血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年7月4日火曜日

性行為感染症についてー4.先天性梅毒-

先天性梅毒の増加が懸念されています。

先天性梅毒とは、妊娠中、または出産時に梅毒トレポネーマに感染する事を言います。

梅毒トレポネーマに感染し妊娠中に治療を受け、完治した妊婦から生まれてくる新生児では、母親の持つTP抗体が胎盤を通過して胎児に移行します。

その為梅毒トレポネーマに感染していなくても先天性梅毒に匹敵するほとせの高いTP抗体が認められます。

妊婦に活動性の梅毒があって、梅毒トレポネーマが胎盤を通過して胎児に感染し、所謂先天性梅毒として生まれて来るのでなければ、新生児での受動免疫(母親からの抗体をもらう)による梅毒陽性反応であることからこの陽性反応は3ケ月、遅くても6ケ月以内に陰性化します。

ところが、新生児の梅毒検査の陽性反応が、受動免疫による陽性反応なのか、梅毒トレポネーマに感染していての陽性反応かの区別を即座に下すことは極めて困難です。

TP検査によって、治療の必要ない受動免疫による陽性反応か、治療の必要な先天性梅毒の区別は極めて大切なことです。

胎盤を通過して胎児に移行する抗体は、TP抗体のIgG抗体で、IgM抗体は移行しないことから、新生児のIgM抗体の検査をすることにより、先天生梅毒か受動免疫の区別をすることが出来ます。

IgM-FTA-abs検査を実施することにより、先天生梅毒か受動免疫の区別をすることが出来ます。

新生児のIgM-FTA-absが陽性の場合は、その新生児は梅毒トレポネーマの感染を受けて、新生児自身が産生したIgM抗体を持つことから先天性梅毒と診断できます。

先天性梅毒を防ぐためには、母子健康法で義務付けられた妊婦検査は必ず受けるようにしましょう。

妊婦検査で仮に梅毒と診断された場合もペニシリンを投与して治療を行い、妊娠中に適切な治療を受ければ、99%以上の割合で、先天性梅毒を予防することができます。

2017年6月21日水曜日

性行為感染症についてー3.梅毒性ぶどう膜炎-

梅毒性ぶどう膜炎は、梅毒トレポネーマに感染した結果、眼に引き起こされる病気で、
第1期では,眼瞼下疳・結膜下疳、第2期では視神経炎・虹彩毛様体炎を引き起こしその結果急激な視力低下が起こります。

第3期では瞳孔異常・視神経炎・網脈絡膜炎を引き起こし、視力低下が起こります。

第4期には視神経萎縮を合併します。

梅毒トレポネーマ感染による眼疾患はここ30数年来、2~3例しか発生していませんでしたが、ここ数年来増加しつつあるとの報告がなされています。

これはここ数年来の梅毒患者の増加に比例しているものと考えられます。

梅毒性ぶどう膜炎の症状としては後極部に限局した病変が見られ、硝子体混濁を伴いやすく、視神経乳頭炎など網膜血管炎を合併するなどの特徴があるとされていますが、角膜実質炎,硝子体炎,視神経炎や瞳孔異常などを引き起こすこともあります。

しかし現実はその症状は極めて多彩で、眼所見からだけの診断は困難で梅毒血清反応検査を行うことが必要となります。

要するに眼所見だけで梅毒を疑うことは極めて困難なのです。

眼梅毒の患者のおよそ40%は、神経梅毒を合併していることからして腰椎穿刺を施行する必要があるのと、HIVの検査も全例に対して行うべきとされています。

何故ならHIV感染者では発症が急速であることと、治療に対する反応が遅いなど、HIV感染者でない者と臨床像が異なると報告されています。

急激な視力低下、かすみ眼をきっかけに受診し、梅毒性ぶどう膜炎を指摘される場合が多く発生しています。

不安な行為の後、急激な視力低下、かすみ眼が起こるようになった場合は、眼科を受診することと梅毒検査を受けることをおすすめします。

治療法としてはステロイド点眼を行い、梅毒に対する全身的な治療(ペニシリン投与)をを行います。

現在の梅毒による眼疾患の増加の裏には、HIV感染者の増加が危惧されています。