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2023年10月1日日曜日

医学豆知識-16.季節性インフルエンザにご注意-

 毎年12月前後に流行が始まりますが、2023年は8月中旬頃より流行が始まっています。


季節性インフルエンザの全国5000の定点医療機関の2023年9月末時点での低点数は、7.03となり流行しています。


※定点数 1 流行入り・10 注意報・30 警報※


これは2022年末からの流行が収まらずに2023年はすでに流行期に突入したことになります。


※特に九州を中心とした西日本に流行は顕著※


9月末時点で全国1500以上の学校がすでに休校・学年および学級閉鎖となっています。


毎年10月頃から行われる予防接種のワクチンも間に合わない事態となってきています。


※ワクチン接種をしてもすぐに感染予防抗体はできず、接種後2週間前後経過しないと効果が期待できないのです。


このままの状態が続くと2023年から2024年にかけて大流行することが懸念されています。


今後我々が取れるた対策としては、新型コロナ感染対策と同じことです。


1.予防ワクチン接種が開始されれば、可能な限り早く受ける。


2.マスク着用・手洗い・うがいを行う。


3.可能な限り人混みは避ける。


4.室内にいるときは十分な換気を行う

2023年9月24日日曜日

医学豆知識-15.咽頭淋菌検査にPCR検査は不向き-

咽頭淋菌検査に淋菌のPCR検査はニセの陽性反応を引き起こします!!


 淋菌に特徴的なDNAをコピーしたつもりでも、実は仲間の非病原性ナイセリア属のDNAだったということがよく起こります。


ナイセリア属は主に口や喉に寄生していることから、喉の淋菌検査の場合はPCR法を使うことができません。


喉ので淋菌をPCR法で調べると70%以上で、ニセの陽性反応(偽陽性反応)が出てしまいます。


このニセの陽性反応を引き起こすのは、無毒のナイセリア属だったことが判明し約2年前にPCR法の検査基準を見直さなければならなくなりました。


最近ではPCRの欠点をおぎなうように、ナイセリア属の偽陽性が出にくいSDA法が開発されましたので、咽頭の淋菌検査にはSDA法が使用されています。


SDA法は淋菌とクラミジアも同時に測定できるので便利ですが,男性では健康保険の適応が通っていませんし、咽頭の性感染症はまだ一般的に認識が広まっていませんから,健康保険で査定されてしまうことがありますので原則的に自費扱いになります。


SDA法は、淋菌とクラミジアを同時に測定できる検査方法ですが、女性には保険適応ですが、男性には保険が使えません※

淋菌を確実に見つけ出すには嫌気性培養法が昔から採用されていますが、この検査は検査物適切な処理をしないと淋菌が死んでしまうために、通常の医療機関では実施が難しい検査方法です。


淋菌を見つける最も手っ取り早い検査は、顕微鏡てぜ検査物を見ることにより淋菌は意外と簡単に見つけることができます。


患者の分泌物をスライドガラスに塗りつけて、メチレンブルーという染色液で染色をして顕微鏡で観察するのです。


咽頭淋病は、咽頭クラミジアと同じで症状があまりなく、のどの痛みや腫れといった風邪に似た症状が出ることもあります。 


潜伏期間は2~7日で、殆どの場合風邪や単なる咽頭炎と勘違いしてそのままにしてしまったり、風邪薬を飲んでいたりと咽頭淋菌感染に気づかず放置してしまうことになります。


気づかずに放置すると悪化し、淋菌性の咽頭炎・扁桃腺炎といった病気を引き起こします。


※最近では、TMA法によるPCR検査で検査を行うことによりニセの陽性反応は起きなくなってきています※



2023年9月17日日曜日

医学豆知識-14.眼梅毒にご注意-

2023年9月3日までの梅毒患者数が10113人となり、2022年同時期の8155人を上回りました。

10000人を超えたのは2022年より2ケ月速いペースとなっています。

このままのペースで増え続けると年間累計は1万6300件超となると危惧されています。

梅毒トレポネーマが性器に感染して症状を引き起こすことを多くの人数知っていてますが目に障害(梅毒性眼疾患)を引き起こすことを知っている人は少ないと思われます。

そこで今回は梅毒トレポネーマが引き起こす眼の症状について解説いたします。

梅毒トレポネーマが目に感染して引き起こされる梅毒性眼疾患は、梅毒患者の2.5~5%と報告されていますが、臨床症状が多彩で特徴的な所見に乏しいため、実際にはもっと多いと懸念されています。

巷で"眼梅毒"と言われるぶどう膜炎は、視神経炎、硝子体炎といった後眼部病変が目立つ症状で、両目に現れることが多く、充血、視力低下や視野欠損、かすみ目、飛蚊症、羞明が起きることが知られています。

成人では梅毒トレポネーマの感染から1カ月前後の早期梅毒第1期には眼瞼や結膜にも感染の仕方によっては潰瘍を生じる場合がありますが、梅毒による目の潰瘍は見逃されるケースも少なくないとされています。

梅毒トレポネーマの感染から1~3カ月ごろの早期梅毒第2期には梅毒性ぶどう膜炎が多くなります。

更に後部ぶどう膜炎では、眼底に出血を伴い、網膜血管炎を生じる場合もみられる視力を出すのに重要な視神経乳頭部に散在性の網脈絡膜炎を発症し、その後、網膜色素変性症様変化を生じることもあり硝子体混濁や強膜炎などもこの時期にみられる病態の一つでもあります。

第3期になると、眼瞼ゴム腫や二次性網膜色素変性症などがみられるが、治療は極めて困難となります。

梅毒トレポネーマの感染は眼科の診察だけではまず鑑別不可能です。

梅毒性眼疾患の重大性から、早期発見・早期治療は不可欠でが、その多様な病態を考えれば、眼科医の診察だけで梅毒性眼疾患のリスクを知ることは難しく、皮膚科などの協力も不可欠となります。

梅毒と診断された人が眼科を受診するの当然のことですが、梅毒の疑いがある人は眼科医にその可能性を告知することも"眼梅毒"を見逃さないためにも非常に大切です。

2023年9月10日日曜日

医学豆知識-13.新型コロナウイルス"エリス"-

XBB株についで非常に短いスパンで新しい変異株である「EG.5株」が台頭してきています。


EG.5は2023年8月8日時点では50カ国以上で確認されています。


EG.5株・EG.5.1株とはオミクロン株の派生株「XBB株」からさらに枝分かれした株の1つで、EG.5株は2023年2月17日に初めてインドネシアで報告され、2023年7月19日にVariant under monitoring (VUM)に指定され、2023年8月9日に瞬く間に注目すべき変異株(VOI)に指定されました。


BJ.1株とBM1.1.1株が組み合わさったのが「XBB株」。その後非常にバリエーションにとんださまざまな「XBB株」が生み出されます。その中の「XBB.1.9.1株」から派生した株が「EG.5株」「EG.5.1株」です。


この変異株は、ギリシア神話の不和と争いの女神にちなんで「エリス」と呼称されています。


EG.5株は他のウイルスに比べて後述するように、これまでのウイルス以上に成長優位性が高いのが特徴の1つ。8月7日時点で中国(30.7%)をはじめ、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリアを中心に広がっており、WHOでも8月7日時点で「世界的に患者発生率が上昇し、優勢になる可能性がある」と発表しています。


EG.5株・EG.5.1株の症状としては、


・39℃以上の発熱と悪寒、倦怠感


・頭痛と関節痛


・喉の痛み


・咳、鼻詰まり、鼻水、呼吸困難


・下痢などの消化器症状


・味覚嗅覚の喪失


EG.5株・EG.5.1株は重症化しやすいのか?


少なくとも現時点では「重症化しやすい傾向はない」ように見えます。


世界保健機関の報告書でも、EG.5 は有病率の増加、成長優位性、免疫逃避性を示しているが、重症度の変化は報告されていないと報告されています。


【参考資料】

CDC「Monitoring Variant Proportions」)


2023年9月3日日曜日

医学豆知識-12.世界の新型コロナウイルス変異株BA.2.86株-

新型コロナウイルスの新しい変異株について、現時点(2023年8月29日)で判明していることを紹介します。


BA.2.86株は、オミクロン株の亜種のひとつで、2023年7月に初めて確認され現在、アメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークなど、世界各国で感染が確認されています。


BA.2.86株は、BA.2株からさらに進化した変異株で、以下の特徴があります。


スパイクタンパク質に30以上の変異があり、ワクチンや過去の感染による免疫を回避する可能性が高まっています。


更に感染力が高い可能性があります。


米国疾病対策センター(CDC)は、BA.2.86株について、以下の警戒点を発表しています。


2023年8月29日現在GISAIDには13株が登録されており検出地域は、アフリカ2株、デンマーク4株、イスラエル1株、英国1株、米国3株となっています。


※GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)は、2008年に設立された世界的な科学イニシアチブで、インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミックの原因となる新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)のゲノムデータへのオープンアクセスを提供している※


しかし、遠く離れた地域から短期間に検出されていることや変異部位の多さによる免疫回避能力の点において今後の動向に注意が必要です。


日本からの登録はありません。


検出株数が少ない事と、発見されてから間もない事から感染力の強さや重症度等については今後の報告が待たれるところです。


米国疾病対策センターの(CDC)は新型コロナウイルスの新たな変異株「BA.2.86」について免疫回避の確率が高い恐れがあると指摘しています。  


新たに発見された「BA.2.86」はアメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークの5か国で感染が確認されています。 


また、米国疾病対策センターはアメリカで新型コロナの入院者数が前の週から20%以上増えて12613人に達したと報告しました。


「BA.2.86」が発見される前から増加傾向にあるものの、注意深く監視するとして警戒を強めています。


2023年8月27日日曜日

医学豆知識-11.2023年8月時点での梅毒患者の現状-

2021年1年間の梅毒患者数 7873人。


2022年1年間の梅毒患者数 12966人で2021年の1.65倍。


2023年8月13日まで 9213人で2021年1年間の患者数を超え、このまま流行すが続くと2022年の患者数を遥かに超えてしまいます。


感染者の男女の比率は、およそ7対3、年代別では20~50代の男性、20代の女性の感染者数が多く、30代以降は男性が多いものの、10代20代では女性が上回っています。


このように女性の感染者が多いことから先天性梅毒が危惧されています。


【感染対策の重要性】


予防にはコンドームの使用をと呼びかけられていますが、梅毒トレポネーマはHIVのようにコンドームによる予防効果は高くないので過信は禁物です。


梅毒トレポネーマは、性交渉やオーラルセックスで簡単に感染します。


感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することで感染しますから、いくらコンドームを正しく気使用しても、コンドームに覆われていない箇所に傷やタダレがあれば感染してしまいます。


予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防が出来ないことを念頭に置いておいて下さい。


梅毒は抗生物質で完治しますから、不安な行為をしてしまったときには適切な時期に梅毒検査を受けて早く治療することが大切です。


早期に発見し早期に治療を開始すればするほど早く完治します。



2023年8月20日日曜日

医学豆知識-10.世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年8月15日)-

 新たな変異株が報告されていますのでその概要を簡単に解説しとておきます。


その変異株とは「EG.5」です。


世界保健機関は、「EG.5」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、各国にモニタリングを呼びかけています。


「EG.5」は「エリス」の通称で呼ばれています。


EG.5は、オミクロン株から派生した変異株のひとつで、世界保健機関によると2023年2月に発見され、徐々に増加しています。


エリスというあだ名はギリシャ神話の女神にちなんだもので、ソーシャルメディア上で名付けられたものです。


世界保健機関は、現在手に入れられる証拠からはエリスが他のVOIと比べて重症化するという示唆はなく、リスクも同程度だと正式に述べています。


世界保健機関によると、これまでに中国、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、フランス、ポルトガル、スペインなど51カ国でエリスの感染が報告されています。


専門家らは、今のところこの変異株で新しい症状が出たという証拠はないとしています。


※ギリシャ神話に登場するエリスとは、ギリシア神話の不和と争いの女神です※


現在新型コロナウイルの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。

               ↓ 

           https://gisaid.org/