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2025年9月18日木曜日

感染症速報-23.国内でエムポックスの重症型「クレード1」初確認:医学的考察と最新情報-

 日本国内で、より重症化しやすいとされるエムポックスの「クレード1」の感染者が初めて確認されました。


この事例は、単なる感染症のニュースを超え、世界的な流行状況と日本の公衆衛生体制における重要な課題を浮き彫りにしています。


◎エムポックスの「クレード1」と「クレード2」:ウイルスの違いと重症度


エムポックスウイルスには、主に2つの主要な系統(クレード)が存在します。


1.クレード1(旧コンゴ盆地クレード): 感染力が比較的強く、致死率が8〜10%と高いとされています。このタイプは主に中部アフリカの風土病として知られていました。


2.クレード2(旧西アフリカクレード): 感染力や致死率がクレード1よりも低く、致死率は1%未満とされています。2022年以降、世界的に大流行したエムポックスのほとんどがこのタイプでした。


今回、日本で確認されたのは、より危険性が高いとされるクレード1で、アフリカへの渡航歴を持つ20代の女性の症例です。


この事実は、感染症が地理的な境界を容易に越える現代において、ウイルスの系統解析(ゲノム解析)が公衆衛生管理に不可欠であることを示しています。


◎世界的な状況と日本の課題


2022年以降、世界中でエムポックスの流行が拡大し、日本国内でも散発的に症例が報告されてきました。


これまでの国内事例はすべてクレード2によるものであり、今回のクレード1の確認は、日本の医療機関や公衆衛生当局にとって新たな脅威となります。


ウガンダでのアウトブレイク: 2024年に入り、ウガンダではクレード1による大規模な流行が発生しており、多数の死者が出ています。


この背景には、現地の医療体制の脆弱性やワクチンの供給不足などが指摘されています。


日本で確認された症例も、こうした地域からの輸入例と考えられます。


 今回の事例は、水際対策の重要性だけでなく、海外からの入国者に対する健康監視、そして医療機関での適切な鑑別診断体制の必要性を改めて示しています。


◎ 医療従事者への注意喚起と今後の展望


エムポックスの初期症状は、発熱や発疹であり、他のウイルス感染症と見分けがつきにくい場合がありそのため、医療従事者は、渡航歴のある患者に対して、エムポックスの可能性を鑑別診断に含めることが重要となります。


・潜伏期間: エムポックスの潜伏期間は通常5〜21日で今回の症例では、アフリカへの渡航歴があることが感染源特定の鍵となりました。


・治療とワクチン: エムポックスには、対症療法が主に行われますが、重症例に対しては抗ウイルス薬「テコビリマット」が使用されることがありまた、ワクチンによる予防も有効ですが、クレード1への対応となると、ワクチンや治療薬の十分な備蓄、そして医療機関での迅速な対応プロトコルが求められます。


今回のクレード1の国内初確認は、パンデミックへの警戒を緩めてはならないというメッセージを強く発信しています。


厚生労働省や国立感染症研究所は、引き続き国際的な動向を注視し、情報共有と監視体制を強化していく必要があります。


※2025年9月6日、世界保健機関(WHO)は感染症の「エムポックス」、これまでの「サル痘」の感染者が減少しているとして、およそ1年前から出していた緊急事態の宣言を終了すると発表しました※


これは時期早々で、あまりにも現実を直視していない判断と私は思います。


 

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