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2024年10月20日日曜日

前立腺癌について-2.PSA(前立腺特異抗原:prostate-specific antigen)検査の問題点とは-

 PSA検査(前立腺特異抗原検査)には、次のような問題点があります。

1.過剰診断や過剰治療のリスクがある

2.前立腺がんの確定診断には、前立腺生検などの精密検査が必要で、身体に負担がかかる

3.前立腺がんがないのに陽性を示す偽陽性の可能性がある

4.検診では発見できないがんが存在する

【PSA検査の基準値】

・4ng/mL以下が正常範囲

・4.1~10ng/mLがグレーゾーン

・4.1~10ng/mL以上だと前立腺がんの確率が高くなります。

【PSA値が高くなる原因】

前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺の炎症などが考えられます。

また、前立腺以外の病気によっても高くなる。

【PSA検査を受ける意義】

・PSA検査を受けることで、前立腺がんによる死亡率が低下することを示す研究結果もあれば、死亡率減少効果に関する科学的証拠がないとする研究結果もあります。

・PSA検査を受けることで、臨床的に重要ではないがんが発見され、過剰な治療を受けることによる不利益が存在することも無視できません。

【PSA検査を検診で受けることを何故推奨されないのですか?】

最近、厚労省の研究班がPSA検診は推奨しないと公表していますが、これは「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められないということにほかなりません。

【重要なこと】

1.PSA検査は、前立腺がんの可能性を調べる検査であって、前立腺がんの確定診断を下す検査ではありません。

2.PSA検査は、前立腺がん以外の病気でも高い値を示すことがあるため、高値になったとしても必ずしも前立腺がんとは限りません。

3.前立腺肥大症、尿閉、前立腺炎などの前立腺以外の病気によっても高くなることから、PSA検査があてにならないと考えられています。

4.前立腺への刺激を与えるような行為、たとえば射精や長期間の車の運転、前立腺マッサージなどでも高くなります。

※PSA検査の値が高くても正確な診断をするには、前立腺の組織を取って調べるか、直腸内検診、あるいはCT検査が必要となります※


続く

2024年10月14日月曜日

前立腺癌について-1.前立腺癌とは-

【前立腺とは】 


前立腺は男性のみにある臓器で、精液の一部となる前立腺液をつくっています。


前立腺液には、PSA(前立腺特異抗原:prostate-specific antigen)というタンパク質が含まれてほとんどのPSAは前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。


【前立腺癌とは】


前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することにより起こる病気で、悪性腫瘍の1つで多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見して適切な治療を行えば、高い確率で治癒が望めます。


早期発見し適切な治療を受ければ、ステージⅠ・Ⅱで100%、ステージⅢで99.2%と良好な予後が期待されますが、気づかずに治療しないでステージⅣとなるとリンパ節や骨に転移し5年生存率は53.4%と著しく悪くなることから、早期発見が必要となります。


【前立腺癌患者数】


前立腺癌患者数は、2019年に日本全国で94,748人で日本人男性で最も罹患数が多い癌とされています。


2023年の男性の前立腺がんの罹患数は約9万8,600人です。


前立腺癌にかかる人数は、1年間で男性10万人中154人程度で、高齢になるほど高くなります。


前立腺癌はもともと欧米に多く、日本は欧米の1/10~1/20の罹患率とされていましたが近年では日本でも前立腺癌の罹患数が増加しています。


【日本人に前立腺癌が多くなった原因】


近年の食生活の欧米化に伴い、動物性脂肪を多く摂ることに比例して前立腺癌発症に何らかの影響を及ぼしていると考えられています。


また、PSA検査によって早い時期に癌を見つけることが可能となったことも前立腺癌患者の増加の一因になっていると考えられています。

続く

2024年10月6日日曜日

インフルエンザ4価ワクチンとは?

インフルエンザワクチンの4価ワクチンとは、その名の通り4種類のインフルエンザウイルスに対応したワクチンです。

※インフルエンザ4価ワクチンは、インフルエンザウイルスA型株(H1N1株とH3N2株)とB型株(山形系統株とビクトリア系統株)の4種類を培養して製造されているインフルエンザワクチン※

1.A型株

・A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09

・A/ダーウィン/9/2021(SAN-010)(H3N2)


2.B型株

・B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(B/ビクトリア系統)

・B/プーケット/3073/2013(B/山形系統)


【なぜ4種類になったのか】

インフルエンザウイルスは、毎年少しずつ形を変えていきます(変異)。

このため、ワクチンに含まれるウイルス株も、流行が予想される種類に合わせて毎年更新されます。

4価ワクチンでは、A型インフルエンザウイルスが2種類(H1N1とH3N2)、B型インフルエンザウイルスが2種類(山形系統とビクトリア系統)の計4種類に対応することで、より幅広い種類のインフルエンザウイルスから身を守ることができるようになるわけです。。


【3価ワクチンとの違い】

3価ワクチンは、B型インフルエンザウイルスが1種類しか含まれていなかったために、流行するB型インフルエンザウイルスの種類によっては、効果が低くなる可能性がありました。

4価ワクチンは、B型インフルエンザウイルスが2種類含まれているため、より多くの種類のB型インフルエンザウイルスに対応でき、より効果が期待できるようになっています。


【4価ワクチンのメリット】

より幅広いインフルエンザに対応できる 4種類のインフルエンザウイルスに対応することで、より多くの種類のインフルエンザから身を守ることができます。

インフルエンザにかかってしまうと、高熱や咳、筋肉痛などの症状が出ることがありますが、特に高齢者や基礎疾患のある方は、重症化のリスクが高まります。

しかし4価ワクチンを接種することで、重症化を防ぐ効果が期待できます。

【4価ワクチンを受ける際の注意点】

副反応 他のワクチンと同様に、接種後に発熱や痛み、倦怠感などの副反応が出る場合があります。

度のワクチンもそうですが、インフルエンザワクチンは100%効果があるわけではありません。

ワクチンを接種しても、インフルエンザにかかってしまう可能性はゼロではありません。

【まとめ】

インフルエンザ4価ワクチンは、より多くの種類のインフルエンザウイルスに対応できるため、より効果的にインフルエンザ予防ができるワクチンです。

インフルエンザの流行前に接種することが推奨されています。

※インフルエンザワクチンにもメリットとデメリットがありますので、これらをよく理解した上に接種を受ける受けないは、ご自身で判断してください※

2024年9月30日月曜日

新しいインフルエンザワクチン

 毎年インフルエンザの予防ワクチンは、事前に流行するインフルエンザ株を予想して製造されます。

昨シーズンに流行・分離されたウイルス株から、そのシーズンに流行が予想されるウイルスに合わせて毎年インフルエンザワクチン株が決定・製造されています。

先日、今年度のインフルエンザワクチン株が決定し、昨年の3価から、新しく4価ワクチンに変更になりました。

これまでの3価インフルエンザワクチン製造株は、

A/H1N1pdm09・A/H3N2とB型1種の3種類(3価)が含まれ、このうちB型株については、山形系統あるいはビクトリア系統のどちらか一方のワクチン株を選定していました。

近年のインフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いていることからしてWHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨しています。

米国においては2013/14シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきています。

このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB/ビクトリア系統の4価ワクチンとしました。


※さらに詳しく知りたい方は、厚生労働省「平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由」をご確認ください※

平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由

2024年9月22日日曜日

2024年7月までの日本国内における梅毒患者の分析

 2024年7月までの梅毒患者数は6770人で、依然として大流行が続いています。

患者状況としては、男性は20代から全年齢層に患者が見られますが、女性は20代にピークが認められています。

【病態の分析(5438人 男3433人・女2005人)】

Ⅰ.男性 

1.同性間感染者 573人

早期顕症Ⅰ期梅毒 165人

早期顕症Ⅱ期梅毒 207人

無症候梅毒 192人

晩期顕症梅毒 9人

2.異性間感染者 2860人

早期顕症Ⅰ期梅毒 1829人

早期顕症Ⅱ期梅毒 651人

無症候梅毒 347人

晩期顕症梅毒 33人

Ⅱ.女性

1.異性間感染者 2005人

早期顕症Ⅰ期梅毒 489人

早期顕症Ⅱ期梅毒 822人

無症候梅毒 687人

晩期顕症梅毒 7人

【無症候梅毒の分析】

1.男性 539/3433 15.7%

2.女性 687/2005 34.3%

3.男女 1226/5438 22.5%

※女性が男性の2倍以上無症候梅毒が見られますが、これは女性が男性に比べて症状がわかりにくいことに由来します※

※いずれにして梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ないことが上記のように多数存在することから、感染するような行為をしてしまった場合には、必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります※


2024年9月15日日曜日

レプリコンワクチンに対する懸念

 2024年10月を目途に接種開始予定といわれ、今、世間を騒がせている新型コロナウイルスの次世代型mRNAワクチンの「レプリコンワクチン」について解説します。


従来の新型コロナワクチンは、コロナウイルスのタンパク質を作るもとになる遺伝情報の一部(mRNA)を体内に入れることでウイルスの免疫を作るというものでしたが、今回開発されたレプリコンワクチンは、そのmRNAが体内で自己増殖するタイプに改変したものです。


新型コロナウイルスを構成するスパイクタンパク質が自己増殖するから少量の投与で効果が長続きするというメリットがあるとされていますが、このワクチンに安全性および倫理性に関する懸念が持たれています。


その理由としてこのワクチンの開発国であるアメリカや大規模治験を行なったベトナムでは認可が下りていないものを、今回日本が世界に先駆けて認可したことにより、色々の疑念が持たれています。


このワクチンに関しては以下の懸念があるとされています。


1.このワクチン接種者の飛沫から非接種者に感染する恐れがあり、これに対する臨床実験もなされていない。 


2.自己増殖に歯止めが効かなくなり、永久にスパイクタンパクのトゲトゲが生産され続ける恐れがある。 


3.そもそもmRNAが人体の遺伝情報に影響を及ぼさないという確証がない。 


以上のことからこの新しいワクチンの使用に反対する専門家が多く存在します。


現に日本看護倫理学会が異例とも言える緊急声明”を出しています。


※日本看護倫理学会は、いわば医療関係者の身内でもある団体が、このワクチンの接種に対して安全性および倫理性に関する懸念を表明したことからしてもこのワクチンに対する懸念が増幅されます。


『一般社団法人 日本看護倫理学会 レプリコンワクチンに対する緊急声明』


※レプリコンワクチンに関しては以下を参照してください※


『医事速報2024年09月15日号 レプリコンワクチンについての考察』







2024年9月9日月曜日

2つの肝臓病の新名称

 2023年に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)と非アルコール性脂肪肝疾患(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)という2つの肝臓病の名称が変更されることが発表されました。


名称が改変された理由としては、従来の名称である、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に以下の問題点があったからです。


1.患者への偏見


「非アルコール性」や「太っている」といった言葉が、患者に対して否定的な印象を与え、精神的な負担になる可能性がありました。


2.病態の複雑さ


これらの疾患は、単にアルコールや肥満が原因というわけではなく、代謝異常など様々な要因が複雑に絡み合っていることが明らかになってきました。


以上の問題点を踏まえ、新しい名称として下記のように命名されました。



1.非アルコール性脂肪肝(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)


 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、アルコールをほとんど摂取しないにもかかわらず、肝臓に中性脂肪が蓄積される状態を指し、生活習慣が原因とされていることから、新名称は、『代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)』


2.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver diseaseナッフルディー)


アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝の総称で、英語の頭文字をとって「ナッフルディー」または「ナッフルド」と読みます。肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を基盤に発症し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール性肝障害の人のように肝疾患が進行することから、新名称は『代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic dysfunction associated steatotic liver diseaseマッスルディー)』

※脂肪肝というと、飲酒によるアルコール性脂肪肝を考えてしまいがちで、確かに飲酒による脂肪肝は多いのは事実ですが、特に飲酒歴もないのに肝臓に脂肪が貯まりすぎてしまう「非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)」や「代謝異常に関連する脂肪性肝疾患(MASLD)」が近年増加しています※