血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年12月8日日曜日

マイコプラズマ肺炎1.マイコプラズマ肺炎とは-

 マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という病原体によって引き起こされる呼吸器感染症でこの病原体は自己増殖可能な最小の微生物であり、細胞壁を持たないのが特徴です。


分類は細菌に分類されています。


幼児や若い人々での肺炎の原因として、マイコプラズマ肺炎は比較的多いです。この病気は全年齢で報告されていますが、特に学童期から青年期にかけての感染例が目立ちます。

【症状】


1.発熱は、微熱から高熱まで人によって様々です。


2.全身倦怠感があり、だるさや体が重い感じがします。


3.強い頭痛:で頭が痛みます。


4.乾いた咳が特徴で、熱が下がっても長期間続くことがあります。


5.咽頭痛:があり喉が痛みます。


【診断法】


1.血液検査 肺炎マイコプラズマに対する抗体検査(IgMやPA抗体)を行います。


2.咽頭拭い液や喀痰などの検体からマイコプラズマ・ニューモニアエを分離する検査 PCR法や抗原検査などによってマイコプラズマのDNAや抗原を検出します。


3.胸部X線検査 肺炎の有無や程度を調べます。


※初期段階ではX線の写真上に明確な異常が見られないことも多く、進行するにつれて、両側肺に斑状陰影*が現れ始め重症例では、より広範囲に浸潤影が見られるようになります※


【治療】


1.マクロライド系抗生物質などが有効です。


2.対症療法としては、解熱剤、鎮咳剤などを用いて症状を緩和します。


【感染予防対策】


1.こまめな手洗いは、感染予防の基本です。


2.人が多い場所ではマスクを着用することで、感染リスクを下げることができます。

2024年12月1日日曜日

Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)について

 Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)とは、リスク行為後の24~72時間以内にドキシサイクリン(ビブラマイシン)を内服することで、梅毒やクラミジア、淋病を一定の効果で予防する性病の予防法です。

ビブラマイシン(一般名:ドキシサイクリン塩酸塩水和物)とは、グラム陽性菌・グラム陰性菌をはじめクラミジア属の細菌に対しても幅広く抗菌作用を発揮するテトラサイクリン系の抗生物質です。

【ビブラマイシンについての参考資料】

 Doxy PEPは日本国内ではまだあまり馴染みのない予防法ですが、徐々に知名度が上がってきており、その有効性を実感している人も増加しつつあります。


 Doxy PEPが推奨されない理由としては、以下があります。

理由1:薬剤耐性菌の増加

Doxy-PEP(ドキシペップ)の広範な使用により、性感染症を引き起こす細菌だけでなく、その他の細菌に対しても抗菌薬耐性が増加する懸念があり、これにより以前はこれらの薬剤で管理可能だった感染症の治療が困難になる可能性があります。

理由2:副作用と細菌叢への影響

抗生物質の濫用は副作用があり、体の正常な細菌叢(例えば、消化管、皮膚などの元々いる細菌で体の中でバランスを保っているもの)を乱すことがあります。

これは性感染症の予防を超えて他の健康問題を引き起こす可能性があります。

理由3:国による推奨の違い

Doxy-PEP(ドキシペップ)の使用に関するガイダンスは、米国では有効性が認められて推奨されていますがイギリスやオーストラリアなどでは抗菌薬耐性の懸念と長期的なデータの不足を理由にその実施を推奨していません。

理由4:日本における抗生剤市販の歴史

日本でも以前に内服の抗生剤が市販されていたことがあり、容易に手に入れやすいということがありましたが、現在は全て中止されています、その理由は薬剤耐性菌が生まれやすくなるためです。

今回は医師が処方するという違いはありますが、現在自己輸入で抗生剤(正規の安全なものかどうかは不明)を購入することも出来ることからして、このような内服方法が正しいと誤解を与える流れを医療機関や医療者が作るべきではない指摘する専門家も多数存在します。

理由5:感染拡大のリスク

薬剤耐性菌を作り出した場合、自分だけの問題ではなく、パートナーにもその薬剤耐性菌を感染させてしまうことになります。


以上の理由からDoxy-PEP(ドキシペップ)を勧めない医療機関も存在しています。

以上により、個々の医院の考え方によってDoxy-PEPが実施されないこともあります。

2024年11月24日日曜日

2024年梅毒の新規感染報告件数増加ご注意!!

2024年11月3日時点の日本の梅毒患者数は、12293人となり現在の方式で統計を取り始めて以来、過去最多を記録した2023年同期の累計数12679人に比べて、マイナス389人となりましたが、依然として大流行が続いています。

このままの状況下では患者や数は2023年を超えると危惧されています。

報告患者数は表に出た患者数ですので、水面下ではこれの数倍の潜在患者が存在しているとされています。

不安な行為をしてしまったときには必ず、適切な時期に梅毒検査を受けることが必要です。

梅毒トレポネーマは、オーラルセックスだけでも感染しますし、コンドームを使用しても完全には予防できません。

ただし梅毒は抗生物質で完治します。

 

くれぐれも梅毒にはご注意!!



2024年11月10日日曜日

前立腺癌について-5.新しい前立腺癌検査『ミュータスワコーS2,3PSAi50』-

『ミュータスワコーS2,3PSAi50』は、迅速測定が可能な全自動蛍光免疫測定装置「ミュータスワコー i50」の専用試薬で、富士フイルム和光純薬と国立大学法人弘前大学が共同で開発したものです。

PSA検査で前立腺癌が疑われる患者に対する二次スクリーニング検査に本製品を活用することで、F/T%PSAを用いた従来の検査法と比較して、前立腺癌と良性疾患の識別精度が向上します。

詳細は以下を参照してください。

【参考資料】

『ミュータスワコーS2,3PSAi50』

「S2,3PSA%検査(前立腺特異抗原(PSA)レクチン結合分画比)」は、2024年2月1日付けで保険適用され、国産で初めて保険適用された前立腺がん腫瘍マーカー検査として、臨床現場で使用可能となりました。

前立腺癌に罹患するとPSAに結合している糖鎖の構造が変化し、健常者や良性疾患では糖鎖構造としてα2,6 結合型シアル酸を持つ PSA(S2,6PSA)が多く、前立腺癌では糖鎖構造が変異してα2,3 結合型シアル酸を持つPSA(S2,3PSA)が増加します。 

S2,3PSA%は次の式のとおり、S2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合です。

PSA 4~10ng/mL のグレーゾーンにおいて、S2,3PSA%はF/T(%)PSAより前立腺癌と良性前立腺疾患の鑑別に有用と報告されています。 

トータルPSA 4~10ng/mLのグレーゾーンの患者を対象とした2次スクリーニングにおいても、本法は前立腺肥大症と前立腺癌の識別に有用であることが分かりました。

S2,3PSA%検査の導入により、前立腺癌診断の特異度が向上し、不要な針生検の低減が期待されます。

前立腺癌の患者では、糖鎖構造が変異することで、PSA(S2,3PSA)の割合が多くなります。

そのため、S2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合(S2,3PSA%)をみることで、 前立腺癌と前立腺肥大症との識別が有用であると示されています。

前立腺癌が強く疑われる人で,前立腺癌特異抗体(PSA)が4.0ng/mL以上かつ10.0ng/mL以下である場合に確定診断目的で実施します。

基準値  38.0%未満

一般的に、PSA 検査値が4ng/mL 以上となると精密検査の受診対象となりますが、特にPSA検査値4~10 ng/mL の「グレーゾーン」と呼ばれる領域では 70%程度が実際はがんではなかったという疫学データが報告されています。

この検査を利用することにより、より正確に前立腺癌を検出できることと、前立腺癌確認のための苦痛の伴う不必要な針生検を回避でき患者に余計な負担をかけることがなくなります。。


2024年11月3日日曜日

前立腺癌について-4.S2,6PSAとS2,3PSAの違い-

 【S2,6PSAについて】


S2,6PSAは、前立腺特異抗原(PSA)というタンパク質の糖鎖構造の種類の一つでPSAは、前立腺に存在するタンパク質で、血液中にもわずかに存在し前立腺癌になると、このPSAの値が上昇することが知られています。


【S2,6PSAとS2,3PSAの違い】


S2,6PSA:主に健康な前立腺や良性の前立腺肥大症で多く見られるPSAの糖鎖構造です。


S2,3PSA:主に前立腺癌で多く見られるPSAの糖鎖構造です。


要するにS2,6PSAは「良性のPSA」、S2,3PSAは「悪性のPSA」と捉えることができます。


【S2,6PSA検査を受けるの意義】


1.前立腺癌の診断補助


S2,6PSAとS2,3PSAの割合を比較することで、前立腺癌の可能性をより正確に評価することができます。


2.不必要な針生検の減少


S2,6PSAの割合が高い場合、前立腺癌の可能性が低いと判断でき、不必要な針生検を避けることができる場合があります。


S2,6PSA検査を受ける場合


1.PSA検査で異常が見られた場合


PSAの値が基準値を超えている場合や、年齢や症状から前立腺癌が疑われる場合に、S2,6PSA検査が勧められることがあります。


2.前立腺癌のリスクが高い場合


家族に前立腺癌の患者がいるなど、前立腺癌のリスクが高いと判断される場合にも、S2,6PSA検査を受けることがあります。


【S2,6PSA検査を受ける際の注意点】


1.絶対的な診断方法ではない


S2,6PSA検査は、前立腺癌の診断補助であり、最終的な診断は、病理組織検査など他の検査結果を総合的に判断して行われます。


2.保険適用について


S2,6PSA検査は、保険適用となる場合と、自費となる場合があります。検査を受ける前に、医療機関にご確認ください。


【まとめ】


S2,6PSA検査は、S2,3PSA検査と合わせて、前立腺癌の診断精度を向上させるために用いられる検査です。


PSA検査の結果が気になる場合は、医師にご相談ください。


2024年10月27日日曜日

前立腺癌について-3.新しい前立腺癌の診断検査 S2,3PSAとは?-

 S2,3PSAは、前立腺癌の診断に役立つ新しい検査です。

【S2,3PSAとは?】

PSA(前立腺特異抗原)とは、前立腺に存在するタンパク質で、血液中にもわずかに存在し前立腺癌になるとPSAの値が上昇することがあります。

一方S2,3PSAとは、PSAの糖鎖構造の種類の一つで、前立腺癌ではこの種類のPSAが増加する傾向があります。

S2,3PSA%とは、血液中のPSAのうち、S2,3PSAが占める割合でこの割合が高いほど、前立腺癌の可能性が高くなります。

【S2,3PSA検査の意義】

前立腺癌の早期発見に役立ちます、PSA検査だけでは前立腺癌と良性の前立腺肥大症を区別するのが難しい場合がありますが、S2,3PSA検査を併用することで、より正確に診断することができます。

患者に負担を与える不必要な針生検が減少します。

PSA検査の値が高くてもS2,3PSA検査で前立腺癌の可能性が低いと判断された場合は、針生検をせずに済む可能性があります。

S2,3PSA検査の結果は、治療方針の決定にも役立ちます。

【S2,3PSA検査を受ける場合】

1.PSA検査で異常が見られた場合

PSAの値が基準値を超えている場合や、年齢や症状から前立腺癌が疑われる場合に、S2,3PSA検査が勧められることがあります。

2.前立腺癌のリスクが高い場合

家族に前立腺癌の患者がいるなど、前立腺癌のリスクが高いと判断される場合にも、S2,3PSA検査を受けることを勧められることもあります。

【S2,3PSA検査の注意点】S2,3PSA検査の注意点

1.絶対的な診断方法ではない

S2,3PSA検査は、前立腺癌の診断補助であり、最終的な診断は、病理組織検査など他の検査結果を総合的に判断して行われます。

2.保険適用について

S2,3PSA検査は、保険適用となる場合と、自費となる場合がありますので、検査を受ける前に医療機関にご確認ください。

S2,6PSAは、前立腺がんの診断において重要なバイオマーカーとされ、健常者や良性疾患で多く見られます。

【どのような人が検査を受けるのか】

前立腺癌が強く疑われる人で,前立腺癌特異抗体(PSA)が4.0ng/mL以上かつ10.0ng/mL以下である場合に確定診断目的で行う。

【判定】

基準値  38.0%未満

※一般的なデータとして、PSA 検査値が4ng/mL 以上となると精密検査の受診対象となりますが、特にPSA検査値4~10 ng/mL の「グレーゾーン」と呼ばれる領域では 70%程度が実際はがんではなかったという疫学データが報告されています※

2024年10月20日日曜日

前立腺癌について-2.PSA(前立腺特異抗原:prostate-specific antigen)検査の問題点とは-

 PSA検査(前立腺特異抗原検査)には、次のような問題点があります。

1.過剰診断や過剰治療のリスクがある

2.前立腺がんの確定診断には、前立腺生検などの精密検査が必要で、身体に負担がかかる

3.前立腺がんがないのに陽性を示す偽陽性の可能性がある

4.検診では発見できないがんが存在する

【PSA検査の基準値】

・4ng/mL以下が正常範囲

・4.1~10ng/mLがグレーゾーン

・4.1~10ng/mL以上だと前立腺がんの確率が高くなります。

【PSA値が高くなる原因】

前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺の炎症などが考えられます。

また、前立腺以外の病気によっても高くなる。

【PSA検査を受ける意義】

・PSA検査を受けることで、前立腺がんによる死亡率が低下することを示す研究結果もあれば、死亡率減少効果に関する科学的証拠がないとする研究結果もあります。

・PSA検査を受けることで、臨床的に重要ではないがんが発見され、過剰な治療を受けることによる不利益が存在することも無視できません。

【PSA検査を検診で受けることを何故推奨されないのですか?】

最近、厚労省の研究班がPSA検診は推奨しないと公表していますが、これは「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められないということにほかなりません。

【重要なこと】

1.PSA検査は、前立腺がんの可能性を調べる検査であって、前立腺がんの確定診断を下す検査ではありません。

2.PSA検査は、前立腺がん以外の病気でも高い値を示すことがあるため、高値になったとしても必ずしも前立腺がんとは限りません。

3.前立腺肥大症、尿閉、前立腺炎などの前立腺以外の病気によっても高くなることから、PSA検査があてにならないと考えられています。

4.前立腺への刺激を与えるような行為、たとえば射精や長期間の車の運転、前立腺マッサージなどでも高くなります。

※PSA検査の値が高くても正確な診断をするには、前立腺の組織を取って調べるか、直腸内検診、あるいはCT検査が必要となります※


続く