血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2016年6月6日月曜日

AIDS指標疾患

今回はAIDS指標疾患について解説いたします。

AIDS指標疾患とは、HIV感染者がこの疾患を発症した段階でAIDS患者と診断される、23種類の疾患を指します。

当然HIV検査及びその確認検査で陽性であることが前提となります。


A. 真菌症    

 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
 2. クリプトッコカス症(肺以外)
 3. コクシジオイデス症
 4. ヒストプラズマ症
 5. ニューモシスチス肺炎

B. 原虫感染症

 6. トキソプラズマ脳症(生後1カ月以後)
 7. クリプトスポリジウム症(1カ月以上続く下痢を伴ったもの)
 8. イソスポラ症( 1カ月以上続く下痢を伴ったもの)

C. 細菌感染症  

 9. 化膿性細菌感染症
10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
11. 活動性結核(肺結核又は肺外結核)
12. 非結核性抗酸菌症

D. ウィルス感染症

13. サイトメガロウィルス感染症(生後1カ月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
14. 単純ヘルペスウィルス感染症
15. 進行性多巣性白質脳症

E. 腫瘍

16. カポジ肉腫
17. 原発性脳リンパ腫
18. 非ホジキンリンパ腫(a. 大細胞型・免疫芽球型、b. Burkitt型)
19. 浸潤性子宮頸癌

F. その他

20. 反復性肺炎
21. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
22. HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎)
23. HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

日本国内において1985年から2014年までの統計によるAIDS指標疾患の上位3位は、以下のとおりです。

1位 ニューモシスチス肺炎

2位 カンジダ症

※カンジダ症は食道、気管、気管支、肺に発症するカンジダ症で、性器カンジダ症や口腔カンジダ症は含みません※

3位 サイトメガロウイルス感染症

1~3位の疾患で全体のおよそ68%を占めています。

2016年5月31日火曜日

いきなりエイズとは

HIVに感染しても、すぐにAIDSを発症しません。

一昔前までは、HIVに感染後8~10年でAIDSを発症していましたが、最近では発症時期が早くなり早い場合は3~5年で発症しています。

これはHIVの変異によるものと考えられています。

HIVが体内に侵入すると免疫細胞を破壊することにより、徐々に感染者の免疫力を低下させていきます。

免疫力がある程度以上に下がると健康なときには感染しないような感染症(日和見感染症)をはじめとした、HIVに特徴的な疾患(AIDS指標疾患)に感染しやすくなります。

HIV感染者の免疫力は、CD4陽性リンパ球の数値で判断しますが、この数値が一定以下に下がったり、数値に関係なくAIDS指標疾患に感染した状態が、AIDSと呼ばれます。

日本におけるHIV感染症の特有な特徴として"いきなりエイズ"があります。

要するにHIVに感染するような危険な行為をしてもHIV検査を受けること無く放置し、体調が悪くなった時に医療機関を受診しその時に日和見感染症をきっかけにHIV感染が発見される、いわゆる"いきなりエイズ"の報告数が多いことです。

日本ではHIV・AIDS患者の新規報告数に占めるAIDS患者(=いきなりエイズ患者)の報告数の割合は、30%程度の高値で推移しています。

この高い数値は日本以外の先進国では見られません。

HIVに感染しても、早期に診断されれば、抗HIV薬でHIVの増殖を抑え、免疫力の低下を未然に防ぐことでAIDSの発症をおさえることが可能となっています。

そして普通の人と同様の社会生活を送れ、天寿をまっとうできる様になってきています。

更に自分がHIV感染者であると知っていれば、性交渉などにおいても適切な予防対策をとることができ、他人への感染を防げることにもなります。

HIV/AIDSに関する医療はこの10年で著しく発展し、一昔前までは「HIV感染イコール死」とされていましたが、HIVに感染したからといってすぐに生死に関わるといった病気ではなくなってきました。

HIV感染を早期に発見し早期治療がより重要なのです。

感染に気づくこと無く"いきなりエイズ"になって初めてHIV感染に気づき、治療を開始しても良い効果が得られません。

従ってHIVに感染するような行為をした場合には、必ず適切な時期にHIV検査を受けることが非常に重要となります。

リスクのある行為をした、心配な症状がある人は、ぜひ検査を受けに行くことをお勧めします。

当然HIVに感染しないように予防措置をとることは更に重要なこととなります。

2016年5月14日土曜日

HIV検査の原理について

HIV検査には、抗原抗体検査・抗体検査がありますが、これらの検査には種々の検査原理が利用されています。

今回はHIV検査に利用されている検査原理について解説いたします。

HIV検査には以下の検査原理が利用されています。

1.化学発光免疫測定法(CLIA:Chemiluminescent Immunoassay )

2.化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescence Enzyme Immunoassay)

3.蛍光酵素免疫測定法(FLEIA:Fluorescence Enzyme Immunoassay)

4.酵素免疫法(EIA:Enzyme Immunoassay,ELISA :Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)

5.ラテックス凝集法(LA:Latex Agglutination)

6.イムノクロマト法(IC:Immunochromatography)

7.人工担体凝集法(PA:Particle Agglutination)

※1~7の検査原理は、第三世代抗体検査、第四世代抗原抗体検査に利用され、各メーカから種々の検査キットが販売されています。

※1~5は、全自動の検査機器によって自動的に検査されます。

※6~7は検査技師や医師が手で検査を行い肉眼で判定します。

※リアルタイムPCR検査は、1~7には含まれていません※

HIV検査を受ける際には、上記に記載されたどの検査原理で検査するのかを必ず確かめておく必要があります。


2016年5月1日日曜日

セカンドオピニオン-4.セカンドオピニオンを受けた後になすべきこと-

セカンドオピニオンを受け、別の医師の意見を聞くことによって、ご自身の病気や治療方針についての考えが変化したか否か、再度担当医に報告しこれからの治療法について再度相談する必要があります。

セカンドオピニオンに対する担当医の意見を聞くことで、治療への理解がより深まり、納得する治療を選択することが可能となる場合もあります。

セカンドオピニオンの結果、セカンドオピニオン先の病院で治療を受けることになった場合には、今後の治療を円滑にすすめるためにこれまでの治療内容や経過などを紹介状などで引き継ぐ必要があります。

治療はセカンドオピニオン先の病院で行い、紹介元医療機関(最初受診した医療機関)では治療後の経過観察を行う場合もあります。

治療を受けるうえで、「本当にこの治療法で良いのか?」「もしかして、治療方針が間違っていないかな?」、「他の選択肢があるのではないか?」などと不安に思った場合は、積極的にセカンドオピニオンを利用すべきです。

疑問や不安を持ったままでは円滑に治療を受けることは出来なくなります。

医師との信頼関係があってこそ自分の命をあずけることが出来るのです。

最後にセカンドオピニオンを受ける意味合いをまとめてみますと、

1.主治医が提示した治療方法のほかに、良い治療方法がないかどうかを判断できる。

2.主治医の治療方針に間違いがないかを判断できる。

3.セカンドオピニオンを検討するということは、主治医の治療方針に疑問を持つということなので、「主治医に失礼」、「医師が気分を害する」、「その病院にいけなくなる」と考えがちですが、最近ではセカンドオピニオンは一般的なものとして認知されていますので、遠慮無く利用すべきです。

4.逆に医師からしても、自分の担当する患者が治療に関する知識を高めれば、それだけ納得して治療に専念してもらえるので、セカンドオピニオンの活用には理解を示しています。

5.セカンドオピニオンは主治医に対して決して失礼ではありません。

6.自分の命を守ることになるかもしれないセカンドオピニオンは、絶対に利用すべきです。

7.セカンドオピニオンを嫌う医師には自分自身の命を預ける必要はありません!!



2016年4月15日金曜日

セカンドオピニオン-3.利用することの意味合い-

セカンドオピニオンを利用する際の注意として、ファーストオピニオン(はじめの意見)を大切にする必要があります。

セカンドオピニオンを利用したがどの意見を選んでよいかわからなくなってしまうことのないように、最初に求めた担当医の意見(ファーストオピニオン)を十分に理解しておくことが重要となります。

最初の診察で、自分自身の病状・進行度、なぜその治療法を勧められるのかなどについて十分に理解しないまま、セカンドオピニオンを受けてもかえって混乱する結果となってしまいセカンドオピニオンを利用した意味がなくなってしまいます。

以下にセカンドオピニオンを利用する際の注意事項をまとめてみました。

1.セカンドオピニオンを受けるためには、担当医に、セカンドオピニオンを受けたいと考えていることを伝えて診療情報提供書(紹介状)、血液検査や病理検査・病理診断などの記録、CTやMRIなどの画像検査結果やフィルムを準備してもらう必要があります。

2.セカンドオピニオンを受ける医師や病院の選び方としては、最近では"セカンドオピニオン外来"を設置しているところがふえています。

3.セカンドオピニオンをどこで受けるかがわからない時には、がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターに問い合わせると、その地域のセカンドオピニオン外来を行っている病院や、専門領域などの情報を得ることができます。

4.ガンと診断されて手術を勧められたけれでも手術よりも放射線治療を検討したいといった、具体的な治療方法に関する希望がある場合には、ガンの放射線治療を専門とする医師にセカンドオピニオンを受けるという方法もあります。

5.セカンドオピニオンを受けるために必要な手続き(受診方法、予約、費用、診察時間、必要な書類など)は、医療機関によって異なりますから事前に確認が必要となります。

6.セカンドオピニオン外来は、基本的に公的医療保険が適用されない自費診療で、病院によって費用が異なることも念頭に入れておく必要があります。

7.セカンドオピニオンを受けるときには、限られた時間を有効に利用するために何を相談したいかを事前に整理しておく必要があります。

2016年3月28日月曜日

セカンドオピニオン-2.利用するには-

セカンド・オピニオンを求める場合、まずは主治医に話をして他の医師への診療情報提供書を作成してもらう必要があります。

そして紹介先を受診し意見を求めることになります。

意見を求められた医師は、これまでの治療経過や病状の推移を把握しないことには適切な助言をすることが難しいからです。

現在かかっている医療機関からの資料は、セカンドオピニオンを求められる側の医師にとって、患者の状態を客観的に評価し、適切な助言を伝えるために非常に重要な情報となりうるわけです。。

しかし、意見を求められた医師が新たに検査を実施することも当然あります。

セカンド・オピニオンは、診療ではなく相談になるため、健康保険給付の対象とはならず、全額自己負担となります。

しかし、保険医療機関を受診し保険証を提示して、患者が一般外来での保険診療を希望する場合は、保険診療の取扱いとなります。

2016年3月16日水曜日

セカンドオピニオン-1.これは何??!!-

セカンドオピニオンとは、現在診察・治療を受けている主治医以外の医師に治療法の意見を求めることを言います。

セカンドオピニオンが広がっている背景には、主治医のみに診療を任せるのではなく患者自身やその家族も治療の決定に関わる医療に変化してきたという社会背景があります。

医療は常に進歩し続け次々と新しい治療法が開発されています。

現在の医療は専門性が高まった背景により、医療全ての分野を一人の医師が把握することは到底出来ません。

更に医師個人や医療機関によって当然受けられる治療法は異なるここと、全て最良の治療を受けることは出来ません。

現在の医療情勢下では、患者自身や家族にとって最善だと思える治療を患者と家族と主治医との間で判断するために別の医師の意見を求めることが必要となってきています。

セカンドオピニオンは、治療を受ける医師を変えるとの誤解がありますが、医師を一方的に変えるのではありません。

今治療を受けている医師や医療機関に対して、不満などがある場合には転院・転医となりますが、セカンドオピニオンを受けることが即転院・転医にはなりません。

セカンドオピニオンを受けたのち、結果的に別の医師が提供する治療を受けるために医師を変えることは当然あります。

主治医との関係が悪くなることを心配してセカンドオピニオンを言いだせない人も多くおられるのが現実ですが、主治医と共に最良の治療を選択するということがセカンドオピニオンの前提ですから今治療を受けている主治医との関係が悪くなることはありません。

自分がこれから受ける治療法について納得するためにもセカンドオピニオンは必要となります。

現実的な問題としてセカドオピニオンを正しく理解していない医師や、プライドの高い医師がセカンドオピニオンを取得したいと申し出た患者さんに対して転院や転医を薦める場合がありますので、そこは医師を見極める必要があります。

セカンドオピニオンを否定する医師と共に今後の治療を続けていけるのかどうかをよくよく吟味する必要があります、なぜなら一つしかない命を預けるわけですから。

2016年2月23日火曜日

アレルゲン検査-MAST33-

陽性頻度の高い代表的なアレルゲン33項目を一度に測定可能な検査です。

【アレルゲンの項目】

Ⅰ.吸入系アレルゲン 15項目

花粉

1.スギ
2.ヒノキ
3. ハンノキ春~夏
4. オオアワガエリ春~夏
5. カモガヤ春~夏
6. シラカンバ夏~秋
7. ブタクサ夏~秋
8. ヨモギ

室内ダスト

9. ハウスダスト
10. コナヒョウヒダニ
11. イヌ皮屑
12. ネコ皮屑

真菌

13. アルテルナリア
14. カンジダ

その他

15. ラテックス
※ラテックス手袋で皮膚炎を起こす人や、小児ではゴム風船などにも注意が必要※

Ⅱ.食物系アレルゲン

1. 卵白
2. オボムコイド
3. 牛乳
4. 小麦
5. ソバ
6. エビ
7. カニ
8. ピーナッツ
9. 大豆
10. コメ
11. ゴマ
12. 牛肉
13. 豚肉
14. 鶏肉
15. マグロ
16. サケ
17. バナナ
18. キウイ

【検査に必要な血液量】

血清0.5mlで検査可能です。

【陽性となった場合】

MASTで陽性となった場合どのアレルゲンで陽性反応となったかがわからないことから、
項目の経過観察にシングルアレルゲン検査を行う必要があります。

【判定基準】

MASTクラス  
  0       0 ~ 1.39ルミカウント     判定・・・・ 陰性
  1       1.40 ~ 2.77ルミカウント     判定・・・・疑陽性
  2       2.78 ~ 13.4ルミカウント    判定・・・・陽性
  3            13.5 ~ 58.0ルミカウント    判定・・・・陽性
  4           58.1 ~ 119ルミカウント   判定・・・・陽性
  5           120 ~ 159ルミカウント    判定・・・・陽性
  6           160 ~ 200ルミカウント    判定・・・・陽性

2016年2月8日月曜日

脂質検査-5.LH比-

【LH比とは】

脂質異常症の診断で最近"LH比"が重視されています。

LH比とは、LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値で示される比率です。

LDLとHDLは別々に考えるのでなく、両方のバランスが重要とされ、LH比はその目安として注目されています。

【LH比は何故注目されているのか】

LDLコレステロールが140未満の人でも心筋梗塞になる場合もあることと、HDLコレステロールが高くてもまれに動脈硬化を起こすことが明らかになり、今まで言われてきた基準値内でも動脈硬化になる可能性が指摘され、そこで注目されたのがLH比です。

【基準値】

1.5以下・・・健康的な状態

2.0以上・・・動脈硬化の疑いあり

2.5以上・・・血栓ができている可能性あり

【LH比の考え方】

LH比が高いほど、血管中の悪玉のLDLコレステロールの比率が高く、善玉のHDLコレステロールの割合が低くなります。

従ってLH比が高いことは動脈硬化になりやすく、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を引き起こす危険性が高くなります。

【LH比を下げるには】

LH比を下げるには、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを減らし、かつ善玉コレステロールであるHDLコレステロールを増やす必要があります。

LDLコレステロールが正常値でも、HDLコレステロールが低めであれば、LH比は当然高くなります。

また、HDLコレステロールが正常値で、LDLコレステロールが高めの場合も同様となります。

重要な事は、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスです。

【LH比を下げる手段は】

LH比を下げるには、適度な運動を心がけること、禁煙、それから食生活に気を付けること、この3つが基本です。

2016年1月26日火曜日

脂質検査-4.LDLコレステロール-

LDLコレステロールは、肝臓でつくられたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポたんぱくですが、このLDLコレステロールが血液中に増えすぎると、血液内に使われなかった余分のコレステロールが残り血管に染み込んでしまいます。

これが動脈硬化を引き起こす原因となります。

この動脈硬化の最大の危険因子となるのが、一般的に「悪玉」と呼ばれているLDLコレステロールです。

【検査目的】

動脈硬化を促進するのはLDLコレステロールですから、正確に脂質異常症を判定するには、総コレステロールの値よりもLDLコレステロールを測定することが必要となります。

成人病検診や一般検診で検査されます。

【基準値】

70~139mg/dl

【異常値】

高値…脂質異常症、動脈硬化、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、肥満など

低値…肝硬変、甲状腺機能亢進症、先天性無βリポ蛋白血症、慢性肝炎など

【低LDLコレステロール血症とは】

低コレステロールでは低栄養や死に至るリスクが高くなることが認められており、その点からみると実は低LDLコレステロール血症も恐ろしいということを認識しておく必要があります。

"LDLコレステロール値が低いほど死亡率が高まる"、"LDLコレステロール値が低いほどがんの発症率が高くなる"といったデータ報告があります。

また、LDLコレステロール値が低いと、"血管が破れやすくなる"、"免疫力が低下する"、"貧血を起こしやすくなる"ともいわれています。

【おまけ】

総コレステロール値に関係なく、LDLコレステロールの値が高いというのが良くありません。

高い場合には過食を避けて運動量を増やすように生活を改める必要があります。


2016年1月17日日曜日

脂質検査-3.HDLコレステロール

血液中のコレステロールは、たんぱく質と複合体を形成してリポタンパクとして存在しています。

リポタンパクは、比重の重さによって高比重リポタンパク(HDL:high density lipoprotein)、低比重リポタンパク(LDL:low density lipoprotein)、超低比重リポタンパク(VLDL:very low density lipoprotein)、カイロミクロン(cylomicron)の、4種類に分類されています。

これらの内、コレステロールを主に運んでいるのがHDLとLDLで、HDLに運ばれているコレステロールをHDLコレステロール、LDLに運ばれているコレステロールをLDLコレステロールと呼んでいます。

HDLコレステロールは、血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓に運び戻し、動脈硬化を防ぐことから、"善玉コレステロール"とも呼ばれています。

【検査目的】

HDLコレステロールの値を調べることで、動脈硬化などのリスクがわかります。

【基準値】

40~70mg/dl

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

低い場合・・・脂質代謝異常、動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞、高血圧など

総コレステロールや LDL, 中性脂肪が正常でも、動脈硬化が進行し「高血圧、糖尿病、肝硬変、虚血性心疾患」などが発生しやすくなります。

高い場合・・・コレステロール転送たんぱく欠損症

総コレステロール値も高くなっていることが多く、やはり望ましいことではありません。

【受診時または検査時の注意点】

HDLとLDLのバランスが重要で、コレステロール値が高めでもHDL値が高く、LDL値が低めなら問題がありません。

逆の場合は、将来狭心症や心筋梗塞などの病気を招く危険性が高いので注意が必要となります。

【おまけ】

HDLコレステロールは、上記でも記しましたように、各組織からコレステロールを肝臓に運ぶ働きがあり、抗動脈硬化作用があるため、高いほうが冠動脈疾患になりにくいといわれています。

現在のところ、HDLコレステロールが低い場合や、高HDL血症のように高すぎる場合も注意が必要です。

男性より女性のほうが高い値を示しますが、閉経後はほぼ同じ値を示します。

これは女性ホルモン(エストロゲン)が影響しているためです。

エストロゲンは、LDLコレステロールを減少させ、HDLコレステロールを増やす働きがあるために、閉経によってエストロゲンの分泌量が低下すると、HDLコレステロールは閉経前よりも低い値となります。

適度な運動、適度な飲酒はHDLコレステロールを増加させる傾向があります。

喫煙する人やや肥満の人は、HDLコレステロールが減少する傾向があるので注意が必要です。

※LDLコレステロールについては次回解説いたします※

2016年1月1日金曜日

謹賀新年 2016年

明けましておめでとうございます。

本年も皆様のお役に立てるように、臨床検査についての種々の情報等を発信していきますので、よろしくお願い致します。

2015年12月31日木曜日

脂質検査-2.総コレステロール-

総コレステロール(Total-cholesterol:T-CHO)の「総」とは、体に良いHDLコレステロールと体に悪いLDLコレステロールを合算値を意味しています。

コレステロールには、悪玉(LDLコレステロール)と善玉(HDLコレステロール)があり、コレステロールは人間の体に欠かせない脂質のひとつですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の原因となります。

脳動脈で起きれば脳梗塞に、心臓の冠状動脈で起きれば心筋梗塞を引き起こします。

【検査目的】

総コレステロールは脂質代謝の異常を調べる検査です。

【基準値】

140~219mg/dL

※閉経後の女性は、ホルモンの関係で上昇する傾向があり、150~239mg/dlを基準値としています※

※総コレステロール値は個人差があり、遺伝的な体質や食生活の内容、ストレスによっても左右されることから、多少の変動なら神経質になる必要ありません※

【異常値】

基準値より高い・・・脂質異常症、高コレステロール血症、ネフローゼ症候群、高血圧、動脈硬化、膵臓疾患、糖尿病、脂肪肝、甲状腺機能低下症、心疾患など。

基準値より低い・・・肝硬変、肝臓がん、栄養障害、甲状腺機能亢進症、アジソン病など。

※基準値より高くても200~239mg/dLであれば、食事や運動で改善できるレベルであり、必ずしも病気とはいえません※

※240mg/dL以上になると早期改善する必要があり、270mg/dL以上では食事や運動だけでは改善されないことから投薬療法を実施します※

【異常値がみられた時の対応】

総コレステロール値が異常値の場合、HDLとLDLのどちらが異常値なのか、逆に総コレステロール値が基準値内でもHDLとLDLが正常範囲に入っているかを個別に判断しなければ意味がありません。

※HDLとLDLに関しては次の機会に解説いたします※

【検査を受ける際の注意点】

食事によって栄養素が血液中に増えるため、正しい測定が出来生なることから、総コレステロール値を測定する場合は、原則として前日の夕食後は飲食を禁止し、空腹の状態で採血をします。

2015年12月23日水曜日

脂質検査-1.中性脂肪-

中性脂肪とは、人間の体を動かすエネルギー源となる物質で、別名トリグリセライド(TG:triglyceride)と呼ばれています。

体の中に存在する脂肪を総称して「体脂肪」と呼びますがが、体脂肪のほとんどは中性脂肪です。

中性脂肪は活動のエネルギー源として脂肪細胞の中に蓄えられますが、たまり過ぎるといわゆる肥満やメタボリックシンドロームの状態になり、生活習慣病にかかる可能性が高くなります。

中性脂肪とコレステロールはどちらも脂質の一種ですが、中性脂肪はエネルギー源で、余分な中性脂肪は、肝臓などに蓄えられます。

コレステロールは、細胞膜を作ることや筋肉を作るホルモンの原材料となります。

【検査目的】

狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患を予防するために調べます。

中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気が考えられます。

【基準値】

30 ~149mg/dl

※検査をする機器や施設によって異なる場合があります※

【異常値】

29以下:低中性脂肪血症

150~299:軽度高中性脂肪血症

300~749:中等度高中性脂肪血症

750以上:高度高中性脂肪血症

【高くなる原因】

過食

過度の飲酒アルコール

遺伝的体質

【検査を受ける際の注意点】

食後30分程度してから上昇し始め、4~6時間後に最も高くなることから、検査は早朝空腹時に行ないます。

【おまけ】

巷では中性脂肪が高いとよくない!と言われますが、人が生きていく上で必要なエネルギー源であることからある程度の数値は必要になります。

血液中の中性脂肪が増えすぎると、動脈硬化の危険が高まりますが、日本人の場合は、心筋梗塞の人のコレステロール値はそれほど高くなく、中性脂肪が高値を示す例が多いといわれています。

2015年12月7日月曜日

肝機能検査-9.血清総蛋白(TP:total protein)

血清総蛋白とは、血清中に含まれる蛋白の総称です。

現在、100種以上の蛋白の存在が知られています。

血清中には、およそ7~8%の蛋白が含まれています。

血清総蛋白は、アルブミンが60%とグロブリンが20%が主な成分です。

働きとしては、血液中のさまざまな物質を運んだり、体液の濃度を調整しています。

【検査目的】

肝臓や腎臓の異常、全身状態などを調べる検査です。

血清蛋白の中で最も多く存在するアルブミンは肝臓で合成されるため、肝機能障害の疑いがあるときは、まずこの検査を行います。

【基準値】

男性:6.5~8.2g/dL

女性:6.5~8.2g/dL

【異常値】

● 血清総蛋白が8.5g/dL以上・・・・高タンパク血症

原因:血液濃縮(脱水症)、免疫グロブリンの増加、多クローン性(疾患自己免疫性疾患、慢性炎症性疾患、肝硬変、慢性肝炎、悪性腫瘍、感染症)、単クローン性(多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、本態性M蛋白血症)

● 血清総蛋白が6.0g/dL以下・・・・低蛋白血症

原因:肝硬変、栄養不良、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症

【蛋白分画】

5つのグループに分画されます。

※( )内は基準値※

1.アルブミン:(60~70%)

上昇・・・・脱水

低下・・・・低蛋白血症、ネフローゼ症候、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、栄養不良

2.α1‐グロブリン:(2~3%)

上昇・・・・急性又は慢性炎症、低蛋白血症、ストレス、自己免疫疾患

低下・・・・急性肝障害

3.α2‐グロブリン:(5~10%)

上昇・・・・ネフローゼ、急性及び慢性炎症、自己免疫疾患、悪性腫瘍、ストレス

低下・・・・肝障害、低蛋白血症

4.β‐グロブリン:(7~11%)

上昇・・・・ネフローゼ、妊娠、溶血

低下・・・・慢性肝障害

5.γ‐グロブリン:(10~20%)

上昇・・・・肝硬変、慢性肝炎、骨髄腫、自己免疫疾患

低下・・・・ネフローゼ、無ガンマーグロブリン血症、低蛋白血症

【おまけ】

新生児の場合は、成人よりも低値を示し加齢とともに増加して思春期には成人と同じ値となります。

加齢とともに低くなる傾向があります。

朝より夕方や安静時より運動後は高くなる傾向があります。

妊娠していると低くなる傾向があります。

2015年11月26日木曜日

肝機能検査-8.ロイシンアミノペプチダーゼ-(LAP:leucine aminopeptidase)

ロイシンなどのタンパク質を分解するはたらきを持つ酵素の一種で、肝臓や腎臓、膵臓、腸管、子宮、睾丸、脳などの細胞に含まれています。

肝臓障害などで胆道がつまって胆汁がうまく流れなくなる(胆汁のうっ滞)と、胆汁が逆流してロイシンアミノペプチダーゼが血液中に流れこむことによって血中の値が著しく上昇します。

【検査目的】

胆道閉塞を起こす病気の診断に有用な検査です。

この検査だけでは診断しきれないので、他の肝機能検査と組み合わせて検査を実施します。

【基準値】

20~70U/L

※検査方法にはさまざまな種類があり、測定単位も異なり、基準値も異なりますので注意が必要です※

【異常値】

軽度の上昇(70~200U/l)・・・胆石、慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変など

高度の上昇(200U/l以上)・・・肝臓がんや胆道系のがん、胆石、すい臓がんなどによる胆道閉塞、子宮がん、卵巣がんなど

低値の場合・・・・・・・・・特に問題なし

【アイソザイム】

α1、α2、βの3種類のアイソザイムが存在します。

1.α1が高い場合は何らかの原因で胆道が詰まっていることが多い。

2.α2が高い場合は妊娠している場合に多く見られる。

3.βが高い場合は、肝臓病の他、白血病や自己免疫疾患、悪性リンパ腫や感染症が疑われる。


【おまけ】

1歳未満の子供では高値を示しますが、それ以降は成人に向かうに従い安定します。

性別や食事、運動による影響はほとんどありません。

飲酒などアルコールの摂取が多いとγ-GTPと平行して上昇する場合もあります。

胎盤に多く含まれているので妊娠中は高い値を示します。

2015年11月18日水曜日

肝機能検査-7.コリンエステラーゼ(ChE:Cholinesterase)-

コリンエステラーゼは、肝臓の細胞のみでつくられる酵素で、肝臓のはたらきが低下すると産生量が低下します。

コリンエステラーゼは、コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解することによって、たんぱくをつくりだしています。

コリンエステラーゼには、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2つの種類があります。

1.アセチルコリンエステラーゼ

真性コリンエステラーゼとも呼ばれ、赤血球や筋肉、神経組織の中に含まれています。

2.ブチリルコリンエステラーゼ

偽性コリンエステラーゼとも呼ばれ、血清や肝臓、膵臓、腸、肺などに含まれています。

健診などでは肝機能検査の一つとして、この偽性コリンエステラーゼを測定しています。

そのことから血液中のコリンエステラーゼ値をはかることで、たんぱくをつくり出す肝臓の機能をみることができます。

【検査目的】

コリンエステラーゼはアルブミンと同様に肝臓だけで産生されているので、コリンエステラーゼはほかの肝機能検査に比べていち早く異常値を示すので肝機能検査として広く利用されています。

コリンエステラーゼとその他の肝機能検査をあわせてみることによって、肝臓の障害されている程度が良くわかります。

要するに慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査です。

【基準値】

男性:234~493IU/L

女性:200~452IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

※一般に女性は男性より値が低めで、月経前や月経中でもコリンエステラーゼが減少します※

※妊娠時も低下します※

【異常値】

低値の場合・・・・劇症肝炎、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝硬変、転移性肝がん

高値の場合・・・・脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機亢進症、高血圧症、糖尿病

極定値の場合・・・有機リン中毒、遺伝性ChE欠損症

【コリンエステラーゼは低値のときが重要】

肝細胞での合成能力下低下していることを反映しています。

肝臓疾患であれば、GOT・GPT、γ-GTP、A/G比、ICG試験などの血液検査や、尿ウロビリノーゲン、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹腔鏡検査、肝生検などを行なう必要があります。

肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復することはまずありえません。

【コリンエステラーゼのみが低値になる】

農薬や殺虫剤などに含まれる有機リンはコリンエステラーゼを失活させるため、肝疾患以外で著しい低下を認めた場合、有機リン中毒が疑われます。

他に異常がない場合にコリンエステラーゼのみ低値または高値となることがありますが、低値の場合はコリンエステラーゼ欠損によるコリンエステラーゼ遺伝性欠損症が疑われます。

高値はコリンエステラーゼ変異による本態性家族性高コリンエステラーゼ血症が疑われます。

いずれも症状がなく普段の生活には何ら支障はありませんが、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があります。

逆に本態性家族性高コリンエステラーゼ血症では麻酔抵抗性(麻酔が効きにくい)を示す可能性があるといわれています。

【おまけ】

コリンエステラーゼの値を下げる薬剤も存在します。

下記の薬剤を服用している患者は、コリンエステラーゼの値が低くても肝臓の状態とは無関係の場合もあります。

抗うつ剤・・・・ルジオミール錠、テトラミド錠など

緑内障の点眼薬・・・・眼圧を下げるための点眼薬(コリンエステラーゼを抑える成分が含まれている為)

アルツハイマー型認知症・・・・神経伝達を活性化するために、コリンエステラーゼ阻害剤を服用する場合があります。

2015年11月11日水曜日

肝機能検査-6.アルカリフォスファターゼ(ALP:Alkaline Phosphatase)-

ほとんどの臓器に含まれ、主に肝臓、骨、腸でつくられているリン酸化合物を分解する酵素です。

肝臓で作られて、胆汁の成分として胆管を通って、胆嚢に貯蔵されたあとに十二指腸に排出されます。

肝臓のALPは胆汁に排出されるので、肝臓や胆道系の病気で胆汁が流れる経路に異常が出ると血液中に増えます。

さらに骨や腸に障害が起こっているときも値が高くなります。


【検査目的】

慢性肝炎、急性肝炎、閉塞性黄疸など肝臓や胆道の病気のほか、甲状腺機能亢進症骨軟化症など骨の病気の検査に用いられます。


【基準値】

80~260IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【異常値】

●軽度から中等度上昇 260~600IU/L

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、肝内胆汁うっ滞、胆道感染、薬物性肝障害、脂肪肝、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝がん、悪性リンパ腫、転移性骨髄腫、サルコイドーシス、骨肉腫、慢性腎不全など

●高度上昇 600IU/L以上

顔が黄色くなるような明らかな黄疸が見られます。

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、転移性骨腫瘍、肝膿瘍、悪性リンパ腫、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進、アミロイドーシス

●基準値より低い 80IU/L以下 

体調による一時的な低下で特に問題ない。

稀に遺伝性低ALP血症の可能性もあります。

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【ALPアイソザイム】

肝臓型、骨型、小腸型の三つの型6種類があります。

6種類のアルカリホスファターゼを検査することで、病気を特定していきます。

これは"ALPアイソザイム"と呼ばれる検査方法で、ALPはalkaline phosphatase(アルカリホスファターゼ)の略で、アイソはiso(同じ)、ザイムはzyme(酵素)という意味です。

1.ALP1(肝由来)・・・胆道の閉塞性疾患や肝疾患で高い値を示す

2.ALP2(肝由来)・・・肝疾患や胆道疾患で高い値を示す

3.ALP3(骨由来)・・・骨芽細胞が増殖する病気や骨腫瘍、甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症などで高い値を示す

※成長期の小児の場合、骨芽細胞の活動が盛んなことから、小児におけるALPの値の主体がこのALP3に由来しています※

4.ALP4(胎盤由来)・・・妊娠後期に出現します。
稀に肺がんや卵巣がんで高い値を示す

5.ALP5(小腸由来)・・・B型・O型の一部の人に、脂肪食摂取後に高値を示す場合があります

肝硬変、糖尿病、慢性腎不全などの病気で高い値を示す

6.ALP6(免疫グロブリン結合型)・・・免疫グロブリンと結合したALPで潰瘍性大腸炎などのとき上昇


【ALPアイソザイムで疑われる疾患】

ALP1の出現・・・閉塞性黄疸、限局性肝疾患(肝膿瘍、転移性肝癌、胆道胆石症)

ALP2の増加・・・急性・慢性肝炎(ウイルス性、薬剤性)、胆道系疾患(肝内胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変)

ALP3の増加・・・骨疾患(骨転移癌、クル病、骨軟化症)、副甲状腺機能亢進症

ALP4の出現・・・妊娠後期、悪性腫瘍の一部(肺癌、すい癌、白血病など)

ALP5の出現・・・肝硬変、慢性肝炎、糖尿病、慢性腎不全

ALP6の出現・・・潰瘍性大腸炎の活動期


【おまけ】

B型、O型の一部の人は食後に高い値を示すことがあるので、空腹時で採血をして下さい。

2015年11月4日水曜日

肝機能検査-5.LDH-

LDH(乳酸脱水素酵素は、からだの中でブドウ糖がエネルギーに変わるときにはたらく酵素で、血液細胞、肝臓、腎臓、肺、心筋、骨格筋など全身のほとんどの細胞に含まれていています。

これらの臓器や細胞がダメージを受けると、血液中に流れて高値になります。


【検査目的】

肝臓病、心臓病、血液の病気やいろいろな臓器のがんなどで高値になることが多く、これらの病気のスクリーニング検査として用いられています。

LDHはいろいろな臓器に含まれているので、この検査で異常値がでても、どの臓器に障害があるかまでは分かりません。

LDHの値は妊娠、運動などでも一時的に上昇します。
 
【基準値】

120~245IU/L

※基準値の範囲よりも低くなっている場合は、基本的に問題はありませんが、極端に数値が低い場合は、極めて稀なケースとして先天的に乳酸脱水素酵素の量が少ない場合もあります※

【異常値】

軽度の上昇:245~350IU/L・・・心不全、心筋症、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、関節リウマチなど

中等度の上昇:245~350IU/L・・・悪性リンパ腫、慢性白血病、悪性腫瘍、急性肝炎、心筋梗塞など

高度上昇:350~500IU/L以上・・・悪性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、急性肝炎、心筋梗塞、悪性貧血など

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

【LDHアイソザイム】

LDHには、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムが存在します。

このアイソザイムは、病気によって増える種類が異なります。

LDHの値が高いの場合は、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムを調べて、壊れた細胞や臓器がどこかを調べます。

※LDHアイソザイムの検査でもがんか否かを診断することは出来ません※

LDH1とLDH2が上昇・・・心筋梗塞、溶血性貧血、悪性貧血

LDH2とLDH3が上昇・・・白血病、多発性筋炎、筋ジストロフィー

LDH3とLDH4とLDH5が上昇・・・転移がん

LDH5が上昇・・・急性肝炎、肝細胞癌、子宮がん


【おまけ】

LDHが一番上昇するのは、悪性リンパ腫と白血病の場合が多い
 

2015年10月26日月曜日

肝機能検査-4.γ(ガンマ)-GTP-

γ-GTP(ガンマーグルタミルトランスペブチターゼ)はGOTやGPTと同様に、たんぱく質を分解する酵素のひとつで、おもに肝臓の障害や、胆汁の流れが悪くなると血液中で上昇します。

【検査目的】
 
肝臓細胞や胆管細胞が壊れたことの指標として検査されます。

※γ-GTPが血液中に多くなっても、それ自体が何か悪い影響を及ぼすことはありません※

※健康診断でγ-GTPを測定する目的はアルコ-ル脂肪肝の測目的で検査されます※

【基準値】

成人男性 10~50IU/L

成人女性 9~32IU/L

※女性は女性ホルモンの影響で数値が低い※

※基準値よりも低すぎても問題はありません※

※人によっては異常がなくても生まれつきγ-GTP数値が高かったりする場合があります※

※γ-GTPは比較的アルコールに短期的に反応するので、飲酒を一週間もやめれば下がりだし、γ-GTPの値が100以下であれば、節酒あるいは禁酒することですぐに正常値にもどります※

【異常値】

○軽度の増加・・・基準値の上限~100IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性肝炎、脂肪肝

※肝硬変、肝がんの可能性もあり※

○中等度の増加・・・100~200IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性活動性肝炎

※肝硬変、肝がん、脂肪肝、胆道疾患の可能性もあり※

○高度の増加・・・200~500IU/L

アルコ-ル性肝障害、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

※慢性活動性肝炎の可能性もあり※

○超高度の増加・・・500IU/L以上

急性アルコ-ル性肝炎、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

【100IU/L以上になると必ず受診!!】

禁酒をして受診し、その他の肝機能検査と腹部エコー検査を受け、何が原因で高値になっているかを調べる必要があります。

【飲酒しない人でもγ-GTPが高くなるのは??】

全く飲酒しない人でもγ-GTPが高くなることはあります。

非アルコール性脂肪肝、胆石、胆道系のがん、原発性胆汁性肝硬変の場合や、抗てんかん剤、抗けいれん剤、向精神薬、ステロイド剤の服用によっても高くなります。

【おまけ】

健康な肝臓には3%を超える程度の脂肪が含まれていますが、この脂肪が10%を超えると細胞の中に泡状のものが現れるようになります。

この泡状が肝細胞の小さな集合体(肝小葉)の中に現れるようになった状態を脂肪肝といいます。
 
脂肪肝の原因は、肥満とアルコ-ルの飲みすぎが原因とされ、脂肪肝で肝臓に溜まった脂肪のほとんどはエネルギ-の過剰摂取と運動不足が原因で溜まった脂肪肝です。

肥満度が20%以上の場合、脂肪肝になりやすいといわれています。

脂肪肝を放置していると、脂肪肝が肝臓の繊維化を促進し、自覚症状がないまま肝硬変に移行してしまうことがありますので注意が必要です。

更に動脈硬化や高血圧になりやすく、心臓病や脳卒中のリスクも高いなってきます。

2015年10月19日月曜日

肝機能検査-3.GPT/GPT比-

健康な時のGOT/GPT比は1以上ですが、病状によって数値や比率が変わってくるので、両者の比較が重要になります。

【検査目的】

肝炎・心疾患・筋疾患の診断に使います

【検査目的】

GOTとGPTの比をとることにより、各種肝疾患のおおよその鑑別ができます。

1.慢性肝炎と肝硬変の鑑別

2.アルコール性肝炎の診断

3.心筋梗塞急性期など筋疾患の診断

【基準値】

GOT/GPT比は1以上となります。

すなわちGOT値がGPT値より大きいことになります。

【異常値】

GOT/GPT<1(GOT値が小さい)…慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変初期、胆汁うっ滞など

GOT/GPT>1(GOT値が大きい)…劇症肝炎、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、進行した肝硬変、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞など

GOT/GPT>2(GOT値が2倍超)…原発性肝がん、筋ジストロフィーなど

※急性肝炎では、GOPとTGPT両方の値が同時に上昇しますが、他の肝障害では一方が上昇します※

※慢性肝炎や肥満が原因による脂肪肝などでは、GPTの上昇が大きく、GOT/GPT比が1以下になります※

※脂肪肝でもアルコール性の場合や、肝硬変、胆汁うっ滞症などではGOT値の上昇が大きく、肝がんでは2~3倍にまでGOT値が上昇します※

2015年10月12日月曜日

肝機能検査-2.GPT-

GPTはGlutamic Pyruvic Transaminase(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼ばれる酵素です。

GPTは肝細胞に多く含まれているため、肝臓の細胞が障害を受けたり破壊されることにより血液中のGPTの値が異常に上昇してきます。

心筋や腎臓などにも存在しますが、特に肝臓に多く存在しくGPOTに比べて他臓器への分布が少ないため肝特異的といわれ、肝炎の経過観察によく利用されます。

半減期がGPTの10~20時間に比べて40~50時間と長いことから、肝障害の進行を知る手がかりになります。

肝臓の病気の種類や障害の程度によって、GPTの上昇度に差があり、細胞の障害が強いほど当然数値は高くなります。

逆に肝細胞が破壊し尽くされるとむしろGPTは低下します。

【検査目的】

肝臓の異常を調べる検査です。

【GPTの値が異常の時】

何らかの異常で肝細胞が破壊されることにより血液中に出てきたと考えられます。

GPTはほとんど肝臓にしか存在しない酵素ですから、GPT飲みが高い時には肝臓に異常があると判断します。

肝臓に関する情報より多くを得る為にその他の検査する必要があります。

更にエコー検査(超音波検査)も併用します。

【基準値】

36IU/l以下

※施設によって若干異なります※

【高値】

1000IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、劇症肝炎、薬物性肝炎、虚血性肝炎など

500IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、総胆管結石など

100~500IU/l … ウイルス性慢性肝炎、自己免疫性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、脂肪肝、閉塞性黄疸、原発性胆汁性肝硬変など

33~100IU/l … ウイルス性慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌、脂肪肝、自己免疫性肝炎、薬物性肝炎、閉塞性黄疸など

【低値】

特に問題はありません。

【検査時の注意点】

赤血球中にも多く含まれるため溶血(赤血球が壊れる)すると値が高くなります。

【おまけ】

昔からGPTと呼ばれてきましたが、近年生化学者がALT(Alanine Aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ)という名称を変更したためにGPTと呼ぶよりALTと呼ぶ施設が多くなってきています。

これは単に呼び方が代わっただけです。