血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年12月31日木曜日

脂質検査-2.総コレステロール-

総コレステロール(Total-cholesterol:T-CHO)の「総」とは、体に良いHDLコレステロールと体に悪いLDLコレステロールを合算値を意味しています。

コレステロールには、悪玉(LDLコレステロール)と善玉(HDLコレステロール)があり、コレステロールは人間の体に欠かせない脂質のひとつですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の原因となります。

脳動脈で起きれば脳梗塞に、心臓の冠状動脈で起きれば心筋梗塞を引き起こします。

【検査目的】

総コレステロールは脂質代謝の異常を調べる検査です。

【基準値】

140~219mg/dL

※閉経後の女性は、ホルモンの関係で上昇する傾向があり、150~239mg/dlを基準値としています※

※総コレステロール値は個人差があり、遺伝的な体質や食生活の内容、ストレスによっても左右されることから、多少の変動なら神経質になる必要ありません※

【異常値】

基準値より高い・・・脂質異常症、高コレステロール血症、ネフローゼ症候群、高血圧、動脈硬化、膵臓疾患、糖尿病、脂肪肝、甲状腺機能低下症、心疾患など。

基準値より低い・・・肝硬変、肝臓がん、栄養障害、甲状腺機能亢進症、アジソン病など。

※基準値より高くても200~239mg/dLであれば、食事や運動で改善できるレベルであり、必ずしも病気とはいえません※

※240mg/dL以上になると早期改善する必要があり、270mg/dL以上では食事や運動だけでは改善されないことから投薬療法を実施します※

【異常値がみられた時の対応】

総コレステロール値が異常値の場合、HDLとLDLのどちらが異常値なのか、逆に総コレステロール値が基準値内でもHDLとLDLが正常範囲に入っているかを個別に判断しなければ意味がありません。

※HDLとLDLに関しては次の機会に解説いたします※

【検査を受ける際の注意点】

食事によって栄養素が血液中に増えるため、正しい測定が出来生なることから、総コレステロール値を測定する場合は、原則として前日の夕食後は飲食を禁止し、空腹の状態で採血をします。

2015年12月23日水曜日

脂質検査-1.中性脂肪-

中性脂肪とは、人間の体を動かすエネルギー源となる物質で、別名トリグリセライド(TG:triglyceride)と呼ばれています。

体の中に存在する脂肪を総称して「体脂肪」と呼びますがが、体脂肪のほとんどは中性脂肪です。

中性脂肪は活動のエネルギー源として脂肪細胞の中に蓄えられますが、たまり過ぎるといわゆる肥満やメタボリックシンドロームの状態になり、生活習慣病にかかる可能性が高くなります。

中性脂肪とコレステロールはどちらも脂質の一種ですが、中性脂肪はエネルギー源で、余分な中性脂肪は、肝臓などに蓄えられます。

コレステロールは、細胞膜を作ることや筋肉を作るホルモンの原材料となります。

【検査目的】

狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患を予防するために調べます。

中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気が考えられます。

【基準値】

30 ~149mg/dl

※検査をする機器や施設によって異なる場合があります※

【異常値】

29以下:低中性脂肪血症

150~299:軽度高中性脂肪血症

300~749:中等度高中性脂肪血症

750以上:高度高中性脂肪血症

【高くなる原因】

過食

過度の飲酒アルコール

遺伝的体質

【検査を受ける際の注意点】

食後30分程度してから上昇し始め、4~6時間後に最も高くなることから、検査は早朝空腹時に行ないます。

【おまけ】

巷では中性脂肪が高いとよくない!と言われますが、人が生きていく上で必要なエネルギー源であることからある程度の数値は必要になります。

血液中の中性脂肪が増えすぎると、動脈硬化の危険が高まりますが、日本人の場合は、心筋梗塞の人のコレステロール値はそれほど高くなく、中性脂肪が高値を示す例が多いといわれています。

2015年12月7日月曜日

肝機能検査-9.血清総蛋白(TP:total protein)

血清総蛋白とは、血清中に含まれる蛋白の総称です。

現在、100種以上の蛋白の存在が知られています。

血清中には、およそ7~8%の蛋白が含まれています。

血清総蛋白は、アルブミンが60%とグロブリンが20%が主な成分です。

働きとしては、血液中のさまざまな物質を運んだり、体液の濃度を調整しています。

【検査目的】

肝臓や腎臓の異常、全身状態などを調べる検査です。

血清蛋白の中で最も多く存在するアルブミンは肝臓で合成されるため、肝機能障害の疑いがあるときは、まずこの検査を行います。

【基準値】

男性:6.5~8.2g/dL

女性:6.5~8.2g/dL

【異常値】

● 血清総蛋白が8.5g/dL以上・・・・高タンパク血症

原因:血液濃縮(脱水症)、免疫グロブリンの増加、多クローン性(疾患自己免疫性疾患、慢性炎症性疾患、肝硬変、慢性肝炎、悪性腫瘍、感染症)、単クローン性(多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、本態性M蛋白血症)

● 血清総蛋白が6.0g/dL以下・・・・低蛋白血症

原因:肝硬変、栄養不良、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症

【蛋白分画】

5つのグループに分画されます。

※( )内は基準値※

1.アルブミン:(60~70%)

上昇・・・・脱水

低下・・・・低蛋白血症、ネフローゼ症候、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、栄養不良

2.α1‐グロブリン:(2~3%)

上昇・・・・急性又は慢性炎症、低蛋白血症、ストレス、自己免疫疾患

低下・・・・急性肝障害

3.α2‐グロブリン:(5~10%)

上昇・・・・ネフローゼ、急性及び慢性炎症、自己免疫疾患、悪性腫瘍、ストレス

低下・・・・肝障害、低蛋白血症

4.β‐グロブリン:(7~11%)

上昇・・・・ネフローゼ、妊娠、溶血

低下・・・・慢性肝障害

5.γ‐グロブリン:(10~20%)

上昇・・・・肝硬変、慢性肝炎、骨髄腫、自己免疫疾患

低下・・・・ネフローゼ、無ガンマーグロブリン血症、低蛋白血症

【おまけ】

新生児の場合は、成人よりも低値を示し加齢とともに増加して思春期には成人と同じ値となります。

加齢とともに低くなる傾向があります。

朝より夕方や安静時より運動後は高くなる傾向があります。

妊娠していると低くなる傾向があります。