血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年7月5日木曜日

もっと知ろうHIV検査-6.感度と特異度-その3.感度と特異度の関係-

理想的には感度100%、特異度100%であれば、完全に正しく病気の有無を判定しうる理想的な検査となりますが、実際はそのような検査は残念ながらまだ存在していません。

そのために検査結果には偽陽性と偽陰性が必ず存在します。

HIVスクリーニング検査は、HIVに感染していない人が誤って陽性(僞陽性反応)と判定されたり、あるいはHIVに感染している人を誤って陰性(僞陰性反応)と判定される可能性を常に持っています。

この原因は、HIV検査に限らず医療におけるすべての検査は、感度・特異度共に100%である検査は存在しないからです。

従って感度、特異度がともに高い検査は、その検査を実施するだけで疾患の有無を高い確率で判定できることになります。

一般的にスクリーニングに使用される検査は、陽性者を見逃さないために感度を高くしていることから、逆に特異度は低いということになります。

反面確認検査に利用される特異度の高い検査は、本当の陽性者のみを見つけることから感度が低いことにより感染初期の本当の陽性者を見逃すことがあります。

要するに診断を確定する検査は、感度は低いでが特異度が高いことからこの検査が陽性となるとその疾患に感染していると言えますが、実施する時期が早いと感度が低いことから真の陽性者を見逃してしまうことがあるのです。

今までのことをまとめますと、HIV検査は感度、特異度共に100%の検査キットを製造すれば良いという結論に達しますが、感度、特異度共に100%のHIV検査は存在しません。

※HIV検査に限らずどの様な検査でも感度、特異度共に100%の検査は存在しません※

感度が高いHIV検査は、スクリーニング検査(除外診断)に使用され、特異度の高い検査は、病気を確定する検査(確定診断)に使用されます。

感度と特異度の両方が高い検査を何故使用しないのかと多くの方が疑問に思われると思いますが、そんな究極な検査は存在しないのが現実なのです。

なぜなら、感度と特異度の二つはお互いにトレードオフの関係があるからです。

※トレードオフ(Trade-off)とは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことを言います※

※感度を追求すれば当然特異度は犠牲となり、特異度を追求すれば当然感度は犠牲となるということです※

まとめますと感度が高い検査は特異度が低い検査であり、感度が低い検査は特異度が高い検査となります。

従って感度と特異度を考えながら検査を実施する必要があるわけです。
 

【本当のHIV陽性を決定するのはどうするのか】

1.感度・特異度共に高いHIV検査を複数回実施する。

2.日にちを変えて採血して感度・特異度共に高いHIV検査を再度実施する。

3.ふたつ以上の検査結果を組み合わせて真の陽性か、ニセの陽性かの判断を行います。

2018年6月22日金曜日

もっと知ろうHIV検査-5.感度と特異度-その2.特異度とは-

特異度とは、臨床検査の正確さを決める指標のひとつで、ある検査について"本来陰性であるべきものを正しく陰性と判定する確率"として定義されています。

すなわち特異度が高いということは、その疾患に罹患していない人の大部分が検査で陰性になることを意味しています。

HIV検査で特異度が高ければ高いほどニセの陽性者が少ないということになります。

従って特異度の高いHIV検査は、HIVに感染していない人を陽性と判断することはまずないと言えます。

従って陽性と判断されることがほとんどないHIV検査で陽性と判断されれば、絶対にHIVに感染していると診断することができます。

感度が高いHIV検査で陰性となれば、HIVに感染している確率は低いと言えますが、特異度が高いHIV検査で陽性となれば、HIVに感染ししている確率が極めて高いと言えます。

特異度の高いHIV検査は、確認用検査として利用されます。

これは感度の高いスクリーニング検査では、ニセの陽性反応が出現する可能性が高いことから、陽性となった確認用検査として利用されるわけです。

感度の高いHIV検査でスクリーニング実施し見落としを防ぎ、特異度の高いHIV検査で確認検査を行い真のHIV感染者を見つけるわけです。

【まとめ】

特異度が高いHIV検査とは、「HIVに感染していない人を正しく陰性と判定する可能性が高い」、あるいは「本来HIVに感染していない人を間違って陽性と判定する可能性が低い」ということになります。

しかし現実は特異度の高いHIV検査で陽性となった場合必ずしも全てが真の陽性とは言えません、なぜなら特異度100%のHIV検査は存在しないからです。

従っていくら特異度の高いHIV検査でもニセの陽性反応は存在します。