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2024年9月30日月曜日

新しいインフルエンザワクチン

 毎年インフルエンザの予防ワクチンは、事前に流行するインフルエンザ株を予想して製造されます。

昨シーズンに流行・分離されたウイルス株から、そのシーズンに流行が予想されるウイルスに合わせて毎年インフルエンザワクチン株が決定・製造されています。

先日、今年度のインフルエンザワクチン株が決定し、昨年の3価から、新しく4価ワクチンに変更になりました。

これまでの3価インフルエンザワクチン製造株は、

A/H1N1pdm09・A/H3N2とB型1種の3種類(3価)が含まれ、このうちB型株については、山形系統あるいはビクトリア系統のどちらか一方のワクチン株を選定していました。

近年のインフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いていることからしてWHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨しています。

米国においては2013/14シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきています。

このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB/ビクトリア系統の4価ワクチンとしました。


※さらに詳しく知りたい方は、厚生労働省「平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由」をご確認ください※

平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由

2024年9月22日日曜日

2024年7月までの日本国内における梅毒患者の分析

 2024年7月までの梅毒患者数は6770人で、依然として大流行が続いています。

患者状況としては、男性は20代から全年齢層に患者が見られますが、女性は20代にピークが認められています。

【病態の分析(5438人 男3433人・女2005人)】

Ⅰ.男性 

1.同性間感染者 573人

早期顕症Ⅰ期梅毒 165人

早期顕症Ⅱ期梅毒 207人

無症候梅毒 192人

晩期顕症梅毒 9人

2.異性間感染者 2860人

早期顕症Ⅰ期梅毒 1829人

早期顕症Ⅱ期梅毒 651人

無症候梅毒 347人

晩期顕症梅毒 33人

Ⅱ.女性

1.異性間感染者 2005人

早期顕症Ⅰ期梅毒 489人

早期顕症Ⅱ期梅毒 822人

無症候梅毒 687人

晩期顕症梅毒 7人

【無症候梅毒の分析】

1.男性 539/3433 15.7%

2.女性 687/2005 34.3%

3.男女 1226/5438 22.5%

※女性が男性の2倍以上無症候梅毒が見られますが、これは女性が男性に比べて症状がわかりにくいことに由来します※

※いずれにして梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ないことが上記のように多数存在することから、感染するような行為をしてしまった場合には、必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります※


2024年9月15日日曜日

レプリコンワクチンに対する懸念

 2024年10月を目途に接種開始予定といわれ、今、世間を騒がせている新型コロナウイルスの次世代型mRNAワクチンの「レプリコンワクチン」について解説します。


従来の新型コロナワクチンは、コロナウイルスのタンパク質を作るもとになる遺伝情報の一部(mRNA)を体内に入れることでウイルスの免疫を作るというものでしたが、今回開発されたレプリコンワクチンは、そのmRNAが体内で自己増殖するタイプに改変したものです。


新型コロナウイルスを構成するスパイクタンパク質が自己増殖するから少量の投与で効果が長続きするというメリットがあるとされていますが、このワクチンに安全性および倫理性に関する懸念が持たれています。


その理由としてこのワクチンの開発国であるアメリカや大規模治験を行なったベトナムでは認可が下りていないものを、今回日本が世界に先駆けて認可したことにより、色々の疑念が持たれています。


このワクチンに関しては以下の懸念があるとされています。


1.このワクチン接種者の飛沫から非接種者に感染する恐れがあり、これに対する臨床実験もなされていない。 


2.自己増殖に歯止めが効かなくなり、永久にスパイクタンパクのトゲトゲが生産され続ける恐れがある。 


3.そもそもmRNAが人体の遺伝情報に影響を及ぼさないという確証がない。 


以上のことからこの新しいワクチンの使用に反対する専門家が多く存在します。


現に日本看護倫理学会が異例とも言える緊急声明”を出しています。


※日本看護倫理学会は、いわば医療関係者の身内でもある団体が、このワクチンの接種に対して安全性および倫理性に関する懸念を表明したことからしてもこのワクチンに対する懸念が増幅されます。


『一般社団法人 日本看護倫理学会 レプリコンワクチンに対する緊急声明』


※レプリコンワクチンに関しては以下を参照してください※


『医事速報2024年09月15日号 レプリコンワクチンについての考察』







2024年9月9日月曜日

2つの肝臓病の新名称

 2023年に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)と非アルコール性脂肪肝疾患(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)という2つの肝臓病の名称が変更されることが発表されました。


名称が改変された理由としては、従来の名称である、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に以下の問題点があったからです。


1.患者への偏見


「非アルコール性」や「太っている」といった言葉が、患者に対して否定的な印象を与え、精神的な負担になる可能性がありました。


2.病態の複雑さ


これらの疾患は、単にアルコールや肥満が原因というわけではなく、代謝異常など様々な要因が複雑に絡み合っていることが明らかになってきました。


以上の問題点を踏まえ、新しい名称として下記のように命名されました。



1.非アルコール性脂肪肝(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)


 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、アルコールをほとんど摂取しないにもかかわらず、肝臓に中性脂肪が蓄積される状態を指し、生活習慣が原因とされていることから、新名称は、『代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)』


2.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver diseaseナッフルディー)


アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝の総称で、英語の頭文字をとって「ナッフルディー」または「ナッフルド」と読みます。肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を基盤に発症し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール性肝障害の人のように肝疾患が進行することから、新名称は『代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic dysfunction associated steatotic liver diseaseマッスルディー)』

※脂肪肝というと、飲酒によるアルコール性脂肪肝を考えてしまいがちで、確かに飲酒による脂肪肝は多いのは事実ですが、特に飲酒歴もないのに肝臓に脂肪が貯まりすぎてしまう「非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)」や「代謝異常に関連する脂肪性肝疾患(MASLD)」が近年増加しています※



2024年9月1日日曜日

世界的に性感染症が増加しています!!

日本だけでなく、世界的に性感染症が急増していると、世界保健機関(WHO)が2024年5月に発表した報告書によると、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4種類の性感染症に、世界で毎日約100万人が新たに感染しています。

ここで特に問題となるのは抗生物質に耐性を持つ、つまり治療薬の効かない淋菌も増加しているということです。

報告書によると、世界中で毎日、100万人以上の15歳から49歳の人々が梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4つの感染症に新規感染している。

なかでも、梅毒の新規感染症例が急増しています。

2022年のHIVとウイルス性肝炎の新規感染者数は、微減にとどまりましたが、B型肝炎およびC型肝炎の新規感染者数は、それぞれ約120万人、約100万人に達しています。

HIVとウイルス性肝炎の新規感染が十分に減らないなか性感染症が増加しており、持続可能な開発目標(SDGs)の保健衛生目標の達成を脅かしているとWHOは警告しています。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は報告書において、「公衆衛生の脅威となる伝染病を2030年までに終結させる手段はある。(中略)各国は各自の目標に向けてできる限りのことをしなければならない」との見解を示しています。

【参考資料】

新たな報告書は、HIVと肝炎の課題の中、性感染症の大幅な増加を警告している

2024年8月25日日曜日

世界保健機関エムポックスに対して国際的な公衆衛生上の緊急事態!!

ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスで、"コンゴ盆地型(クレードⅠ)"と"西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)"の2系統に分類されています。

コンゴ盆地型(クレードⅠ)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)による感染例の死亡例は1%程度と報告されています。

2024年8月15日、スウェーデン保健当局は、アフリカで感染が拡大するエムポックス(サル痘)のウイルスでより重症化しやすいタイプの「クレード1」感染者を国内で確認したと明らかにしました。

アフリカ外でクレード1の感染が確認されたのは初めてで、流行地域に滞在中、感染したとみています。

世界保健機関のテドロス・アダノム事務局長は2024年8月14日、アフリカ中部で広がる感染症「エムポックス(サル痘)」について、約1年3か月ぶりに「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

世界保健機関によりますと、エムポックスの新系統のウイルスが昨年見つかり、急拡大しコンゴ民主共和国では今年、15000人以上の感染と537人の死亡が報告され、新系統ウイルスはケニアやルワンダなど周辺国でも確認されています。

天然痘に似たエムポックスは元々アフリカの風土病でしたが、2022年以降に欧米などで感染が拡大しました。

日本国内では248人の感染が確認された。

世界保健機関は同年7月に緊急事態を宣言し、感染が落ち着いた昨年5月に解除していた。

エムポックスはリスやネズミなどの「げっ歯類」やサルなどがウイルスを保有しており、かまれると人に感染します。

人から人へは肌の接触や性行為などでうつり、発疹のほか発熱や頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が出る。多くは発症後2~4週間で自然回復する。

感染者の体液や血液に触れたり、性的な接触をしたり、近距離での対面で飛沫に長時間さらされたりすることなどでも感染します。

ハイリスク層はMSM(Men who have Sex with Men、男性と性的接触を行う男性)とされる一方、女性や子供の感染事例もあり、妊婦や免疫不全者は重症となる場合があることが指摘されています。

タイの疾病管理当局は2024年8月22日、従来より致死性の高いコンゴ盆地型(クレードⅠ)の感染を、国内で確認したと発表しています。

これはアフリカ大陸以外での感染確認の2例目となりアジアでは初めてのことです。

日本国内での死亡者は2023年12月に、海外渡航歴のないエイズウイルス(HIV)感染者の30代男性がエムポックスで死亡しています。

国内の死者確認はこれが初めてです。

※このウイルスは西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)※

今後日本国内でも致死性の高いコンゴ盆地型(クレードⅠ)が入り込む危険性はあります。



2024年8月18日日曜日

エムポックス大流行の兆し!!

2024年8月14日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長はアフリカ中部で広がる感染症「エムポックス(サル痘)」について、約1年3か月ぶりに「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。 

世界保健機関によりますと、エムポックスの新系統のウイルスが2023年に見つかり、急拡大しコンゴ民主共和国では2024年、15600人以上の感染と537人の死亡が報告されています。

この新系統のウイルスはケニアやルワンダなど周辺国でも確認されています。

更に2024年8月15日、スウェーデン保健当局はアフリカで感染が拡大するエムポックス(サル痘)のウイルスで、より重症化しやすいタイプの「クレード1」感染者を国内で確認したと明らかにしています。

アフリカ外でクレード1の感染が確認されたのは初めてで流行地域に滞在中に感染したと考えられています。

【エムポックスウイルスについて】

コンゴ盆地型(クレードⅠ)と西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)の2系統に分類される。

コンゴ盆地型(クレードⅠ)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)による感染例の死亡例は1%程度と報告されている。

天然痘に似たエムポックスは元々アフリカの風土病でしたが、2022年以降に欧米などで感染が拡大しています。

世界保健機関は2022年7月に緊急事態を宣言し、感染が落ち着いた2023年5月に解除しています。

日本国内においては、2024年8月9日時点で248人の患者が確認されています。

2023年12月には、海外渡航歴のないHIV感染者の30代男性がエムポックスで死亡したていますが、国内の死者確認はこれが初めてです。

今後の流行に気をつける必要があります。