ライム病(ライムボレリア症:Lyme borreliosis)は、ノネズミやシカ、野鳥などを保菌動物とし、マダニ科マダニ属 Ixodes ricinus 群のマダニに媒介されるスピロヘータの一種のボレリアの感染によって引き起こされる人獣共通感染症です。
野生動物では感染しても発症しませんが人、犬、馬、牛では発症して種々の臨床症状を引き起こします。
ライム病の由来は、アメリカコネチカット州のライム及びオールドライムで1975年に最初に確認されたことに由来しています。
ライム病は、シュルツェマダニなどのマダニに咬まれることにより感染します。
マダニの活動は暖かい時期、春先から秋くらいまでが多いので、この時期にマダニによる感染症を発症することが多い傾向がみられます。
米国では毎年30000人を超えるライム病患者が報告されており大きな社会問題になっています。
日本国内でもライム病に罹ることがあります。
※一般家庭内でよく見られるイエダニから感染することはありません※
2020年には17人の患者報告があります。
特にライム病の報告が多いのは北海道で年間10例弱の患者が報告されています。
保健所に届け出がされていない事例も含めるともっと多くのライム病患者が存在していると考えられています。
シュルツェマダニは寒い地域に分布しており、北海道は全域にいますが、本州では標高の高いところにのみ分布しています。
従って北海道に住んでいる人や旅行で登山をする場合、本州でも標高の高い地域に暮らしている人や、登山をする人もライム病に注意が必要となります。
【ライム病の症状】
感染初期(Ⅰ期)
マダニに咬まれてから数日から1ケ月以内にマダニに咬まれた箇所を中心とする限局性の特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い傾向があります。
随伴症状としては、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うこともあります。
遊走性紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑または均一性紅斑がほとんどです。
播種期(II 期)
体内循環を介して病原体が全身性に拡散することから、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。
感染後期(III期)
感染から数カ月ないし数年を経過してから播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを呈すると言われています。
幸いなことに日本においては、感染後期に移行したとみられる症例は現在のところ報告されていません。
【検査法】
1.EIA(Enzyme Immunossay)またはIFA(Immumofluorescent Assay)によって検査を実施して、陽性または偽陽性となった場合にはウエスタンブロット法で確認検査を実施する。
2.神経症状を発症した患者では、骨髄液をBSK2培地に接種し、34 ℃ で2 - 4週間培養し、病原体を分離する。
【治療法】
一般的に用いられる抗菌薬としては、ペニシリン、アモキシシリン、セフトリアキソン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリンなどがあります。
神経ライム症の場合は髄液移行の良いセフトリアキソンが第一選択薬となります。
小児例の場合にはアモキシシリンが主に使用されています。
現在のところ、わが国を含め世界的に薬剤耐性菌出現の報告はありません。。
皮膚症状のみであれば、アモキシシリンやドキシサイクリン、セフトリアキソンなど適切な抗生剤を14日間内服すれば完治がみこめます。
全身症状が強く、皮膚症状も範囲が広い場合は3週間から1ケ月治療を要することもあります。
また顔面神経麻痺を生じた場合は入院のうえ点滴治療を10~14日間位続けることもあります。
※患者個人の免疫能や合併症の有無によって治療期間が異なることがあります※
日本国内においては感染予防ワクチンは存在していません。
【予防方法】
野山でマダニに咬まれないないことがもっとも重要となります。
マダニの活動期(主に春から初夏、および秋)に野山へ出かけるときには、
むやみに藪などに分け入らないこと、マダニの衣服への付着が確認できる白っぽい服装をすること、衣服の裾は靴下の中にいれ虫よけをしマダニを体に近寄らせないことなどを心がける必要があります。
また万一咬まれた時には、口器(体内に刺し混んでいる部分)を残さず虫体を潰さないように体から抜き取って下さい。