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2025年3月30日日曜日

感染症速報-3.サポウイルスによる感染症-

 感染経路】


感染経路は汚染された食品や患者と接触した手を介して感染します。


【潜伏期間と症状】


12~48時間で、嘔吐・下痢・発熱などの症状がある胃腸炎を引き起こしますが、症状からはノロウイルスとサポウイルスの区別はできません。


【感染源】


牡蠣などの二枚貝が有名です。


ノロウイルスもサポウイルスも人間の体内でしか増殖できず、患者の糞便から排泄され、下水を通って海に流れ、牡蠣などの二枚貝に取り込まれて濃縮され汚染された貝を生で食べることで感染します。


貝類を食べていないのに感染するのは人から人への感染です。


サポウイルスに感染した人が感染源になったり、患者の吐物や下痢を処理した人が、手袋着用や手洗いが不十分なまま調理すると食品が汚染されて感染源になります。


サポウイルスは1年中存在するので夏でも発生しますが、冬に多い傾向があります。


【治療法】


ノロウイルスなどと同様で特効薬がないために脱水に対する対症療法が中心となります。


有効な治療法としては水分と電解質を補充するための経口補液です。


嘔吐や下痢があると水分だけでなく塩分が失われますので、市販のスポーツドリンクは、糖分が多く塩分が少ないので、あまりお勧めできません。


OS-1やアクアライトなど小児の脱水の治療に使えると記載されたものが良いです。


いずれにして感染したと考えられる症状が出たときには、素人処置をしないですぐに受診することです。


【正しい予防法】


・牡蠣などの2枚貝は十分に加熱する。


・生鮮食品は十分に洗浄する。


・トイレの後や調理前、食事前には流水による丁寧な手洗いをする。


・手洗い後のタオルの共用を避けて使い捨ての紙タオル使用する。


・患者の吐物や下痢を処理する時は、必ず使い捨て手袋を着用する。


・汚染された衣類は他の衣類と分けて洗濯しましょう。


・胃腸炎のウイルスにはアルコール消毒は効果がないので石鹸を使い流水でよく洗う。


・汚染された器具などは塩素系漂白剤を100倍から200倍程度に薄めて消毒をします。


2025年3月23日日曜日

感染症速報-2.サポウイルスとは-

 1977年に札幌の児童福祉施設で胃腸炎の集団感染があり初めて報告されました。


当時は"サッポロウイルス"呼ばれましたが、2002年の国際ウイルス学会で「サポウイルス」と正式に命名されました。


※"サポ"という名前は、発見された地名(札幌)に由来しています※


小児の散発的な感染性胃腸炎の原因と考えられてきましたが、近頃では食中毒などの集団感染の報告が増加傾向にあります。


サポウイルスは、カリシウイルス科に属するRNAウイルスで、主な感染経路は経口感染で、汚染された食品や水、あるいは感染者との接触によって感染します。


特に、牡蠣などの二枚貝を生で食べることで感染するリスクがあります。


主な症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが一般的な症状です。


※これらの症状は、ノロウイルスによる感染症とよく似ています※


潜伏期間は12~48時間で、発症している期間は一般的には1~2日、長い場合は一週間程度続くこともあります。


感染しやすい年齢層としては乳幼児に多く見られますが、近年では成人や高齢者の感染事例も報告されています。


【感染予防法】


1.手洗いの徹底。


2.食品を十分に加熱する(特に二枚貝は、生食を避ける)。


3.感染者の吐物や糞便をビニール袋にいれるなどの処理し、第三者に触れないようにする。


当然のことながらサポウイルスは、ノロウイルスと同様にアルコール消毒は無効ですので、石鹸でよく手を洗い流水で洗い流す必要があります。


【治療療法】


特効薬はなく、対症療法が中心となります。


脱水症状を防ぐために、水分と電解質の補給が重要です。


※※サポウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスによるものと症状が似ているため区別がしにくいのが現実です※※


20年程前からサポウイルスによる胃腸炎も知られるようになってきており、ロタウイルスでもアデノウイルスでもノロウイルスでもないウイルス性胃腸炎は原因はサポウイルスか原因あると指摘する専門家も多くいます。


要するにサポウイルスはノロウイルスに比べて、まだ、詳細な情報が不足しているのが現実です。

2025年3月16日日曜日

感染症速報-1.ヨーロッパでハシカ流行-

世界各国の感染症の情報をいち早くお知らせします。

2025年3月13日、世界保健機関と国連児童基金はロシアやヨーロッパを含む53カ国でハシカ(麻疹)の感染件数が2024年に127352件に上り、21万件を超えた1997年以降最悪となったと発表しました。


5歳未満の子どもの感染が全体の43%と多く「肺炎や腎不全を併発し、生命に関わるケースもある」と警告を発し予防接種の重要性を訴えています。


世界保健機関と国連児童基金の報告書によりますと、ヨーロッパ地域では1997年以降、ハシカは減少し、2018年から再流行し始め新型コロナウイルスの世界的流行を経て2024年に急増しました。


このハシカは半数以上が入院が必要な重症であったと報告されています。


今回のハシカ再流行の一因としては、新型コロナウイルスの流行によるハシカの予防接種率の低下を指摘しています。


新型コロナ感染者への対応で医療施設は逼迫し、ロックダウンも影響し定期予防接種を含む医療サービスが混乱したのも一因とされています。


今後日本国内においてもハシカが流行する危険性は否定できません。


【ハシカ(麻疹)について】

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。


免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。


現在の日本国内における麻疹患者数はかつてより著しく減少していますが、未だ年間約10~20万人と推計されています。


小児にとって麻疹は重症度の高い疾患で、近年は成人での発症も問題となっていることから、その対策は国民全体の健康を守るという点でも重要とされています。 

2025年3月9日日曜日

HIVとAIDSの話-1.はじめにー

 HIVとAIDSについて解説していきますのでお付き合いください。


HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)は、体内の免疫細胞を破壊するウイルスでHIVに感染すると、免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍などの重篤な病気にかかりやすくなります。


AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)は、HIV感染によって引き起こされる病気の総称でHIVに感染してから2~5年程度と早く発症する事例が多く見られますが、早期発見・早期治療により、AIDSの発症を予防することができます。


HIVの感染経路は、主に以下の3つです。


1.性行為によって


男性同性間性交、異性間性交、肛門性交、激しいオーラルセックスなどによって起こります。


2.血液を介して


血液製剤の輸血、針刺し事故、刺青やボディピアスなどによって起こります


2.母子感染


妊娠中、出産時、授乳時などに母親から子供に感染することがあります。


HIVに感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。


検査結果が陽性の場合、医療機関を受診して治療を受けることが大切です。


現在、HIVの治療薬は非常に進歩しており、適切な治療を受ければ、健康的な生活を送ることができます。


また、感染を予防するために、コンドームや注射針の共有を避けるなどの対策をとることも重要です。


以下に、HIVとAIDSの予防対策をまとめます。


1.性交渉の際には、コンドームを着用する。


2.針刺し事故に気をつけることや刺青・ボディピアスの際には、使い捨ての器具を使用する。


※針刺し事故は医療従事者以外に起こることはまずありません※


3.妊娠を希望する女性は、妊娠前と妊婦健診の際にHIV検査を受ける。


4.HIV感染のある女性は授乳を中止する。


5.日常生活でのHIV感染はまず起こることはありません。


HIVとAIDSは、適切な対策をとることで、予防や治療が可能な病気です。正しい知識を身につけ、感染予防に努めましょう。

2025年3月2日日曜日

薬を飲みやすくするために砕いて服用してもよいのか?

 薬の種類は多くあり飲みにくい薬もあります。

そのことから最近では薬を砕いて服用する人が増加しています。

果たして薬を砕いて服用してもなんの問題もないのでしょうか?

結論から言いますと砕いて飲んではいけない薬は存在します。

【薬の種類】

腸溶錠や徐放錠、舌下錠など、表面がコーティングされている薬や、胃への刺激性がある薬など多種あります。

【砕いてはいけない薬の理由】

・腸溶錠:胃酸によって変化したり、胃を刺激するために、胃では溶けにくく腸で溶ける膜が施されていることから粉砕すると胃に負担がかかります。

・徐放錠:薬の成分がゆっくりと溶け出し、効果が長く続くように加工されていることから粉砕すると、一気に成分が吸収され、血液中の薬の濃度が上がりすぎてしまい危険です。

・舌下錠:口の粘膜から吸収されるように作られているので、粉砕して飲み込んでしまうと効果がありません。

※コーティング錠とは、錠剤の表面をフィルムや糖衣でコーティングした製剤で苦味や臭いのマスキング、光や湿気による安定性の向上、粉落ちの防止、体内での溶ける時間の調節などの効果があります。※

【砕いても良い薬】

口腔内崩壊錠(OD錠、チュアブル錠、 素錠)

・口腔内崩壊錠(OD錠)とは、口の中で唾液や少量の水で溶ける錠剤で水なしで服用でき、高齢者や嚥下機能が低下した患者、水分の摂取制限が必要な患者などに適しています。

・チュアブル錠とは、口の中で噛み砕いて服用する錠剤です

・素(裸)錠 :薬の成分を錠剤の形に圧縮し、表面は何も加工していないもの。 

※苦味や臭いをマスクしているため、嚥下機能低下患者に粉砕し調剤することで、苦味 が強く服薬が難しくなる可能性がありますし、薬の有効成分がゆっくり溶け出すようにした製剤のために砕くとその効果が発揮できません。

近年錠剤の薬を飲みやすくするため砕いて粉にする「便利グッズ」として「お薬クラッシャー」があり、ネット上では数多くの製品が販売されていて、すべての薬が砕くと飲みやすなるような宣伝がされていますが、砕いてはいけない薬を砕いて服用すると効果減少したり、思わぬ副作用が起こることがあります。

確かに服用しにくい薬もあったり、錠剤を飲み込むのが苦手な人のほか、飲み込む力が衰えた高齢者や錠剤に慣れない子どもいることは事実ですが、あくまでも薬は副作用が起こりにくく、そして効果があるように服用する必要があります。

そのためにはそれぞれの薬の服用方法を厳守して服用する必要があります。

飲みやすくなるから何でもかんでも砕いて服用することはやめてください。



2025年2月23日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-2.非アルコール性脂肪性肝疾患検査「イムニス サイトケラチン18F EIA」について-

 イムニス サイトケラチン18F EIA」は、血清中のCK-18F(M30)を測定する酵素免疫測定法試薬です。


【使用目的】


血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)の測定 (非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)診断の補助)


【検査原理】


特徴ワンステップのサンドイッチ酵素免疫測定法(EIA)でNASHの診断補助に使用する体外診断用医薬品


【特徴】


NASHの特徴のひとつである風船様変性、疾患活動性の病理学的指標とされるNAFLD activity score(NAS)を反映し、リスクの高いNASHの絞り込みに有用


【検査時間】


測定時間は1時間30分


【基準値】


260未満 U/L


1.260U/L以上:ほぼ確実に非アルコール性脂肪肝炎が高いので肝臓専門医の診察が必要となる


2.260未満 U/L:非アルコール性脂肪肝炎の可能性は低いことから経過観察


【参考資料】


『イムニス サイトケラチン 18F EIA』

2025年2月16日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-1.非アルコール性脂肪性肝疾患検査とは-

 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)とは、アルコールを多量に飲まない人でも、肝臓に脂肪が蓄積する病気です。


主な原因は、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や、遺伝的要因などが考えられています。


NAFLDは、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると肝炎、肝硬変、肝がんなどに進行する可能性もあります。


NAFLDの診断には、血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。


治療は、食事療法、運動療法、薬物療法などが行われます。


NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。

わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定されます。


【参考資料】