血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年11月11日日曜日

シェネリックとオーソライズド・ジェネリック-1.シェネリック-

臨床検査から少し外れますが、多くの方から質問のありますシェネリックとオーソライズド・ジェネリックについて解説いたします。

一回目はシェネリックについて解説いたします。

シェネリックとは、新薬(先発医薬品)の特許が満了した後に、他のメーカによって製造販売される薬を言います。

新薬と同じ有効成分の医薬品ですが、開発にかかるコストが安価なために新薬より価格が安いのが特徴です。

新薬と、有効成分が同じで、効果、有効性や安全性について違いはなく、厚生労働省の審査を経て、新薬と同じ効き目・安全性、品質であることが証明されてから初めて、販売することが認められています。

気をつけなければいけないのは、薬によっては先発医薬品の効能・効果の一部がないものがあります。

その理由としては「先発医薬品に新しい効能・効果が追加され、再審査期間が設けられている」または「用途に対して特許がある」などが考えられます。

新薬で効き目があったのにジェネリックに変更後効き目が悪くなった場合、ジェネリック医薬品への不安感による心理的要因も考えられますが、ジェネリックそのものに問題がある可能性も完全に否定はできません。

実際薬の種類によってジェネリックは新薬より効き目が悪いものもあるのは事実です。

例を上げますと、

・ステロイドを含む塗り薬のジェネリックは効き目が悪いことがありますが、これは皮膚に塗った時、有効成分を均一に浸透させていくのに技術が必要なためと考えられます。

・湿布などの貼り薬では、有効成分の放出をコントロールするといった製剤技術に特許があるために、この技術に関する特許が失効していなければ、その製法は使えないことから効き目に違いが出てきますし、仮に特許が切れていたとしても、ジェネリックメーカーによっては製剤技術に差があることから効き目が悪い場合も当然あります。

アメリカやイギリスなどの先進国にもジェネリック薬はありますが、それらの国には、専門の審査機関があり、厳しい品質管理が行われています。

しかし我が国においては、ジェネリック薬専門の審査機関はなく、医薬品の品質管理の遵守は、製造するメーカーごとに義務づけられていますが、第三者によるチェックは行われていないため、品質管理が甘くなる場合があります。

更に新薬とは違い、開発費用のかからないジェネリック薬を製造するメーカーには、小規模の会社も多く存在することから、どうしても品質の悪いジェネリックは存在しています。

要するに大手製薬会社による一流のジェネリック薬がある一方、三流のジェネリック薬も存在することを頭に入れておく必要があります。

ジェネリック薬に切り替えたあとに効き目がなくなったり、これまでになかった副作用が続いたりする場合は、症状の悪化を考える前に、「ジェネリック薬のせいかな」と疑って医師に相談されることです。

ジェネリックの良いところは、コスト面ですが、飲みやすいように大きくて飲みづらい錠剤を小さくしたり、またコーティングすることによって、薬そのものにある苦味などを抑えるなど改良を加えた薬もあります。

ジェネリックを国が推奨するのは、医療費削減を第一目標にしているからです。

なぜならジェネリック医薬品を広めることにより、国の医療費削減にも繋がるからです。

2018年10月31日水曜日

甲状腺検査-2.遊離トリヨードサイロキシン(FT3)-

遊離トリヨードサイロニン(Free triiodothyronine:FT3)は、甲状腺ホルモンです。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)は脳から分泌される甲状腺のホルモン分泌を促すホルモンでT3、T4の調節をしています。

T3(トリヨードサイロニン)、T4(総サイロキシン)とは血液中の甲状腺ホルモンのことで、糖の代謝や蛋白質の合成など、エネルギー代謝を行うために分泌されています。

血液中では蛋白質と結合しホルモンとしては作用していません。ホルモンとして作用しているのは結合してこないFT3(遊離トリヨードサイロニン)、FT4(遊離サイロキシン)です。

これらの甲状腺ホルモンの分泌を見ることによって甲状腺の働きと亢進症と低下症の異常がわかります。

T3もT4同様、血中では大部分が蛋白と結合し、FT3は総T3の約0.3%しか存在しません。

しかしT4よりもT3の方が優れた甲状腺機能の指標となります。

体内での必要に応じ、T3、T4が結合蛋白から離れて遊離T4(FT4)や遊離T3(FT3)になりますが、末梢組織においてはT4がT3に変換されることも知られています。

甲状腺疾患の診断にはTSHとFT4(またはFT3)の測定が重要です。

【検査方法】

電気化学免疫測定法(Electro Chemiluminescence Immunoassay:ECLIA)

【基準値】

2.1~4.1pg/ml

※検査に使用する機器や施設によって異なることがあります※

【異常値】

高値:甲状腺機能亢進症(バセドウ病、プランマー病)、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎(急性期)、TSH産生下垂体腺腫、T3甲状腺中毒症など

低値:原発性甲状腺機能低下症(粘液水腫、クレチン病)、二次性(下垂体性)甲状腺機能低下症、慢性甲状腺炎(橋本病)、低T3症候群など

【検査値に影響を及ぼす要因】

1.薬物の服用(甲状腺ホルモン剤、ヨード剤など)の影響を受ける。

2.測定方法によっては、抗T3自己抗体や抗マウス抗体の影響を受ける。

3.低アルブミン血症の場合も影響を受ける。

【附則】

1.通常、FT4, FT3は一緒に変動するので、一方のみを測定すれば十分。

2.しかし両者が一致しない病態があるので、その場合は両者とも測定する必要がある。

例えば以下のことが考えられます。

①FT4が正常なのに、FT3が低い場合をlow T3症候群という。この場合は両方測
 定する。

②抗甲状腺剤治療中にFT4は正常になっても、FT3が高いことがあり、この場合、
 TSHは低く、甲状腺機能は亢進状態にある。

③橋本病で甲状腺機能低下が軽度のとき、FT4だけが低値で、FT3は正常値のこ
 とがある。