血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2016年12月12日月曜日

ヘルペスウイルスについて-5.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その2.帯状疱疹について-ー

【帯状疱疹の感染源】

水痘が治癒した後に脊髄知覚神経節に潜伏感染したHHV-3が回帰発症して起こります。

また加齢、免疫抑制剤の使用等、細胞性免疫の低下によって潜伏しているHHV-3が再活性化し発症します。

※体内に侵入して感染したHHV-3は、感染者が免疫不全や体調不良に陥ると体内に潜むHHV-3は、再び目覚め(再活性化する)帯状疱疹を引き起こします、これを回帰発症と言います※

【帯状疱疹の症状】

ほとんどの場合、体の左側か右側のどちらか片方の神経に沿って帯状にあらわれ、体の両側にまたがることはほとんどありません。

虫に刺された様な、あるいは虫に噛まれたような痛みと赤いひとつの発疹が出来るのが最初です。

その後チクチクとした痛みが増し、痛みを感じた場所にブツブツとした赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなって帯状に広がっていきます。

この症状は、特に胸から背中、腹部などによくみられ、顔や手、足にも現れます。

この症状が現れるのは体の左右どちらか片側だけ、一度に2ヵ所以上の場所に現れることはほとんどありません。

約1週間水疱は痂皮形成し、2~3週間で色素沈着を残して治癒します。

【帯状疱疹の治療】

対症療法により2~3週間で治癒します。

薬剤としてはアシクロビル、ビダラビン(Ara-A)が有効です。。

※帯状疱疹治癒後の後遺症として,三叉神経第1枝や肋間神経に生ずる持続性で刺すように痛みが続くヘルペス後神経痛(「帯状疱疹後神経痛」)が起こることが多いです※

治りにくく1年以上も痛みが続くこともあります。

【帯状疱疹は他人に感染するのか】

帯状疱疹が他人に感染することはあまりありません。

しかし、水疱の中にはHHV-3が存在し、水痘にかかったことがない人には感染する可能性もあります。

この場合の感染は、帯状疱疹の症状ではなく、水痘と同じ症状が出ます。

帯状疱疹の水疱が治るまでは、水痘に感染したことのない赤ちゃんや子供、妊婦には接触しないようにする必要があります。

【水痘・帯状ヘルペス検査】

水痘・帯状ヘルペス抗体検査にはCF法、EIA法によるIgM抗体とIgG抗体検査があります。

初感染である水痘を疑う場合は、IgM抗体またはCF法ペア測定を行います。

再活動の帯状疱疹ではIgG抗体ペア測定を行います。

リアルタイムPCR検査もあります。

【ワクチンについて】

帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)は、日本では使用されていません。

アメリカで使用されている帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)と、水ぼうそうに使われるワクチン(Varivax)では濃度が全く異なります。

Zostavaxの濃度はVarivaxの10倍以上含まれています。

そのことから帯状疱疹ワクチン(Zostavax)を、水痘予防のために子供に接種することはありません。

水痘ワクチン(Varivax)を帯状疱疹の予防のために使用することもありません。

日本においては、帯状疱疹専用のワクチンは存在しますが、未だ広く認識されていないことから、費用は自費負担(2016年4月の時点)となり、およそ6,000~9,000円のところが多いようです。

※2016年3月から、現在まで水痘の予防の目的で使われていた乾燥弱毒生水痘ワクチン(「ビケン」)が、50歳以上の人に限って、帯状疱疹の予防にも使えるようになっていますので、帯状疱疹の予防について心配な方は、医師に相談されることです※

次回はHHV-6(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)について解説いたします。

2016年12月5日月曜日

ヘルペスウイルスについて-4.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その1.水痘について-ー

水痘・帯状疱疹ウイルスは、α-ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスで、HHV-3と呼ばれますが別称としてVZV(Varicella Zoster virus)とも呼ばれています。

ヒトに対して水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。

このウイルスは、初感染としては水痘を発症します。

水痘が治癒した後は、脊髄後根神経節に潜伏し続け何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。

顔面神経の膝神経節に潜伏していたものが再発した場合は、皮膚症状・顔面神経麻痺・難聴・めまいを引き起こします。

【水痘の感染】

患者の鼻腔粘液、水疱からでる浸出液との接触で感染します。

典型的な症状を引き起こす1~2日前から空気感染(飛沫感染)します。

潜伏期は11~21日です。

【水痘の症状】

顔から発疹が出始め、有髪頭部から体全体に出現し、やがて手足全体にも出現します。

発熱は発疹の出現する最初の3~4日のみ認めることが多いです。

発疹の出始めは、小さい紅疹で数時間で丘疹となりやがて水泡に変化していきます。

痂皮の脱落まで1~2週間かかります。

※すべての発疹が痂皮となれば、他人に感染させることはありません※

【痂皮とは】

皮膚の表面出来た小水疱、水疱あるいは膿疱が炎症を起こし破れ、壊死塊またはびらん面の分泌物が凝固して一時的に表面を覆ったものを言います。  

【水痘の終生免疫】   

HHV-3に感染して水痘となり、完治すれば終生免疫を獲得し、二度と水痘になることはありません。

しかし、回帰発症と言われるものがあります。

それが帯状疱疹です。

【水痘の合併症】

髄膜炎、脳炎、神経炎、肺炎。催奇形性あり。

※免疫抑制剤を使用中(免疫抑制状態)の時にHHV-3に感染すると、無数の水疱が出来出血することからは重症化しやすく(出血性発疹)死亡率が高くなります。

【検査】

体液性免疫の有無を見る血液検査と、細胞性免疫を調べる方法としての皮内テストがあります。

血液検査としては、水痘ウイルスの抗体を調べる検査としてELA法が一番多く用いられています。

水痘の抗体が血清中に残っていなくても、細胞の中に抗体がある場合もあることから、皮内テストも合わせて行います。

皮内テストは、水痘・帯状疱疹ウイルスの一部から作られた水痘抗原を皮内接種して反応を見るテストで、結核の抗体を調べるツベルクリン反応と同じ原理です。

※水痘の判断は視診が主となります※

現れた症状を見て行う場合がほとんどで、水痘による水疱は特徴的ですから発症後2~3日で診断はつきます。

子供の水痘の診断のために、上記のような検査を実施することはまずありません。

【治療】

ヘルペスウイルスなので、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルが有効です。

水痘、帯状疱疹とも同容量を使用します。

【予防】

水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチンを接種します。

日本では長く任意接種ででしたが2014年より定期接種となっていることから、1歳になってから間隔をあけて2度の接種を行う。

【大人の水痘予防について】

水痘の感染発症が心配なときは、抗体検査を受けるのではなく予防接種を受けることです。

仮に既に水痘に感染していて水痘に対する抗体があったとしても、予防接種を受けても健康上の問題はありません。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)の帯状疱疹について解説いたします。