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2025年1月26日日曜日

ヒトメタニューモウイルスとは

ヒトメタニューモウイルス(hMPV; human metapneumovirus)は、2001年にオランダで急性呼吸器感染症患児の鼻咽腔吸引液から初めて分離発見された比較的新しいウイルスで、風邪の原因の一つとして知られていて、特に乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染によって広がります。

※抗体調査の結果からこのウイルスは50年以上前からヒトの間で流行しており、従来原因不明とされていた呼吸器感染症の病原体のひとつと考えられます(呼吸器感染症患者検体におけるHMPV陽性率は10-20%程度)※

【感染経路】

咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染。

ウイルスが付着した手や物に触れ、その手で口や鼻を触ることで感染する接触感染。

【感染期間】

症状が出る5日前から症状発症後1~2週間の間、他者にウイルスを伝播する可能性があるります。

解熱してからは感染力はかなり低下するといわれています。

【症状】

3~5日ほどの潜伏期間を経て、風邪に似た症状で咳、発熱、喘鳴などの症状が現れます。

一般的には症状は1週間ほどで治まることがほとんどですが、重症化することもありますので、乳幼児は特に注意が必要となります。

重症化した場合には、気管支炎、肺炎を発症します。

【治療】

インフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく、症状を緩和させる薬が中心に処方されるれ対処法となります。

抗生物質は効き目がないことから基本的には使用しません。

【検査法】

イムノクロマト法を利用とした『ヒトメタニューモウイルスキット  クイックチェイサーhMPV』があります。

詳しくは以下を参照してください。

『クイックチェイサーhMPV』

【感染経路・感染率】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染経路は、感染者の咳や飛沫がついたものに触れることです。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)の感染確率は、2歳までに約30%、5歳までに約75%、10歳までにほぼ100%と言われていて、感染力が強いウイルスで発症は繰り返されます。

【予防】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染対策としては、手洗いやマスクの着用など、飛沫感染および接触感染対策が重要です。

家庭内に感染者がいる場合は、食器やタオルを分けて使用しましょう。




 

2025年1月19日日曜日

インフルエンザ予防薬とは

 インフルエンザの大流行が続いていますので、今回はインフルエンザ予防薬に付いて解説させていただきます。

【インフルエンザ予防薬とは】

服用することで、発症を予防したり、発症しても症状を軽くする効果が期待される薬です。

【予防薬の働き】

インフルエンザウイルスが体内に侵入しても、予防薬を服用することで、ウイルスが増殖するのを抑え、病気にかかりにくくする効果があります。

【予防薬の種類】

主な予防薬には、タミフル、リレンザ、イナビルなどがありこれらの薬は、吸入型や飲み薬など、さまざまな形で服用できます。

これらの薬は、インフルエンザの治療薬として承認されており、予防効果も証明されています。

【予防効果】

予防薬の効果は、服用するタイミングや、個人の体質によって異なりますが、一般的には、発症を完全に防ぐものではなく、発症を遅らせたり、症状を軽くしたりする効果が期待できます。

【予防接種との違い】

予防接種は、インフルエンザウイルスの一部を体内に注入することで、体内に抗体を作らせ、感染を防ぐ方法ですが、予防薬はすでにウイルスに感染してしまった場合に、その増殖を抑えることで、発症を防ぐまたは症状を軽くする薬です。

【投与方法】

インフルエンザの予防投与は、インフルエンザ患者との接触から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、インフルエンザの感染を予防する方法です。

【利用対象者】

原則、インフルエンザ患者と同居している人や共同生活をしている人で、次の条件にあてはまる人です。

1.65歳以上

2.呼吸器または心臓に慢性的な疾患がある人

3.糖尿病などの代謝性疾患がある人

4.腎機能障害のある人

【注意点】

予防薬薬の投与により、インフルエンザの症状は出にくくなりますが、100%予防できるわけではありません。

また、インフルエンザ患者との接触から48時間(リレンザは36時間)以上経過してからの投与や10日間以上の投与では、予防効果のあるデータが得られていませんので、予防投与はすみやかに決められた期間だけ行う必要があります。

予防効果があるのは、抗インフルエンザ薬を投与している期間のみとなります。

インフルエンザ予防薬は保険が適用されませんので、病院や薬局での支払いは自費(10割負担)となり、医療機関ごとに支払額が異なる点には注意してください。

およその費用の目安

診察費 およそ4000円

薬剤費 5000~6000円

※事前に受診される医療機関にお問い合わせください※

【参考資料】

『抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン 』


2025年1月12日日曜日

季節性インフルエンザと新型インフルエンザの違いとは

 【季節性インフルエンザとは】

ウイルス粒子内の抗原性の違いからA型・B型・C型に分類されています。

A型は原因となる抗原性が小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。

症状は38℃以上の高熱、悪寒、関節・筋肉痛などが特徴です。

多くの変異株が存在し、増殖力が速く、しかも感染力が強いので流行しやすいのが特徴です。

B型は突然変異を起こしにくく、A型の様に世界的な大流行を起こすことはありませんが、症状は重く、数年おきに流行して猛威をふるいます。

C型は感染しても軽症で済むことが多く、免疫を持っている人が多いのが特徴です。

【新型インフルエンザとは】

時折インフルエンザウイルスの抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れますが、これを新型インフルエンザといいます。

多くの人が免疫を獲得していないことから、急速にまん延することによって起こる新型インフルエンザは、いつどこで発生するのか誰にも予測することはできません。

新型インフルエンザの代表的なものとしては、

1.1918から1919年にかけて世界的に流行したスペインインフルエンザ

2.1957から1958年にかけて世界的に流行したアジアインフルエンザ

3.1968から1969年にかけて世界的に流行した香港インフルエンザ

4.2009から2010年にかけて世界的に流行した新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009

これらの新型インフルエンザウイルスが世界的に流行して、多くの人々が免疫を獲得すると新型インフルエンザではなくなり季節性インフルエンザという呼び方になります。

2025年1月5日日曜日

インフルエンザA pdm09型 大流行!!

 全国でインフルエンザの感染が急拡大しています。

現在流行しているのは、"インフルエンザA pdm09型"で、全国で検出されたインフルエンザの9割を占めています。

厚生労働省が2024年12月27日発表した、全国平均の定点数は42.66です。

【参考資料】

『インフルエンザの発生状況について』

今シーズンのインフルエンザのおよそ90%が"インフルエンザA pdm09型"で、このウイルス株は2009年にパンデミックとなったインフルエンザの型で、2009の09とパンデミックのpdmが名前の由来で、当時は"新型インフルエンザH1N1型"と呼ばれていました。

呼称が変わったのは、当時は『新型』でしたが、流行が繰り返されるということで、季節性のインフルエンザの一つとして扱われるようになったからです。

"インフルエンザA pdm09型"の特徴はとにかく感染力が強いという一言につきます。

家族内で一人が感染すると、ほぼ間違いなく家族全員が感染するほ感染力が強いわけです。

主な症状としては、

発熱・せき・喉の痛み・筋肉痛・全身の倦怠感です。

またこのウイルスは『下気道感染』を引き起こすことが多いことも特徴のひとつです。

感染が肺の手前か下気道の辺りまで広がっていくと、下気道感染を引き起こし、痰の量が増えたりとか咳がひどくなったりとか、ひどい場合は酸素化が悪くなって呼吸困難感が出現します。

感染予防対策

1.帰宅度の丁寧な手洗いとうがい。

2.マスク着用。

3.部屋の換気。

2025年1月1日水曜日

年賀 2025年

 謹 賀 新 年

本年もよろしくお願いします。 




2024年12月29日日曜日

血液検査パニック値-2.血液パニック値への対応の現実-

 【パニック値が出る主な原因】


パニック値が出る原因は、様々な疾患が考えられますが、代表的なものとしては、


1.腎機能障害: 腎臓の働きが低下し、老廃物が体内に蓄積することで、クレアチニンや尿素窒素などの値が上昇することがあります。


2.肝機能障害: 肝臓の働きが低下し、ビリルビンやAST(GOT)、ALT(GPT)などの値が上昇することがあります。


3.電解質異常: ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質のバランスが崩れることで、心不全や神経症状を引き起こすことがあります。


4.感染症: 細菌やウイルス感染によって、炎症反応が強く起こり、CRPや白血球数などの値が上昇することがあります。


5.悪性腫瘍: 癌細胞が分泌する物質や、癌細胞による臓器の破壊によって、様々な検査値に異常が見られることがあります。


【パニック値に関する注意点】


パニック値が出たからといって、必ずしも重篤な状態とは限りません。


パニック値の原因は、一つとは限らず、複数の要因が複雑に絡み合っていることもあります。


パニック値の解釈は、医師の専門的な知識と経験に基づいて行われます。


【まとめ】


パニック値は、生命の危険が差し迫っている可能性を示す重要な指標ですから、パニック値が出た場合は、速やかに医師の診察を受けることが大切です。


血液検査パニック値の取り扱いをめぐっては、日本医療機能評価機構は2016年にパニック値の報告を徹底するよう注意喚起を行っています。


2017年に日本臨床検査医学会が実施したアンケートでは、医療機関で検査項目や閾値、緊急連絡体制、カルテ記録、臨床的対応および確認方法などが統一されていない実態が明らかにされています。


同学会は2021年12月に『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書』を公表、今年(2024年)6月に改定するなどの取り組みを行っています。


※閾値とは"しきい値"と読み、数値的な境目、境界線となる値を意味する※


【参考資料】

『検査データの意義:基準値・パニック値について 』


2024年12月22日日曜日

血液検査パニック値-1.血液検査パニック値とは-

血液検査は医療機関の規模の大小を問わず、全国各地の施設で幅広く実施されていて、診察だけでは気付けない身体的変化を検査値により知ることができます。

血液検査パニック値とは、「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」を指しますが、間髪を容れずに直ちに治療を開始すれば救命可能となりますが、そもそも臨床的な診察だけでは把握が困難で検査によってのみ可能と定義されています。

パニック値を放置すると患者の予後に著しい悪影響を及ぼすため、臨床検査技師から検査オーダー医師への迅速かつ確実な報告が必要となります。

【血液パニック値の特徴】

1.基準値から極端に逸脱した値であること

2.直ちに治療を開始しなければ生命に危険が及ぶ可能性があること

3.臨床的な診察だけでは診断が困難で、検査によってのみ診断が可能であること

【パニック値が出た場合の対応】

パニック値が出た場合の対応は、医療機関によって異なりますが、一般的には以下の流れになります。

1.検査技師から医師に速やかに報告

2.医師は患者の状態を速やかに把握し、必要な対応を迅速に決定する

3.必要に応じて緊急治療

※ただし、前回の検査結果を確認することも重要で数日間同じような値であれば、担当医が状況を把握している可能性が高く、緊急連絡は不要な場合もあります※

【血液パニック値に対する注意点】

1.パニック値は、あくまでも検査値の一つであり、それだけで診断が確定するものではありません。

2.パニック値が出たからといって、必ずしも重篤な状態であるとは限りません。

3.最終的な診断は、医師が患者の状態を総合的に判断して行います。

【まとめ】

血液パニック値は、生命の危機を示唆する重要な指標です。パニック値が出た場合は、速やかに医師に報告し、適切な対応をとることが重要です。

続く