ワクチンの「シェディング」でコロナ感染? 専門家が解説する、その真実と科学的根拠について解説いたしますのでお付き合い下さい。
新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの生活を一変させ感染の波が落ち着いた今も、SNSではさまざまな情報が飛び交い、その中には科学的根拠のない「デマ」も含まれています。
特に、**「ワクチンを打った人から、打っていない人にワクチンの成分がうつり、体調不良を引き起こす」という、いわゆる「シェディング」**の言説が拡散されています。
この話は本当なのでしょうか?
今回は、専門家の見解と最新の医学的知見を基に、この言説の真偽と、私たちが知っておくべき正しい情報について解説します。
◎「シェディング」とは本来どういう意味か?
まず、医学的に「シェディング(shedding)」という言葉が意味するのは、感染者の体内からウイルスが放出されることで例えば、インフルエンザに感染した人が咳やくしゃみでウイルスをまき散らすことや、麻疹(はしか)に感染した人が発疹や呼吸器からウイルスを放出することなどがこれに当たります。
つまり、ワクチン接種によって体から何かが放出され、他者に影響を与えるという文脈で使われるのは、本来の意味とは全く異なります。
◎mRNAワクチンは「シェディング」を起こさない
結論から言うと、新型コロナのmRNAワクチンや、自己増幅型(レプリコン)ワクチンで「シェディング」は起こりません。
その理由は、これらのワクチンの仕組みにあります。
これらのワクチンは、生きたウイルスを体内に入れる**「生ワクチン」**とは全く異なります。
生ワクチンは、毒性を弱めたウイルスそのものを接種するため、ごくまれにワクチンを接種した人から排出されたウイルスによって他者が感染するリスクがゼロではありません。
しかし、これはロタウイルスやポリオといった一部の生ワクチンに限られた話です。
◎体内で作られるのは「スパイクタンパク質」
mRNAワクチンやレプリコンワクチンが体内で作るものは、ウイルスの表面にある**「スパイクタンパク質」**の設計図(mRNA)でこの設計図を基に私たちの細胞がスパイクタンパク質を作り、それに対して免疫が働きます。
重要なのは、このスパイクタンパク質は感染能力を持たないということです。
大阪大学の宮坂昌之医師も述べているように、ワクチン接種者から他者に感染能力のあるウイルス粒子や、健康に悪影響を及ぼすような物質が放出されることは、科学的にあり得ません。
◎科学的根拠に基づいた判断のために◎
では、なぜこのような言説が広まるのでしょうか?
その背景には、新型コロナウイルスに関する情報の多さと、それに伴う不確実性への不安があると考えられます。
しかし、不安だからこそ、私たちは公的機関や専門家が提供する信頼性の高い情報に目を向ける必要があります。
厚生労働省や日本感染症学会などの公式ウェブサイトでは、ワクチンの有効性や安全性について、国内外の研究結果に基づいた正確な情報が公開されています。
例えば、最新のオミクロン株対応のワクチンは、入院リスクを40〜70%も減らすという報告がありますし、日本ワクチン学会理事長の中野貴司医師が指摘するように、特に高齢者にとって、新型コロナに感染した場合の死亡リスクはインフルエンザよりもはるかに高いのが現状です。
確かにワクチンには副反応のリスクもゼロではありませんが、重症化や死亡、そして後遺症のリスクを下げるというベネフィット(利益)を天秤にかけることが重要です。
◎迷ったときはかかりつけ医に相談を◎
「ワクチンを接種すべきか?」という判断は、一人ひとりの健康状態や生活環境によって異なります。
SNS上の不確かな情報に惑わされるのではなく、まずは厚生労働省のウェブサイトや、信頼できる医療機関の情報にアクセスしてみましょう。
そして、最終的な判断に迷ったときは、遠慮せずにかかりつけの医師に相談してください。
あなたの健康状態を最もよく知る専門家が、あなたにとって最適な選択肢を一緒に考えてくれるはずです。
正しい知識は、不安を和らげ、より良い未来を選ぶための最大の武器となります。
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