血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年5月24日木曜日

心臓疾患についてー6.心室細動ー

心室細動とは心室筋肉が組織だった興奮ができずに、有効な収縮ができなくなり、血液を送り出すことが出来なくなる状態を言います。

要するに心臓の部位のうち血液を全身に送り出す「心室」が細かく震える不整脈なのです。

心臓の筋肉が痙攣するように震え、収縮と拡張を正常に繰り返せなくなるため、やがて心臓の動きが止まってしまいます。

心室細動が起きると脳や心臓に血液が供給されなくなり、発症から6秒で意識を失い、3分で脳が重いダメージを受け、適切な処置が行わなければ死に至ります。

【心室細動の起こる原因】

心筋梗塞、心筋症など心臓の働きが悪くなっている人や、重症の心不全、大動脈弁狭窄症といった心臓の病気がある人に起きます。

血縁者に不整脈で突然死した人がいる場合は注意が必要です。

【心室細動の症状】

脈拍喪失、意識消失、全身痙攣、無呼吸ないしあえぎ呼吸が起こります。

整脈が長く続くと、動悸、息切れ、そして「吐き気」といった症状が現れます。

【心室細動の検査】

心電図、ホルター心電図、心エコー検査などがありますが、症状が出ないと検査に異常が見られません。

従って心室細動が起きていたということは、後から明らかになることが多いことから、日頃から心臓の異常があれば速やかに専門医を受診することです。

【心室細動の治療】

心室細動を正常な脈に戻すには、自動体外式除細動器(AED)を使い電気ショックを与え、心臓のけいれんを解除する「電気的除細動」を一刻も早く行う必要があります。

一度心室細動に至ったものが自然に正常の心拍に戻ることは極めて稀で、救命のためにはほとんどの場合電気ショックが必要となります。

およそ5分で死に至る心室細動は救急車の到着を待っていると死に至ります。

従って救命のためには周囲の人たちが直ちに「BLS(Basic Life Support)」といわれる一次救命措置を行う必要があります。

※一時救急処置とは、急に倒れたり、呼吸停止を起こした人に対してその場に居合わせた人が救急隊や医師の到着までに行う応急手当を言います※

大勢の助けを呼び、皆で手分けをしてAEDを探し、人工呼吸や心臓マッサージを始めます。

救急車の到着までに的確な一次救命措置を行えるかが救命率を上げることに繋がります。

要するに心臓の動きが再開し、脳への十分な血流が再開されるまでの時間が短いほど、確実に救命率が上がります。

【心室細動の心房細動違い】

心房が血液を送り出す働きを失っても、心臓の血液拍出は保たれますが、心室がこの働きを失うと心臓停止の状態となります。

心室細動は心臓停止と同じことであり即死に結びつきます。

 ところで、心房細動は不整脈の中でもよくみられるものであり、女性の場合ですと、閉経期以後になってみられる頻度が高くなります。

【心室細動が起こりやすい時間帯】

特に「朝の9時前後」は心室細動が起こりやすい時間帯といわれています。

その理由は朝は交感神経が働き、血圧が上昇して拍動が早くなるので、心臓に負担がかかりやすくなるためです。

中高年や心臓に病気のある人は、朝の運動はできるだけ控えたほうが無難です。

2018年5月14日月曜日

心臓疾患についてー5.狭心症ー

狭心症とは、心臓の筋肉である心筋への酸素供給が低下して供給される酸素が不足するために胸部に一時的な痛みや圧迫感が起きる病気を言います。

【狭心症の起こる原因】

冠動脈に動脈硬化が進むと血管の内側にコレステロールなどが沈着して壁が厚くなり、やがては血液の通りみちが狭くなります。

動脈硬化は加齢とともに誰にも起こりますが、それが病気にまで進む詳しいしくみは解明されていません。

現在知られている冠動脈に病気を起こしやすくする原因としては、代表的なものとして高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満・喫煙・ストレスなどがあります。

いずれも食事や運動などの生活習慣が、その発症・進行に大きく関与しています。

【狭心症の症状】

は胸骨の後ろの圧迫感や痛みとして感じられますが、多くの人はこの感覚を痛みというよりも不快感や押しつぶされるような感覚と表現します。

【狭心症の検査】

狭心症の診断は、殆どの場合が患者当人の症状の訴えに基づいて下されます。

心電図検査では、発作と発作の間には、ときに狭心症の発作中でさえ、ほとんど異常が認められず、広範囲の冠動脈疾患がある患者ですら異常が認められない場合があります。

発作中は、心拍数がわずかに増えて血圧が上がるため、聴診器で心拍の変化を確認できることがあります。

ホルター心電計による24時間心電図モニタリングでは、症候性または無症候性の虚血や異型狭心症(典型的には安静時に発生します)を意味する異常を検出することが可能となります。

その他の検査としては、負荷試験、心エコー検査、冠動脈造影検査などがあります。

【狭心症の治療】

基本的にはまず、冠動脈疾患の進行を遅らせるか、回復に向かわせるために、危険因子に対処することから始めます。

即ち高血圧や高コレステロール血症などの危険因子は、速やかに治療します。

禁煙は不可欠となります。

治療薬としては、ベータ遮断薬、硝酸薬(ニトログリセリンおよび長時間作用型硝酸を含む)、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、抗血小板薬の5種類が用いられます。

要するに血管の緊張をできるだけ緩め、心臓の負担を減らし、血液を固まりにくくしておくというのが基本となるわけです。

カテーテルという細い管を直接冠動脈の入り口まで挿入し、この針金をガイドにしてバルーンを狭窄部まで持っていき、バルーンを膨らませて狭窄を押し広げ拡張させ、狭くなった冠動脈をバルーンで押し広げたあとに、コイル状の金属のステントを留置するカテーテル・インターベンションを行います。

また、薬物治療やカテーテル・インターベンションを実施できない場合には、冠動脈バイパス術を実施します。

これは閉塞した冠動脈には手をつけず、身体の他の部分の血管を使って狭窄部分の前と後ろをつなぐ別の通路(バイパス)を作成して、狭窄部を通らずに心筋に血液が流れる道をつくります。

バイパスに用いる血管は、足の大伏在静脈、胸の中で心臓の近くにある左右内胸動脈、胃のそばにある右胃大網動脈などを使用します。

【狭心症と心筋梗塞の違い】

狭心症は冠動脈の血管が狭くなり、心臓へ送る血液の量が少なくなってるものをいいます。

心筋は死なずに生きています。

心筋梗塞は冠動脈の血管が完全に閉塞して、心臓への血液供給が大幅に減少し心筋が壊死してしまうものをいいます。

そして詰まった血管の先には血が流れないため、心筋が壊死して心臓が動かなくなってしまいます。