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2025年10月12日日曜日

感染症速報27.異例の早期流行!インフル・新型コロナワクチンは接種すべきか否か?-

 🚨 2025年秋、異例の「ダブル流行」に警戒!

今年の秋は、例年とは違う感染症の状況にあります。

◎インフルエンザは、流行開始の目安を2週連続で超え、例年より約1ヶ月早い異例の早期流行となっています。

学級閉鎖も増加しており、今後の本格的な流行に備える必要があります。

◎新型コロナウイルスは、報告数は減少傾向にあるものの、依然として少なく特に高齢者層では入院が続いており、季節性のウイルスとして弱者に重い打撃を与えるリスクは残っています。

インフルエンザも新型コロナも症状だけでは区別が難しく、両方の検査が行われています。

※この「ダブル流行」の状況では、特に警戒が必要です※


🛡️ ワクチンが果たす「重症化予防」という大切な役割

こうした状況を踏まえ、インフルエンザと新型コロナ、それぞれのワクチンはどのような効果が期待できるのでしょうか?

※インフルエンザの場合成人の医療機関受診リスクが36~54%(米国/日本) 低下し、入院リスクも41~55%低下、更に感染しにくくなり重症化もしにくくなる。

※新型コロナは、65歳以上の入院予防効果(日本)63.2%、救急受診予防効果(米国)33%低下し、特に重症化や入院リスクを低下させる。

いずれのワクチンも「感染を完全に防ぐ万能薬」ではありませんが、重症化や医療機関への受診・入院のリスクを有意に低下させるという高い有効性が確認されていることからしてこれは、個人を守ると同時に、医療システムを守る上でも非常に重要です。


📢 なぜコロナワクチンの接種率が低いのか?

新型コロナウイルスは弱毒化しているものの、日本感染症学会など3学会は共同で見解を発表し、接種を強く推奨しています。

その理由は、新型コロナによる年間死亡者数がインフルエンザよりも依然として多いためです。

しかし、昨シーズンの新型コロナワクチンの接種率は、インフルエンザワクチンの半分以下という自治体が多く、このギャップが課題となっています。


✅ 接種の判断は「メリットがあるか」で

ワクチン接種は、決して**「正しいか/間違いか」の二択ではなく、「自分や家族にとってメリットがあるか/ないか」**という意思決定です。

接種を強く推奨される人は65歳以上の高齢者、慢性呼吸器・心疾患、糖尿病、肥満など基礎疾患のある人、免疫抑制状態にある人。

接種を検討すべき人とは、あくまでも個人判断となり、若年者層、医療機関や介護施設に頻繁に出入りする人(自他を守るため)。

接種後には一時的な発熱や倦怠感などの副反応が起こることもありますが、ハイリスク者においては「感染した際の重症化リスク」と「ワクチンの副反応リスク」を比較し、重症化を避けるメリットの方が大きいと判断するのが医学的・公衆衛生的見解です。


💡 まとめ:冬に備えて今すぐできること

インフルエンザが早期流行し、新型コロナも継続的に存在する今シーズンは、感染対策の「ガードを上げる」ことが求められます。

1)ワクチン接種: 特にハイリスクの方は、インフルエンザと新型コロナの両方のワクチン接種を強く検討しましょう(同時接種も可能です)。

2)基本的な感染対策の徹底: 手洗いやうがい、マスク着用(必要な場面で)、換気や湿度の管理を徹底しましょう。

※異例の流行に備え、適切な予防行動で自分と大切な人を守りましょう※

2025年10月5日日曜日

感染症速報26.🚨 【全国で流行入り】インフルエンザが「異例の早さ」で本格シーズン突入!-

厚生労働省は2025年10月2日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表しました。

これは、全国の定点医療機関あたりの患者報告数が、流行開始の目安とされる1.0人を超えたことを意味します。

注目すべきは、この流行入りが**「去年より約1か月早い」**という異例のタイミングである点です。

ではなぜ、これほど早くインフルエンザの波が押し寄せたのか。医学的・疫学的な最新分析を踏まえ、その重要性と私たちが今すぐ取るべき対策を解説します。

1. 異例の早期流行を招いた「2つの疫学的な要因」

例年、インフルエンザの流行シーズンは12月頃に始まり、ピークは1月~3月頃ですが、2025年は季節が深まる前に感染が拡大しています。

専門家が指摘する主要な要因は以下の通りです。

(1) 免疫負債(Immunity Debt)の影響

新型コロナウイルスのパンデミック期間中、徹底的な感染対策(マスク、手洗い、活動制限)により、インフルエンザウイルスへの自然な暴露機会が激減しました。

その結果、特に子どもたちを中心に、集団全体のインフルエンザに対する免疫(防御力)が低下しています。

この「免疫負債」があるため、例年より少ないウイルス量や早い時期でも、感染が広がりやすくなっていると考えられます。

(2) 季節外れの環境と国際的な往来

専門家は以下の点を指摘しています。

猛暑と空調環境: 猛暑により、多くの人がエアコンを強く効かせた屋内で過ごす時間が増えました。

インフルエンザウイルスは、**「乾燥し、温度が下がる」**環境で活性化し換気が不十分な冷房の効いた部屋は、ウイルスの拡散リスクを高める温床となり得ます。

国際的な人の移動: 大阪・関西万博など国際イベントの開催や、水際対策の緩和により、海外からの観光客が増加しています。

すでにインフルエンザが流行している国からの入国者がウイルスを持ち込み、国内の早い流行開始の引き金になった可能性が考えられます。

2. 今シーズンのインフルエンザの重要性とリスク

「インフルエンザなんて毎年かかるもの」と軽く見てはいけません。

早期流行は、以下の点で特に警戒が必要です。

重症化リスクの集中: 流行が早まることで、ワクチン接種が進んでいないタイミングで感染が拡大し、特に高齢者や基礎疾患を持つ方、乳幼児などの重症化リスクが高い層が大きな影響を受ける可能性があります。

医療機関の逼迫: 例年より早い時期にインフルエンザ患者が増えることで、新型コロナウイルスやその他の季節性感染症の患者と重なり、地域の医療機関に大きな負荷がかかることが懸念されます。

3. 最新情報を踏まえた「最優先の感染対策」

厚生労働省は、手洗いやマスク、換気などの基本対策を呼びかけていますが、この早期流行の状況において、特に注力すべき対策があります。

✅ 最優先事項:インフルエンザワクチンの早期接種

日本では例年12月~3月が流行期のため、12月中旬までに接種を終えることが推奨されていますしかし、今年はすでに流行期に入っています。

接種のメリット: ワクチンは発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化や合併症を防ぐ上で最も有効な手段です。

接種タイミング: 流行の波に乗り遅れないよう、特に重症化リスクの高い方は、かかりつけ医と相談の上、できるだけ早く接種を検討してください。

✅ 環境対策:換気の徹底

猛暑が落ち着いた今も、空調を使用している室内では換気が非常に重要です。

定期的に窓を開けて空気の入れ替えを行うか、換気扇や高性能フィルターを活用し、室内のウイルス濃度を下げましょう。

✅ 基本対策の再徹底

◎手洗い: 外出後や食事前だけでなく、こまめに石鹸と流水で手を洗う習慣を再徹底しましょう。

◎咳エチケットとマスク: 咳や症状がある場合は必ずマスクを着用してください。また、人混みや混雑した場所へ行く際も、マスクの着用は有効な防御策です。


【まとめ】


インフルエンザの全国的な早期流行は、季節の変わり目における公衆衛生上の大きなサインです。

過去数年で免疫状況が変化している中、一人ひとりの意識的な行動が、自分自身と大切な人を守ることにつながります。

この情報を参考に、今一度、ご家族や職場の感染対策を見直しましょう。

2025年10月3日金曜日

感染症速報-25.🚨 早くも到来!東京のインフルエンザ流行シーズンを医学的・疫学的に検証-

 東京都が発表した「インフルエンザ流行シーズン入り」は、例年と比較して極めて早い時期の到来であり、公衆衛生上の懸念が高まります。

当ブログでは、この早期流行の背景を医学的・疫学的な観点から分析し、最新の情報を踏まえた感染対策を詳しく解説します。

1. 流行シーズン入りの基準と今回の状況の特殊性

💡 流行開始の定義

インフルエンザの「流行シーズン入り」は、定点医療機関あたりの患者報告数が1.0人を超えたときが目安とされてこれは、地域内でインフルエンザの感染が広がり始めたことを示す重要な指標です。

📈 東京の状況(最新情報に基づく検証)

元の文章にある「先月28日までの1週間で1.96人」という報告数は、流行開始の目安(1.0人)を大幅に上回っており、都内でインフルエンザがすでに勢いよく拡大していることを示しています。

極めて早い流行期入り: 例年、日本でのインフルエンザの本格的な流行は12月〜3月頃にピークを迎え、流行シーズン入りも11月以降となることが多いですが、今年は10月に流行シーズン入りしたということで、これは過去のパターンから逸脱した異常な早期流行と言えます。

過去の早期流行としては、2023年度も比較的早い時期に流行が始まりましたが、今回はさらに前倒しになった可能性が示唆されます(※検索結果には2024年の11月以降の情報が含まれており、記事の時期によって流行の進展に時間差があることがわかりますが、10月の流行シーズン入りは早いことに変わりありません)。

2. 早期流行の背景にある疫学的要因

ではなぜ、これほど早く流行が始まったのでしょうか?主な疫学的要因として、以下の点が考えられます。

🦠 免疫負債(Immunity Debt:イミュニティ・デット)の影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、徹底された感染対策(マスク、手洗い、外出自粛)により、インフルエンザを含む多くの呼吸器感染症への暴露機会が減りその結果、特に子どもたちを中心に、集団としての**インフルエンザに対する自然免疫が低下している(=免疫負債)**状態にあります。

この免疫の空白期間により、例年より低い感染レベルでも流行が拡大しやすくなっていると考えられます。

※「イミュニティ・デット」(免疫負債)とは、COVID-19パンデミック中に人々が感染対策(ロックダウン、マスク着用など)を徹底した結果、通常のウイルスや細菌にさらされる機会が減り、集団免疫が低下した状態を指す概念です※


🌏 世界的な流行パターンの変化

近年、特に南半球など海外で、インフルエンザの流行開始時期が変化し、通年的な流行が見られる報告があり国際的な往来が回復する中で、これらの変化が日本に持ち込まれ、例年とは異なるタイミングで流行が始まる可能性があります。

🏫 集団生活における感染拡大

インフルエンザは特に**小児(14歳以下)**で患者報告数が多い傾向があり、学校や保育施設での集団生活を通じて感染が急速に拡大し早い時期に流行が始まると、学級閉鎖などの影響も早期に出やすくなります。

3. 最新情報を踏まえた感染対策の徹底

本格的な流行の波に備えるため、東京都が呼びかける対策に加え、医学的に推奨される最新の対策を徹底しましょう。

【感染予防の具体的な行動と医学的根拠】

◎ワクチン接種:最重要対策で日本では例年12月〜3月が流行期のため、12月中旬までに接種を終えるのが望ましいとされています。

ワクチンは発症予防だけでなく、重症化予防に極めて有効で特に高齢者、基礎疾患のある方、妊婦、乳幼児は優先的に接種を。

◎手洗い・消毒:**「こまめな手洗い」**を徹底。石鹸と流水による手洗いは、接触感染の主要な経路を断ち切る基本です。

◎換気:定期的な換気により、室内のウイルス濃度を下げることが重要で特に集団で過ごす場所では、窓を開ける、換気扇を回すなど、空気の流れを作りましょう。

◎マスク着用:**「咳エチケット」**として推奨。感染者や症状のある人が着用することで、飛沫によるウイルス拡散を効果的に防ぎますので人混みや換気の悪い場所での着用も有効です。

◎体調管理:十分な休養とバランスの取れた栄養摂取で免疫力を維持することが大切で体力が低下していると、感染しやすく重症化リスクも高まります。

⚠️ 重症化リスクの高い人

65歳以上の高齢者、5歳未満の小児(特に2歳未満)、妊婦、慢性疾患を持つ方などは、重症化のリスクが高いです。症状が現れたら速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

早期の流行シーズン入りは、インフルエンザが今年は例年以上に警戒すべき感染症であることを示しています。

皆で適切な対策を講じ、健康な冬を迎えましょう。


『インフルエンザが東京都でも流行シーズンに突入(2024年11月14日)』


2025年9月28日日曜日

感染症速報-25.⚠️ 増加傾向が示す警鐘:2024年 HIV/AIDS報告994人の医学的分析-

 厚生労働省が2025年9月26日に発表した2024年のHIV感染者とエイズ患者の確定値は、合計994人で、これは前年より34人増え2年連続の増加したことになります。

この数字は単なる統計ではなく、日本のHIV/AIDS対策における重要な課題を示しています。

医学的な観点と最新のデータから、この増加が持つ意味をわかりやすく以下に解説します。


1. データが示す深刻な変化:HIV感染者とエイズ患者の内訳

全体の報告数は増加していますが、内訳を見るとより深刻な傾向が見えてきます。

・HIV感染者は662人で7人減・・感染を早期に発見し治療を早く開始でき発症を防げる。

・エイズ患者は332人で41人増・・感染に気づかず、すでにエイズを発症してから診断された

・合計 994人で34人増・・報告総数は増加傾向にあります。


【"いきなりエイズ"が示す遅すぎる診断】

注目すべきは、エイズ患者(332人)が前年比で41人も増加している点です。

「エイズ患者」として報告されるのは、HIVに感染していることに気づかず、病気が進行して免疫不全の指標となる病気(指標疾患)を発症してから初めて診断されたケースです。

これは俗に**「いきなりエイズ」**とも呼ばれます。

医学的には、HIV感染は早期に発見し、抗HIV薬による治療を始めれば、エイズ発症をほぼ完全に防げます。

エイズを発症してから治療を始めても遅くはありませんが、初期の治療が難しくなったり、体力的な負担が大きくなったりします。

※"いきなりエイズ"に至る前に感染を見つけて早期に治治療を開始することが重要です※

エイズ患者の増加は、「感染に気づいていない人が増えている」「検査を受ける機会が減少している」など、早期発見の体制にほころびが出ている可能性を示唆しており、最も懸念される傾向です。

2. 依然として最も多い感染経路:同性間の性的接触

感染経路別に見ると、HIV感染者(662人)とエイズ患者(332人)のいずれにおいても、同性間の性的接触が最多となっています。

・HIV感染者(662人中):417人

・エイズ患者(332人中):170人

このデータは、特定のコミュニティ内での予防啓発や検査アクセスの確保が、依然として日本のHIV対策における最優先課題であることを裏付けています。

3. ではなぜ報告数は増加しているのか?

2年連続の報告数増加には、複数の要因が考えられます。

🚨 検査機会の回復(コロナ禍の影響)

新型コロナウイルス感染症のパンデミック期には、保健所等でのHIV検査実施件数が一時的に大きく減少しました。

2024年の増加は、検査機会が徐々に回復し、それまで潜在化していた感染者が発見され始めた「検査体制の回復」による数字の変動である可能性も指摘されています。

🚨 リスク意識の希薄化

HIV感染症は治療薬の進歩により「慢性疾患」となり、早期発見・早期治療を行えば、感染していない人と変わらない生活を送れるようになりました。

この医学的進歩が逆に「エイズは怖い病気ではない」という誤った認識を生み、予防行動の低下につながっている可能性も無視できません。

🚨 予防薬(PrEP)の普及の遅れ

欧米諸国ではHIV予防薬(PrEP:曝露前予防内服)の普及が進んでいますが、我が国においても導入されていますが、まだ一般への浸透は限定的で最新の予防策が広く利用されていないことも、新規感染を抑制しきれない一因と考えられます。

💡 私たちにできること:検査と情報へのアクセス

今回の厚生労働省のデータは、私たち全員に対し、「HIVは過去の病気ではない」ということを改めて突きつけています。

最も重要なアクションは、**「知る」と「検査する」**ことです。

検査の活用:不安な行為があった方は、保健所や自治体の検査機関で無料・匿名でHIV検査を受けることができます。

◎早期発見は、自分自身とパートナーの健康を守る最良の防御です。

◎正しい知識の更新:HIV/AIDSに関する情報は日々更新されています。

◎治療の進歩や予防策(PrEPなど)について、常に正しい情報を入手しましょう。

HIVの新規報告数を減らし、エイズ患者をゼロに近づけるには、個々人の意識と行動の変化が不可欠です。


今回HIVの感染が判明した人のうち、エイズを発症していた患者(いきなりエイズ)の割合は33.4%と、過去20年で最も高くっていまずこの理由について同委員会は、コロナ禍でHIV検査を受ける人が減り、エイズを発症するまで感染が分からなかった患者が増加したためと推測しています。

2025年9月23日火曜日

感染症速報-25.季節性インフルエンザが早期流行:最新の動向と医療の現状-

 2025年9月現在、例年よりも早い時期からインフルエンザが流行期に入り、全国的に患者数が増加していて、特に学級閉鎖が相次いでいることから、今年は子どもを中心に感染が広がっている傾向が見られます。

この早期流行の背景には、ここ数年間、新型コロナウイルス対策によってインフルエンザへの集団免疫が低下していたことが考えられます。

今回は、インフルエンザの流行状況と、解熱鎮痛剤の使用や抗生物質の処方に関する最新の注意点について、科学的知見をもとに分かりやすく解説します。

1. インフルエンザの治療薬、どう変わった?

熱やのどの痛みがあるとき、つい市販の薬に頼ってしまいがちですが、インフルエンザの場合、使用する薬の種類に注意が必要です。

ロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は慎重に

厚生労働省は、インフルエンザの治療に際して、一部の解熱鎮痛剤、特に「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」を慎重に使用すべきとしています。

これは、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸といった特定の成分が、インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症・脳炎のリスクを高める可能性が指摘されているためです。

意識障害などを引き起こす危険性があるため、特に子どもへの使用は避けなければなりません。

推奨される解熱鎮痛剤は「アセトアミノフェン」

医師や薬剤師がインフルエンザの際に推奨するのは、アセトアミノフェン(製品例:カロナールなど)で、アセトアミノフェンはインフルエンザ脳症との関連が低いとされており、子どもから大人まで比較的安全に使用できると考えられています。

熱でつらい場合は無理せず、まずは医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な薬を服用しましょう。

やむを得ず市販薬を使用する場合は、必ず薬剤師に相談して「アセトアミノフェン」成分の薬を選ぶようにしてください。

2. 「風邪には抗生物質」はもう古い?

インフルエンザや一般的な風邪の治療において、薬の処方方針に大きな変化が起きています。

社会保険診療報酬支払基金は、インフルエンザや風邪といったウイルス性の疾患に対し、抗菌薬や抗生物質を原則として処方しないという方針を明確にしました。

これは、ウイルスに抗生物質は効果がなく、不必要な抗生物質の服用は薬剤耐性菌を生み出すリスクを高めるからです。

この変更は、患者さんの自己負担額を増やすものではありません。

しかし、医療機関側が不適切な処方に対する保険請求を認められなくなることで、「念のため」の抗生物質処方を減らし、医療全体での適正使用を促すのが狙いです。

3. 今すぐできるインフルエンザ対策

今年のインフルエンザは流行が早いため、予防対策も前倒しで進めることが重要です。

ワクチン接種: 多くの医療機関が例年よりも早くインフルエンザワクチンの接種を開始しています。

特に13歳未満の子どもは2回接種が推奨されるため、早めに計画を立てましょう。

基本的な感染対策: 手洗いやうがい、マスクの着用など、基本的な感染対策を徹底することが、感染拡大を防ぐ最も重要な方法です。

夜間に急な発熱で困った場合は、国が提供する電話相談窓口が利用できます。

子ども向け:#8000

大人も利用可能:#7119

これらの番号は、夜間や休日に適切な医療機関を探す手助けをしてくれるので、いざという時のために覚えておきましょう。

最後に、

#8000(こども医療電話相談)と#7119(救急安心センター事業)は、相談料は無料ですが、通話料は利用者の負担となります。

2025年9月21日日曜日

感染症速報-24.なぜ冬でもないのにインフルエンザが流行しているの?-

 例年、インフルエンザは冬に流行する感染症として知られています。

しかし、今年は9月に入っても感染者数が増加しており、地域によっては学級閉鎖や集団感染が相次いでいるというニュースに驚いている方も多いのではないでしょうか。

なぜ冬を待たずにインフルエンザが流行しているのか、最新の医学的・疫学的知見から分析し、その理由を解説します。

◎医学的・疫学的分析:なぜ今年の流行は早いのか?

通常、インフルエンザが冬に流行する主な理由は、ウイルスが低温・乾燥した環境でより長く生存し、飛沫が空気中に漂いやすくなるためでまた、冬は免疫力を低下させやすい要因(寒さ、疲労など)が増えることも関係しています。

しかし、今年の流行が異例の早さで始まっている背景には、複数の要因が複合的に絡み合っていると考えられます。

1.コロナ禍による免疫の変化 🦠

過去3年間のコロナ禍において、私たちはマスク着用や手指消毒、ソーシャルディスタンスといった厳格な感染対策を徹底してきた結果、インフルエンザウイルスに接触する機会が減り、多くの人がインフルエンザに対する集団免疫を十分に持たない状態となりました。

医学的には、この「免疫の空白期間」が、現在の流行拡大の大きな要因とされています。

2.ウイルスの変異と感染力の強さ 🧬

インフルエンザウイルスは常に少しずつ形を変えて(抗原変異)います。

これにより、一度感染しても再び感染する可能性があるのです。

今年の流行株は、これまでの株よりも感染力が強い傾向にあるという分析もあり、免疫を持たない人々の中で急速に広まった可能性があります。

3.南半球での流行状況と人の移動 ✈️

日本では夏にあたる時期に、南半球(特にオーストラリアなど)では冬を迎え、インフルエンザが流行します。

国際的な人の移動が活発になった現在、南半球で流行したウイルスが日本に持ち込まれ、それが免疫を持たない人々の間で一気に広まったという疫学的な見解も有力です。

◎今私たちが取るべき対策とは◎

今回のインフルエンザ流行は、冬のピークを待つことなく対策を講じる必要性を示しています。

基本的な感染対策の再徹底として、

・手洗い・うがい:帰宅時や食事の前など、こまめな手洗い。

・マスクの着用:公共交通機関や人が密集する場所では、感染拡大を防ぐためにマスクを着用するのが有効です。

・換気:室内の空気を定期的に入れ替え、乾燥を防ぎましょう。

・インフルエンザワクチンの接種:インフルエンザワクチンは、発症を予防するだけでなく、万が一感染しても重症化を防ぐ効果があります。

例年の流行ピークは1〜2月ですが、今年は早めに接種を検討することが推奨されています。

【まとめ】

今年のインフルエンザの流行は、コロナ禍による集団免疫の低下、ウイルスの特性、そして国際的な人の移動が複雑に絡み合った結果と言えます。

これは単なる季節外れの流行ではなく、新しい感染症の流行パターンを示唆しているのかもしれません。

私たち一人ひとりが危機感を持ち、適切な予防策を講じることが、これ以上の感染拡大を防ぐ鍵となります。

2025年9月18日木曜日

感染症速報-23.国内でエムポックスの重症型「クレード1」初確認:医学的考察と最新情報-

 日本国内で、より重症化しやすいとされるエムポックスの「クレード1」の感染者が初めて確認されました。


この事例は、単なる感染症のニュースを超え、世界的な流行状況と日本の公衆衛生体制における重要な課題を浮き彫りにしています。


◎エムポックスの「クレード1」と「クレード2」:ウイルスの違いと重症度


エムポックスウイルスには、主に2つの主要な系統(クレード)が存在します。


1.クレード1(旧コンゴ盆地クレード): 感染力が比較的強く、致死率が8〜10%と高いとされています。このタイプは主に中部アフリカの風土病として知られていました。


2.クレード2(旧西アフリカクレード): 感染力や致死率がクレード1よりも低く、致死率は1%未満とされています。2022年以降、世界的に大流行したエムポックスのほとんどがこのタイプでした。


今回、日本で確認されたのは、より危険性が高いとされるクレード1で、アフリカへの渡航歴を持つ20代の女性の症例です。


この事実は、感染症が地理的な境界を容易に越える現代において、ウイルスの系統解析(ゲノム解析)が公衆衛生管理に不可欠であることを示しています。


◎世界的な状況と日本の課題


2022年以降、世界中でエムポックスの流行が拡大し、日本国内でも散発的に症例が報告されてきました。


これまでの国内事例はすべてクレード2によるものであり、今回のクレード1の確認は、日本の医療機関や公衆衛生当局にとって新たな脅威となります。


ウガンダでのアウトブレイク: 2024年に入り、ウガンダではクレード1による大規模な流行が発生しており、多数の死者が出ています。


この背景には、現地の医療体制の脆弱性やワクチンの供給不足などが指摘されています。


日本で確認された症例も、こうした地域からの輸入例と考えられます。


 今回の事例は、水際対策の重要性だけでなく、海外からの入国者に対する健康監視、そして医療機関での適切な鑑別診断体制の必要性を改めて示しています。


◎ 医療従事者への注意喚起と今後の展望


エムポックスの初期症状は、発熱や発疹であり、他のウイルス感染症と見分けがつきにくい場合がありそのため、医療従事者は、渡航歴のある患者に対して、エムポックスの可能性を鑑別診断に含めることが重要となります。


・潜伏期間: エムポックスの潜伏期間は通常5〜21日で今回の症例では、アフリカへの渡航歴があることが感染源特定の鍵となりました。


・治療とワクチン: エムポックスには、対症療法が主に行われますが、重症例に対しては抗ウイルス薬「テコビリマット」が使用されることがありまた、ワクチンによる予防も有効ですが、クレード1への対応となると、ワクチンや治療薬の十分な備蓄、そして医療機関での迅速な対応プロトコルが求められます。


今回のクレード1の国内初確認は、パンデミックへの警戒を緩めてはならないというメッセージを強く発信しています。


厚生労働省や国立感染症研究所は、引き続き国際的な動向を注視し、情報共有と監視体制を強化していく必要があります。


※2025年9月6日、世界保健機関(WHO)は感染症の「エムポックス」、これまでの「サル痘」の感染者が減少しているとして、およそ1年前から出していた緊急事態の宣言を終了すると発表しました※


これは時期早々で、あまりにも現実を直視していない判断と私は思います。