血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2020年2月23日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-7.市中感染症と院内感染症の違いについて-

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)が原因で神奈川県の80代の日本人女性が死亡、東京都の70代タクシー運転手や、和歌山県の50代男性外科医ら日本人3人が感染し、感染者が増加しています。

そして北海道内で2月19日までに4人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、この4人の間に濃厚な接触がなく、いつどこで感染したか追跡できないことから"市中感染"の可能性が出ています。

市中感染とはどのようなことなのでしょうか?

市中感染とは病院外で体内に入った微生物によって発症した感染症を指す用語です。

健康な社会生活をしている人に起こる感染症の多くは、体外から侵入した病原体により発症する「外因性感染症」です。

要するに市中感染症とは、社会生活をしている健康人に起こる感染症で、多くは外因性感染症を指します。

一方院内感染とは、病院内で体内に入り込んだ微生物によって引き起こされる感染症を指す用語です。

院内感染は病院内での感染対策すれば感染防止は可能ですが、市中感染は何にどう気を付けていいか分からないことから、一般市民の間には不安が募ることになります。

一般市民が市中感染を防ぐ対策としては、以下のことがあります。

1.電車の吊り革、エスカレータの手すり、ドアノブを触った後には石鹸を使い流水で手洗いをする、手洗いができないときには携帯用アルコール消毒液で良く消毒する。

2.マスクは基本的には感染を広げないために着用するもので、混み合った場所や、屋内や乗り物などの換気が不十分な場所では1つの予防策と考えられます。

3.使い捨てマスクをそのまま再利用するのは、衛生的な観点から推奨できません。

4.マスクを外すときにはマスクの表面に触れないようにする、触れたときには十分に手洗いをする。

5.ウガイも感染予防にはあまり役立たないと言われていますが、しないよりするほうが良いでしょう。

2020年2月16日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-6.新型コロナウイルスの正式名称決定-

2020年2月11日、世界保健機関(WHO)は、中国武漢を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を"COVID-19(コービッド・ナインティーン)"に決定したと発表しました。

COVID-19(コービッド・ナインティーン)は「コロナ(Corona)」、「ウイルス(Virus)」、「病気(Disease)」という単語と、この病気がWHOに報告された「2019年」の組み合わせでできています。

この新型ウイルス自体の名前は、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)によって"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"と名付けられています。

国際ウイルス分類委員会とは、分類学的見地から、ウイルスの分類と命名法の認可を行なっている組織のことです。

ウイルスの分類と命名は国際ウイルス命名委員会で決めます、これは大原則であり、ここで決定されない限り正式名称にはなりません。

国際ウイルス分類委員会の分類では、全部で3万種くらいのウイルス存在しています。

まとめますと、新型コロナウイルスによる病気の正式名称は"COVID-19(コービッド・ナインティーン)で、これを引き起こすウイルスは"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"ということになります。

2020年2月10日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-5.新型コロナウイルスはマスクで感染防止できるのか-

基本的にマスクではかぜやインフルエンザそして新型コロナウイルスの感染予防はできません。

そもそもマスクは、感染予防のために使うものではなく、感染してしまった人が周囲に広げないために使うものなのです。

せきやくしゃみをすると、医学的見地からして1mから2mも唾液などの飛まつが飛ぶと言われています、そのため感染者の飛まつがウイルスを広げる大きな要因となります。

これはインフルエンザや通常のコロナウイルスそして新型コロナウイルスなど多くのウイルス性感染症で共通する特徴なのです。

従ってせきやくしゃみの症状がある人が正しくマスクをつけることは、他の人に感染させない、感染を広げないための"基本原則"と理解しておく必要があります。

では健康な人がマスクを付けることにはどの様な意義があるのでしょうか?

専門機関のホームページで確かめてみました。

1.WHO(世界保健機関)

マスクだけでは感染を防げる保証は無いとして、貴重な資源をむだにせず、また間違った使い方をしないためにも、症状のある人だけがマスクをするよう呼びかけています。

さらに「マスク使用のアドバイス」には、マスクで予防できるという科学的根拠は無いため、症状が無い場合はマスクは必要ないと記載されています。

※新型コロナウイルスの患者の看病などをする場合はマスクをつけるべきだとしています※

2.CDC(アメリカ疾病対策センター)

特別な状況にないかぎり、感染を避けるという目的で症状のない人がマスクを着用することは推奨しないとしています。

人混みを避けられない場合や、妊婦や高齢者など発症するとリスクが大きい人や、家族などでそうした人と接触する場合は、マスクを使用してもいいと記載しています。

結論としては、マスクだけでは、予防効果はあまり期待できないけれど、人混みの中など一定の環境では、ある程度の予防に役立つ可能性は否定できないが、感染予防に役立つという科学的なエビデンスは存在しないと解釈できます。

マスクで感染予防が出来るというエビデンスはなぜないのでしょうか?

その理由は以下のように考えられます。

マスクで感染予防が出来るということを確かめるには、統計処理の出来るできる多くの人たちを2グループに分け、必ずマスクをつけて生活するグループとマスクを全くしないグループで、どれだけ感染するかを調べる必要があります。

当然その調査期間は、長くなり感染症の流行している間ずっと続ける必要があるかもしれません。

そしてマスクをしたグループとしなかったグループにおいての感染者数を統計処理する必要がありますが、現実この様な調査は不可能で実施されていないことから、マスクによる感染予防のエビデンスはないというわけです。

最後にマスクの確かな効果についてまとめてみますと、

1.症状の無い人は、マスクはしないよりはした方がマシ程度に考えるべき。

2.マスクが無いならば、あまり気にせず、手洗いや睡眠をしっかりとって体調を整えておくなどの対策に力を入れるべき。

3.持病があったり、高齢であったり、またウイルスに感染しやすくなっている妊婦であったり、感染症のハイリスクとされる人たちは、マスクをつけるほうがつけないよりまし。

4.いくらマスクを使用しても正しく付けられていないマスクは感染予防の意味がまったくないことを理解しておく。

※マスクをしていても鼻が出ていたり、あごにかけているだけだったりと間違った使い方をしていると予防効果は無い※

5.以上のことからして現在、マスクが品薄と報じられていますが、パニックになる必要はありません。


2020年2月3日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-4.新型コロナウイルスの実質感染者とは-

今回武漢からの帰国者の1.4%が新型コロナウイルスに感染していたことになり、このことは武漢の人口が1108万人ですから、単純計算で武漢では10万人くらいの感染者がいるということになります。

ランセットに発表された論文によりますと武漢市での感染者数は75815人と推定しています。

Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study

ランセット(The LANCET)2020年1月31日DOI:https ://doi.org/10.1016/S0140-6736(20) 30260-9

今後感染者は、減ることはなく更に増加すること多くの専門家は分析しています。

こと更に怖がらず正しい知識を身に着けて感染予防をするしか現時点では対策はないようです。


【感染予防対策】

最も大事なことは手洗いです(アルコール消毒を含む)、外出して帰宅した際には念入りに手洗いをする必要があります。

手洗いは、流水で洗うか、アルコール消毒薬で手を消毒するかですが、家庭なら石鹸で洗い流水で念入りにすすげばよいでしょう。

手またなどは70%消毒用アルコールでの消毒、環境表面をふく場合は同様にアルコール消毒薬や次0.1%亜塩素酸ナトリウム(台所用亜塩素酸ナトリウムを薄める)などが有効とされています。

【マスクは感染対策に有用か】

感染予防にマスク着用を勧める人がいますが、症状のない人が予防的にマスクを着用することに確かなエビデンス(証拠・根拠)が少ないというのが国内外の専門家の認識です。

マスクを着用しても鼻が出ていたり、皮膚に密着していなかったりすると感染を防ぐことはできません。

更にマスクの着脱で触った手が最も汚れているので、その手で色々な環境表面を触ると、そこで2次感染が起きます。

多くの人たちは、マスクをして守られていると思っている人が多い様ですが、効果は限定的であることを理解して使用すべきです。

またマスクは飛沫を飛ばさないための「咳エチケット」と考えておくことです。

感染対策に粒子状物質の吸入防止に用いるN95マスクは、本来製造・建設現場のマスクとして使用されるマスクです、が結核・SARSなどの感染症防止に効果を上げたことからこのマスクを感染予防に使用することをすすめる人がいますが息苦しく気分が悪くなることから一般の人が使用することは適切ではありません。

医療専門家の間で一般的にN95マスクを着用するのは、はしかなどの空気感染するウイルスに対応する医師だけです。

2020年1月28日火曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-3.新型コロナウイルス感染症についての速報(2)新型コロナウイルスの感染力とは-

便宜上感染症の人から人へのうつりやすさを「感染力」とします。

感染症の人への感染のやすさの指標として、"基本再生産数"がよく使われます。

【基本再生産数とは?】

基本再生産数(R0; R naught)とは、簡単に言うと「1人の感染症患者から何人に感染させるか」を表す数です。

正確には1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均値のことを指し、感染症別の感染性の指標として利用されています。

これまでの患者の発生状況などから、推測して新型コロナウイルスの基本再生産数は1.4~2.5と暫定的に見積もられています。

1人の感染者からだいたい2,3人に感染するということになります。

その他の感染症の"基本再生産数"

インフルエンザは、1.4~4(1人のインフルエンザ患者から1人、最大4人に感染させる)

SARSは2~5人(1人のSARS患者から2人、最大4ー5人に感染させる)

麻しん(はしか)は、12~18人(1人の麻しん患者から12人、最大18人に感染させる)

風疹は、6~7人1人の風疹患者から6人、最大7人に感染させる)

以上のことからして、現時点では新型コロナウイルス感染症はSARSよりは広がりにくい性質を持っている考えられています。

しかし、今後この新型コロナウイルスが変異して、今以上に感染力が強くなる可能性も否定できていません。

※世界保健機関(WHO)や各国の疾病予防管理センターなどから収集した情報をもとに、米国ジョンズ・ホプキンス大学は、新型コロナウイルスの感染状況を地図上で可視化できるWEBページを公開していますので紹介しておきます※





2020年1月22日水曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-2.新型コロナウイルス感染症についての速報(1)-

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症患者増加に伴い急遽"中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について"の現状をお知らせしておきます。

【発見日時】

2020年1月7日、新型コロナウイルスと特定されています。

【命名】

初期段階では原因不明であるため、「原因不明の肺炎」と呼ばれていましたが、2020年1月7日、香港の保健機関は「重度の新型感染性病原体呼吸器疾患」と命名しています。

世界保健機関(WHO)は、このウイルスを正式に「2019年の新型コロナウイルス」(2019-nCoV)と命名。

中国側は「新型コロナウイルスの感染による肺炎」と呼んでいます。

【最初の報告】

新型肺炎の最初の発症報告は2019年12月12日で、病原体の候補として新型のコロナウィルスが検出されたのが2020年1月9日。

魚市場の関係者が感染したという事実以外、まだ潜伏期間や感染経路は十分に解明されておらず、そんな中、春節を迎えて大量の帰省客が武漢を訪れ、そのまま中国各地に戻っていくこと、さらにその後日本をはじめとする海外へ渡航することを考えると、場合によってはそれがパンデミックにつながる可能性が危惧されていました。

【中国政府の対応】

武漢市当局によると、新たに発症したのは25~89歳の男女136人、1月18日までに発症した計198人の患者のうち、3人が死亡、35人が重症で、25人が退院したと発表していますが、本当の患者数を発表しているとは考えにくいです。

以前から中国は自国(中国共産党)のためにならないことは、隠したり、偽ったりする傾向があることから今回の新型コロナウイルス感染患者数の発表も信頼できません。

現にイギリスインペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、2020年1月19日中国の湖北省武漢市で集団発生している新型コロナウイルスによる肺炎患者は公式発表よりはるかに多く、1700人を超えている可能性があるとの研究結果を発表しています。

2020年1月21日に習近平国家主席が対応を支持すると、国民は感染を期にし始め、行政当局も感染者が増加していると報告し始めています。

前回のSARSの時も中国政府の対応が遅く感染が広まった経緯があります。

【人から人への感染は】

この新型コロナウイルスは人から人へ感染することが明らかになっています。

そして人から人に感染するため、帰省や旅行で人の往来が増える春節(旧正月)の連休(24~30日)に、さらに発症者が増えるとの見通しも示しています。

【感染予防対策はどうすればよいのか】

この新型コロナウルスは、SARSウイルスやインフルエンザウイルスよりも感染力が弱く、重症化しにくいと言われていますが、手洗い・マスク着用・うがいなどをして予防するしかありません。

間違った情報などに振り回されることなく、日本国内で発表される報道をしっかりと読み正しく対応することです。

※信頼できる情報が入り次第逐次紹介します※

2020年1月19日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-1.コロナウイルスについて-

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について解説していきますが、第一回目としてはコロナウイルスについての解説です。

【コロナウイルスとは】

風邪などの呼吸器感染症を起こすウイルスで、表面に花弁状の突起があり、太陽のコロナのように見えることからコロナウイルスと呼ばれています。

飛沫感染や接触感染で伝播し、一般的には軽度から中等度の呼吸器症状を起こすが、SARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスのように重症化するものもあります。

コロナウイルスは人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスで、人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られています。

風邪を引き起こす4種類のウイルスと、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られていましたが、2020年1月中国武漢で新種のコロナウイルスが発見されています。

風邪を引き起こす4種類のコロナウイルス(HCoV:Human Coronavirus)は、、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1です。

風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする事が多く、冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験すると言われています。

多くの感染者は軽症ですが、中には高熱を引き起こす場合もあります。

特に深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)以外は、感染しても通常の風邪などの重度でない症状を起こすだけです。

次回は重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe acute respiratory syndrome)
について解説していきたいと思います。


2020年1月12日日曜日

正しく知ろうインフルエンザ-3.抗インフルエンザウイルス薬-

2020年1月現在、抗インフルエンザウイルス薬は、内服薬としてタミフル・ゾフルーザ、吸入薬としてはイナビル・リレンザなどが使用されています。

2018年のインフルエンザ流行シーズン、一度の内服で効果が得られるとのことで、ゾフルーザが話題になりましたが、このゾフルーザが効かない耐性ウイルスの出現が問題になっています。

【インフルエンザの治療開始時期と方法】

抗インフルエンザウイルス薬は、患者の状態や年齢などに合わせて選択されます。

また、インフルエンザ治療薬とは別の薬が処方される場合もあります。

これは肺炎や気管支炎を合併したり、重症化させたりしないための抗生物質、熱を下げる解熱剤、その他、鼻水や咳がある場合に症状を抑えるための薬などでず、これらの薬はインフルエンザウイルスに直接作用はしませんが、症状を改善させたり、合併症防止のために必要に応じて処方されます。

インフルエンザの時の発熱に対しては、医師が解熱剤を必要と判断した場合はアセトアミノフェンが処方されます。

解熱剤には多くの種類がありますが、誤った使い方をすると悪化の恐れや脳炎発症のリスクがあります。

※必ず受診して医師の指示のもとに解熱剤を使用する必要があります、素人判断で解熱剤を使用してはいけません※

市販薬もしくは処方薬であっても以前に他の病気に対して処方された解熱鎮痛薬などは、絶対に服用しないことです。

本来、抗インフルエンザ薬を飲まなくても多くの場合は安静にしていれば数日で症状は軽快に向かいます。

1歳以下の子供は抗インフルエンザ薬ではなく、漢方薬で対応することもあるようです。

【インフルエンザ治療薬の効果】

インフルエンザ治療薬は、発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱などの症状が1~2日間短くなりますが、症状が出てから時間がたって服用し始めても(発症後48時間以降)十分な効果が得られません。

【インフルエンザ治療中の注意点】

インフルエンザになると急に走り出す・部屋から飛び出そうとする・ウロウロするなどの異常行動がみられる場合があります。

過去にこうした異常行動が抗インフルエンザウイルス薬の服用後に起こったと報告があったため、これらの異常行動は薬の服用が原因という見解もありましたが、 これまでの調査結果などからは、抗インフルエンザ薬と異常行動との因果関係は明らかにはなっていません。

むしろ、インフルエンザウイルスに感染すると、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無やその種類に関係なく、同じような異常行動を起こすことが報告されています。

インフルエンザ罹患時には、薬の服用の有無に関わらず異常行動に対しての注意が必要となります。

事故につながるような異常行動は発熱から2日以内に現れることが多いと報告されています。

異常行動による事故を防ぐために、発熱から数えて少なくとも2日間は大人が見守り、患者を一人にしないように気を配る必要があります。

こうした事故の割合は、就学以降~未成年の男子で多くなっていますので特に注意が必要となります。

2020年1月2日木曜日

正しく知ろうインフルエンザ-2.インフルエンザ検査の正しい受け方-

【インフルエンザ検査を受けるタイミング】

インフルエンザの治療薬(抗インフルエンザ薬)は、発症から48時間以内に投与(内服か吸入)しないと効果がないことから、通常は受診したその場で感染の判定ができる「迅速抗原検出キット」を使用して検査を行います。

一般的に検査キットの陽性率は、発症後 0~12 時間で70~80%、13~24 時間で 70~90%と言われていますので、理論的には12時間以上経過すればキットで検知できるウイルス量が得られることから陽性となる確率は高くなります。

また抗インフルエンザウイルス薬の投与が発症から 48時間以内であることを考慮すると、検査を受けるタイミングは発症後(発熱後)12時間から48時間の間が最適と考えられています。

【受けるタイミングを間違うとどうなるのか】

検査を受けるのが早すぎるとインフルエンザウイルスの量がまだ少なく、陰性となり診断がつかない場合もあります。

インフルエンザに感染すると体内でウイルスが増殖しますが、そのピークは発症から48時間です。

治療薬はウイルスの増殖を抑える薬なので、48時間以内に投与しないと効果がないのはそのためです。

発症から12時間以上経過すれば必ずインフルエンザなら必ず陽性になるということでもありませんし、逆に12時間以内ならインフルエンザでも全く検査が陽性にならないということでもありません。

可能性として12時間以内でも陽性になることはいくらでもあります。

※従って検査結果だけで判断するのではなく、患者の状態を観察して判断する必要があります※

【迅速診断キットとは】

綿棒のようなものでのどや鼻の奥をこすって組織を採取し、そこにインフルエンザウイルスがいるかどうかで陰性・陽性を判断する非常にシンプルな検査法です。

判定に要する時間も15分(キットによって判定時間は3~15分以内)もかからずとても使い勝手がよく、受ける患者さんのほうも待ち時間も少なくて済むというメリットがあります。

日本国内でも血液の鉄人の知る限り20種類の迅速診断キットが販売されており、ほとんどのキットがはインフルエンザウイルスのタイプもA型かB型かの判断ができます。

【その他のインフルエンザ検査法】

1. 血清抗体検査

血液で調べる血清抗体検査があります。

この検査はインフルエンザが発症して1週間以内の時期の血液と、治った時期の計2回、採血を行い、インフルエンザウイルスに対する抗体ができているかどうか検査を行うものですが、検査結果が分かるまでには、約2週間かかることが多いことから、治療のタイミングを逃してしまうことからして現在、この検査はほとんど行われていません。

2. ウイルス分離検査

ウイルス分離検査と呼ばれる方法です。

この検査は発症してから約72時間以内を目安に、喉や鼻の奥などを拭った液からウイルスだけを分離して検査を行う方法です。

ウイルスの種類などが詳しく分かり、感度もとても高いのですが、高度な技術を要し、ごく限られた機関でしか行われていないので一般的には行われませんし、結果が出るまでには1週間前後かかり、やはり治療のタイミングを逃すことになります。

3. PCRを用いた検査

PCRを用いたインフルエンザの検査がありますが、これは鼻やのどの奥からとった拭い液を検体として、インフルエンザの遺伝子を検出する方法です。

遺伝子レベルでウイルスを検出するので、非常に正確で細かいウイルスの型や構造までわかり、たとえば新型ウイルスであるかどうかなどの判定まで行えます。

しかし、この検査も高度な技術を要するので、公的な検査機関などで行われることが多く、市中病院やクリニックなどで行われることはほとんどありません。

【検査費用】

一般的なインフルエンザ検査にかかる費用は、診察料に薬代も含めて4,000~5,000円程度(3割負担の場合)になることが多いです。

【48時間以内の検査、治療開始が重要とされる理由】

インフルエンザは、急激な発熱、全身倦怠感(だるさ)、筋肉痛、関節痛などのつらい症状だけでなく、重症化して肺炎や急性脳症などの合併症を起こす危険があることと、感染力が強く周囲の人に感染させやすい特徴もあります。

このため、抗インフルエンザウイルス薬の服用で治療を迅速に行い、なるべく軽症で済ませ、さらに周囲への影響も少なくすることが大切なのです。

インフルエンザウイルスは発症して48時間までに増殖し、症状が悪化しますが、発症後48時間までに抗インフルエンザウイルス薬を服用することでウイルスの増殖が抑えられ、症状が重くなるのを防いだり、周りへの感染の影響も少なくすることができるのです。

発症後48時間以降では、抗インフルエンザウイルス薬を服用しても、増殖したウイルスの勢いを抑えることはできなくなってしまいます。


2020年1月1日水曜日

新年のご挨拶

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

旧年中は当サイトをご利用いただきありがとうございました。

本年も皆様方のお役に立てるよう頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

血液の鉄人

2019年12月27日金曜日

正しく知ろうインフルエンザ-1.インフルエンザとは-

2019年11月13日、国立感染症研究所より、インフルエンザの流行入りが発表されました。

過去20年間で2番目に早い流行入りです。

今回から数回に渡りインフルエンザについて詳しく解説していきます。

【インフルエンザとは】

インフルエンザとはインフルエンザウイルスによって引き起こされる上気道炎症状・呼吸器症状を呈する急性感染症です。

季節性インフルエンザには、A型、B型、C型 の3種類が存在し、A型によるインフルエンザが全体の95%を占め、残りはほとんどがB型によるもので、C型インフルエンザは発生数が少なく主に小児にみられますが、典型的なインフルエンザの症状を引き起こしません。

流行を引き起こすインフルエンザウイルスの株は常に少しずつ変化していて、毎年、前年とは多少異なるインフルエンザウイルスが登場することによって以前に効果的だったワクチンが効かなくなります。

【感染経路】

ウイルスは、感染者のくしゃみやせきで周りに飛び散った飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。

【潜伏期間】

症状は感染後1~4日に突然生じます。

【症状】

悪寒が生じ、続いて発熱、筋肉痛、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、全身のだるさが生じます。

症状の大半は2~3日で治まりますが、発熱は5日目まで続くことがあります。

せき、脱力、発汗、疲労感が数日間、ときには数週間続きます。

気道に軽い刺激を感じ、激しい運動や長い運動ができなくなることがあり、軽い喘鳴(ぜんめい)が完全に消失するまで6~8週間もかかることがあります。

2019年12月23日月曜日

クロストリディオイデス・ディフィシル感染症

クロストリディオイデス・ディフィシル感染症とは、グラム陽性の偏性嫌気性菌であるクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile infection:CDI)によって引き起こされる感染症で抗菌薬関連下痢症/腸炎を引き起こします。

抗菌薬使用歴のない患者でクロストリディオイデス・ディフィシル感染症を認めることもあります。

【クロストリディオイデス・ディフィシル】

ディフィシル菌は、ヒトや動物の腸内に住む常在菌であり、健康な成人の大便からは2~15%の頻度で検出されます。これに対し、健康な乳幼児の大便には15~70%の高い頻度でこの菌がみられ、毒素も高い濃度で検出されますが、不思議なことに臨床症状はまったく認められません。これについてはさまざまな要因が議論されていますが、いまだ明確にはされていません。

この最近の特徴としては、芽胞を形成することから酸素が存在する環境や乾燥した環境でも死滅することなく生きていることです。

院内感染の原因細菌としてしばしば院内アウトブレイクを引き起こします。

病院・老人施設等における入院患者・入居者等での集団発生が見られることがあります。

【感染経路】

クロストリジウム-ディフィシルで汚染された器物が病院・老人施設等の施設内で感染を広げた例としては、共用していたポータブルトイレ、新生児用の風呂桶、電話機、直腸用電子体温計の持ち手部分、呼び出しスイッチ、トイレの電気スイッチなどがあります。

【潜伏期間】

はっきりと確定されておらず、1週間未満、2~3日程度で発病することもありますし、抗生物質による治療終了や退院から発病までの期間が長期に亘ることもあります。

【症状】

下痢や腹痛を引き起こしますが、軽症例がほとんどですが、重症となり腸閉塞・消化管穿孔・敗血症を引き起こし死亡する場合もあります。

血液の検査では、白血球数増加(40%)や低アルブミン血症(76%)を認めることもあります。
【どのような人に発症するのか】

クロストリジウム-ディフィシル感染症は、すべての年齢層で見られますが、65歳以上の老人での発生が多く、老人に限らず、免疫機能が低下している人たちでの発生が多いです。

最近2~3ケ月以内に他の感染症を治療するために抗生物質を使用していることが、クロストリジウム-ディフィシル感染症を誘発する最も主要な要因です。

【治療方法】

クロストリジウム-ディフィシルは、多くの抗生物質が無効です。

誘因となっていると思われる抗生物質や抗がん剤等の使用を中止します。

抗生物質の中止後2~3日以内に23%の患者でクロストリジウム-ディフィシル感染症の症状が改善するとされています。

中止後2~3日で下痢等の症状が改善しない場合や重篤な場合は、メトロニダゾールやバンコマイシンといったクロストリジウム-ディフィシルに有効な抗生物質による内服治療を行います。

【予防法】

病院・老人施設等における入院患者・入居者等での集団発生を防ぐためには、手洗いの徹底により、患者・医療従事者・介護者がクロストリジウム-ディフィシルを他の人へと運ばないことが大切です。

医療従事者・介護者は入院患者・入居者等との接触の前後で石ケンと流水での手洗いを徹底する必要があります。

※アルコールによる手の消毒は、クロストリジウム-ディフィシルの芽胞には無効です※

※芽胞:一部の細菌が形づくる、極めて耐久性の高い細胞構造を言い、そして極めて高い耐久性を有し劣悪な環境で通常の細菌が死滅する状況に陥っても生き残ることが可能です※

※近年多用されているアルコールによる手の消毒は、特に下痢症の原因となるクロストリジウム-ディフィシルやノロウイルスなどには無効である点に留意する必要があります※

環境の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効です。

健康体の人は、通常、クロストリジウム-ディフィシル感染症にはなりにくいです。

大切なことは特に、トイレの後や食事の前には、石ケンを使用して流水で手をよく洗うことです。

【流行の実態】

2010年2月、埼玉県内の病院で入院患者12人(31~91歳)が集団感染し、うち1人(71歳男性)が死亡しています。

下痢等が見られた他の患者については重症化していません。

米国においては、毎年、約50万人前後のクロストリジウム-ディフィシル感染症の患者が発生していると推計されており、毎年約15,000~20,000人の患者が死亡していると推計されています。

【検査】

1.便中のクロストリジウム-ディフィシル毒素検査により診断する。

2.イムノクロマト法を利用した検査キットで、糞便中の本菌の存在とトキシンを調べることができる。

グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、この菌が産生する酵素であることから、糞便中にこの酵素が存在すればクロストリジウム-ディフィシルが糞便中に存在することになります。

トキシン産生性については、トキシンAとトキシンBの両方を見つけることが出来ます。

判定

・グルタミン酸デヒドロゲナーゼ陰性かつトキシン陰性・・・クロストリジウム-ディフィシルは存在しない。

・グルタミン酸デヒドロゲナーゼ陽性かつトキシン陽性・・・クロストリジウム-ディフィシルが存在。

・ルタミン酸デヒドロゲナーゼ陽性でトキシン陰性・・・偽陰性。

3.トキシンB遺伝子検査

感度・特異度ともに高い検査法で、自動機器を使って全自動検査が出来ます。

2019年12月9日月曜日

血液型について-6.マラリアと血液型の関係について-

血液型と疾患の関係は昔から多く論じられてきましたが、生化学的に証明されたものはなく大部分は数字を使用したこじつけ的なものです。

寄生虫と関連を持つ血液型については、これを生化学的に裏付けるものがあります。

数ある血液型の中のひとつのDuffy(ダフィー)式血液型は、三日熱マラリア原虫の感染に対して抵抗性があることが証明されています。

Duffy式血液型とは、Fy(a)とFy(b)のふたつの抗原から成り立っていて、Fy(a)とFy(b)には遺伝的優劣はありません。

この血液型の表現型は、Fy(a+b+)、Fy(a+b-)、Fy(a-b+)、Fy(a-b-)の四型からなり、Fy(a)とFy(b)の両方の抗原を持たないFy(a-b-)の人は三日熱マラリア原虫には感染しません。
しかしFy(a)とFy(b)を持つFy(a+b+)、Fy(a+b-)、Fy(a-b+)の人は、三日熱マラリア原虫に感染します。

Fy(a-b-)は非常にまれな表現型で、白人と日本人の発現頻度はほぼゼロです。

アフリカ系黒人ではFy(a-b-)の発現頻度は、68%と高頻度です。

北アメリカ大陸在住のアメリカ・インディアンにもFy(a-b-)の人は存在し、やはり三日熱マラリア原虫の感染に対して抵抗性があることが確認されています。

このDuffy式血液型と三日熱マラリア原虫の関係は、特定の地域においては自然淘汰の重要な要因であったものと考えられています。

Fy(a-b-)型はアフリカのサブサハラの三日熱マラリア流行地に遺伝的起源を持つ人に非常に多いのに対して、それ以外の地域に起源を持つ人にはほとんど存在しません。

タンパク分解酵素を使用して赤血球上のFy(a)抗原とFy(b)抗原を壊すと三日熱マラリア原虫は赤血球に感染しなくなることから、Fy(a)抗原とFy(b)抗原には三日熱マラリア原虫が感染する受溶体が組み込まれていることが明らかにされています。

要するに三日熱マラリア原虫は、赤血球上にあるFy(a)抗原とFy(b)抗原から赤血球の中に入り込み感染するということです。

【追加事項】

マラリア原虫には、熱帯熱マラリア原虫・卵形マラリア原虫・四日熱マラリア原虫・三日熱マラリア原虫の四種類がありますが、Duffy式血液型と関係があるのは三日熱マラリア原虫です。

2019年11月28日木曜日

血液型について-5.後天性獲得B(acquired B)について-

ABO式血液型は時には理解しづらい現象を引き起こします。

今回は本来A型である人がAB型に変化する事例を紹介します。

直腸・結腸癌の患者の状態が悪くなるとA型患者が後天的にB型抗原を獲得して一見AB型様の反応を示す現象が起こることがあります。

後天性獲得Bは、直腸・結腸癌の癌患者が細菌感染を起こした時に、A抗原が少し変異してB様抗原になって抗Bと弱く反応しAB型と判定されます。

直腸・結腸癌の患者の状態が改善されるに従い後天性獲得BのB型は少しずつなくなり、本来のA型に戻ります。

直腸・結腸癌の患者の状態が改善されずに不幸にも死亡した患者は、後天性獲得Bのままであることが多いことが経験されています。

後天性獲得Bは、A型の人がなり、O型の人が後天性獲得Bになることはありません。

この後天性獲得BのB型抗原はヒト由来及び動物免疫由来の抗B判定血清で起こりますが、モノクロ-ナル抗体由来の抗B血液型判定用血清とは反応しません。

※モノクローナル抗体とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体※

※ヒト由来及び動物免疫由来抗体は、複数の抗原で免疫されてできたもので、ポリクローナル抗体と呼ばれる※

現在のABO式血液型判定にはヒト由来及び動物免疫由来判定用血清はほとんど使用されることなく、大部分がモノクローナル抗体由来の判定用血清を使用していることから後天性獲得Bは検出されなくなってきています。

モノクローナル抗体由来の判定用血清の使用が主流になったことから、後天性獲得Bは消えてなくなったということになります。

血液の鉄人も40年以上前に63歳の女性の直腸がん患者が後天性獲得Bとなった症例を経験しています。

2019年11月18日月曜日

血液型について-4.白血病によるA型の変化-

ABO式血液型は、一生不変であることは周知の事実ですが、ある種の疾患によつて稀に変化することがあります。

そう白血病になるとA型が変化することがあるんです。

白血病の末期になると、A型があたかも0型のように、あるいは完全に0型に変化することがあります。

しかし、白血病が寛解するともとのA型に戻り、悪化すると再び0型に変化します。

※寛解とは、病気が永続的であるか一時的であるかを問わず症状が好転またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を言います※

この現象は自血病の病状が悪化するのに正比例して本来のA型がよリー層O型に近づきます。

また、この現象は白血病の種類に関係なく発現するが、すべての白血病患者に発現するとは限りません。

B型がO型に、AB型がO型に変化することも報告されていますが、何故かA型の変化が圧倒的に多いのが現実です。

白血病が誘引となってABO式血液型が変化する原因については、諸説があり確定的なことは解明されていません。

血液の鉄人もA型の白血病患者の血液型がO型に変化した事例を数例経験しています。

2019年11月11日月曜日

血液型について-3.AB型とO型の親からAB型の子供は生まれるのか??!!-

ABO式血液型は、例外なくメンデルの遺伝の法則に従つて遺伝するために親子鑑定に応用されてきました。

ところが"両親のいずれかがAB型の時には、0型の子供は生まれることはなく"、また"両親のいずれかが0型の時には、AB型は生まれない"との原則に例外があることが1966年に発見された。

1966年、大阪府赤十字血液センターの山口英夫博士(2019年死去)らは、0型とAB型の両親から家族3名全員がAB型の家系を発見しました。

このAB型の血清学的性質従来のAB型とは異なり、A型およびB型抗原は普通のAB型の反応よりかなり弱いものでこの遺伝学的背景は従来のメンデルの遺伝の法則によつては到底説明出来ませんでした。

その後、多くの研究者により同様の家系が発見されるに至つて、このメンデルの遺伝の法則に基づかない遺伝様式も説明可能となりました。

山口らは、この特殊な遺伝をする血液型を“Cis AB(シスAB)"と命名しました。

ABO式血液型の遺伝は、A遺伝子とB遺伝子は異なつた染色体に乗つて遺伝しますが、“CisAB"はA遺伝子とB遺伝子が同一染色体に乗つて遺伝するためにこのような異例の遺伝様式をしたわけです。

普通のAB型は"trans AB(トランスAB)"と呼ばれ遺伝子型はA/Bと表記されますが、この特殊な遺伝子型をA2B3/0と表記します。

普通はAB型とO型の両親からは、A型とB型が生まれAB型は生まれません。

普通のAB型の遺伝の場合:A/BとO/O→A/OとB/OなりA型とB型が生まれAB型は生まれません。

CisABの遺伝の場合は、A2B3/0とO/O→A2B3/0とO/OとなりAB型が生まれます。

この“Cis AB"の発現頻度は00012%と非常に稀なために、遺伝様式がメンデルの遺伝によることがないことから親子鑑定にも大きな影響を与えたり、産婦人科による新生児の取り違え騒動に発展することがあるので注意が必要です。

血液の鉄人もCisABの家系を数家系見つけていますが、産婦人科による新生児の取り違えや家系騒動となった事例を経験しています。

この血液が発見された当時は、興味あることにこの“ClsAB"の家系は徳島県と石川県に多く見られていましたが、現在は人の往来が多様化されたためにこの傾向は見られなくなっています。

2019年11月1日金曜日

重症熱性血小板減少症候群

重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)は、SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症で、感染症法では四類感染症に位置付けられています。

【SFTSウイルスとは】

SFTSウイルスは2011年に中国より報告されたマダニ媒介性の新興ウイルス感染症で、国内SFTSウイルス自体は,以前から国内に存在していたと考えられていましたが,平成25年1月に初めての症例が確認され,現在までに,全国では24府県で475例(うち69例で死亡)の症例が確認されています(2019年9月25日現在)。

【感染経路】

主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。

 【潜伏期】

6~14日

【臨床症状】

発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主張とし、ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴い、血液所見では、血小板減少(10万/μL未満)、白血球減少(4000/μL未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。

【致死率】

10~30%程度。

【診断】

血液、血清、咽頭拭い液、尿から病原体や病原体遺伝子の検出、 血清から抗体の検出。

【治療】

特効薬はなく対症療法しか存在していません。

【予防】

草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を極力さけ、マダニに咬まれない予防措置を講じる

【日本に存在するマダニ】

日本には、命名されているものだけで47種のマダニが生息するとされていますが、これまでに実施された調査の結果、複数のマダニ種(フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ)からSFTSウイルスの遺伝子が検出されて、日本国内ではフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがヒトへの感染に関与しています。

【ペットから感染する可能性は】

SFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群に類似する症状を呈したネコに噛まれて重症熱性血小板減少症候群を発症した患者が確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

同様にSFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群様症状を呈したイヌとの接触により重症熱性血小板減少症候群を発症した患者も確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

これらはまれな例ですが、ペツトや野良猫などからの感染も気をつける必要があります。

ペットに付いているマダニに触れたからといって感染することはありませんが、マダニに咬まれれば、その危険性はありますので、ペットのマダニは獣医師に相談して駆除する必要があります。

2019年10月23日水曜日

糖尿病と膵臓がんの関係

【膵臓の働き】

膵臓という臓器は、極めて重要な臓器で、胃酸で酸性になった食べ物を中和する"膵液"を分泌して消化を促す働きをする、インスリンやグルカゴンなど血糖値を調節するホルモンを分泌して全身のバランスを保つふたつの働きをする大切な臓器です。

膵臓は、胃の裏側の体の深部に位置し消化液を運ぶ膵管が張り巡らされています。

【糖尿病と膵臓がんは関係ある??!!】

膵臓がん患者の26%は糖尿病患者というデータがあります。

糖尿病患者の場合、男性では膵臓がんの発症リスクが健康な人に比べ2.1倍、女性で1.5倍高いとというデータがあります。

【膵臓がんの原因とは】

膵臓がんの原因のほとんどが膵炎です。

膵炎は、血液中に糖分が増えることで起こります。

【膵臓がんの予防】

以上のことからして糖尿病を予防するような食事や運動などで生活習慣を改善するように日頃から心がけることが、膵臓がんの予防になるということなのです。

膵臓がんはがんのなかでも、発見しにくく発見されたときにはすでに手遅れのケースが多いことから、「早期発見がしにくい」「転移しやすい」「治癒が難しい」「生存率が低い」と、四つの悪条件がそろったがんと言えます。

【膵臓がんは治るのか】

医学の進歩に伴い多くのがんは治る病気となりつつありますが、膵臓がんだけは例外で、5年生存率はステージ1で40.1%、ステージ4になると1.5%、全症例で9.2%と極めて予後の悪いがんといえます。

更に最近では、膵臓がん罹患者数も死亡者数も年々しつつあります。

【何故膵臓がんは見つけにくいのか】

膵臓がんの90%以上が、膵管の細胞にできるので発見しづらい原因となっています。

更に悪いことには膵臓がんは、特徴的な自覚症状がほとんどなく、腹痛、黄疸、腰や背中の痛み、食欲不振、体重減少などの症状が現れますが、これらの症状は他の疾患でも現れることからついつい膵臓がんを見をとしてしまうことになります。

症状が進行してから発見されたときには、すでに手遅れとなっています。

進行した場合、症状としては、が挙げられますが、胃炎や膵炎の場合も同じ症状になります。

【膵臓がんの検査】

膵臓は肝臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれ、よほどがんが進行しないと検査に至らないのです。

エコー検査(超音波検査)でも、胃や腸のなかにあるガスや体内脂肪の影響で診断しにくいのが現実です。

ふだんから健康に気を使い、定期的に人間ドックを受けていたにもかかわらず、膵臓がんは発見されず、自覚症状が出てから精密検査をし初めて膵臓がん診断される人が殆どで、このような場合膵臓がんが発見されたときにはかなり進行していて、手遅れが多いのが現実です。

最近では、CT=Computed Tomography(コンピューター断層撮影)が膵臓がんの早期発見に比較的有効とされていますが、撮影のために使用する造影剤には副作用リスクがあり検査を受ける際には注意が必要となります。

更に有効な検査としては、MRI=Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)を利用したMRCP=Magnetic Resonance Cholangiopancreatography(磁器共鳴胆管膵管造影検査)という検査がありますが、自覚症状がなく、膵臓がんの疑いがないのにこれを受ける人はまずいません。

最近で注目されているより高度な検査方法としてERCP=Endoscopic Retrograde Colangiopancreatography(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やEUS:=Endoscopic Ultrasonography(超音波内視鏡)がありますが、実施している医療機関が少ないうえ、費用が高額であることからほとんど利用されていません。

2019年10月14日月曜日

謹んで台風19号(ハギビス) により被災された皆様にお見舞い申し上げます。

この度の台風19号(ハギビス) により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

2019年10月8日火曜日

血液型について-2.ABO式血液型と体質関係-

血液型と病気の関連性については1980年代には、異常なほど論議されましたが2000年に世界で特に権威のある学術雑誌のひとつと評価されているイギリスの科学雑誌『Nature』に、"胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものは無い"と総説が掲載され終止符が打たれました。

この論文の発表後今日まで数多くの発表がなされてきましたが、ストレス抵抗性や病気のリスクなどの健康面へ影響があるという科学的に証明された報告は一部しか存在していまん。

2000年にNatureに掲載された総説では、"胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものはない"という、ABO式血液型と体質関係を否定する内容であった。

ABO式血液型以外の血液型では、特定の血液型のみある種の病気に感染しないというものがいくつか報告されていますので次回から紹介いたします。

また一生涯変化しない血液型がある種の疾患によって、変化することも知られていますので、これも順次紹介いたします。

2019年10月1日火曜日

血液型について-1.ABO式血液型と性格に関係-

結論から言いますと、科学的にはABO式血液型と性格に関係はありません!!

血液型と性格の関連性について論じる国は、日本とその影響を受けた韓国、台湾といった一部地域だけであり、それ以外の地域では血液型と性格を関係づける習慣はありません。

我が国においての血液型と性格との関連性があるとの主張は、大正期から昭和初期に古川竹二教授が発表した「血液型による気質の研究」(1927年)、「血液型と気質」(1932年)、昭和46(1971)年に発売された能見正比古氏の著書「血液型でわかる相性」などがあります。

ただしこれらのいずれの著書でも統計上の分析や結果に不備があったり、追検査で十分な証明ができなかったりしたことで、学説として認められていません。

古川学説は、最終的には1933年日本法医学会総会において正式に否定されています。

特に1971年以降、大きな影響力を持った能見正比古(1925~1981)と能見俊賢(1948~2006)の親子が提唱したのは血液型人間学であり、新たな学問であるかのように提唱していますが、能見正比古の死後、1980年代には日本の心理学側からこれを否定した研究結果が登場するようになっています。

血液型によって人の性格を判断することは、相手を不快や不安な状態にさせる言動となり、これは"ブラッドタイプ・ハラスメント"と呼ばれ、近年になり社会問題として取り上げられるようになってきています。

企業の採用試験の応募用紙に血液型の記入欄があったため、改善するよう労働局から指導された企業も現実に存在しています。

厚生労働省は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」といっていますが、未だに血液型による職務能力や適性がまことしやかに論じられていることは事実です。

血液型による性格分類は、科学的に正しいとは認められていませんが、1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と性格の関連性を信じている人も少なからず存在していることも事実です。

2019年9月20日金曜日

各種性行為感染症の検査を受ける際の注意点-4.イムノクロマト法を利用したHIV検査は偽陽性反応が出現しやすい-

イムノクロマト法を利用したHIV検査は、迅速抗体検査と迅速抗原抗体検査があります。

迅速抗体検査としては、ダイナスクリーンがあります。

迅速抗原抗体検査としては、エスプラインHIV Ag/Abとダイナスクリーン・HIV Comboのふたつがあります。

【イムノクロマト法の欠点】

判定ラインの色調(ラインの濃度)を肉眼で判定することから、どうしても判定者の主観に左右されてしまいます、その結果神経質的に判定すればどうしても薄くラインが有ると判定し偽陽性反応が出現しやすくなる検査法と言えます。

逆に大雑把な人が判定すれば、薄い判定ラインを見逃すこともあります。

しかし、判定を厳格に見すぎての偽陽性反応が圧倒的に多いのが現実です。

【イムノクロマト法の偽陽性反応の出現率】

100人検査をすればおよそ3~5人の偽陽性反応が出現します。

※抗体検査より抗原抗体検査の方が偽陽性率が高い傾向にあります。

現実かなりの人が偽陽性反応に泣かされています。

【なぜイムノクロマト法の偽陽性反応の出現率が高いのか】

1.陽性を見逃さないように検出感度を高くしている。

2.肉眼で判定することから検査者の主観が入りやすい。

3.反応時間を過ぎてからの判定ラインに出現したラインを陽性と判定する。

※決められた反応時間を経過してから出現したラインは、陽性と判定しない※

4.全血を使用しての検査は、血液の赤い色が判定を誤らす可能性が高くなる。