血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年11月1日金曜日

重症熱性血小板減少症候群

重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)は、SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症で、感染症法では四類感染症に位置付けられています。

【SFTSウイルスとは】

SFTSウイルスは2011年に中国より報告されたマダニ媒介性の新興ウイルス感染症で、国内SFTSウイルス自体は,以前から国内に存在していたと考えられていましたが,平成25年1月に初めての症例が確認され,現在までに,全国では24府県で475例(うち69例で死亡)の症例が確認されています(2019年9月25日現在)。

【感染経路】

主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。

 【潜伏期】

6~14日

【臨床症状】

発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主張とし、ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴い、血液所見では、血小板減少(10万/μL未満)、白血球減少(4000/μL未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。

【致死率】

10~30%程度。

【診断】

血液、血清、咽頭拭い液、尿から病原体や病原体遺伝子の検出、 血清から抗体の検出。

【治療】

特効薬はなく対症療法しか存在していません。

【予防】

草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を極力さけ、マダニに咬まれない予防措置を講じる

【日本に存在するマダニ】

日本には、命名されているものだけで47種のマダニが生息するとされていますが、これまでに実施された調査の結果、複数のマダニ種(フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ)からSFTSウイルスの遺伝子が検出されて、日本国内ではフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがヒトへの感染に関与しています。

【ペットから感染する可能性は】

SFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群に類似する症状を呈したネコに噛まれて重症熱性血小板減少症候群を発症した患者が確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

同様にSFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群様症状を呈したイヌとの接触により重症熱性血小板減少症候群を発症した患者も確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

これらはまれな例ですが、ペツトや野良猫などからの感染も気をつける必要があります。

ペットに付いているマダニに触れたからといって感染することはありませんが、マダニに咬まれれば、その危険性はありますので、ペットのマダニは獣医師に相談して駆除する必要があります。

2019年10月23日水曜日

糖尿病と膵臓がんの関係

【膵臓の働き】

膵臓という臓器は、極めて重要な臓器で、胃酸で酸性になった食べ物を中和する"膵液"を分泌して消化を促す働きをする、インスリンやグルカゴンなど血糖値を調節するホルモンを分泌して全身のバランスを保つふたつの働きをする大切な臓器です。

膵臓は、胃の裏側の体の深部に位置し消化液を運ぶ膵管が張り巡らされています。

【糖尿病と膵臓がんは関係ある??!!】

膵臓がん患者の26%は糖尿病患者というデータがあります。

糖尿病患者の場合、男性では膵臓がんの発症リスクが健康な人に比べ2.1倍、女性で1.5倍高いとというデータがあります。

【膵臓がんの原因とは】

膵臓がんの原因のほとんどが膵炎です。

膵炎は、血液中に糖分が増えることで起こります。

【膵臓がんの予防】

以上のことからして糖尿病を予防するような食事や運動などで生活習慣を改善するように日頃から心がけることが、膵臓がんの予防になるということなのです。

膵臓がんはがんのなかでも、発見しにくく発見されたときにはすでに手遅れのケースが多いことから、「早期発見がしにくい」「転移しやすい」「治癒が難しい」「生存率が低い」と、四つの悪条件がそろったがんと言えます。

【膵臓がんは治るのか】

医学の進歩に伴い多くのがんは治る病気となりつつありますが、膵臓がんだけは例外で、5年生存率はステージ1で40.1%、ステージ4になると1.5%、全症例で9.2%と極めて予後の悪いがんといえます。

更に最近では、膵臓がん罹患者数も死亡者数も年々しつつあります。

【何故膵臓がんは見つけにくいのか】

膵臓がんの90%以上が、膵管の細胞にできるので発見しづらい原因となっています。

更に悪いことには膵臓がんは、特徴的な自覚症状がほとんどなく、腹痛、黄疸、腰や背中の痛み、食欲不振、体重減少などの症状が現れますが、これらの症状は他の疾患でも現れることからついつい膵臓がんを見をとしてしまうことになります。

症状が進行してから発見されたときには、すでに手遅れとなっています。

進行した場合、症状としては、が挙げられますが、胃炎や膵炎の場合も同じ症状になります。

【膵臓がんの検査】

膵臓は肝臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれ、よほどがんが進行しないと検査に至らないのです。

エコー検査(超音波検査)でも、胃や腸のなかにあるガスや体内脂肪の影響で診断しにくいのが現実です。

ふだんから健康に気を使い、定期的に人間ドックを受けていたにもかかわらず、膵臓がんは発見されず、自覚症状が出てから精密検査をし初めて膵臓がん診断される人が殆どで、このような場合膵臓がんが発見されたときにはかなり進行していて、手遅れが多いのが現実です。

最近では、CT=Computed Tomography(コンピューター断層撮影)が膵臓がんの早期発見に比較的有効とされていますが、撮影のために使用する造影剤には副作用リスクがあり検査を受ける際には注意が必要となります。

更に有効な検査としては、MRI=Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)を利用したMRCP=Magnetic Resonance Cholangiopancreatography(磁器共鳴胆管膵管造影検査)という検査がありますが、自覚症状がなく、膵臓がんの疑いがないのにこれを受ける人はまずいません。

最近で注目されているより高度な検査方法としてERCP=Endoscopic Retrograde Colangiopancreatography(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やEUS:=Endoscopic Ultrasonography(超音波内視鏡)がありますが、実施している医療機関が少ないうえ、費用が高額であることからほとんど利用されていません。