比較的早い時期に流行が始まりましたが、今回はさらに前倒しになった可能性が示唆されます(※検索結果には2024年の11月以降の情報が含まれており、記事の時期によって流行の進展に時間差があることがわかりますが、10月の流行シーズン入りは早いことに変わりありません)。

2. 早期流行の背景にある疫学的要因

ではなぜ、これほど早く流行が始まったのでしょうか?主な疫学的要因として、以下の点が考えられます。

🦠 免疫負債(Immunity Debt:イミュニティ・デット)の影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、徹底された感染対策(マスク、手洗い、外出自粛)により、インフルエンザを含む多くの呼吸器感染症への暴露機会が減りその結果、特に子どもたちを中心に、集団としての**インフルエンザに対する自然免疫が低下している(=免疫負債)**状態にあります。

この免疫の空白期間により、例年より低い感染レベルでも流行が拡大しやすくなっていると考えられます。

※「イミュニティ・デット」(免疫負債)とは、COVID-19パンデミック中に人々が感染対策(ロックダウン、マスク着用など)を徹底した結果、通常のウイルスや細菌にさらされる機会が減り、集団免疫が低下した状態を指す概念です※


🌏 世界的な流行パターンの変化

近年、特に南半球など海外で、インフルエンザの流行開始時期が変化し、通年的な流行が見られる報告があり国際的な往来が回復する中で、これらの変化が日本に持ち込まれ、例年とは異なるタイミングで流行が始まる可能性があります。

🏫 集団生活における感染拡大

インフルエンザは特に**小児(14歳以下)**で患者報告数が多い傾向があり、学校や保育施設での集団生活を通じて感染が急速に拡大し早い時期に流行が始まると、学級閉鎖などの影響も早期に出やすくなります。

3. 最新情報を踏まえた感染対策の徹底

本格的な流行の波に備えるため、東京都が呼びかける対策に加え、医学的に推奨される最新の対策を徹底しましょう。

【感染予防の具体的な行動と医学的根拠】

◎ワクチン接種:最重要対策で日本では例年12月〜3月が流行期のため、12月中旬までに接種を終えるのが望ましいとされています。

ワクチンは発症予防だけでなく、重症化予防に極めて有効で特に高齢者、基礎疾患のある方、妊婦、乳幼児は優先的に接種を。

◎手洗い・消毒:**「こまめな手洗い」**を徹底。石鹸と流水による手洗いは、接触感染の主要な経路を断ち切る基本です。

◎換気:定期的な換気により、室内のウイルス濃度を下げることが重要で特に集団で過ごす場所では、窓を開ける、換気扇を回すなど、空気の流れを作りましょう。

◎マスク着用:**「咳エチケット」**として推奨。感染者や症状のある人が着用することで、飛沫によるウイルス拡散を効果的に防ぎますので人混みや換気の悪い場所での着用も有効です。

◎体調管理:十分な休養とバランスの取れた栄養摂取で免疫力を維持することが大切で体力が低下していると、感染しやすく重症化リスクも高まります。

⚠️ 重症化リスクの高い人

65歳以上の高齢者、5歳未満の小児(特に2歳未満)、妊婦、慢性疾患を持つ方などは、重症化のリスクが高いです。症状が現れたら速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

早期の流行シーズン入りは、インフルエンザが今年は例年以上に警戒すべき感染症であることを示しています。

皆で適切な対策を講じ、健康な冬を迎えましょう。


『インフルエンザが東京都でも流行シーズンに突入(2024年11月14日)』


2025年9月28日日曜日

感染症速報-25.⚠️ 増加傾向が示す警鐘:2024年 HIV/AIDS報告994人の医学的分析-

 厚生労働省が2025年9月26日に発表した2024年のHIV感染者とエイズ患者の確定値は、合計994人で、これは前年より34人増え2年連続の増加したことになります。

この数字は単なる統計ではなく、日本のHIV/AIDS対策における重要な課題を示しています。

医学的な観点と最新のデータから、この増加が持つ意味をわかりやすく以下に解説します。


1. データが示す深刻な変化:HIV感染者とエイズ患者の内訳

全体の報告数は増加していますが、内訳を見るとより深刻な傾向が見えてきます。

・HIV感染者は662人で7人減・・感染を早期に発見し治療を早く開始でき発症を防げる。

・エイズ患者は332人で41人増・・感染に気づかず、すでにエイズを発症してから診断された

・合計 994人で34人増・・報告総数は増加傾向にあります。


【"いきなりエイズ"が示す遅すぎる診断】

注目すべきは、エイズ患者(332人)が前年比で41人も増加している点です。

「エイズ患者」として報告されるのは、HIVに感染していることに気づかず、病気が進行して免疫不全の指標となる病気(指標疾患)を発症してから初めて診断されたケースです。

これは俗に**「いきなりエイズ」**とも呼ばれます。

医学的には、HIV感染は早期に発見し、抗HIV薬による治療を始めれば、エイズ発症をほぼ完全に防げます。

エイズを発症してから治療を始めても遅くはありませんが、初期の治療が難しくなったり、体力的な負担が大きくなったりします。

※"いきなりエイズ"に至る前に感染を見つけて早期に治治療を開始することが重要です※

エイズ患者の増加は、「感染に気づいていない人が増えている」「検査を受ける機会が減少している」など、早期発見の体制にほころびが出ている可能性を示唆しており、最も懸念される傾向です。

2. 依然として最も多い感染経路:同性間の性的接触

感染経路別に見ると、HIV感染者(662人)とエイズ患者(332人)のいずれにおいても、同性間の性的接触が最多となっています。

・HIV感染者(662人中):417人

・エイズ患者(332人中):170人

このデータは、特定のコミュニティ内での予防啓発や検査アクセスの確保が、依然として日本のHIV対策における最優先課題であることを裏付けています。

3. ではなぜ報告数は増加しているのか?

2年連続の報告数増加には、複数の要因が考えられます。

🚨 検査機会の回復(コロナ禍の影響)

新型コロナウイルス感染症のパンデミック期には、保健所等でのHIV検査実施件数が一時的に大きく減少しました。

2024年の増加は、検査機会が徐々に回復し、それまで潜在化していた感染者が発見され始めた「検査体制の回復」による数字の変動である可能性も指摘されています。

🚨 リスク意識の希薄化

HIV感染症は治療薬の進歩により「慢性疾患」となり、早期発見・早期治療を行えば、感染していない人と変わらない生活を送れるようになりました。

この医学的進歩が逆に「エイズは怖い病気ではない」という誤った認識を生み、予防行動の低下につながっている可能性も無視できません。

🚨 予防薬(PrEP)の普及の遅れ

欧米諸国ではHIV予防薬(PrEP:曝露前予防内服)の普及が進んでいますが、我が国においても導入されていますが、まだ一般への浸透は限定的で最新の予防策が広く利用されていないことも、新規感染を抑制しきれない一因と考えられます。

💡 私たちにできること:検査と情報へのアクセス

今回の厚生労働省のデータは、私たち全員に対し、「HIVは過去の病気ではない」ということを改めて突きつけています。

最も重要なアクションは、**「知る」と「検査する」**ことです。

検査の活用:不安な行為があった方は、保健所や自治体の検査機関で無料・匿名でHIV検査を受けることができます。

◎早期発見は、自分自身とパートナーの健康を守る最良の防御です。

◎正しい知識の更新:HIV/AIDSに関する情報は日々更新されています。

◎治療の進歩や予防策(PrEPなど)について、常に正しい情報を入手しましょう。

HIVの新規報告数を減らし、エイズ患者をゼロに近づけるには、個々人の意識と行動の変化が不可欠です。


今回HIVの感染が判明した人のうち、エイズを発症していた患者(いきなりエイズ)の割合は33.4%と、過去20年で最も高くっていまずこの理由について同委員会は、コロナ禍でHIV検査を受ける人が減り、エイズを発症するまで感染が分からなかった患者が増加したためと推測しています。

2025年9月23日火曜日

感染症速報-25.季節性インフルエンザが早期流行:最新の動向と医療の現状-

 2025年9月現在、例年よりも早い時期からインフルエンザが流行期に入り、全国的に患者数が増加していて、特に学級閉鎖が相次いでいることから、今年は子どもを中心に感染が広がっている傾向が見られます。

この早期流行の背景には、ここ数年間、新型コロナウイルス対策によってインフルエンザへの集団免疫が低下していたことが考えられます。

今回は、インフルエンザの流行状況と、解熱鎮痛剤の使用や抗生物質の処方に関する最新の注意点について、科学的知見をもとに分かりやすく解説します。

1. インフルエンザの治療薬、どう変わった?

熱やのどの痛みがあるとき、つい市販の薬に頼ってしまいがちですが、インフルエンザの場合、使用する薬の種類に注意が必要です。

ロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は慎重に

厚生労働省は、インフルエンザの治療に際して、一部の解熱鎮痛剤、特に「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」を慎重に使用すべきとしています。

これは、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸といった特定の成分が、インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症・脳炎のリスクを高める可能性が指摘されているためです。

意識障害などを引き起こす危険性があるため、特に子どもへの使用は避けなければなりません。

推奨される解熱鎮痛剤は「アセトアミノフェン」

医師や薬剤師がインフルエンザの際に推奨するのは、アセトアミノフェン(製品例:カロナールなど)で、アセトアミノフェンはインフルエンザ脳症との関連が低いとされており、子どもから大人まで比較的安全に使用できると考えられています。

熱でつらい場合は無理せず、まずは医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な薬を服用しましょう。

やむを得ず市販薬を使用する場合は、必ず薬剤師に相談して「アセトアミノフェン」成分の薬を選ぶようにしてください。

2. 「風邪には抗生物質」はもう古い?

インフルエンザや一般的な風邪の治療において、薬の処方方針に大きな変化が起きています。

社会保険診療報酬支払基金は、インフルエンザや風邪といったウイルス性の疾患に対し、抗菌薬や抗生物質を原則として処方しないという方針を明確にしました。

これは、ウイルスに抗生物質は効果がなく、不必要な抗生物質の服用は薬剤耐性菌を生み出すリスクを高めるからです。

この変更は、患者さんの自己負担額を増やすものではありません。

しかし、医療機関側が不適切な処方に対する保険請求を認められなくなることで、「念のため」の抗生物質処方を減らし、医療全体での適正使用を促すのが狙いです。

3. 今すぐできるインフルエンザ対策

今年のインフルエンザは流行が早いため、予防対策も前倒しで進めることが重要です。

ワクチン接種: 多くの医療機関が例年よりも早くインフルエンザワクチンの接種を開始しています。

特に13歳未満の子どもは2回接種が推奨されるため、早めに計画を立てましょう。

基本的な感染対策: 手洗いやうがい、マスクの着用など、基本的な感染対策を徹底することが、感染拡大を防ぐ最も重要な方法です。

夜間に急な発熱で困った場合は、国が提供する電話相談窓口が利用できます。

子ども向け:#8000

大人も利用可能:#7119

これらの番号は、夜間や休日に適切な医療機関を探す手助けをしてくれるので、いざという時のために覚えておきましょう。

最後に、

#8000(こども医療電話相談)と#7119(救急安心センター事業)は、相談料は無料ですが、通話料は利用者の負担となります。

2025年9月21日日曜日

感染症速報-24.なぜ冬でもないのにインフルエンザが流行しているの?-

 例年、インフルエンザは冬に流行する感染症として知られています。

しかし、今年は9月に入っても感染者数が増加しており、地域によっては学級閉鎖や集団感染が相次いでいるというニュースに驚いている方も多いのではないでしょうか。

なぜ冬を待たずにインフルエンザが流行しているのか、最新の医学的・疫学的知見から分析し、その理由を解説します。

◎医学的・疫学的分析:なぜ今年の流行は早いのか?

通常、インフルエンザが冬に流行する主な理由は、ウイルスが低温・乾燥した環境でより長く生存し、飛沫が空気中に漂いやすくなるためでまた、冬は免疫力を低下させやすい要因(寒さ、疲労など)が増えることも関係しています。

しかし、今年の流行が異例の早さで始まっている背景には、複数の要因が複合的に絡み合っていると考えられます。

1.コロナ禍による免疫の変化 🦠

過去3年間のコロナ禍において、私たちはマスク着用や手指消毒、ソーシャルディスタンスといった厳格な感染対策を徹底してきた結果、インフルエンザウイルスに接触する機会が減り、多くの人がインフルエンザに対する集団免疫を十分に持たない状態となりました。

医学的には、この「免疫の空白期間」が、現在の流行拡大の大きな要因とされています。

2.ウイルスの変異と感染力の強さ 🧬

インフルエンザウイルスは常に少しずつ形を変えて(抗原変異)います。

これにより、一度感染しても再び感染する可能性があるのです。

今年の流行株は、これまでの株よりも感染力が強い傾向にあるという分析もあり、免疫を持たない人々の中で急速に広まった可能性があります。

3.南半球での流行状況と人の移動 ✈️

日本では夏にあたる時期に、南半球(特にオーストラリアなど)では冬を迎え、インフルエンザが流行します。

国際的な人の移動が活発になった現在、南半球で流行したウイルスが日本に持ち込まれ、それが免疫を持たない人々の間で一気に広まったという疫学的な見解も有力です。

◎今私たちが取るべき対策とは◎

今回のインフルエンザ流行は、冬のピークを待つことなく対策を講じる必要性を示しています。

基本的な感染対策の再徹底として、

・手洗い・うがい:帰宅時や食事の前など、こまめな手洗い。

・マスクの着用:公共交通機関や人が密集する場所では、感染拡大を防ぐためにマスクを着用するのが有効です。

・換気:室内の空気を定期的に入れ替え、乾燥を防ぎましょう。

・インフルエンザワクチンの接種:インフルエンザワクチンは、発症を予防するだけでなく、万が一感染しても重症化を防ぐ効果があります。

例年の流行ピークは1〜2月ですが、今年は早めに接種を検討することが推奨されています。

【まとめ】

今年のインフルエンザの流行は、コロナ禍による集団免疫の低下、ウイルスの特性、そして国際的な人の移動が複雑に絡み合った結果と言えます。

これは単なる季節外れの流行ではなく、新しい感染症の流行パターンを示唆しているのかもしれません。

私たち一人ひとりが危機感を持ち、適切な予防策を講じることが、これ以上の感染拡大を防ぐ鍵となります。

2025年9月18日木曜日

感染症速報-23.国内でエムポックスの重症型「クレード1」初確認:医学的考察と最新情報-

 日本国内で、より重症化しやすいとされるエムポックスの「クレード1」の感染者が初めて確認されました。


この事例は、単なる感染症のニュースを超え、世界的な流行状況と日本の公衆衛生体制における重要な課題を浮き彫りにしています。


◎エムポックスの「クレード1」と「クレード2」:ウイルスの違いと重症度


エムポックスウイルスには、主に2つの主要な系統(クレード)が存在します。


1.クレード1(旧コンゴ盆地クレード): 感染力が比較的強く、致死率が8〜10%と高いとされています。このタイプは主に中部アフリカの風土病として知られていました。


2.クレード2(旧西アフリカクレード): 感染力や致死率がクレード1よりも低く、致死率は1%未満とされています。2022年以降、世界的に大流行したエムポックスのほとんどがこのタイプでした。


今回、日本で確認されたのは、より危険性が高いとされるクレード1で、アフリカへの渡航歴を持つ20代の女性の症例です。


この事実は、感染症が地理的な境界を容易に越える現代において、ウイルスの系統解析(ゲノム解析)が公衆衛生管理に不可欠であることを示しています。


◎世界的な状況と日本の課題


2022年以降、世界中でエムポックスの流行が拡大し、日本国内でも散発的に症例が報告されてきました。


これまでの国内事例はすべてクレード2によるものであり、今回のクレード1の確認は、日本の医療機関や公衆衛生当局にとって新たな脅威となります。


ウガンダでのアウトブレイク: 2024年に入り、ウガンダではクレード1による大規模な流行が発生しており、多数の死者が出ています。


この背景には、現地の医療体制の脆弱性やワクチンの供給不足などが指摘されています。


日本で確認された症例も、こうした地域からの輸入例と考えられます。


 今回の事例は、水際対策の重要性だけでなく、海外からの入国者に対する健康監視、そして医療機関での適切な鑑別診断体制の必要性を改めて示しています。


◎ 医療従事者への注意喚起と今後の展望


エムポックスの初期症状は、発熱や発疹であり、他のウイルス感染症と見分けがつきにくい場合がありそのため、医療従事者は、渡航歴のある患者に対して、エムポックスの可能性を鑑別診断に含めることが重要となります。


・潜伏期間: エムポックスの潜伏期間は通常5〜21日で今回の症例では、アフリカへの渡航歴があることが感染源特定の鍵となりました。


・治療とワクチン: エムポックスには、対症療法が主に行われますが、重症例に対しては抗ウイルス薬「テコビリマット」が使用されることがありまた、ワクチンによる予防も有効ですが、クレード1への対応となると、ワクチンや治療薬の十分な備蓄、そして医療機関での迅速な対応プロトコルが求められます。


今回のクレード1の国内初確認は、パンデミックへの警戒を緩めてはならないというメッセージを強く発信しています。


厚生労働省や国立感染症研究所は、引き続き国際的な動向を注視し、情報共有と監視体制を強化していく必要があります。


※2025年9月6日、世界保健機関(WHO)は感染症の「エムポックス」、これまでの「サル痘」の感染者が減少しているとして、およそ1年前から出していた緊急事態の宣言を終了すると発表しました※


これは時期早々で、あまりにも現実を直視していない判断と私は思います。


 

2025年9月14日日曜日

感染症速報-22.自分だけは大丈夫」と思っていませんか?性感染症の患者数が急増している背景とは-

 最近、ニュースなどで性感染症(STD)、特に梅毒の患者数が急増しているという話題を耳にされたことと思います。

梅毒トレポネーマに感染するのは「自分は関係ない」「自分だけは大丈夫」と思っている人もいるかもしれませんが、実は誰にでも起こりうる問題です。

今回は、その背景を医学的・疫学的な観点からわかりやすく解説し、あなた自身の健康を守るためのヒントをお伝えします。

◎なぜ梅毒の患者数は増えているのか?

厚生労働省の発表によると、2021年以降、梅毒の患者数は右肩上がりに増加しており、特に20代~50代の男性と20代の女性で顕著でその背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

1. 性行為の多様化とコンドーム使用率の低下

SNSやマッチングアプリの普及により、性的な出会いの機会が増加し、性行為へのハードルが下がったことが一因に加えて、性感染症予防の基本であるコンドームの使用率が低下していると多くの専門家が指摘しており、これにより感染リスクが高まっています。

2. 症状の気づきにくさ

梅毒は、感染初期には自覚症状がほとんどないか、あってもすぐに消えてしまうことがあります。

そのため、自分が感染していることに気づかないまま、他者に感染させてしまうケースが少なくありません。

症状がなくても感染している可能性があるため、「自分は大丈夫」という過信が感染拡大につながっているのです。

3. 潜在的な患者数の増加

梅毒は、医師が診断した場合に保健所への届出が義務づけられています。

メディアで梅毒の増加が報じられたことで、検査を受ける人が増え、結果としてこれまで見つかっていなかった潜在的な患者が発見されるようになったという側面もあります。

これは、実際の患者数が届出数よりもはるかに多い可能性を示唆しています。

◎あなたの健康を守るためにできること

性感染症は、早期に発見して治療すれば完治するものが多いです。しかし、放置すると深刻な合併症を引き起こす可能性があり、特に梅毒は神経や心臓にまで影響を及ぼすことがあります。

1. 正しい知識を身につける

性感染症の感染経路や症状、予防法について正しい知識を持つことが第一歩です。

2. コンドームを正しく使用する

性行為の際には、最初から最後までコンドームを正しく使用することが最も有効な予防策です。

3. 定期的な検査を受ける

少しでも感染の可能性がある行為をしてしまった場合は、症状がなくても検査を受けることが重要です。

性感染症は、自覚症状がないまま進行することが多いため、不安な場合は迷わず検査を受けましょう。

保健所や医療機関で匿名・無料で検査を受けられるところもあります。

「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信は、あなたの健康を危険にさらすかもしれません。

大切な自分自身のため、そしてパートナーのためにも、性感染症について正しく理解し、適切な行動をとることが求められます。

この情報が、あなたの健康を守る一助となれば幸いです。

あなたは、ご自身の性的な健康について、どのような考えを持っていますか?


2025年9月11日木曜日

感染症速報-21.ワクチンの「シェディング」でコロナ感染?-

 ワクチンの「シェディング」でコロナ感染? 専門家が解説する、その真実と科学的根拠について解説いたしますのでお付き合い下さい。

新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの生活を一変させ感染の波が落ち着いた今も、SNSではさまざまな情報が飛び交い、その中には科学的根拠のない「デマ」も含まれています。

特に、**「ワクチンを打った人から、打っていない人にワクチンの成分がうつり、体調不良を引き起こす」という、いわゆる「シェディング」**の言説が拡散されています。

この話は本当なのでしょうか?

今回は、専門家の見解と最新の医学的知見を基に、この言説の真偽と、私たちが知っておくべき正しい情報について解説します。

◎「シェディング」とは本来どういう意味か?

まず、医学的に「シェディング(shedding)」という言葉が意味するのは、感染者の体内からウイルスが放出されることで例えば、インフルエンザに感染した人が咳やくしゃみでウイルスをまき散らすことや、麻疹(はしか)に感染した人が発疹や呼吸器からウイルスを放出することなどがこれに当たります。

つまり、ワクチン接種によって体から何かが放出され、他者に影響を与えるという文脈で使われるのは、本来の意味とは全く異なります。

◎mRNAワクチンは「シェディング」を起こさない

結論から言うと、新型コロナのmRNAワクチンや、自己増幅型(レプリコン)ワクチンで「シェディング」は起こりません。

その理由は、これらのワクチンの仕組みにあります。

これらのワクチンは、生きたウイルスを体内に入れる**「生ワクチン」**とは全く異なります。

生ワクチンは、毒性を弱めたウイルスそのものを接種するため、ごくまれにワクチンを接種した人から排出されたウイルスによって他者が感染するリスクがゼロではありません。

しかし、これはロタウイルスやポリオといった一部の生ワクチンに限られた話です。

◎体内で作られるのは「スパイクタンパク質」

mRNAワクチンやレプリコンワクチンが体内で作るものは、ウイルスの表面にある**「スパイクタンパク質」**の設計図(mRNA)でこの設計図を基に私たちの細胞がスパイクタンパク質を作り、それに対して免疫が働きます。

重要なのは、このスパイクタンパク質は感染能力を持たないということです。

大阪大学の宮坂昌之医師も述べているように、ワクチン接種者から他者に感染能力のあるウイルス粒子や、健康に悪影響を及ぼすような物質が放出されることは、科学的にあり得ません。

◎科学的根拠に基づいた判断のために◎

では、なぜこのような言説が広まるのでしょうか?

その背景には、新型コロナウイルスに関する情報の多さと、それに伴う不確実性への不安があると考えられます。

しかし、不安だからこそ、私たちは公的機関や専門家が提供する信頼性の高い情報に目を向ける必要があります。

厚生労働省や日本感染症学会などの公式ウェブサイトでは、ワクチンの有効性や安全性について、国内外の研究結果に基づいた正確な情報が公開されています。

例えば、最新のオミクロン株対応のワクチンは、入院リスクを40〜70%も減らすという報告がありますし、日本ワクチン学会理事長の中野貴司医師が指摘するように、特に高齢者にとって、新型コロナに感染した場合の死亡リスクはインフルエンザよりもはるかに高いのが現状です。

確かにワクチンには副反応のリスクもゼロではありませんが、重症化や死亡、そして後遺症のリスクを下げるというベネフィット(利益)を天秤にかけることが重要です。

◎迷ったときはかかりつけ医に相談を◎

「ワクチンを接種すべきか?」という判断は、一人ひとりの健康状態や生活環境によって異なります。

SNS上の不確かな情報に惑わされるのではなく、まずは厚生労働省のウェブサイトや、信頼できる医療機関の情報にアクセスしてみましょう。

そして、最終的な判断に迷ったときは、遠慮せずにかかりつけの医師に相談してください。

あなたの健康状態を最もよく知る専門家が、あなたにとって最適な選択肢を一緒に考えてくれるはずです。

正しい知識は、不安を和らげ、より良い未来を選ぶための最大の武器となります。


2025年9月7日日曜日

感染症速報-20.「今年は異例の年」なぜ? 早くもインフルエンザが猛威をふるう!!-

 例年であれば11月頃から流行が始まるインフルエンザ。

しかし、今年は9月に入ってまもなく、全国各地で感染が報告され、学校の休校や学級閉鎖が相次いでいます。

一体なぜ、こんなに早い時期からインフルエンザが流行しているのでしょうか?


◎異例の速さで広がるインフルエンザ◎

今年のインフルエンザの流行は、これまでとは一線を画しています。

例年よりも2ヶ月ほど早く、すでに「流行シーズン入り」を発表した地域もあります。

あるクリニックの院長によると、例年の夏はインフルエンザの患者が月に2〜3人程度だったのが、今年はその3〜4倍に増えているとのこと。

この事態は、まさに「異例の年」と呼べるでしょう。

大学生が感染して高熱を出すケースや、家族全員がわずか数日のうちに感染する家庭内感染も発生しており、その感染力の強さがうかがえます。

◎なぜインフルエンザは例年より早く流行しているのか?◎

この異例の事態の背景には、いくつかの要因が考えられます。

1. 同時流行による受診機会の増加

今年は、新型コロナウイルスに加え、溶連菌や百日咳といった他の感染症も流行しています。

これにより、発熱などの症状で医療機関を受診する人が増えています。

多くのクリニックでは、一度の検査でコロナとインフルエンザを同時に調べられるキットを使用することが多く、その結果、例年よりも早い段階でインフルエンザの感染者が見つかっている可能性があります。

2. 異常な暑さによる体力の低下

今年の夏は記録的な暑さとなり、夏バテで抵抗力が落ちている人が多いと考えられ免疫力が低下した状態でウイルスにさらされると、感染しやすくなります。

3. エアコンと換気不足

長時間にわたるエアコンの使用も、ウイルスの拡散に影響を与えている可能性があります。

ウイルスは、室温が下がると活動力を長時間保つことができます。

また、暑さのために窓を閉め切り、換気が不十分になっている家庭や施設が多いことも、ウイルスの滞留を招き、感染拡大の一因となっていると見られています。

◎これからの対策は?◎

インフルエンザの早期流行は、これからの季節に備えて、改めて感染対策の重要性を再認識する機会となります。

・マスクの着用: 人が集まる場所ではマスクを着用しましょう。

・手洗い・うがい: 外出後や食事前には、手洗いとうがいを徹底しましょう。

・換気の徹底: エアコンを使う際も、こまめに窓を開けるなどして換気を行いましょう。

・「三密」の回避: 密集、密接、密閉を避けることで、感染リスクを減らせます。

今年のインフルエンザは、例年以上に注意が必要です。

これらの対策をしっかりと行い、自分自身と大切な人を守りましょう。


2025年8月31日日曜日

感染症速報-20.止まらない新型コロナ、なぜ? 複雑な理由を徹底解説!-

 皆さん、こんにちは。

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、すでに数年が経過しワクチンも治療薬も登場し、社会のあり方も大きく変わりました。

しかし、いまだに感染の波は繰り返し押し寄せ、「なぜこのウイルスはなくならないんだろう?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

今回のブログでは、この難題を、ウイルスの特性、人間の社会、そして最新の医学的な知見を交えて、わかりやすく解説していきます。

【ウイルスの変異と社会の相互作用:終わらないパンデミックの核心】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がなぜなくならないのか?その答えは、このウイルスが持つ**「特殊な性質」と、私たちの社会が「どのように対応してきたか」**が複雑に絡み合っているからです。

1. 免疫をかいくぐるウイルスの「変身能力」

新型コロナが世界中に広がったことで、多様な人々の間で感染が繰り返されました。ワクチンを接種した人、何度も感染した人、そしてまだ一度も感染していない人…。

このような多様な「免疫状況」を持つ宿主(人や動物)が大量に存在することは、ウイルスにとって**「免疫を回避する変異株」を生み出す絶好の機会となります。

ウイルスの突然変異はランダムに起こりますが、抗体やワクチンによって獲得された免疫を持つ人の中では、その免疫をすり抜ける能力を持つ変異株だけが生き残り、増殖しやすくなるからです。

これが、まるでウイルスの進化を加速させるかのように、次々と新たな変異株(例:最近流行しているNB.1.8.1、通称「ニンバス」**)が出現する主な理由の一つです。

【2. 人以外の「宿主」が感染を維持する】

新型コロナウイルスが厄介なのは、人間だけでなく、ミンクや猫、シカなど他の動物にも感染することです。

これらの動物の間でウイルスが広がり、ヒトとの間で感染のリンクを形成することで、たとえ人間社会での感染が一時的に収束しても、再びヒトへと感染するリスクが残り続けます。

これは、ウイルスを完全に撲滅することが極めて難しい理由の一つです。

【3. 「経済」と「感染対策」のバランス】

世界中で、厳しいロックダウンや行動制限によって感染を抑え込もうとする初期の戦略から、「ある程度の被害は受け入れ、社会経済活動を回していく」方向へとシフトしました。

マスク着用や換気の徹底といった基本的な感染対策が以前より行われにくくなったことで、特に感染対策が手薄になりがちな冬場や屋内での活動が増える季節に、ウイルスが再び勢力を増すことにつながっています。

◎感染は防げなくても、重症化は防ぐ時代へ◎

これまでの新型コロナ感染やワクチン接種によって得られる**「感染防御の抗体」**は、残念ながら数ヶ月で減衰するとされています(個人差あり)。

しかし、重要なのはここからです。

私たちの体には、ウイルスの細胞内への侵入を防ぐ抗体とは別に、感染した細胞を破壊して重症化を防ぐ**「T細胞応答」**という免疫システムがあります。

このT細胞による重症化を防ぐ免疫は、抗体よりも長く維持されることが分かっています。

このため、感染者数自体は増える傾向にあっても、重症化する人の割合は以前に比べて低くなっています。

これにより、無症状や軽症の患者さんが増え、彼らが社会活動を続けることで、感染の連鎖が止まらないという側面もあります。

しかし、これは「新型コロナと共存する」上で非常に重要なポイントです。

◎◎私たちが目指すべき「持続可能な対策」とは◎◎

新型コロナを地球上から完全に消し去ることは、現時点では極めて困難ですが、私たちがこのウイルスと共存しながら社会を維持していくために、できることはたくさんあります。

・ワクチンの進化と継続的な接種:免疫逃避能力を持つ変異株に対応した新しいワクチンの開発と、定期的な接種による質の高い免疫の維持。

・早期診断と早期治療:感染が判明した後の早期の治療開始は、症状の悪化を防ぐだけでなく、後遺症のリスク低減にもつながります。

・後遺症患者へのサポート:長期にわたる後遺症に苦しむ人々への包括的な医療支援と社会的なサポート。

そして、今後私たちが直面するかもしれない新たな感染の波に備えるために、「公衆衛生当局による早期警戒アラート」が鍵となります。

感染が拡大し始めた初期の段階で、市民に注意喚起を行い、感染そのものを減らす「予防医学」的なアプローチを強化することが、医療資源への負荷を減らし、社会機能を維持するために非常に重要になってくるでしょう。

新型コロナとの戦いは、まだ終わりが見えないかもしれません。

しかし、ウイルスの特性を理解し、社会全体で効果的な対策を継続していくことが、このパンデミックを乗り越える唯一の道なのです。


2025年8月24日日曜日

感染症速報-20."カミソリを飲んだ"ような痛み…新型コロナ「ニンバス」が流行-

現在、新型コロナウイルスの患者数が増加傾向にあり、特にオミクロン株から派生した「ニンバス」(NB.1.8.1)と呼ばれる変異株が流行の中心となっています。

このニンバス株は、**「カミソリを飲み込んだような」**と表現されるほど強烈なのどの痛みが特徴とされており、ガラスの破片が刺さるような痛みや、血痰を伴うケースも報告されています。


【なぜ「ニンバス」はのどの痛みが強いのか?】

この激しいのどの痛みの原因について、医学的な考察と最新の情報を交えて解説します。

近年の研究では、新型コロナウイルスが感染する細胞やその感染経路、免疫反応に関する理解が深まっています。

従来の株と比較して、ニンバス株は上気道(のどや鼻)でより活発に増殖する能力が高いと考えられています。

このため、ウイルスがのどの粘膜細胞に大量に感染し、細胞の破壊や強い炎症反応を引き起こすことが、激しい痛みの原因と推測されます。

炎症反応は、体内の免疫細胞がウイルスと闘う過程で起こります。

炎症性サイトカイン(情報伝達物質)が放出され、これが痛みの感覚を増幅させることがわかっています。

ニンバス株は、この炎症反応をより強く引き起こす性質を持っているのかもしれません。


【酷暑が感染拡大に影響する理由】

猛暑が続く中、なぜ新型コロナの感染が拡大しているのでしょうか?

◎換気の不足: エアコンを使用するため窓を閉め切りがちになり、室内の換気が不十分になります。密閉された空間では、ウイルスが空気中に滞留しやすく、感染リスクが高まります。

◎免疫力の低下: 暑さによる睡眠不足や食欲不振、また熱中症対策のためのこまめな水分補給が不足することで、体が疲弊し、免疫力が低下します。免疫力が落ちると、ウイルスへの抵抗力が弱まり、感染しやすくなります。

◎マスク着用の困難さ: 猛暑の中でのマスク着用は熱中症のリスクを高めるため、着用を控える人も増えています。

マスクはウイルスの飛沫を防ぐ効果的な手段ですが、着用率の低下が感染拡大の一因となっている可能性があります。


【"熱がない"からと油断しないで!】

「喉は痛いけど、熱がないからコロナじゃない」と考える人もいますが、これは誤った認識です。

特にニンバス株では、発熱がないケースや、37℃台前半の微熱で終わるケース、あるいは熱が短時間で上がったり下がったりするケースが多く見られます。

発熱がないからといって、新型コロナを否定することはできません。


【受診のタイミングと治療薬について】

「もしかしてコロナ?」と感じたら、どのようなタイミングで受診すれば良いのでしょうか。

◎受診を検討するタイミング: 「刺すような強いのどの痛み」や「激しい倦怠感」「関節痛」など、普段とは違う強い症状が出始めたら受診を検討しましょう。

◎ベストなタイミング: 症状が出てから半日〜1日後に受診することで、迅速な検査と診断が可能になり、適切な治療薬の選択肢を提示してもらえます。

※特に基礎疾患がある人は重症化リスクが高くなることから、早めの受診が重要です※

◎つらい時は迷わず受診: 症状があまりにもつらく、日常生活に支障をきたす場合は、時期を問わずすぐに医療機関を受診してください。

◎現在、新型コロナの治療薬には、重症化を予防する海外の薬や、ゾコーバのようにウイルスの増殖を抑えて症状を改善させる薬がありますがこれらの薬は妊婦や授乳中の女性、12歳未満の小児には使えなかったり、他の薬との飲み合わせに注意が必要な場合も多いため、医師と相談して慎重に判断する必要があります。


【まとめ】

再び感染が拡大している新型コロナ、特に「ニンバス」株による強烈なのどの痛みは、これまでのコロナとは異なる特徴です。

「もしかしてコロナかも?」と感じた時は、「熱がないから大丈夫」と安易に自己判断せず、早めに医療機関に相談することが大切です。

手洗いやうがい、場面に応じたマスクの着用など、基本的な感染対策を改めて徹底し、この厳しい夏を乗り切りましょう。

2025年8月17日日曜日

感染症速報-19.7週連続増加の新型コロナ、今流行の「ニンバス」とは?-

全国的に新型コロナウイルス感染症の感染者数が7週連続で増加傾向にあり、お盆の時期と重なったことで、今後の感染拡大が懸念されています。

今回は、この感染拡大の背景にある**変異株「ニンバス」**の特徴や、今後の見通し、そして私たちが取るべき対策について、医学的・疫学的な観点から解説します。


【流行の変異株「ニンバス」とは?】

現在、流行の主流となっているのは、オミクロン株の派生型である「NB.1.8.1」で、通称「ニンバス」と呼ばれています。

特徴:カミソリのような強烈な喉の痛み

ニンバスの最大の特徴は、「カミソリを飲み込んだような」と表現されるほどの激しい喉の痛みです。

これは、ウイルスの変異によって喉の粘膜に付着しやすくなったことが原因と考えられています。

過去の新型コロナウイルス感染症と比較しても、喉の痛みがより強く現れる傾向があり、「水を飲むだけで声が出てしまう」といった体験談も報告されています。


【感染が拡大している背景】

この感染拡大には、複数の要因が絡み合っていると考えられます。

1.変異による感染力の増加: ウイルスが変異を繰り返し、喉に付着しやすくなったことで、感染力が以前よりも高まっている可能性があり喉は口に近いため、咳やくしゃみだけでなく、大声で話すことでも感染が広がりやすい状態です。

2.重症化リスクの低下: 喉の痛み以外の症状は、風邪とほぼ同じで、重症化するケースが少ないという特徴があり、新型コロナウイルス感染症に感染していると気づかずに、日常生活を送ってしまい、知らず知らずのうちに感染を広げている可能性も指摘されています。

3.季節的な要因と環境: 猛暑によるエアコンの使用とそれに伴う換気不足が、感染拡大の要因の一つです。

閉め切った室内ではウイルスが空気中に滞留しやすく、空気の乾燥によって喉の防御機能も低下しやすいため、感染リスクが高まります。

4.社会的要因: お盆休みでの人々の移動や、それに伴う接触機会の増加も、感染者数増加の大きな要因です。

過去の事例からも、大型連休後には感染者数が増加する傾向が見られます。


【今後の見通しと私たちができること】

専門家によると、新型コロナウイルス感染症の流行は12週間を1つのサイクルとしており、今回の流行は9月上旬頃まで増え続ける可能性が指摘されています。


【予防と対策】

感染拡大を防ぎ、ご自身や大切な人の健康を守るために、以下の対策を改めて徹底しましょう。

1.基本的な感染対策の継続: 手洗いや手指の消毒、適切な状況でのマスク着用、こまめな換気など、従来の感染予防策を継続することが重要です。

2.体調管理と早期受診: 喉の痛みや発熱など、体調不良を感じた場合は無理をせず、周囲の人への感染を広げないためにも外出を控えるようにし特に、水が飲めないほどの喉の痛みがある場合は、医療機関の受診を検討してください。

3.医療機関の検索: お盆期間中や休日で、どこの病院が開いているか分からない場合は、「医療情報ネット ナビイ」などのサービスを活用して、近くの医療機関を検索しましょう。

高齢者や基礎疾患をお持ちの方、そして小さなお子さんにとって、たとえ軽症であっても体調を崩すことは大きな負担となります。


社会全体で感染対策を意識し、この流行を乗り越えていきましょう。



2025年8月10日日曜日

感染症速報-18.新型コロナウイルス感染症!現在も増加中!!

こんにちは、皆さん。今日のブログでは、最新の新型コロナウイルスの感染状況について、医学的な考察と最新のニュースを交えながらお伝えしたいと思います。


【感染者数の増加傾向と地域差】

2025年8月8日の厚生労働省の発表によると、全国の新型コロナウイルス感染者数は7週連続で増加しており、1医療機関あたりの報告数は5.53人(前週の4.12人の1.34倍で、7週連続で増加)となりました。

特に注目すべきは、宮崎(14.07人で最多)、沖縄(12.73人)、鹿児島(12.68人)といった九州・沖縄地方で感染者数が突出していることです。

これらの地域は、前週からさらに増加傾向が見られます。

これは、地理的な要因だけでなく、夏季特有の行動様式が影響している可能性があります。具体的には、観光シーズンやお盆の帰省による人の移動が増加することで、ウイルスが広がりやすくなることが考えられます。

特に、飛行機やフェリーなどの密閉された空間での移動は、感染リスクを高める要因となりえます。


【感染力の高い変異株の可能性】

感染者数の増加の背景には、新たな変異株の流行が関与している可能性が指摘されています。

新型コロナウイルスは常に変異を繰り返しており、より感染力が強かったり、ワクチンの効果をすり抜けやすかったりする変異株が出現することがあります。

現在、どのような変異株が主流になっているかについては、引き続きモニタリングが必要です。

もし、高い感染力を持つ変異株が流行している場合、従来通りの対策だけでは不十分となる可能性もあります。

手洗いやマスク着用といった基本的な対策に加え、より一層の注意が求められます。


【お盆期間中に私たちができること】

専門家は、お盆期間中の帰省や旅行を控えることや、発熱などの症状がある場合は外出を控えるよう呼びかけています。

これは、感染を拡大させないための重要なメッセージです。

もし、帰省や旅行を計画している場合は、以下の点に注意してください。

◎体調チェック: 出発前に体調がすぐれない場合は、無理をせず予定を変更しましょう。

◎基本的な感染対策: こまめな手洗い、手指の消毒、人混みでのマスク着用を心がけましょう。

◎換気: 宿泊施設や交通機関を利用する際は、可能な限り換気を意識しましょう。


一人ひとりが意識して行動することで、感染拡大を防ぐことができます。


楽しいお盆休みを過ごすためにも、みんなで協力して感染対策を徹底しましょう!


 

2025年8月3日日曜日

感染症速報-17.2025年、日本の新型コロナ流行状況:現状と今後の見通し(医学的・疫学的観点から)-

 2025年現在、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザなどと同様に、感染症法上の5類感染症として位置づけられ、社会経済活動はほぼ平時に戻っていますが、ウイルスが完全に消滅したわけではなく、依然として「流行→沈静化→流行」の波を繰り返しているのが現状です。


2025年7月21日~27日りの定点数は4.12と増加傾向にあります(沖縄県以外すべての県で増加傾向にあります、ただし沖縄県は14.13と流行しています)


1. 疫学的観点から見た流行状況


2025年の日本国内における新型コロナの流行状況は、いくつかの特徴が見られます。


・流行の波の繰り返し: 2025年に入ってからも、夏や冬といった感染症シーズンを中心に流行の波が観測されています。


・特に2025年1月には、医療費全体および医科外来医療費の中で、COVID-19が上位2位に再浮上するなど、流行の拡大が示唆されました。


これは、アレルギー性鼻炎などの他の疾患の流行期と重なったことも一因と考えられます。


・主流変異株の変遷: ウイルスの変異は継続しており、2025年7月時点では、地域によって「NB.1.8.1株」や「XFG株」、「KP.3株」といった新たな変異株が主流となりつつありこれらの変異株は、従来の株と比較して感染力が強い傾向にあるとされていますが、重症化リスクについては、オミクロン株流行以降、比較的低い状態が維持されていると考えられています。


・感染対策の変化と影響: 2023年5月の5類移行後、行動制限がなくなり、人々の移動や交流が増加しました。


またマスク着用習慣の低下も相まって、ウイルスが広がりやすい環境が再び生まれています。


特に、夏休みや大型連休、イベントシーズンなどは、人流の増加に伴い感染者数が増加する傾向が見られます。


2. 医学的観点から見た病態と治療


2025年現在、新型コロナウイルス感染症の病態も変化が見られます。


主流症状の変化: 喉の痛みや発熱、咳、倦怠感といった風邪に似た症状が中心となっていて、以前の流行期に特徴的であった味覚障害や嗅覚障害を訴える患者は減少傾向にあります。


・後遺症のリスク: 感染後の後遺症(long COVID)については、引き続き注意が必要です。

倦怠感や呼吸困難感、集中力の低下などが主な症状として報告されています。


特に変異株ごとの後遺症との関連性はまだ完全に明らかになっておらず、今後の研究が待たれます。


・医療提供体制: 新型コロナウイルス感染症の診療は、従来のインフルエンザなどと同様に、一般的な医療機関で行われる体制に移行しています。


2024年3月で公費支援や病床確保料などが終了したこともあり、医療機関は平時の体制で対応を進めています。


・ワクチンについては、高齢者や基礎疾患のある方を中心に、重症化予防を目的とした定期接種が推奨されており、接種費用についても自己負担が生じることが多くなっています。


3. 今後の見通しと対策


2025年以降も、新型コロナウイルスは季節的な流行を繰り返す「エンデミック」な疾患として定着していくと考えられます。


予防接種の重要性: 重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある方、医療従事者などに対するワクチン接種は、引き続き重症化予防の観点から重要です。


個人での感染対策: 感染拡大を抑えるためには、個人レベルでの基本的な感染対策が重要となります。特に、人混みでのマスク着用、こまめな手洗い、換気の徹底は有効な手段です。


早期診断と早期治療: 症状が出た場合には、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが、重症化を防ぐために重要で特に基礎疾患を持つ方や高齢者は、早めの受診が推奨されます。


新型コロナウイルスは、社会に定着したとはいえ、依然として軽視できない感染症です。


流行の波を繰り返しながら、今後も私たちと共に存在していくと考えられますので最新の情報を確認し、状況に応じた適切な対応を心がけることが、引き続き重要となります。

2025年7月27日日曜日

感染症速報-16.2024年上回るペースの報告数…「梅毒」は女性患者の割合が急拡大-

  2025年夏、再び注目される「梅毒」流行の現実とは?

📈 梅毒患者数、再び過去最多ペースに

2025年7月15日に国立健康危機管理研究機構が発表した報告によりますと、

最新の第27週(6月30日〜7月6日)での新規梅毒報告数は7167件に達しました。

これは昨年同期より61件の増加で、2023年に記録された過去最多の年間報告数1万4906件に迫る勢いです。

📉 一度は激減、再び増加の波

梅毒はかつて、国内では減少傾向が続いていました。

1970年:6138件、1993年以降:約1000件以下、ところが2013年に再び1000件超え(1228件)を記録し以降は右肩上がりとなっています。

2017年には5000件を突破し、近年は1万件以上の高水準で推移しています。

👩‍⚕️ 医学的に見る梅毒増加の背景とリスク

🌐 では梅毒とは?ここで再度解説させていただきますと、

梅毒はトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)という細菌が原因の性感染症(STD)です。

性行為(膣性交・肛門性交・口腔性交)を介して感染し、治療しないままだと全身に進行性の障害を及ぼすこともあります。

主な症状のステージは以下の通り:

段階 主な症状 特徴

第1期 感染部位のしこりや潰瘍(硬性下疳) 痛みは少なく、自然に治ることも

第2期 発疹、発熱、倦怠感など 全身症状が現れる

潜伏期 自覚症状なし 数年〜十数年持続することも

第3・4期 神経・心臓・脳などの障害 治療しなければ致命的

🧬では なぜ女性の感染者が急増しているのか?

性感染症専門医たちの分析によりますと、梅毒の性別比に大きな変化が見られています。

・2013年:男性の感染報告は女性の4.2倍

・2023年:その差は1.8倍まで縮小

🧑‍🤝‍🧑 このその理由とは?

・マッチングアプリやSNSの普及により、匿名性の高い出会いが増加

・女性の社会進出と経済的自立による、性的選択の自由度の上昇

・妊婦健診の普及で、症状のない感染者が発見されやすくなった

・性感染症予防への意識低下も一因

🔥 「50代」の未婚者層にも注目

未婚率の上昇が性感染症のリスク要因になってきています。

特に経済的に余裕のある中高年層の性活動が活発化し、マッチングアプリや女性専用風俗の利用が女性側の感染リスクを高めている可能性も否定できません。

男性は、経済的理由で風俗利用が減少する一方、同性間性行為による感染が増えており、

HIVとの重複感染リスクも指摘されています。

🚨 医療体制にも影を落とす梅毒流行

性感染症専門医の高齢化と引退による梅毒診断に熟知した医師の不在。

医療現場の対応力の低下=**「検査難民」**のリスク拡大

この傾向は、すでに梅毒流行が深刻化しているアメリカでも医療崩壊に近い状態を引き起こしています。

🌍 梅毒は日本だけの問題ではない

WHOによると、2022年の全世界での梅毒新規感染者数は800万人を超え死者は23万人、最も影響を受けたのは南北アメリカ・アフリカ地域。

米国においては先天性梅毒の急増、死産や乳児死亡の報告も深刻です。


📝 まとめ:今後の対策と啓発が鍵

📈 感染増加 特に女性・中高年層で増加傾向

🌐 背景要因 SNS・経済的自立・匿名性の高い性行動

⚠️ 医療体制の課題 専門医不足・検査体制の弱体化

🌎 世界的流行 アメリカ・アフリカで深刻な状況

🛡 予防と教育 検査の普及、避妊具の使用、啓発活動が不可欠

📢 最後に

梅毒は今や「過去の病気」ではなく、現在進行形の感染症リスクです。

定期的な検査と、正しい知識の普及がこれまで以上に重要になります。

👉 気になる症状があれば早めに医療機関へ。




2025年7月20日日曜日

感染症速報-15.2025年7月 日本の新型コロナウイルス最新情報:緩やかな増加傾向と今後の見通し②-

🌡️1.流行の現状(7月)

厚生労働省の定点報告によると、2025年6月下旬から7月上旬にかけて、新型コロナの感染者数は再び増加傾向にあります。

第26週(6/23–6/29):定点当たり1.40件

第27週(6/30–7/6):1.97件

第28週(7/7–7/13):2.4件

増加が顕著であり、注意が必要です 


🧬2.主流株と症状の特徴

現時点での主流株はオミクロン系統のNB.1.8.1株(約75%)とXFG株(約25%)。

KB.3株は2024年に流行しましたが、本年は報告されていません 

主な症状は「のどの痛み」「発熱」「咳」「倦怠感」「下痢」などの風邪様症状で、味覚・嗅覚障害は以前に比べ減少しましたが、後遺症として残るケースもあります 。


🏥3.医療現場と社会への影響

COVID-19は**季節性インフルと同等の感染症(5類相当)**に再分類されて以来、流行–沈静化–再流行の波が継続しています 


**2025年1月時点での医療費」において、COVID-19は入院外医療費で2位、入院医療費でも6位にランクされており、依然として医療制度上の負担が大きい状況です 。


🤒4.感染拡大の要因と注意点

増加の背景には:

2023年5月の規制緩和(5類移行)

マスク着用の減少

人の移動量の増加

新たな変異株の出現 が挙げられます 。

また、アジア各国では今年に入り再流行が確認されており、夏休みなどの人流で日本にも感染が持ち込まれるリスクが高まっています 。


🚧5.対策と今後の見通し

ワクチンの継続接種、基本的な手洗い・換気、体調不良時の外出自粛などは依然重要です 。

医療現場では依然として院内感染対策や訪問制限が継続しており、社会的な影響も残ります。 

夏から秋にかけての第11波に備える動きが求められています。


✅まとめ

・感染状況 6月下旬以降再び増加、定点当たり約2件に

・主流変異株 NB.1.8.1株(75%)、XFG株(25%)

・症状の傾向 感染力は強いが、重症化率は低め。風邪に近い症状中心

・医療・社会への影響 医療費負担は増加、訪問制限などの継続

・予防対策 ワクチン、マスク、換気、体調管理が中心

今後の展望 夏〜秋の流行再拡大に注意、アジア情勢との関連も重要



2025年7月13日日曜日

感染症速報-14.2025年7月 日本の新型コロナウイルス最新情報:緩やかな増加傾向と今後の見通し-

【はじめに】

皆さん、こんにちは!2025年7月に入り、いよいよ夏本番となりましたねぇ。

新型コロナウイルス(COVID-19)は、私たちの生活の一部として定着しつつありますが、現在の日本国内の流行状況はどのように変化しているのでしょうか?

今回は、最新のデータと医学的な視点から、現在の感染状況、今後の見通し、そして私たちが日常生活で引き続き気をつけるべきポイントについて、わかりやすくお伝えします。

【現在の感染状況は?「定点把握」で見る最新トレンド】

まず、厚生労働省が毎週発表している「定点把握」のデータを見てみましょう。

これは、全国約5,000カ所の医療機関からの報告をまとめたもので、インフルエンザなどと同様に、現在の感染者数のトレンドを把握するために使われています。

直近の定点把握データ

2025年6月2日~6月8日:3.99人

2025年6月9日~6月15日:4.16人

2025年6月16日~6月22日:4.61人

2025年6月23日~6月29日:5.79人

2025年6月30日~7月6日:8.07人

このデータを見ると、6月に入ってから感染者数の報告が緩やかに増加傾向にあることがわかります。

特に6月下旬から7月上旬にかけては、比較的上昇カーブが急になっている点に注目が必要です。

【このデータからわかること】

感染者数の緩やかな増加傾向は、 ピーク時に比べれば落ち着いているものの、ここにきて週ごとの報告数が増加しているため、感染が再び広がりつつある可能性が示唆されます。

夏に向けて人々の活動が活発になる時期でもあり、注意が必要です。

地域差の存在: 全国平均のデータですが、感染状況は地域によって異なります。

ご自身のお住まいの地域の最新情報も確認し、状況に応じた対策をとりましょう。

流行の波: 新型コロナウイルスもインフルエンザと同様に、感染の「波」を繰り返すことが予想されます。この上昇傾向は、新たな波の始まりである可能性も考えられます。

【今後の動向と私たちができること】

新型コロナウイルスは、完全に消滅するのではなく、今後も私たちの社会に存在し続ける「風土病」のような形に移行していく可能性が高いと考えられています。

そのため、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

1. ワクチン接種の重要性

ワクチン接種は、重症化や死亡のリスクを大きく低減する上で非常に有効です。

特に高齢者や基礎疾患のある方は、最新の変異株に対応したワクチンを含め、追加接種(ブースターショット)を検討しましょう。

予防効果だけでなく、万が一感染した場合の症状を軽くする効果も期待できます。

2. 変異株への継続的な警戒

新型コロナウイルスは絶えず変異を繰り返しています。

新たな変異株の中には、これまでの株よりも感染力が強かったり、ワクチンの効果が一部低下したりするものも出現する可能性があります。

政府や専門機関からの情報に常に注意を払い、必要に応じて感染対策を見直すことが肝心です。

3. 引き続き基本的な感染予防対策を

感染者数が増加傾向にある今こそ、基本的な感染予防対策を改めて徹底することが重要です。

4.手洗い・手指消毒: 外出後や食事の前など、こまめな手洗いやアルコールによる手指消毒を心がけましょう。

5.換気: 密閉された空間(特にオフィスや公共交通機関、飲食店など)では、定期的に窓を開けるなどして換気を確保しましょう。

6.状況に応じたマスク着用: 人混みの中や、医療機関・高齢者施設を訪れる際、あるいはご自身や周りの方が体調不良の時には、積極的にマスクを着用しましょう。

これは、ご自身を守るだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。

6.体調管理: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。

少しでも体調に異変を感じたら、無理せず休むようにしましょう。

7. 医療体制の維持と協力

医療機関では、新型コロナウイルス患者の受け入れと、通常の医療提供を両立させるために努力が続けられています。

重症患者向けの病床や集中治療室(ICU)の確保も引き続き重要視されています。

私たち一人ひとりが適切な受診行動(例えば、軽症の場合は自己判断で自宅療養するなど)をとることも、医療体制を守る上で大切な協力となります。

【まとめ】

2025年7月現在、日本国内の新型コロナウイルス感染状況は、緩やかな増加傾向にあります。

これは新たな流行の波の始まりである可能性も考えられます。

この状況を踏まえ、ワクチン接種の検討、手洗いや換気などの基本的な感染対策の継続、そして最新の情報の確認が、私たち自身の健康と社会全体の安全を守るために非常に重要です。

引き続き、冷静かつ適切に対応していきましょう、極度に恐れることはありません。

2025年7月6日日曜日

感染症速報-14.2025年夏も要注意!去年の流行から学ぶ「感染症」対策-その2-

 😷RSウイルス感染症

赤ちゃんや乳幼児がかかりやすく、重症化することもある呼吸器のウイルス感染症です。

対象: 生後6カ月〜1歳ごろの赤ちゃんが特に要注意!

症状: 咳、鼻水、ゼーゼー音、呼吸困難

2024年のピーク: 7月8日〜14日の週(1医療機関あたり1.84人)

💡対策ポイント: 咳があるときはマスク着用と環境の消毒をしっかり。


🦠ヘルパンギーナ

突然の高熱とのどの奥に水ぶくれができる夏風邪です。特に小さな子どもに多いです。

原因ウイルス: コクサッキーウイルスA群

症状: 38〜40度の高熱、のどの痛み、食べづらさ

2024年のピーク: 7月8日〜14日の週(1医療機関あたり2.42人)

💡注意点: 熱が下がってもウイルスは残っているので、便の処理や手洗いを忘れずに!


🚨梅毒(ばいどく)

少し異なるタイプの感染症ですが、2024年は夏に大きな流行が見られた性感染症です。

原因: 梅毒トレポネーマという細菌

感染経路: 性的接触(性器、口、肛門など)

再感染のリスクあり!

2024年のピーク: 9月30日~10月6日の週に232人が報告

💡ポイント: 梅毒は季節関係なく感染する可能性があり、パートナーとの健康管理と検査が大切です。


🧼感染予防の基本は「毎日の習慣」から!

2024年は、RSウイルス・手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱などが重なって流行し、子どもたちの間で広がりました。

それぞれ異なるウイルスですが、共通する予防策は以下の通り👇

🌟感染症を防ぐための5つのポイント

手洗いをこまめに&丁寧に(指先・爪・手首まで)

タオルや食器の共用を避ける

咳やくしゃみがあるときはマスクを着用

トイレ後・おむつ替えの後はしっかり消毒

体調が悪いときは無理せず休む&早めに受診


🏡家族全体で守る、夏の健康!

今年の夏も、去年と同じような感染症が流行する可能性は十分にあります。

でも、基本の感染対策をしっかり行えば、防げることもたくさん!

特に小さな子どもや高齢者のいる家庭では、日々の小さな習慣が、家族全体の健康を守る鍵になります。

ぜひ、今年の夏も元気に、楽しく、安全に過ごしましょう🍉✨


2025年6月29日日曜日

感染症速報-13.2025年夏も要注意!去年の流行から学ぶ「感染症」対策-その1-

こんにちは!今年も暑い夏がやってきますね🌻

海やプール、帰省に旅行…楽しい予定が盛りだくさんな時期ですが、忘れてはいけないのが 「夏に流行しやすい感染症」への備えです。

2024年の夏は、コロナ前と同じくらい多くの感染症が流行しました。

今年も同じような感染症が流行する可能性が高いため、いまのうちにしっかり予防と対策をしておきましょう!


1.🖐️手足口病(てあしくちびょう)

口の中・手・足に水ぶくれができる感染症です。主に 2歳以下の子どもに多いですが、小学生でもかかることがあります。

原因ウイルス: コクサッキーウイルス、エンテロウイルス

症状: 発熱、水ぶくれ、食欲不振

2024年のピーク: 7月8日〜14日の週(1医療機関あたり13.34人)

💡注意点: 治った後も便にウイルスが出ることがあるため、手洗い・おむつの処理は丁寧に!


2.👁️‍🗨️咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)=プール熱

**のどの痛み・発熱・目の充血(結膜炎)**が主な症状。昔はプールでうつることが多かったため「プール熱」とも呼ばれます。

原因ウイルス: アデノウイルス

症状: 高熱、のどの痛み、目やに、結膜の赤み

2024年のピーク: 1月初旬(年間最大)、夏にも再流行

💡注意点: タオルの共用を避けて、目・鼻・口をこすらないことが大事!


次回に続きます。

2025年6月22日日曜日

性感染症アラカルト-1.性感染症はトイレで感染することがあるのか?ー

 今回から数回に分けて性感染症についての間違った認識・わかりにくいこと・勘違いしやすいこと・巷の噂などについて解説していきます。

初回は性感染症はトイレで感染することがあるのか?に付いて解説します。

ここで取り扱うのは以下の性感染症です。

◯淋菌・クラミジア・梅毒トレポネーマ・HIV・HBV・HCV・THTLV-1・尖圭コンジローマ

●ヘルペス・トリコモナス・性器カンジダ

結論から申し上げますと、

◯印の性感染症はトイレでの感染は考えられません。

●印の性感染症はトイレでの感染のリスクはありえます。

【感染しない理由】

便座を介して性感染症に感染しない理由として、以下の3つが考えられます。

1.便座に血液や体液が付いても病原体の生存時間が短い

性感染症を引き起こす細菌やウイルス、寄生虫などの病原体は、人間の体内や粘膜の湿潤環境でのみ生存しやすい特徴を持っていることからして、トイレの便座やドアノブ、洗浄レバー洗面台の表面は乾燥しやすいため、病原体が長時間生存することはまずないと考えて間違いはありません。

・クラミジア・淋菌は、乾燥に弱く、粘膜の外では生存時間が極めて短い。

・梅毒トレポネーマは、空気に触れることにより酸素で死滅する。

・HIVは、熱、乾燥で容易に不活性化する。

・HBV・HCV・THTLV-1は、血液が体内に入ることから感染しますので、トイレで単に接触する程度では感染は起こりません。

・トリコモナスは、水分がある環境では数時間生存可能ですが、乾燥した便座環境では速やかに死滅する。

要するにほとんどの性感染症の病原体は、体外では長く生きられないため、便座を介して感染するリスクは極めて低いといえます。

2.感染に必要な粘膜同士の接触がない

殆どの性感染症は、感染者の体液が直接に他者の性器や口、肛門などの粘膜に接触することで感染しますが、トイレの便座を使用する際、通常は粘膜同士が直接触れ合うことはないことから感染は起こりません。

稀に便座に座ることで皮膚が触れることはありますが、通常、便座に触れる皮膚には性感染症の病原体が入り込むための傷口や粘膜がなく、感染が成立することは殆どありません。

ほとんどの性感染症は「皮膚感染症」ではなく「粘膜感染症」であることからしてトイレなどからの感染は起こらないのです。

3.日常生活では感染しない

仮の話として感染者の体液や血液が便座に付着していたとしても、通常の清掃やアルコール消毒、乾燥によってほとんどの病原体は死滅します。

また、座る前にトイレットペーパーで拭くことにより、血液や体液が付着していたとしてもペーパーで拭き取られて感染に必要な量以下になることから感染はやはり起こりません。

2025年6月15日日曜日

感染症速報-12.新型コロナウイルスの流行状態-

 新型コロナウイルス感染者の全国の定点数は、

2025年5月26日~6月1日まで0.84人でしたが、6月2日~6月8日まででは0.92と上昇傾向にあります。


特に沖縄3.91、熊本1.07、愛媛1.76、京都1.49、奈良1.02、愛知1.05、長野1.11、埼玉.28,神奈川1.07,千葉1.27,茨木1.24、新潟1.11の都道府県では定点数が1を超えています


定点当たり報告数とは、対象となる感染症について、すべての定点医療機関からの報告数を定点数で割った値のことで、言いかえると1医療機関当たりの平均報告数のことです。


季節性インフルでは、1定点当たりの患者数が1人以上になると「流行入り」、10人以上で「注意報」、30人以上で「警報」が発令されるが、新型コロナに同様の仕組みはないことから、多くの専門家し確立すべきと指摘しています。


しかし定点数を参考にすることにより新型コロナが、流行しつつつある・流行している・沈静化している等の判断目安にはなります。


現在中華人民共和国に置いては、2025年4月から新型コロナウイルスの陽性率が週を追うごとに上昇しつつあります。


中華人民共和国は情報統制を行い本当のことを発表しませんので、詳しくはわかりませんが、その他の情報から総合的に判断して現在新型コロナウイルスの変異株の流行は間違いないようです。


日本国内への侵入もありえますから、引き続き、手洗いやマスクの着用、体調がすぐれないときの受診など、日常的な感染対策を心がける必要がありそうです。

2025年6月8日日曜日

感染症速報-11.マクロライド耐性百日咳菌による百日咳患者増加-

百日咳の潜伏期は通常5〜10日間で、かぜ様症状で始まり、百日せき含有ワクチン未接種の場合は特徴的な発作性の咳込みや吸気性笛声へと進行していきます。

日本国内では60年以上前から百日せき含有ワクチンが定期接種となっているため、多くの小児や成人は複数回の百日せき含有ワクチンを接種していることからワクチン既接種者の場合は百日咳に特徴的な咳は認められることは少なく、長引く咳や息が詰まるような咳など、いわゆるかぜ症候群に認められる咳とは異なる咳症状を呈することが多いです。

2024、2025年は2023年以前と比べて10~19歳が大きく増加し全体の約50%を占め、次いで5~9歳が約20%と報告されています。

確定症例の多い5歳以上はワクチン既接種者が多く、症状は典型的でないことに注意が必要です。

治療の基本はマクロライド系抗菌薬を使用しますが、痙咳期(咳の激しい時期)の抗菌薬治療は症状の改善効果はあまり見られませんが、他者への感染を低減させるため感染拡大防止策としては重要とされています。

日本国内おいて、重症化しやすい生後3カ月未満の乳児がいる場合はマクロライド系抗菌薬に加えST合剤の併用します。

ただしST合剤は、低出生体重児、新生児、妊婦には禁忌であることに注意が必要となり、集中治療を必要とする重症百日咳を疑う症例の抗菌薬選択については、地域の小児感染症専門医師を受信する必要があります。

※ST合剤とは、スルファメトキサゾールとトリメトプリムという2つの成分を配合した抗菌剤です※

現在全国的な百日咳の流行拡大を受け、DPTの接種希望者が急増し、2025年4月以降の需要は供給量を大幅に上回る状況となり、2025年5月から限定出荷の措置が講じられているのが現状です。

DPTが供給制限されている現状では、重症化リスクが高い早期乳児への感染を防ぐためのワクチン接種を最優先とし、次いで乳児と頻回に接触する感受性者への接種を優先する必要となります。

※DPTとは、ジフテリア(D)、百日咳(P)、破傷風(T)の3つの病気を予防するワクチンを指します※


日本国内での百日時期患者をこれ以上増やさないためには、

1. 定期接種対象である乳児に対して、生後2カ月から遅滞なく5種混合ワクチンを確実に接種する。

2. 妊婦がDPT接種を希望する場合には、地域内での供給調整を図る。

3. 就学前の幼児、学童、医療関係者等へのDPT追加接種については、新生児や早期乳児との接触頻度の高い者を優先対象とし、地域の供給状況を踏まえて段階的に実施を検討する必要があります。

DPT追加接種とは、ジフテリア、百日咳、破傷風の予防接種(三種混合ワクチン)の追加接種のことです※

2025年6月1日日曜日

感染症速報-10.手足口病-

口の中や、手足などに水疱を伴う複数の発疹が出る感染症で、例年6~8月に流行する"こどもの三大夏風邪"の1つといわれています。


感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足底や足背(足の甲)などに2~3mmの水疱を伴う複数の発疹が出現し発熱は約3分の1にみられますが、38℃以下のことが多く高熱が続くことは通常はありません。


ほとんどの発病者は、3~7日のうちに治る病気です。


しかしながら、まれに、髄膜炎、小脳失調症、脳炎といった中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、重篤な合併症を伴うことがあります。


手足口病は2歳以下が半数を占めますが、小学生でも流行的発生がみられることがあります。


成人を含めた小学生以上の大半は、すでにウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いため、成人での発症はあまり多くありません。  


【大人にも感染することがあるので注意】

子どもに比べて症状が重く出る傾向があり、発疹の痛みや発熱、悪寒、全身倦怠、関節痛、筋肉痛などの症状が出ることもあり、特に足の裏に発疹が出ると歩くのが困難になることもあります。


【原因となるウイルス】

主にコクサッキーウイルスA6(CA6)、CA16、CA10、エンテロウイルス71(EV71)などです。


【感染経路】

飛沫感染、接触感染、糞口感染が知られています。


【治療法】

予防ワクチンはなく、特別な治療方法はありません。

基本的には軽い症状の病気のため、経過観察を含め、症状に応じた治療となります。

まれに髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の合併症や心筋炎などが起こる場合があるため、経過観察をしっかりと行い病態の変化が認められれば直ちに受診することです。


※現在全国的に増加傾向にありますので今後注意が必要となります※






解熱剤: 発熱や痛みがある場合に、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を使用します。

口内炎の緩和: 口内炎が痛む場合は、局所麻酔薬を含むゲルやうがい薬を使用したり、冷たい飲み物やゼリー、プリン、柔らかく煮たうどん、豆腐など、喉に優しいものを与えたりすると良いでしょう。熱いものや酸っぱいもの、辛いもの、塩辛いものは避けるのが賢明です。

水分補給: 脱水症状を防ぐために、こまめな水分補給が重要です。

ほとんどは軽症で治りますが、まれに髄膜炎、脳炎、心筋炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。以下の症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。



2025年5月25日日曜日

感染症速報-9.新型コロナウイルス中国本土で大流行-

現在中国本土では新型コロナウイルスが大流行し、病院は患者で溢れかえっています。


流行している新型コロナウイルスは、"XDV変異株"です。


XDV変異株については、感染力は強いものの、病原性は比較的低いと分析されていて、初期症状は発熱、頭痛、喉の痛み、倦怠感など従来と類似していますが、特に咽頭痛と咳が強く現れる傾向にあるとの報告がされています。


更にもう一つ、ウイルスの変異が続いており、特にオミクロン株のXDV系統の亜系統であるNB.1.8.1は、免疫逃避(回避)能力が明らかに強まっていることが挙げられています。


【XDV変異株とは】


XDV株は、新型コロナウイルスのオミクロン株JN.1系統から派生した変異株の一つです。


現在までの情報では、JN.1株やXBB株、およびそれらの派生系統と比較して、伝播力、病原性、免疫逃避能力に明確な変化はみられないとされています。


しかし、香港など一部の地域では、下水サーベイランスデータからXDV株の有病率が増加傾向にあることが報告されています。


XDV株は、XBB系統とJN.1系統のスパイクタンパク質を含む「マルチ組換え体」であり、中国で急速に増加していると報告されています。


世界保健機関は、変異株を「懸念される変異株(VOC)」「注目すべき変異株(VOI)」「監視下の変異株(VUM)」の3段階で分類していますが、XDV株自体が個別にVOCやVOIに指定されているという情報は見当たりませんでした。


しかし、JN.1系統の亜系統として監視対象となっているものの中には含まれています。


現時点では、XDV株がより重篤な症状を引き起こすという証拠はありませんが、感染状況は継続的に監視されています。


【今後の対策】


中共は本当のことは言わずに隠蔽することから、本当のことがつかみにくく対策しづらいですが、大阪万博や観光で日本に入国してこれを持ち込むことは間違いないと思います。


以前の新型コロナウイルス対策に基づいと正しく感染予防対策をする必要があります。


国は前回の新型コロナウイルスの大流行を引き起こしたことを教訓にして、日本への影響を防ぐため、国は引き続き基本的な感染予防策を徹底してほしいものです。

2025年5月18日日曜日

感染症速報-8.水ぼうそう大流行!!-

 水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる発疹性の感染症で、一般的に"水痘"とも呼ばれます。


症状としては主にかゆみを伴う水ぶくれ(水疱)が全身に現れるのが特徴で、空気感染、飛沫感染、接触感染で広がります。


その水ぼうそうが今大流行しています。


水ぼうそうは子供がかかる病気だと思われがちですが、大人もかかる可能性もあるので注意が必要です。


成人が水ぼうそうにかかると、重症化しやすく、肺炎や脳炎などを起こすリスクがあります。


2025年関東では初めて流行注意報を発令する自治体もあり、医師が警鐘を鳴らしています。


水ぼうそうは2025年4月下旬から増加し1週間に3〜4人程度の患者が出ていて、ゴールデンウイーク明けには1.5倍に増加しています。


本来水ぼうそうは乳幼児の感染が多い感染症ですが、現在は感染する人の年齢が上がっているといいます。


2014年から子供への水ぼうそうワクチンの定期接種が行われましたが、年令を重ねることによってワクチンの効果が弱まったタイミングで感染するケースが増えていると専門家は指摘しています。


子どもの時に水ぼうそうにならずに成長して大人になっている人も増加しつつあります。


このことからも大人の水ぼうそうはさほど珍しくない昨今です。


埼玉県では、2025年5月11日までの1週間で報告された水ぼうそうの患者数は、1医療機関辺り1.43人と国の定める注意報の基準である1人を大きく上回っています。


そのため埼玉県は5月14日、初の水ぼうそうの流行注意報を発令しています。


【追加の話】


ご存じの方もおられますが、実は水ぼうそうと帯状疱疹は同じウイルスで引き起こされます。


現在帯状疱疹は若者から高齢者まで幅広い世代で増加傾向にあります。


水痘ウイルスは非常に強い感染力を持っていてその感染力の強さはインフルエンザや新型コロナウイルスよりも強く、大人になってから水ぼうそうを発症すると重くなりやすいことから、水ぼうそうの人が身近にいたらマスク・うがい・手洗いとうの予防対策をきっちりと行い感染に注意する必要があります。


水ぼうそうに一度罹患するとほとんどの人は再発することはありませんが、免疫力が低下した際に帯状疱疹として発症することがありますので注意が必要となります。


成人が水ぼうそうになると重症化のリスクがあるため、特に成人や免疫が低下している人は注意が必要です。


今や水ぼうそうは子供だけの病気ではありません!!

2025年5月11日日曜日

感染症速報-7.リンゴ病増加!!-

2025年4月末時点で、過去10年でリンゴ病が最多を記録しています。


特に栃木県、群馬県、山形県、北海道で患者が増加しています。


【リンゴ病とは】

リンゴ病(伝染性紅斑)とは、ヒトパルボウイルスB19による感染症で両頬がリンゴのように赤くなるのが特徴です。


※リンゴ病は第5病、ほっぺ病とも呼ばれます※


※ほぼ5年ごとの流行周期で発生数の増加がみられます※


患者は小児に多く見られ、飛沫感染や接触感染で広がります。


通常は自然に治癒しますが、妊婦が感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。


【リンゴ病の症状】


・潜伏期間は10~20日間と長い。


・初期症状としては発熱や軽い風邪のような症状。


・両頬に赤い発疹が出てリンゴのように赤くなる。


.腕や足にレース状の発疹が出る。


【リンゴ病の感染経路】


1.飛沫感染:咳やくしゃみなどの飛沫。


2.接触感染:感染者との接触、タオルや食器の共有。


【リンゴ病の注意点】


◎妊婦が感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があるために注意が必要です。


※妊婦感染による胎児の異常(胎児水腫)および流産がありますが、妊娠前半期の感染の方がより危険であり、胎児死亡は感染から4~6週後に発生ことが報告されていますが、妊娠後半期でも胎児感染は発生ずるとの報告もあり、安全な時期について特定することはできないのが実情です※


【感染予防対策予防】


・こまめな手洗いや咳エチケットが大切です。


・発疹が出た後であれば、通常は登園・登校は可能ですが学校の指示に従う必要があります。


【治療】


子どもは一般的に1~2週間で自然に治ります。


大人では、関節痛や発熱などの症状が目立ち、頬の赤みは子どもほど顕著でないことが多いです。


一度感染すると終身免疫を得られるため、一度かかったことがあれば再感染はしません


特効薬やワクチンはなく、自然に治癒することがほとんどです。

 

2025年5月4日日曜日

感染症速報-6.百日咳増加!!-

 百日咳の感染拡大が、欧州やアメリカで再び深刻な問題となっています。

2023年にはEU/EEAで25,000件以上の症例が報告され、2024年初頭にはさらに増加、米国においても2024年には12月時点で35,435件と、前年の同時期と比べ5倍以上に急増しています。


特に注意すべきは、命に関わるリスクが高い0歳児への影響です。


ワクチン未接種の赤ちゃんは免疫力がないため、重症化しやすくなりさらに、ワクチンの効果は約4〜12年で低下するため、大人も免疫が失われがちです。


そのため、新生児や乳幼児に接する周囲の人々がワクチンを追加接種し、赤ちゃんを守ることが重要です。


しかしながら、日本では医療従事者を含む新生児や乳幼児に接する大人への百日咳ワクチンの追加接種が十分に行われていません。


この現状は非常に憂慮すべきことであり、早急な対策が求められます。


感染拡大を防ぐためには、ワクチン接種の重要性を広く啓発し、社会全体で予防に取り組むことが必要です。


百日咳は予防可能な感染症です。


私たち一人ひとりが意識を高め、行動を起こすことで、大切な命を守ることができるのです。


赤ちゃんの命を守るため、私たち一人ひとりが行動を起こす時です!


2025年4月27日日曜日

いきなりエイズ率とは

 【"いきなりエイズ率"とは】


HIVの感染を知らずにAIDSが発症した事例の割合とされていますが、実際には新規HIV感染報告事例+新規AIDS発症報告事例に占める新規AIDS発症報告事例の割合で表されています。


"いきなりエイズ率"とはマスコミを中心に用いられており,厚生労働省エイズ動向委員会による『エイズ発生動向年報』においては,これまでに HIV/AIDS関連の正式な統計指標として"いきなりエイズ率"の名称が使われたことはありません。


【"いきなりエイズ率"が高いということは何を意味するのか】


気づいた時には既にエイズを発症しているという事例が多いことを意味します。


高いということは、不安な行為をした人で積極的にHIV検査を受けている人が少ないということになります。


"いきなりエイズ"は毎年400件以上(新規HIV報告数の約3割)も報告されているのが現実です。


不安な行為をしてもHIV検査を受けない人が多いことから、実際の国内HIV感染者数は報告件数を大幅に上回っているとことが懸念されています。


このことからして更に"いきなりエイズ"は増加すると懸念されています。


近年、我が国における"いきなりエイズ率"は、20%前後と横ばい推移していますが明らかな減少傾向とはなっていません。


大切なことは、不安な行為をしてしまったときにはHIV検査を受けられる適切な時期が来ればHIV検査を必ず受けるということです、 これが"いきなりエイズ"を減少させることになります。


よく体調不良やいろいろの症状から感染を云々する人が多いですが、HIV感染は適切な時期にHIV検査を受けないとわかりません。 


2025年4月20日日曜日

感染症速報-5.ノロウイルス未だに流行中-

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、例年冬に流行ピークを迎えますが 2025年は春になっても流行が続いている状況です。

特に、過去10年間で同時期に最も多い患者数となっていてこれは、2つの異なるタイプのノロウイルスが流行していることや、乾燥した気候、寒暖差などが原因と考えられています。


そのことから今年は春になっても異例の流行が続きマスコミを賑わしています。


今年の長引く流行の原因としては、例年流行するのは1つのウイルスタイプだけですが、今年は2つのウイルスタイプが時期をずらして流行しているからと言われています。


最初GII.4(1つ目のウイルス)が流行し、GII.17(2つ目のウイルス)が流行していることから、流行規模と流行時期が長くなる可能性があると指摘されています。


ヒトに感染する主要なノロウイルスは、現在2つの遺伝子群(GIとGII)、さらにGIは9種類(GI.1~GI.9)、GIIは22種類(GII.1~GII.22)の遺伝子型に分類されています。

【現在流行しているノロウイルスのウイルスタイプ】

1.GII.17」というタイプが65%余り

2.GII.4」というタイプが、17%余り


【予防対策】

1.手洗いの徹底・・特に排便後や食事の前に、手洗いを徹底することが重要です.。

2.適切な食中毒対策・・食品の加熱や、生食を避けるなど、適切な食中毒対策を心がけましょう.。

3.嘔吐物の処理・・嘔吐物を処理する際は、マスクと手袋を着用し、適切な処理を心がけましょう.。

4.医療機関の受診・・吐き気や嘔吐、下痢などの症状がある場合は、素人判断をしないで早めに医療機関を受診しましょう。

2025年4月13日日曜日

感染症速報-4.梅毒-

 日本国内における2024年の梅毒の患者報告数は、全国で14,663人(速報値)となり、2023年の14906人とほぼ同様の患者数となっています。


1948年から梅毒患者について報告制度※注がありますが始まり、患者数は減少傾向にありましたが2011年頃から報告数は再び増加傾向となり、2021年以降大きく増加しています。


この増加の原因としては、


1.出会い系サイトの普及による不特定多数との性交渉の頻度が増えれば、梅毒に感染するリスクも高くなります。


2.性の多様化による感染者の増加。


3.ピル(経口避妊薬)使用のハードルが低くなり、コンドームの使用率の低下。


などいろいろと言われていますが未だにはっきりとしていません。


梅毒はHIVのようにコンドームでは完全に予防できませんが、やはり感染防止には役立っていますので、過信することなく利用する必要があります。


不安な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けて、感染がわかればすぐに治療すれば短期間で完治します。


早期の場合はペニシリン注射一回で完治しますが、治療が遅れればそれだけ完治するのは遅れることになります。

2025年4月6日日曜日

感染症速報-4.日本国内において百日咳が患者が急上昇-

百日咳(pertussis, whooping cough)は、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症です。


乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6カ月以下では死に至る危険性も高い感染症です。


百日咳の咳は、短い咳が連続して出るのが特徴で、息を吸うときに「ヒューヒュー」という音がします。


咳発作は連続した咳き込み(スタッカート)の後、息を吸うときに笛の音のようなヒューという音が出る(ウープ)発作の繰り返し(レプリーゼ)が約2~3週間持続し、咳が治まるまで約100日間(3ヵ月程度)続きます。


百日咳の病名は、咳が約100日間(3ヵ月程度)続くことに由来しています。


百日咳特有の咳を紹介した貴重なサイトを以下に記載しておきまのので、参考にして下さい。

『百日咳とはこんな咳』


国立健康危機管理研究機構は、3月23日までの1週間で全国の医療機関から458人の患者が報告されたとの速報値を公表しています。


2025年に入ってからの累積は4100人で、すでに昨年1年間の累積4054人を超え都道府県別では大阪府が最も多く、336人。東京都が299人、新潟県が258人と続きます。


百日咳にはワクチン接種が最も予防に有効とされています。


ワクチンの普及とともに感染者数は減少してはいますが、世界各国でいまだ多くの流行が発生しています。


日本国内での百日咳流行を受けて日本小児科学会は、2025年3月29日付で「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」を公開し、日本国内でマクロライド系抗菌薬耐性菌の分離報告が増加していることについて注意喚起するとともに、現行の定期接種に加えて、任意接種での3種混合ワクチンの追加接種を推奨する旨を改めて周知しています。

【参考資料】


『百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について 』

2025年3月30日日曜日

感染症速報-3.サポウイルスによる感染症-

 感染経路】


感染経路は汚染された食品や患者と接触した手を介して感染します。


【潜伏期間と症状】


12~48時間で、嘔吐・下痢・発熱などの症状がある胃腸炎を引き起こしますが、症状からはノロウイルスとサポウイルスの区別はできません。


【感染源】


牡蠣などの二枚貝が有名です。


ノロウイルスもサポウイルスも人間の体内でしか増殖できず、患者の糞便から排泄され、下水を通って海に流れ、牡蠣などの二枚貝に取り込まれて濃縮され汚染された貝を生で食べることで感染します。


貝類を食べていないのに感染するのは人から人への感染です。


サポウイルスに感染した人が感染源になったり、患者の吐物や下痢を処理した人が、手袋着用や手洗いが不十分なまま調理すると食品が汚染されて感染源になります。


サポウイルスは1年中存在するので夏でも発生しますが、冬に多い傾向があります。


【治療法】


ノロウイルスなどと同様で特効薬がないために脱水に対する対症療法が中心となります。


有効な治療法としては水分と電解質を補充するための経口補液です。


嘔吐や下痢があると水分だけでなく塩分が失われますので、市販のスポーツドリンクは、糖分が多く塩分が少ないので、あまりお勧めできません。


OS-1やアクアライトなど小児の脱水の治療に使えると記載されたものが良いです。


いずれにして感染したと考えられる症状が出たときには、素人処置をしないですぐに受診することです。


【正しい予防法】


・牡蠣などの2枚貝は十分に加熱する。


・生鮮食品は十分に洗浄する。


・トイレの後や調理前、食事前には流水による丁寧な手洗いをする。


・手洗い後のタオルの共用を避けて使い捨ての紙タオル使用する。


・患者の吐物や下痢を処理する時は、必ず使い捨て手袋を着用する。


・汚染された衣類は他の衣類と分けて洗濯しましょう。


・胃腸炎のウイルスにはアルコール消毒は効果がないので石鹸を使い流水でよく洗う。


・汚染された器具などは塩素系漂白剤を100倍から200倍程度に薄めて消毒をします。


2025年3月23日日曜日

感染症速報-2.サポウイルスとは-

 1977年に札幌の児童福祉施設で胃腸炎の集団感染があり初めて報告されました。


当時は"サッポロウイルス"呼ばれましたが、2002年の国際ウイルス学会で「サポウイルス」と正式に命名されました。


※"サポ"という名前は、発見された地名(札幌)に由来しています※


小児の散発的な感染性胃腸炎の原因と考えられてきましたが、近頃では食中毒などの集団感染の報告が増加傾向にあります。


サポウイルスは、カリシウイルス科に属するRNAウイルスで、主な感染経路は経口感染で、汚染された食品や水、あるいは感染者との接触によって感染します。


特に、牡蠣などの二枚貝を生で食べることで感染するリスクがあります。


主な症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが一般的な症状です。


※これらの症状は、ノロウイルスによる感染症とよく似ています※


潜伏期間は12~48時間で、発症している期間は一般的には1~2日、長い場合は一週間程度続くこともあります。


感染しやすい年齢層としては乳幼児に多く見られますが、近年では成人や高齢者の感染事例も報告されています。


【感染予防法】


1.手洗いの徹底。


2.食品を十分に加熱する(特に二枚貝は、生食を避ける)。


3.感染者の吐物や糞便をビニール袋にいれるなどの処理し、第三者に触れないようにする。


当然のことながらサポウイルスは、ノロウイルスと同様にアルコール消毒は無効ですので、石鹸でよく手を洗い流水で洗い流す必要があります。


【治療療法】


特効薬はなく、対症療法が中心となります。


脱水症状を防ぐために、水分と電解質の補給が重要です。


※※サポウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスによるものと症状が似ているため区別がしにくいのが現実です※※


20年程前からサポウイルスによる胃腸炎も知られるようになってきており、ロタウイルスでもアデノウイルスでもノロウイルスでもないウイルス性胃腸炎は原因はサポウイルスか原因あると指摘する専門家も多くいます。


要するにサポウイルスはノロウイルスに比べて、まだ、詳細な情報が不足しているのが現実です。

2025年3月16日日曜日

感染症速報-1.ヨーロッパでハシカ流行-

世界各国の感染症の情報をいち早くお知らせします。

2025年3月13日、世界保健機関と国連児童基金はロシアやヨーロッパを含む53カ国でハシカ(麻疹)の感染件数が2024年に127352件に上り、21万件を超えた1997年以降最悪となったと発表しました。


5歳未満の子どもの感染が全体の43%と多く「肺炎や腎不全を併発し、生命に関わるケースもある」と警告を発し予防接種の重要性を訴えています。


世界保健機関と国連児童基金の報告書によりますと、ヨーロッパ地域では1997年以降、ハシカは減少し、2018年から再流行し始め新型コロナウイルスの世界的流行を経て2024年に急増しました。


このハシカは半数以上が入院が必要な重症であったと報告されています。


今回のハシカ再流行の一因としては、新型コロナウイルスの流行によるハシカの予防接種率の低下を指摘しています。


新型コロナ感染者への対応で医療施設は逼迫し、ロックダウンも影響し定期予防接種を含む医療サービスが混乱したのも一因とされています。


今後日本国内においてもハシカが流行する危険性は否定できません。


【ハシカ(麻疹)について】

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。


免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。


現在の日本国内における麻疹患者数はかつてより著しく減少していますが、未だ年間約10~20万人と推計されています。


小児にとって麻疹は重症度の高い疾患で、近年は成人での発症も問題となっていることから、その対策は国民全体の健康を守るという点でも重要とされています。 

2025年3月9日日曜日

HIVとAIDSの話-1.はじめにー

 HIVとAIDSについて解説していきますのでお付き合いください。


HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)は、体内の免疫細胞を破壊するウイルスでHIVに感染すると、免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍などの重篤な病気にかかりやすくなります。


AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)は、HIV感染によって引き起こされる病気の総称でHIVに感染してから2~5年程度と早く発症する事例が多く見られますが、早期発見・早期治療により、AIDSの発症を予防することができます。


HIVの感染経路は、主に以下の3つです。


1.性行為によって


男性同性間性交、異性間性交、肛門性交、激しいオーラルセックスなどによって起こります。


2.血液を介して


血液製剤の輸血、針刺し事故、刺青やボディピアスなどによって起こります


2.母子感染


妊娠中、出産時、授乳時などに母親から子供に感染することがあります。


HIVに感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。


検査結果が陽性の場合、医療機関を受診して治療を受けることが大切です。


現在、HIVの治療薬は非常に進歩しており、適切な治療を受ければ、健康的な生活を送ることができます。


また、感染を予防するために、コンドームや注射針の共有を避けるなどの対策をとることも重要です。


以下に、HIVとAIDSの予防対策をまとめます。


1.性交渉の際には、コンドームを着用する。


2.針刺し事故に気をつけることや刺青・ボディピアスの際には、使い捨ての器具を使用する。


※針刺し事故は医療従事者以外に起こることはまずありません※


3.妊娠を希望する女性は、妊娠前と妊婦健診の際にHIV検査を受ける。


4.HIV感染のある女性は授乳を中止する。


5.日常生活でのHIV感染はまず起こることはありません。


HIVとAIDSは、適切な対策をとることで、予防や治療が可能な病気です。正しい知識を身につけ、感染予防に努めましょう。

2025年3月2日日曜日

薬を飲みやすくするために砕いて服用してもよいのか?

 薬の種類は多くあり飲みにくい薬もあります。

そのことから最近では薬を砕いて服用する人が増加しています。

果たして薬を砕いて服用してもなんの問題もないのでしょうか?

結論から言いますと砕いて飲んではいけない薬は存在します。

【薬の種類】

腸溶錠や徐放錠、舌下錠など、表面がコーティングされている薬や、胃への刺激性がある薬など多種あります。

【砕いてはいけない薬の理由】

・腸溶錠:胃酸によって変化したり、胃を刺激するために、胃では溶けにくく腸で溶ける膜が施されていることから粉砕すると胃に負担がかかります。

・徐放錠:薬の成分がゆっくりと溶け出し、効果が長く続くように加工されていることから粉砕すると、一気に成分が吸収され、血液中の薬の濃度が上がりすぎてしまい危険です。

・舌下錠:口の粘膜から吸収されるように作られているので、粉砕して飲み込んでしまうと効果がありません。

※コーティング錠とは、錠剤の表面をフィルムや糖衣でコーティングした製剤で苦味や臭いのマスキング、光や湿気による安定性の向上、粉落ちの防止、体内での溶ける時間の調節などの効果があります。※

【砕いても良い薬】

口腔内崩壊錠(OD錠、チュアブル錠、 素錠)

・口腔内崩壊錠(OD錠)とは、口の中で唾液や少量の水で溶ける錠剤で水なしで服用でき、高齢者や嚥下機能が低下した患者、水分の摂取制限が必要な患者などに適しています。

・チュアブル錠とは、口の中で噛み砕いて服用する錠剤です

・素(裸)錠 :薬の成分を錠剤の形に圧縮し、表面は何も加工していないもの。 

※苦味や臭いをマスクしているため、嚥下機能低下患者に粉砕し調剤することで、苦味 が強く服薬が難しくなる可能性がありますし、薬の有効成分がゆっくり溶け出すようにした製剤のために砕くとその効果が発揮できません。

近年錠剤の薬を飲みやすくするため砕いて粉にする「便利グッズ」として「お薬クラッシャー」があり、ネット上では数多くの製品が販売されていて、すべての薬が砕くと飲みやすなるような宣伝がされていますが、砕いてはいけない薬を砕いて服用すると効果減少したり、思わぬ副作用が起こることがあります。

確かに服用しにくい薬もあったり、錠剤を飲み込むのが苦手な人のほか、飲み込む力が衰えた高齢者や錠剤に慣れない子どもいることは事実ですが、あくまでも薬は副作用が起こりにくく、そして効果があるように服用する必要があります。

そのためにはそれぞれの薬の服用方法を厳守して服用する必要があります。

飲みやすくなるから何でもかんでも砕いて服用することはやめてください。