血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年10月30日水曜日

便潜血反応検査

【検査目的】

大腸ガンを診断する検査のひとつです。

大腸ガンは大腸の下部から出血を伴うので、便に血液が混入することが多いので、便中の血液(人のヘモグロビン)を調べることにより、大腸での出血の有無を確認することが出来ます。


【便の採取方法】

1. 便の量は少なすぎても多すぎてもよくないので、説明書に記載された量を採便する必要があります。

2.採便容器の説明書の通り採便すると、適量(平均6.0mg前後)が採取できます。

3.便が適量でないと陽性が陰性となったり、陰性が陽性となる場合があります。 

4.便中のヘモグロビンの安定性は、室温(25℃)前後で約1週間ですから、採便後直ぐに提出する必要があります。

5.採便は基本的に二本法で行います。

大腸からは毎日出血しているとは限りません。

その為に日にちを変えて採便を2回する必要があります。

即ち二本法とは二回(異なる日)に採便し検査する方法です。

出血は必ずしも継続的ではないため、一本法では陰性になる確率が高いために、多くの医療機関では二本法を採用しています。

二本法を行うことで一本法よりも大腸出血の発見率が高くなります。 


【問題点】

上部消化管(食道・胃・十二指腸など)からの出血の影響を受けず、大腸ガンなどによる大腸出血の診断に有用ですが、痔などの肛門出血や大腸ガン以外の病気(大腸ポリープ・大腸炎など)でも陽性となる場合があります。

女性では月経血が混ざっても陽性となります。

早期の大腸ガンでは陰性となることが多い。

【判定】

陽性(+): 検査上、大腸からの出血が認められる。

※必ずしも大腸ガンがあるとは言えませんので、大腸内視鏡などの精密検査を行い、出血の原因を確認する必要があります。    

陰性(-): 検査上、大腸からの出血は認められない。

※出血が認められないだけで、大腸ガンがないとはいえません。

【おまけ】
 
便潜血検査の偽陰性率(見逃してしまう可能性)

進行ガン 約10%

早期ガン 約50%

便潜血検査のガン的中率(陽性の人が癌である確率) 約3%

2013年10月22日火曜日

臨床検査のパニック値について

【パニックの定義】

パニック値とは、"生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値"で直ちに治療を開始すれば救命することが出来ますが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能です。

【パニック値の設定と運用】

パニック値の設定項目と設定値は、各施設によって臨床医との協議によって設定されています。

検査を実施してパニック値が認められると、迅速・確実に臨床医に伝達され、臨床医は迅速に対応することになります。

パニック値として臨床医に迅速・確実報告すべき項目は限定されています。

【パニック値設定の事例】

クレアチニン  3.0以上

ナトリウム   120以下及び160以上

カリウム    2.5以下及び6.0以上

カルシウム   6.0以下及び12.0以上

AST       1000以上

ALT              1000以上

血糖値     50以下及び350以上

白血球数    1500以下及び20000以上

血小板数    30000以下及び1000000以上

※紹介したパニック値は、ほんの一例で各医療機関によって異なりますので、このパニック値がすべではありませんので、目安として参考に留める程度としておいて下さい。

2013年10月15日火曜日

臨床検査の極端値とは

【極端値の定義】

稀にしか見られない検査値で、統計学的には0.5~1.0パーセントタイル値以下、および99.0~99.5パーセントタイル値以以上とされています。

【極端値が起きる原因】

1.検体採取条件などのに起因する場合

2.分析前誤差などのに起因する場合

3.検査過誤などのに起因する場合


【極端値に対する対応】

再度の検査や、再度採血をし直し検査を行うなど、検査データの統計的処理で解決可能となります。

【極端値の解釈】

極端値の中には、患者の生命が危ぶまれるパニック値も含まれていますが、極端値を呈する患者が,必ずしも生命が危ぶまれるほど危険な状態にあるとは限りません。

また、検査項目によってもこれは言えることです。

※パニック値について、次回解説いたします※

2013年10月9日水曜日

臨床検査の基準値とは

臨床検査で参考にする基準値は,統計学的に算出した数値範囲を用いています。

臨床的検査学的に異常を示さず病気がなく健康な人の集団を健常者とし、その健常者の測定結果を集計すると左右対称の山型になります。

このうちの極端に高い数値2.5%と低い2.5%を除き,この平均値をはさんだ健常者の95%が含まれる範囲を基準値とします。

要するに検査を受けた人が病気であるのか、病気でないのかを、大まかに解釈する時に参考にする数値が基準値です。

健常者の95%が基準値の範囲内に収まりますが、疾患の徴候がない健康な人でも基準値から外れることがあり、反対に、検査値が基準範囲に収まっている人でも臨床的な症状を示す場合もあります。

その為、かつては『正常値』と呼ばれていましたが、統計的な平均値は現在では『基準値』と呼ばれています。

疫学的な統計データに基づく基準値は、正常範囲に収まる個人の多様性や個別差を十分にカバーすることが出来ませんので、正確な診断には基準値との比較だけではなく、医師による個別的な診察が必要となります。

また、定期的に健康診断を受けていると、疫学的な統計データに基づく基準値とは異なる"自分固有の基準値"が算出されるので、これを記録しておくことにより、自分自身の日頃の基準値を知ることが出来ますから、自分の体調の変化や病気の有無は"自分固有の基準値"との比較で判断する事ができます。

例えば今回検査を受けて得られ検査値と、前回の検査値に大きな変化が見られる場合などには、何らかの体調の変化や病気の徴候を疑う必要性があるということになります。

【注意事項】

基準値は検査方法、機器の種類、試薬の種類などによって、微妙にことなりますから、病院や医学書より多少に異なりますから、基準値の数値は絶対的なものではありません。

基準値内で数値が動くことは、心配ないことですから、気にする必要はありません。

2013年10月3日木曜日

アレルギー検査について-8.アレルギー血液検査の問題点-

アレルギー検査を受けて、異常な数値が出ることがあります。

これは何を意味しているのでしょうか?

1.数値は高くなっていても問題となる症状が出ていないことがあります。
 この場合は、問題にならない場合もあります。

2.逆に、数値は低くてもなんらかの症状が出ていることがあります。

これは注意が必要となります。

特に、MAST33のような即時型のアレルギー検査は要注意です。

 【事例】

例えば、牛乳を飲んだ場合で考えてみますと、

即時型検査では、数値が低く問題ないように見えても遅延型検査を受けると高い数値になっていることがあります。

これは、即時型の検査だけではアレルギーの存在を見逃すことがあるということです。

このような状態の人は多く存在します。

この原因としては日本で遅延型のアレルギー検査が始まったのはつい最近で分からなかったからにほかなりません。

従ってアレルギー検査は即日型検査だけでなく、遅延型検査も受けておく必要があるということになります。

【まとめ】

1.アレルギー検査を受けておくことによりアレルギーの原因となる物質を特定しておきそれを避ける事が可能となる。
特にピーナッツやソバ、エビ、カニなどによる即日型アレルギーの防止に役立つ。

2.いま出ている症状の原因を特定して、その治療を行う。

3.異常値が出ても、何の症状も問題もない場合がある時は、あまり気にする必要はない。

4.アレルギー検査の結果は、絶対的な検査ではなく、気に留めておくだけの場合もあることを認識して受けることです。