血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年6月3日日曜日

性行為感染症検査-8.鼠径リンパ肉芽腫-


性行為感染症のひとつで、クラミジア・トラコマチスのL型によって引き起こされます。

性器や咽頭に感染するクラミジア感染症とは全く別の感染症です。

淋病、梅毒、軟性下疳以外のもうひとつの性病という意味で「第四性病」と呼ばれることもあります。

現在、鼠径リンパ肉芽腫は、日本ではほとんど見られず、主に発展途上国に多い病気ですが、海外での無防備な性行為で感染して帰ってくる人がいます。

鼠径リンパ肉芽腫の化膿疹のある部分によってはコンドームでの感染予防は出来ません。

鼠径リンパ肉芽腫は、感染してから1~4週間後に、男女ともに性器(男性は主に亀頭・包皮・前部尿道など、女性は主に外陰部・膣・子宮頚管など)に痛みを伴わない発疹が出来、発疹はやがて水泡になり、水泡が破れて潰瘍になります。

その後、鼠径リンパ腺(太股付け根のリンパ腺)が硬く腫れ上がり、次第に化膿して最終的には破裂して、そこから膿が流れ出てきます。

これを治療をせず1年以上経つと、直腸や肛門部のリンパ腺まで症状が広がり、男女ともに性器に象皮病のような症状が現れます。

【検査法】

感染するような行為をしなかったかどうかの問診後、専用の細い綿棒状の物で化膿している部分の分泌物を採取して、クラミジア抗原の有無を調べ検査が一番信頼出来る結果が得られます。

上記に記載したような症状が現れた時には、直ぐに皮膚科を受診することです。

抗生物質の服用で3~4週間で治癒します。

2012年5月29日火曜日

性行為感染症検査-7.性器ヘルペス検査


性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発症する性行為感染症のひとつです。

従来は口唇周囲は1型単純ヘルペス、性器とその周囲は2型単純ヘルペスとされていましたが近年、オーラルセックスによって性器ヘルペスでも1型感染の割合が増加してきています。

昔のように、1型は口唇ヘルペス、2型は性器ヘルペスと分類することは出来なくなってきています。

【検査法】

通常用いられる補体結合反応や中和抗体検査等の血液で行う血清診断法では、幼少時に1型に感染している人は、陽性となってしまいますから、性器ヘルペスか否かの判断は出来ません。

初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で抗体検査を行い、有意の抗体上昇によって診断することが可能です。

単純ヘルペスウイルスは、同一個体において幼少期の1型感染、青年期以降の性器への1型及び、2型感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から1型感染2型感染の判断は出来ません。

従って、性行為やオーラルセックスの2~10日前後に以下のような症状があるときには、直ぐに皮膚科を受診することです。

・感染部位(ペニスや外陰部)に痛痒さを感じ患部が赤くなり、徐々に〝痒み〟や〝痛み〟が強くなります。

・男女とも患部に小さな水泡ができ、チクチクと痛みが伴います。

・水泡が破れると、ジクジクした状態になります

2012年5月20日日曜日

血液一般検査-番外編-CD4/CD8検査-


白血球には、T細胞(細胞性免疫に関与)、B細胞(液性免疫に関与、抗体を産生する) 、null細胞(T細胞でもB細胞でもない)があります。

このうちCD4陽性細胞は、B細胞の免疫グロブリン産生を補助し、CD8陽性細胞は免疫グロブリン産生を抑制します。

リンパ性の悪性腫瘍や免疫不全症では、T細胞とB細胞の比率、さらにCD4陽性細胞、CD8陽性細胞の比率が変わるため、診断や治療経過観察のためにこの検査は行われます。

CD4陽性細胞は、HIVが非常に結合しやすいために、HIV感染症ではHIVがCD4陽性細胞に感染し細胞を破壊することから、CD4が低値となります。

逆に成人T細胞性白血病(ATL)では、HTLV-1がCD4陽性細胞に感染しCD4陽性細胞が腫瘍化し増殖します。

検査方法としては、血中のT細胞とB細胞の比率を、それぞれの細胞に特異的なモノクローナル抗体により測定します。

【基準値】

CD4 25~56%
CD8 17~44%
CD4/CD8比 0.6~2.9

※基準値は、検査施設によって若干異なります※


【基準値より上昇】

1.CD4

・成人T細胞白血病、HHV-6感染

2.CD8

・EBウイルス感染症

【基準値より下降】

1.CD4

・HIV感染、特発性CD4陽性細胞減少症、先天性免疫不全症候群

2.CD8 

先天性免疫不全症候群

【HIV感染とCD4の数の関係】


※HIV感染すると、通常1年間に60~100個/μlずつ低下しますが、AIDSの発症が近づくと
低下速度が速くなる傾向が見られます。


※CD4陽性リンパ球数が少ないほどAIDSの発症が近いので、500個/μl以下となれば、抗HIV薬の予防投与を開始します。


※350個/μl以下となった場合には、積極的に抗HIV薬による治療を開始する必要があります。


※100個/μl以下になりますと、ほとんどがAIDSを発症してしまいます。

2012年5月13日日曜日

血液一般検査-7.血小板数-


血小板の数が減少したり、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。

その為、軽く何かに身体を当てても内出血をして青あざができたり、けがをしても出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすい、歯肉から出血することが頻回に起こります。

貧血があって慢性出血が疑われるときには、必ず血小板数の検査は行なわれます。

逆に、血小板の数が余りにも多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性が増大します。

血液1μl中の血小板数が10万以下で血小板減少症、40万以上で血小板増多症とされます。

10万以下になると血が止まりにくくなり、さらに5万を切ると自然に鼻血が出たり皮下出血が始まって皮膚に紫色の斑点が出たりします。

3万以下では腸内出血や血尿が起こります。

2万個以下になると頭蓋内出血を起こすなど生命も危険になります。

血小板が極端に増加している場合は、血栓症が引き起こされるのを予防するためワーファリンなどの薬剤を投与します。

※血小板の異常な増減には、重い病気が隠されていることが多いので、血液内科のある専門病院で精密検査を受けることをおすすめします。


【基準値】

13.0万~34万/μl

※自動血球計算機で測定しますから、使用する機種によって若干の変動があります。

【基準外】

Ⅰ.減少

1.軽度の減少 5~15万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後、薬剤性血小板
減少症、巨赤芽球性貧血、膠原病、脾機能亢進、肝硬変、ウイルス感染など。

2.中等度の減少 2~5万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

3.高度の減少 2万以下

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

Ⅱ.増加

1.中等度の増加 40~80万

・慢性的な出血、鉄欠乏性貧血、術後、膵臓摘出、感染症、慢性骨髄性白血病など。

2.高度の増加 80万以上

・本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症など。

2012年5月6日日曜日

血液一般検査-6.白血球分類検査-


白血球は、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類に分類することが出来ます。

白血球を染色してこれら5種類に分類する検査を白血球分類検査または、血液像と呼びます。

これら5種類の白血球は、身体が正常な状態のときはそれぞれの占める割合が一定範囲内に保たれていますが、身体になんらかの異常が発生すると比率に変化が現れます。

これら5種類の白血球の働きを簡単に説明しておきます。

1.好中球

白血球の半分以上を占め、外界から病原菌や異物が侵入すると増加して、病原菌や異物を食べて分解し生体に無害なものにします。

感染症に感染した時や炎症があるときに増加します。

2.リンパ球

免疫を司り、Tリンパ球とBリンパ球があり、病原菌が侵入した時に、その病原体に対する抗体を作って撲滅する働きをするとともに、侵入した病原体を記憶する働きを持っています。

ウイルス感染で増加します。

3.単球

マクロファージ(大食細胞)とも呼ばれ、病原菌や異物などを食べて生体に無毒なものにし、免疫抗体を作り出すことを促す働きをします。

4.好酸球

生体の防御反応に関与し、アレルギー性疾患に感染すると増加します。

寄生虫に感染すると増加します。


5.好塩基球

ヒスタミンやヘパリンなどの物質を含み、アレルギーや血管拡張などの作用に関与することから、細胞内の顆粒(ヒスタミン等)を放出し即時型アレルギーをおこします。

【基準値】

好中球 40~70%
リンパ球 20~45%
単球 3~7%
好酸球 0~5%
好塩基球 0~2%

※白血球分類は、自動血球計数機で自動的に分類されることから、使用機器の種類により基準値は若干異なることがあります。

【白血球増加の原因】

1.好中球

感染症、炎症、血液疾患及び膠原病など。

2.リンパ球

ウイルス感染症、リンパ性白血病など。

3.単球

感染症、悪性腫瘍、単球性白血病など。

4.好酸球

アレルギー疾患、寄生虫感染、慢性骨髄性白血病など。

5.好塩基球

慢性骨髄性白血病、粘液水腫など。

【白血球の減少】

1.好中球

ウイルス性肝炎、インフルエンザ、急性白血病など。

2.リンパ球

AIDS、再生不良性貧血など。

3.単球

細菌により血液中に毒素が分泌されて発症する内毒素血症など。

4.好酸球

感染症の感染初期など。

5.好塩基球

甲状腺中毒症、過敏症などの急性のアレルギー反応など。

2012年4月29日日曜日

血液一般検査-5.白血球数-


白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解し無毒化します、更に身体の免疫機能を司ります。

そのことから、白血球が増加したり、減少したりするということは、身体のどこかに細菌・ウイルスなどの異物などが侵入した時や、身体の中の何処かで炎症を起こしていると考えられます。

白血球数が減少すると、免疫機能の低下から身体の抵抗力が衰えて感染症にかかりやすくなります。

3000個以下になると、感染症に罹りやすくなることから十分な感染症対策注意が必要となります。

特に1000個以下になると無菌室に入り、感染症に感染しないようにしなければなりません。

逆に2万個以上になった場合、慢性白血病や敗血症などの恐れがあります。

【基準値】

3,300~9,000個/μl

※自動血球測定器の機種によって若干の変動があります。

※白血球数は個人差が大きく、また同じ人でも朝は少なく、夜になれば増加する傾向があります。

そのため多少の変動はあまり気にする必要はありません。

【軽度~中等度の増加】 10000~50000

細菌による感染症、自己免疫疾患、重症の代謝異常(腎不全、肝不全など)、薬物中毒、白血病、骨髄増殖性疾患、妊娠、心理的ストレスなど。

【高度の増加】50000以上

白血病、骨髄増殖性疾患、重篤な感染症、悪性腫瘍の全身転移など。

【軽度から中等度の減少】 1000から3000

再生不良性貧血、ウイルス感染症、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、脾機能亢進症など。

【高度の減少】1000以下

再生不良性貧血、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、ウイルス感染症、AIDSなど。

※白血球の数だけでは、どの様な疾患に感染しているかわかりにくいことから、白血球の種類を調べる白血球分類検査を同時に行います。

※HIVに感染しても感染初期は、一過性に白血球数は軽度減少しますが、本来の数値に戻りますから、HIV感染を白血球数で判定することは出来ません。

※HIVに感染して数年が経過後、目に見えて白血球数が減少してきますが、これはHIVが白血球を破壊することに由来し、免疫機能を司る白血球が減少することによりやがて免疫不全に陥り、AIDSの発症が起こります。

白血球分類検査に関しては、次回紹介致します。

2012年4月22日日曜日

血液一般検査-4.赤血球恒数-


赤血球恒数とは、赤血球の大きさ、赤血球に含まれるヘモグロビンの量を調べる検査のことを言います。

この赤血球恒数には、以下の三種類があります。

1.MCV(平均赤血球容積):血中に含まれる赤血球の大きさを表す。

2.MCH(平均赤血球血色素量):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビンの量を表す。

3.MCHC(平均赤血球血色素濃度):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビン濃度を表す。

貧血になる疾患には、その病態によって特徴的な赤血球恒数の異常を示すものがありますから、赤血球恒数を調べることによって、「小球性低色素性貧血」、「正球性正色素性貧血」、「大球性高~正色素性貧血」の3つの型に分類して鑑別診断を進めることがてきます。

【赤血球恒数の計算方法】

1.MCV(平均赤血球容積)= ヘマトクリット値 / 赤血球数 × 1000 

※ヘマトクリット値、つまり容積を 赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりの容積の平均値。
   
2.MCH(平均赤血球血色素量) = 血色素量 / 赤血球数 × 1000

※一定量の中の血色素量を、赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりのヘモグロビン量の平均値。
   
3.MCHC(平均赤血球血色素濃度)= 血色素量 / ヘマトクリット値 × 100  

※個々の赤血球の容積に対する血色素量の比を%で表したもので血色素濃度の高低、すなわち低色素性、高色素性の程度を表す。

注:これらの計算は、自動血球計算機で血液検査を行うことにより、自動的に計算されます。

【基準値】

MCV  男性:84.9~99.6   女性:80.6~98.7  (fl )
MCH  男性:27.5~32.3   女性:25.0~31.9  (pg)
MCHC  男性:31.2~33.8   女性:30.3~33.4  (g/dl)

※使用する自動血球計算機の種類により若干数値が変動します。

基準値を外れた場合

・MCV:79fl以下、MCHC30%以下の場合

小球性低色素性貧血で、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、セラセミアの疑い。

・MCV:80~100fl、MCHC31~35%の場合

赤血球とヘモグロビン数に異常がない貧血で、溶血性貧血、急性出血、腎性貧血、再生不良性貧血などの疑い。

・MCV:101fl以上、MCHC31~35%の場合

大球性貧血で、巨赤芽球性貧血、腎性貧血の疑い。