血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年7月22日月曜日

糖尿病検査-1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)検査-

【1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは】

1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは、血液中にブドウ糖に次いで多く含まれる糖で、多くの食物中に含まれていますが、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に排泄されます。

血液中の1,5-AGは、尿糖が出るほど減少していくことから、数値が低いほど血糖コントロールが悪いと言えます。

【血糖コントロールの指標となる1,5-AG】

1,5AGは、腎臓の糸球体で濾過されますが、そのほとんどが尿細管で再吸収され、1日の尿中排泄と経口摂取量がほぼ均衡するため、血液中の濃度はほぼ一定しています。

糖尿病などで尿糖が増加すると、尿中への排泄が増加し血中濃度は低下し、このため、軽症糖尿病の過去数日間の血糖コントロールの指標として利用されています。

【1,5-AGを調べると何がわかるのか】

血糖が高くなれば、血液中の1,5-AGは低くなり、血糖が下がれば1,5A-Gは血中で増加するなど、軽微な血糖改善や、軽度の悪化を確実に捉えることが可能となります。

1,5-AGの値を調べれば、その時点での血糖のコントロール状態が明らかになりますので、糖尿病の治療効果、薬の増減、その経過観察に欠かせない検査となっています。

フルクトサミンやグリコヘモグロビン検査では、月や週単位での血糖コントロール状態がわかりますが、この1,5-AGは前日の状態までリアルタイムに把握可能となります。

尚且つ食事が検査に影響を与えることももありません。

【基準値】

男性:15~45μg/ml

女性:12~29μg/ml

【検査結果の解釈】

男女とも13μg/ml以下になると、血糖のコントロール状態が不十分と判断されます。

※1,5‐AGは血糖変動の把握に優れている反面、血糖コントロールが非常に悪い場合には検査結果の差が少なくなるため、病状の評価がしにくくなります※

【注意】

漢方薬の人参養栄湯や加味帰脾湯、葛根湯、小紫胡湯、大紫胡湯などには多量の1,5‐AGが含まれているため、これらを服用していると糖尿病のコントロールとは無関係に影響を受けて高値となる場合があるので注意が必要です。

2013年7月15日月曜日

糖尿病検査-ヘモグロビンA1c検査-

【ヘモグロビンA1cとは】

ヘモグロビン(Hb)とは、赤血球に含まれているタンパク質の一種で、酸素と結合して酸素を全身に送る役目を果たしています。

更にヘモグロビン(Hb)は、血液中のブドウ糖と結合するという性質をも有しています。
ブドウ糖と結合した物の一部分が、ヘモグロビンA1c(HbA1c)と呼ばれます。

血液中に余分のブドウ糖があって、高血糖状態が長く続くとヘモグロビンとブドウ糖は、どんどん結合していきます。

即ちこのヘモグロビンA1cの値が高ければ高いほど多くのブドウ糖が余分に血液中にあって、ヘモグロビンと結合していることになりま。

ヘモグロビンA1cは一度作られると、赤血球が死滅するまでは血液中から消滅しません。

赤血球の寿命は120日ほどであり、この半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。

従ってヘモグロビンA1cの値は、過去1ヶ月~2ヶ月の、血糖状態を表すので、血糖値よりも正確な血糖状態を知ることができます。

【ヘモグロビンA1cを調べる理由】

血糖値は検査前の食事や飲酒、それに検査をする時間によって変動するのに対し、ヘモグロビンA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があるからです。

【ヘモグロビンA1cの検査方法】

血液をHPLC法(高速液体クロマトグラフィ法)や免疫学的法で検査を行います。

※検査当日の食事制限必要ありません※

【ヘモグロビンA1cの単位】

2012年4月1日より、日本糖尿病学会では一般的な診療におけるヘモグロビンA1cの数値を、国際標準値(NGSP値)と併せて表記します。

これまで使用していたJDS値よりおよそ0.4%高くなります。

【JDS】=Japan Diabetes Society(日本糖尿病学会値)

【NGSP】=National Glycohemoglobin Standardization Program(国際標準値)

【ヘモグロビンA1cのコントロールの評価とその範囲】


※国際標準値の(NGSP)が6.5%以上の場合糖尿病が強く疑われます※

2013年7月8日月曜日

抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査

抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査は、夏型過敏性肺炎の代表的起因菌である "トリコスポロン・クタネウム"に特異的な抗体価測定により他疾患との鑑別に用いられます。

感度・特異度も高く、夏型過敏性肺炎の鑑別有用な検査です。

それでは、夏型過敏性肺炎とは、どのような疾患なのでしょうか?

夏型過敏性肺炎は日本で発見された過敏性肺炎で、西日本を中心に、夏季、湿った家屋内に繁殖した真菌属の胞子を反復吸入することによって起こります。

夏型過敏性肺炎は、過敏性肺炎の70%以上を占める代表的疾患で、III、IV型アレルギー肺疾患です。

原因となる真菌を吸入してから数時間後に咳や痰、悪寒、頭痛、発熱、呼吸困難などの症状が現れます。

夏型過敏性肺炎は、月をピークに6~10月にかけて発症することが多く、長引く夏風邪、繰り返す風邪と放置され、症状が重篤化してから受診する場合が多いです。

夏型過敏性肺炎は、家屋が原因となることが多いことから、家族発症がみられ、専業主婦に多いことも明らかになっています。

【夏型過敏性肺炎の特徴】

・夏の間だけ咳が出て、夏風邪と診断れたことがある。

・夏風邪の症状が頑固でなかなかすっきりしない。

・旅行などで自宅を離れると体調がよくなる。

・何年にもわたって、夏場になると同じ症状を繰り返す。

・家に長く居ると咳がひどくなる。

【抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査の判定基準】



★CAI (Corrected Absorbance Index) 補正吸光度

【治療法】

自宅から離れ、原因となっている"トリコスポロン・クタネウム"を吸入する環境から隔離することが必要となります。

それだけでかなり改善しますが、症状が重い場合はステロイド薬を服用する必要があります。

【予防法】

住宅内の "トリコスポロン・クタネウム"の発生を抑えることにつきます。

カビは室温20度、湿度60%以上で発生しやすくなり、80%以上で爆発的に増殖することから、室内の換気を頻回に行いカビの繁殖しやすい条件を作らないようにすることです。

特に、エアコンはカビの発生の主たる原因となりやすいので気をつける必要があります。
エアコンを冷房状態から急に切ると中に水滴が溜まりやすく、その水滴のかでカビが繁殖しますから、カビの繁殖を防ぐためにはエアコンを切る1時間前に送風状態にすると水滴がなくなり、カビの繁殖をおさることが可能です。

さらに、加湿器や空気清浄機、全自動洗濯機などもカビの温床になることがあるのので注意が必要です。

2013年7月1日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-3.感度と特異度の相関関係について-

検査とは、"感度の高い検査でスクリーニングを行い、"特異度の高い検査で診断を確定する"ことにつきます。

理想としては、感度、特異度の両者が共に100%が望ましい訳ですが,現実的にはそのよう検査は存在しません。

感度を上げれば特異度は低下し、特異度を上げれば感度は低下します。

そのために、スクリーニングに使用するHIV抗体検査では、感染している人をひとりも見逃すことのない感度100%が要求されます。

しかし、感度100%を要求すると、HIVに感染していない人も陽性と判定してしまいます、すなわち特異度が低下するわけです。


先に解説しましたように、

1.感染している人はすべて正しく検出で来るのが感度

2.HIVに感染していない人は全て陰性するのが特異度

と呼びます。

HIV感染の判断をするHIV抗体検査の感度と特異度の関係は、

※スクリーニング検査としては、HIV感染者を一人も見逃さないために感度100%の検査を使用します。

※確認検査としては、ニセのHIV感染者を排除する意味から、特異度100%の検査を使用します。

【事 例】

HIV検査で感度高いリアルタイムPCR検査で、不安な行為から11日で陽性となった場合、
特異度の高いウエスタンブロット法でこの時期に検査をしますと、この検査は感度が低いことから陰性となってしまいます。

【お知らせ】

臨床検査についてどのようなことでも、疑問点や質問等がありましたら、右サイドバーの
「質問・お問い合わせはこちら

を利用してどしどしお寄せください。

お待ちしております。

72時間位内に当ブログで解説させて頂きますので、どしどし質問をお寄せください。

2013年6月24日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-2.特異度について-

臨床検査における特異度とは、"本来陰性であるべきのものを正しく陰性と判定する確率"として定義されます。

いわゆる特異度が高いということは、"本来陰性であるべきものを正しく陰性と判定する可能性が高い"、あるいは"本来陰性であるべきのものを間違って陽性と判定する可能性が低い"という意味にほかなりません。

これを具体的に解説しますと、

あるHIV検査キットを用いて100人のHIV陰性者の検査を行った場合、

このHIV検査キットで100人をすべて陰性と判定出来た場合、このHIV検査キットは特異度100%と言うこととなります。

90人を陽性として10人を陽性とすれば、本来陰性となるべきものを陽性とした訳ですから、特異度90%となります。

この場合どちらの検査キットを使用するかと言うと、当然特異度100%の検査キットを使用することになります。

しかし、特異度を100%にしますと、今度は感度が低下してしまい感度100%を保つことができなくなります。

そのためにHIVなどの感染症の感染判断をするスクリーニング検査キットは、特異度100%のキットは使用出来ません。

特異度100%のキットを使用しますと、感度が低下することから感染者を見逃すことになります。

そのためにスクリーニング検査では、特異度100%の検査キットを採用することはできず、確認検査に利用されることになります

要するに確認検査に使用するキットは、真の陰性者をひとりでも間違って陽性とする(偽陽性)とすことのない検査キットが必要とされます。

特異度99%の確認検査キットは使用することはできません。

※感度100%のスクリーニング検査キットでも、その検査を受ける最適な時期に受けないと感度100%とはなりません※

【例】

HIV確認検査は、HIVスクリーニング検査で陽性となった人が真に陽性か否かを確認する検査ですが、スクリーニング検査に比べ感度が非常に低いことから、不安な行為から12週以降に受ければ、実際感染しているにもかかわらず陰性となることがあります。

どのような検査キットでも、検査を受ける最適な時期が決められていますから、その時期に検査を受けてこそ特異度100%が望めるわけです。

受ける時期を間違えて、この検査キットの特異度は100%ではなく80%で低いから使用できないというのは間違いです。

次回は、感度と特異度の関連性について解説いたします。

2013年6月17日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-1.感度について-

臨床検査でよく使用される「感度」と「特異度」について解説します。

臨床検査における感度とは、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率"として定義されています。

いわゆる感度が高いという事は、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する可能性が高い"、または"陽性と判定されるべきものを間違って陰性と判定する可能性が低い"という意味にほかなりません。

これを具体的に解説しますと、

あるHIV検査キットを用いて100人のHIV陽性者の検査を行った場合、

このHIV検査キットで100人をすべて陽性と判定出来た場合、このHIV検査キットは感度100%と言うことになります。

90人を陽性として10人を陰性とすれば、本来陽性と出ないといけないものを陰性とした訳ですから、感度90%となります。

この場合どちらの検査キットを使用するかと言うと、当然感度100%の検査キットを使用することになります。

特にHIVなどの感染症の感染判断をする検査キットは、感染者を一人でも見逃すことができませんので、感度100%の検査キットしか採用することはできません。

要するにどのようなスクリーニング検査キットにおいても、使用するキットは真の感染者(陽性)をひとりも見逃すことのない検査キットが必要とされます。

感度99%のスクリーニング検査キットは使用することはできません、実際感度99%のスクリーニング検査キットは、日本においては認可されることはありません。

※感度100%のスクリーニング検査キットでも、その検査を受ける最適な時期に受けないと感度100%とはなりません※

【例】

HIV迅速抗体検査は、不安な行為から12週以降に検査を受ければ、感度100%の結果が得られますが、これを不安な行為から6週に受けてその時陰性となり、以後12週で陽性が確認されても、この検査キットは感度100%ではないとは言えません。

どのような検査キットでも、検査を受ける最適な時期が決められていますから、その時期に検査を受けてこそ感度100%が望めるわけです。

受ける時期を間違えて、この検査キットの感度は100%ではなく80%で低いから使用できないというのは間違いです。

特異度に関しては次回解説いたします。

2013年6月10日月曜日

インフルエンザ迅速検査について

インフルエンザは、日本おいては毎年11月~4月に流行が見られますが、夏場でも流行していることが近年明らかになってきています。

これは、インフルエンザ迅速検査の普及によって明らかになりました。

特に 沖縄県ではここ近年、夏のインフルエンザ流行がほぼ毎年続いています。

咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体を使って迅速にインフルエンザを診断するキットが2001年の秋に承認され、普及してきています。


この検査キットでは、A型インフルエンザもB型インフルエンザも15分で結果が出るようになっています。

重要なことは、インフルエンザ検査が陰性の場合はインフルエンザではないと断定することはできません。

陽性の場合は、まずインフルエンザと断定して間違いはありませんが、陰性の場合にはインフルエンザであることもインフルエンザ でないこともあり得るのです

特に発病後1日以内は感度が低いためインフルエンザであるのに検査では陰性となる可能性があります

検査が陰性であっても主治医の総合的判断によって、検査は陰性であるが臨床症状や流行状況から考えてどう考えてもこれはインフルエンザと、考えれば発症後48時間以内なら効果のある抗インフルエンザ薬を処方します。

※皮肉なことに抗インフルエンザ薬が効果のないと言われる発病後48時間以降にインフルエンザ迅速検査の陽性率は高いのです※

発熱後24~48時間以内が検査の陽性率も高く抗インフルエンザ薬の効果も期待できる貴重な時間帯と言えます。

発熱したら直ぐに受診してインフルエンザの検査を受けることが最適ではありません。

インフルエンザウイルスの増殖は、発病後2~3日で最高に達し、その後急速に減少し、5~7日で消失することからして、迅速診断キットで陽性になるには、インフルエンザウイルスの量がある程度必要で、ウイルスの量が少ない発病の初期は陰性になりやすくなります。

また、一部ではインフルエンザではないのに陽性にでる場合ことが報告されています。

【インフルエンザ迅速検査の信頼性】

陽性の場合はほぼ100%インフルエンザと診断できるが、陰性の場合は注意を要する。

特に大人は小児よりも陰性に出やすく、また発症初日は陰性になりやすい。

その理由としては、インフルエンザウイルス量が検出できる以下の量であるのであって、インフルエンザではないと断言はできない。

※発症後12時間以内は、ウイルス検出率はかなり悪く、24時間以降の信頼性は高くなります※