血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年9月5日火曜日

血液凝固機能検査ー2.活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT)ー.

活性化部分トロンボプラスチン時間は、APTT(activated partial thromboplastin time)とも略されます。

先に紹介したプロトロンビン時間PTは、外因系の凝固異常を調べるのに対し、この活性化部分トロンボプラスチン時間APTTは、内因系の凝固異常を調べる検査です。

トロンボプラスチンは、血小板や白血球に含まれる物質で、血液を凝固させる働きを持っています。

【検査の目的】

血液が凝固するまでの時間を計る検査で、血友病のスクリーニング検査として最も重要な検査です。

内因系凝固系は異物面との接触により動き出す凝固系で、血友病ではこの内因系凝固因子が異常のため、活性化部分トロンボプラスチン時間は長くなります。

血液を凝固させるためには、12種類の血液凝固因子と呼ばれる物質が働くことが知られていますが、活性化部分トロンボプラスチン時間は、血友病の原因となる第Ⅷ因子と第Ⅸ因子の欠乏を調べるためのものです。

【検査法】

血液を採取し、血漿に部分トロンボプラスチンの試薬とカルシウムイオンを加えることによって、部分トロンボプラスチンを活性化し、血液が凝固するまでの時間を測定します。
現在では、殆どが自動分析装置で検査します。

【検査原理】

1.血液1にクエン酸ナトリウム9になるように採血し、直ちに遠心分離し得られた血漿を使用する。

2.患者血漿100μLに検査試薬100μL+塩化カルシウム100μLを加えて37℃でフィブリンが析出するまでの時間を測定する。

【基準値】

血液が凝固するまでの時間が、25~45秒なら正常。

※使用する検査機器や施設によって若干異なる場合がある※

【検査法による基準値】

Langdell法:26.0~38.0秒

エラジン酸活性化法:26.0~38.0秒

光散乱法:23.5~42.5秒

※採血方法や血漿のとり扱い方などによって測定値が変動するため、基準値より延長していも足以上と判定しないで、採血方法をかえたり、同一検体で再検査をする必要があります※

【検査結果の判定】

・時間短縮・・・血栓症(凝固亢進時)、生理的変動(高齢者)

・時間延長・・・先天性凝固因子欠乏症・異常症(Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・?・?)肝機能障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)、尿毒症、多発性骨髄腫、線溶亢進、ヘパリン、ワルファリンカリウム等の抗凝固薬の使用時。

【異常が認められた場合どうするか?】

活性化部分トロンボプラスチン時間が著しく延長するのは、圧倒的に血友病の可能性が大となります。

血友病には第Ⅷ因子が欠乏している血友病Aと、第Ⅸ因子が欠乏している血友病Bとがあることからして、これらのいずれかの区別をするには凝固因子活性化検査などを追加検査する必要があります。

2017年8月15日火曜日

血液凝固機能検査ー1.プロトロンビン時間ー

プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)とは、血液中の止血作用を担う凝固因子の働きを調べる検査です。

プロトロンビン時間は、凝固外因系共通の検査で凝固第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅹ因子の総合的活性を反映しています。

【検査の目的】

血液凝因子は12あります。

血管内で働くものを内因系と呼び、血管外で働くものを外因系と呼びますが、プロトロンビン時間は外因系の凝固因子の異常を見つけるために行なわれる検査です。

外因系の凝固因子はタンパクで肝臓で合成されることから、肝硬変や肝臓がんなどにより、肝臓のたん白合成能力が低下すると、プロトロンビン時間は長くなることから、肝機能検査のひとつとしても検査されます。

心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症が起こった場合や、心臓の手術の時には抗凝固剤を用いますが、過剰に投与すると血液が固まらなくなる危険があることから、抗凝固剤の使用適量を調べるための指標としても検査されます。

【検査原理】

プロトロンビンは血液凝固因子の第II因子で、トロンボプラスチンという物質を加えると固まります、そのことから血漿にトロンボプラスチンを加え、固まるまでの時間を測定したものが、プロトロンビン時間(PT)です。

【検査方法】

自動分析器により測定します。

【基準値】

秒数:10~15秒

プロトロンビン活性値:80~120%

プロトロンビン比(検体凝固時間/対照凝固時間):0.9~1.1

プロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR)1.0

※検査に使用する機器により基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【異常値】

プロトロンビン時間の延長・・・まず第Ⅶ因子欠乏異常症などの先天的な病気、肝炎や肝硬変など肝細胞障害、心不全、悪性腫瘍、ビタミンK欠乏症、プロトロンビン欠乏症などの病気が疑われます。

プロトロンビン時間の短縮・・・凝固因子などの製剤を投与している、血栓症、妊娠、生理的変動

※プロトロンビン時間が短縮している場合は一般的には症状はありません※


【異常が認められた時には】

活性化部分トロンボプラスチン時間など、ほかの血液凝固に関する検査を実施します。

肝硬変などの肝臓病の場合には、ほかの肝機能検査を合わせて実施します。

【プロトロンビン時間の検査の注意点】

プロトロンビン時間の検査は、困難な点が多く、数値の変動が比較的多い検査ですから一回だけの検査結果だけで異常値が出ても、すぐには異常とは判断できませんので、再検査の必要があります。

心臓病などの血栓症予防として抗凝固剤を服用していると、凝固時間が延長しますから検査の前にその情報を得ておく必要があります。