血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年5月8日月曜日

トロポニンT検査

【トロポニンとは何】

トロポニンは筋肉を構成する蛋白質のひとつで、"トロポニンT"、"トロポニンI"、"トロポニンC"で複合体を形成しています。

そしてミオシン等とともに心筋や骨格筋の収縮調節を担っています。

【トロポニンTとは】

心筋トロポニンTは、心筋特異性が高く、心筋の壊死を伴う心筋障害を反映するマーカーです。

【トロポニンT検査とは】

心筋(筋原繊維)の真の損傷を推測できることから、急性心筋梗塞の診断に活用される検査です。

現在心筋トロポニンTは、心筋特異性の最も高い検査です。

心筋の壊死を反映して血中レベルが増加します。

急性心筋梗塞では約3~6時間後から上昇し、8~18時間後に最高値に達し、2~3週間後まで有意な上昇が続きます。

【検査目的】

急性心筋梗塞・狭心症・心筋炎・心臓手術で心筋障害を疑われたときに実施します。


【基準値】

0.25ng/ml以下(EIA法)

基準値は検査方法や測定方法、測定機器、用いる試薬、単位などにより値が異なります。

【検査結果】

高値・・・心筋傷害の可能性を示しています。

急性心筋梗塞・不安定狭心症・心筋炎・高度の腎不全・非常に高度の骨格筋障害・心臓移植後の拒絶反応・開心術時の心筋障害

低値・・・心筋傷害はないと判断できます。

梗塞発症後に心筋トロポニンT濃度が上昇するのに3~5時間かかります。

※心筋トロポニンTの遊出動態により、梗塞発症の初期では陰性を示すことがあることから、心筋梗塞の疑いがあるときには、時間をおいて再検査をする必要があります※

【注目点】

CKの数値の上昇がなくても、トロポニンTやトロポニンIの上昇は心筋梗塞や微小心筋障害の可能性があります。

それゆえに、胸の痛みを訴える患者でCK上昇がなくても、トロポニン上昇のみが認められれば心イベントの発症率は高いため、細心の注意をもって対処する必要があります。

【おまけ】

心筋梗塞発症2~3時間後のような超急性期や微小の梗塞では偽陰性となるケースが見られます。

胸の痛を訴えた直後のトロポニンT検査が陰性の場合でも、心筋梗塞は否定できず、発症後5~6時間経過した後の再検査が必要とされていました。

この欠点を改良したのが、"高感度トロポニンです。

従来法トロポニンTに比べて低値における値のばらつきが殆ど見られず、測定精度が高くなっています

血中のトロポニン値が微量にしか増加しない超急性期においても、高い診断精度が得られます。

2017年4月26日水曜日

結核-7.検査その5-核酸増幅検査(PCR検査)-

PCR検査は、DNA合成酵素を用いた核酸増幅法のひとつで感染している菌が結核菌か非結核性抗酸菌かの確定診断が出来る検査法です。

【検査方法】

結核菌に特徴的な特定の結核菌遺伝子(16SリボゾームDNA)を増幅します。

温度の上げ下げを繰り返すことにより1分子のDNAを100万倍に増幅します。

核酸増幅により直接検体から結核菌の遺伝子を増幅させて検出を行います。

検査工程は、

1.検体から核酸を抽出する。

2.抽出した核酸を材料として特定の遺伝子配列だけを増幅させる。

3.その増幅された産物を確認・同定する。

PCR検査は、高感度, 高特異性です。

【欠点】

抽出の工程で目的の結核菌DNAが回収されないと増幅出来ません。

要するに検体中の結核菌量が少ない時は, 抽出時の確率によって結核菌感染があっても陰性となることがあります。

結核菌が死んでいても陽性となってしまいます。

【判定の際の注意】

PCR検査が陰性であっても結核菌の存在を完全に否定出来ません。

培養検査・複数回の塗抹検査・胸部エックス線写真・臨床症状の結果と併せて総合的に診断を下す必要があります。