変異株と変異種とは全く概念が異なります。
変異株を説明する前に突然変異について解説しておく必要があります。
突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。
突然変異の結果、新しい性質を持った子孫ができることがあります。
この子孫のことを変異株と呼びます。
変異株そのものは、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化していますが、もともとの生物の種類は変化していません。
従って変異株は、同じウイルスの複製産物に過ぎないことからして、ウイルスの名称は変化しません。
英国や南アフリカで新たに発見された新型コロナウイルスは、突然変異によるこウイルスの変化したものですから変異種ではなく変異株ということになります。
一方変異種とは、極まれに近縁の生物種の間で多くの遺伝子組み換えが起きると、ふたつの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生することがあります。
これを変異種と呼称します。
この場合は、新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が与えられることになります。
2021年1月27日、日本感染症学会は報道機関向けに声明を発表し、新型コロナウイルスの"変異株"を"変異種"と表記しているメディアに対して「これは学術的には誤用となりますので、今後は変異"株"と正しく表記していただきたくお願い申し上げます」と要望しています。