血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年1月27日日曜日

尿検査-No.1 尿検査とは-


尿検査は、排泄された尿で検査を行います。

一般的には「検尿」と呼ばれ、体調が悪く受診した時の検査や健康診断の際にも実施されます。

尿は、血液中の人体に有害な物や新陳代謝の老廃物などを体外へ捨てるために腎臓で濾過されて作り出されます。

普段、何気なく排泄している尿は一種の生理現象としての認識しかありませんが、尿を調べることはその人の健康状態を確かめる大切な検査のひとつです。

健康な人では、1日に約1500ml前後の尿を排泄しますが、身体の調子が悪ければ、尿にもその異常が表れます。

例を上げれば、尿に血が混じったり、ニオイがいつもと違ったり、排尿時に痛みを伴うなど、さまざまな症状が現れます。

尿検査では、以下の項目を調べます。

1.尿の色調と比重

2.pH

3.タンパク質

4.糖

5.ウロビリノーゲン

6.結石の有無

7.尿路感染の病原体

8.妊娠テスト

9.赤血球・白血球の有無

10.薬物

次回からそれぞれの検査項目について詳細に紹介していきます。

2013年1月19日土曜日

インフルエンザ迅速検査について


013年1月現在、全国的にインフルエンザが流行期に入りました。

手洗い・マスクの着用・ウガイを励行して各自が感染予防に心がけて下さい。

今回は、インフルエンザについて解説します。

インフルエンザウイルスは、A型・B型・C型の3型に分類されています。

毎年定期的に流行するのは、A型のインフルエンザウイルスです。

A型インフルエンザウイルスはヒト、鳥類、ウマ、ブタなどに感染します。

B型ウイルスの場合は、毎年の季節性A型インフルエンザの流行が終わった直後の2月~3月にかけて流行する事が多いようです。

そして、ヒトからヒトへの感染経路をもつウイルスとして確認されています。

C型インフルエンザは、症状が通常のかぜと同程度であり流行性が低いウイルスであるためにあまり馴染みがありません。

近年では、インフルエンザの感染を簡単に検査できる迅速検査キットの普及により、インフルエンザは冬だけでなく一年中を通じて発生していることが明らかになっています。

咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体を使って迅速にインフルエンザを診断するキットが普及して、利用されていますが、検査を受けるタイミングによっては、インフルエンザに感染していても陰性となることがあります。

検査で陽性と出た場合は、まずインフルエンザと断定して間違いはありませんが、陰性と出た場合にはインフルエンザであることもインフルエンザでないこともあり得るので注意が必要です。

【インフルエンザ検査を受けるタイミング】

インフルエンザに感染して発病後24時間以内で受けると、まず陰性(偽陰性)となってしまいます。

その為に診察した医師は、"検査は陰性だあるが、臨床症状や流行状況から考えてどう考えてもこれはインフルエンザ"と考えれば発症後48時間以内なら効果のある抗インフルエンザ薬を処方します。

医師が抗インフルエンザ薬を処方した場合には検査の結果が陰性であっても指示通りに服薬を続けることは必要です。

インフルエンザ検査を受けるタイミングは、発熱した24時間~48時間以内が検査の陽性率も高く抗インフルエンザ薬の効果も期待できるタイミングと言えます。

重要なことは、発熱したら直ぐにでも受診してインフルエンザの検査を受けることが良いとは言えません。

2013年1月9日水曜日

ノロウイルスについて-2.ノロウイルス検査-


ノロウイルスは増殖培養する方法がまだ見つかっていないため、検査法としては便中のノロウイルス粒子を電子顕微鏡で直接検査する必要があります。

また、ELISA法やノーウォークウイルスの遺伝子配列を元にしたRT-PCR法も開発され、診断に用いられていますが、日常的な診療での利用には無理がありました。

2012年4月1日、大塚製薬が、ノロウイルス抗原キット「クイックナビ-ノロ」の簡易検査を発売しました。

この検査は簡易で検査過度の高い検査ですが、以下の制約があります。

【検査の制約】

1.3歳未満の患者

2.65 歳以上の患者

3.悪性腫瘍の診断が確定している患者

4.臓器移植後の患者

5.抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者

1~5以外の患者には保険適用での検査は出来ません。

【測定原理】

糞便をテストデバイスの滴加穴よりテストストリップのサンプルパッドに滴加すると,試料は毛細管現象によりコンジュゲートパッドへ移動します。

そこで抗NV-GI及び抗NV-GII抗体結合ラテックスが溶解し,試料中のNV抗原と免疫複合体を形成します。

この免疫複合体はテストストリップのメンブレン内を毛細管現象により移動し,テストライン上に固定化された抗NV-GI又は抗NV-GIIもしくは抗NV抗体に特異的に捕捉され,青色のラインを呈します。

このラインの有無を目視で確認し,試料中のNV抗原の有無を判定します。

また,反応に関与しなかった余剰の抗NV-GI及び抗NV-GII抗体結合ラテックスはコントロールラインに固定化された抗マウス免疫グロブリン(Igs)抗体(ウサギ)に捕捉され,青色のラインを呈します。

これはテストストリップ上で反応が正常に行われたことを示します。


【検査上の注意】

検体としては自然に排泄された糞便を使用する必要があります。

以下の検体は、正しい検査結果が得られ ないことがあることから使用できません。

1.嘔吐物(非糞便)

2.直腸から採取した糞便(直腸便)

3.浣腸液成分を含む糞便(浣腸便)

4.嚥下補助食品,経管栄養食等ゲル化剤等を含む食事を摂取した糞便

5.新生児の糞便

【操作方法】

1.便懸濁液の入っている検体浮遊液チューブに試料ろ過フィルター(糞便用)を確実に装着し,ゆっくりと逆さまにしてから,チューブをつまんでテストデバイスの試料滴加穴に3滴滴加します。

2.15~30℃で15分間静置します。

3.テストデバイスの判定部に出現するラインの有無を確認します。

【判定】

青色のコントロールラインと青色のテストラインを目視判定します。

※判定は15分間の反応時間経過後,速やかに行います※

(1) 陽 性

青色のコントロールラインと青色のテストラインが出現した場合,陽性と判定します。

(2) 陰 性

コントロールラインのみが出現した場合,陰性と判定します。

(3) 検 査無 効

テストラインの出現の有無によらず,コントロールラインが出現しない場合,検査は無効と判定し,再検査を行います。



【判定上の注意】

1.判定は所定の反応時間15分で行い、15分以降の結果は信頼性がありません。

2.コントロールライン又はテストラインの一部が欠けたり,色のにじみがある場合やライン以外に斑点状の発色がある場合でも,"ライン"が認識されれば検査結果は有効となります。

2013年1月1日火曜日

謹賀新年

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します。

2012年12月28日金曜日

ノロウイルスについて-1.ノロウイルスとは-


2012年11月頃から日本全国でノロウイルスが流行し始め、12月現在大流行しています。

未だ終息する気配がないことから、緊急にノロウイルスについて解説していきたいと思います。

ノロウイルスは、以前は小さな球形状のウイルス形状を持つことから"小型球形ウイルス(SRSV)"と呼ばれていましたが、2002年の国際ウイルス学会にて"ノロウイルス"と命名されています。

ノロウイルスは、ヒトに経口感染して十二指腸から小腸上部で増殖し、伝染性の消化器感染症を引き起こします。

死に至ることは稀ですが、苦痛(刺すような腹痛・下痢と嘔吐・発熱)が極めて大きく、稀に十二指腸潰瘍を併発することもあります。

現在特異的な治療法は確立されていなく、対処療法のみです。

感染から発病までの潜伏期間は12時間~72時間(平均1~2日)。

症状が収まった後も便へのノロウイルスの排出は1~3週間程度続き、7週間以上続くとも言われています。

その為に症状が収まった人の便から第三者へ感染する危険性が極めて高いのが特徴です。

流行は1年中見られますが、特に11~3月の発症が多く報告されています。


【症状】

主症状としては、突発的な激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、38℃程度の発熱。

嘔吐の始まる数時間前から胃に膨満感やもたれを感じる場合もあります。

これらの症状は通常、1~2日で治癒し、後遺症が残ることはありませんが、免疫力の低下した老人や乳幼児では治癒が長引くことがあります。

死亡した例としては、吐瀉物を喉に詰まらせることによる窒息や誤嚥性肺炎による死亡が報告されています。

また感染しても発症しない不顕性感染や風邪症候群と同様の症状が現れるのみの場合もあります。


【感染経路】

ノロウイルスによる感染症は経口感染(口からの感染)が原因となります。

・ノロウイルスで汚染された食材や食品を喫食しての感染。

・ノロウイルスで汚染された水を飲用しての感染。

・ノロウイルス感染者の糞便や吐瀉物から手指を介して感染。

・飛散した飛沫から空気感染

・ノロウイルス感染者が十分に手を洗わず調理した食品を食べての感染。

※ノロウイルスは、衣服や寝具、家庭用品、家具などの表面に付着しても数週間生存することができることから、十分な手洗いや器具の洗浄が必要となります※

※ノロウイルスはアルコール(75%エタノール)では死滅しませんので、消毒剤としては塩素が一番適しています※

※加熱に関しても60度では死滅せず85度以上の加熱が必要となります※

2012年12月18日火曜日

結核の新しい検査-結核菌特異的IFN-γ(ELISPOT)-


結核の新しい検査、結核菌特異的IFN-γについて紹介します。

ELISPOT法は、QFT (クオンティフェロン) 検査と同様に結核感染の有無を診断する検査方法です。

【検査方法】

結核感染が疑われる患者から採血してリンパ球を分離し、 抗ヒトインターフェロン-ガンマ (IFN-γ) 抗体を底部にコーティングした培養プレートに一定量を分注後、 結核菌特異抗原ESAT-6およびCFP-10を添加して、20時間前後培養します。

結核感染者のリンパ球からはIFN-γが分泌され、抗ヒトIFN-γ抗体と結合することから、この状態を可視化し、IFN-γを産生する細胞の個数を計測し、IFN-γ産生細胞の数により結核感染を診断します。

【使用目的】

結核感染疑いのある人に対する補助診断として使用。

原因不明の熱が続き、結核に似た症状のある方にこの検査を行えば、 短期間で結核を発病しているか否かの診断が行えます。

感度が97.1%と非常に高いことから、この検査で結核の可能性があれば、結核患者の早期発見につながり迅速な対応が可能となり、感染の広がりを防止することが出来ます。

感染リスクの高い人や発病リスクの高い人に有効な検査法です。


【感染リスクの高い人とは】

医療従事者や集団生活者は、結核を発病した場合周囲の第三者への感染拡大という大きな影響を及ぼすことから、定期的に結核菌への感染を確認し、必要に応じて予防内服を行うことから、集団感染リスクを抑えることが可能となります。

【発病リスクの高い人とは】

何らかの理由で免疫力が落ちている人は、一般的に結核の発病リスクが高いと考えられています。

例えば、透析患者、糖尿病患者、免疫抑制治療を行っている患者、HIV感染者は発病リスクが当然高くなります。

従って免疫抑制治療を行う前には、結核の感染診断を行うことが推奨されていますし、HIV感染者も当然結核感染の有無の検査をしておく必要があります。

2012年12月9日日曜日

結核について


結核は呼吸器感染症で、結核を発病している人が咳やくしゃみをしたときに、結核菌が飛び散り、 吸い込むことにより感染することがあります。

結核菌を吸い込んでもすべての人が感染をするわけではなく、体の免疫力が勝てば当然結核菌は体内から排除されますが、免疫力が負ければ当然感染することになります。

結核菌が体内に残っていても体内に封じ込められたまま活動しない状態を「感染」と言い、「発病」は結核菌が活動を始め、菌が増殖していく状態を言います。

症状がすすむと咳やたんとともに空気中に結核菌が吐き出される (排菌) ようになりますが、発病していても排菌していない場合は結核を第三者に感染させる心配はありません。

感染した人が発病する確率、5~10%と考えられていますが、発症原因の解明は未だされていません。

言えることは、過労蓄積などに酔って免疫力が弱まっている時には注意が必要ということです。

感染から発病への契機とる最も重要な契機は免疫低下で、近年では特にHIV感染が要因となっています。

結核は、依然として世界各国で蔓延しています。

開発途上国だけでなく先進各国及び日本でも蔓延しています。

日本人の結核の罹患率 (人口10万人対の新規結核患者数:17.7) は、米国 (4.1) の4.3倍、カナダ (4.7) の3.8倍と際立って高いのが現実です。

また、近年ではHIV感染による日和見感染症の一つとして結核が注目され、感染者も増加しています。

新しい結核検査については次回解説致します。

2012年12月3日月曜日

HLA検査-7.まとめ「HLAを知って病気を予防する」-


内外の多くの研究者により、HLAとある種の疾患に関係があることが明らかにされています。

自分自身のHLAを知ることによって、どのような疾患にどの程度かかりやすいかがわかることがあります。

例を上げますと、

・糖尿病に他人より4倍発症しやすい(B54、DQB1*04:01、DRB1*04:05)

・腫瘍性大腸炎を4倍発症しやすい(DRB1*09:01、DR2、B52など)

・ベーチェット病(Behcet病)に9.3倍発症しやすい(B51)などがあります。

しかしマーカーとなるHLAを保有していても必ずその疾患を引き起こすわけではありません。

自分自身のHLAを知ることによって、日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことができるので、自分自身のHLAを知ることは意味があります。

2012年11月25日日曜日

HLA検査-6.HLAとナルコレプシーとの関連性-


ナルコレプシーは、日中場所や状況の区別なく起きる、強い眠気の発作を主な症状とする睡眠障害で、「居眠り病」とも呼ばれています。

日本人における有病率は0.16~0.18%と言われています。

ナルコレプシーはすべての人種において発症が見られますが、日本人のナルコレプシーの有病率は世界で最も高く、1万人当たり16人~18人(0.16~0.18%)と言われています。

ナルコレプシーの発症年齢は、10代から20代前半に集中しており、特に14~16歳がピークという統計があり、中年期以降に発症することは稀とされています。

ナルコレプシー発症原因は、脳内物質や血液が深く関係していると言われていますが、未だ不明な点も多く、すべては解明されていないのが現状です。

ナルコレプシーの病因のひとつとして関連性が注目されているは、HLAとの関連性があります。

日本人症例の全例がHLA-DR2/DQ1という血清型をもつことが発見され、現在、HLA遺伝子のDQB*0602(ハプロタイプ)が生物学的指標として診断補助に用いられています。

※健康な人でも同じHLAを持っている場合もあるので、このHLAを保有していれば必ずしもナルコレプシーが発症するとは言えません※

2012年11月12日月曜日

HLA検査-5.HLAとベーチェット病との関連性-


ベーチェット病とは全身に色々な症状が繰り返し現れる病気で、トルコの皮膚科医ベーチェットによって初めて報告された病気です。

ベーチェット病には、口腔内アフタ、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の四つの症状があります。

ベーチェット病患者は、HLA-B51抗原を有していることが多く、患者群では40-80%と高率でであり、健常群の10-30%と比べて明らかに高い保有率が確認されています。

即ち、ベーチェット病患者ではHLA-B51抗原を保有する人が有意に多いことです。

このことは、国や人種を越えて認められる所見であり診断の参考になります。

※しかし、HLA-B51抗原を保有する人が必ずしもベーチェット病になるとは限りません※

近年、第6染色体のHLA領域の解析によってHLA-A26抗原が、HLA-B51抗原とは連鎖しないで独立にベーチェット病と相関していることもわかってきました。

その結果、HLA-A26抗原がベーチェット病の第2の疾患感受性遺伝子であることが示唆されています。

HLA-B51抗原、HLA-A26抗原の両抗原のどちらかを保有している患者は、ベーチェット病患者全体のおよそ80%に認められています。

HLA-B51抗原とHLA-A26抗原のどちらを有するか、または両抗原とも有するか、両抗原とも保有しないかということで、ベーチェット病の病態や重症度に違いも認められています。

2012年11月4日日曜日

HLA検査-4.HLAと強直性脊椎炎との関連性-


強直性脊椎炎とは、脊椎、仙腸関節、股関節や肩の関節などに炎症が起こるいくつかの病気をまとめて脊椎関節炎と呼びますが、強直性脊椎炎はその中の代表的な病気です。

強直性脊椎炎は、病状が進行すると脊椎の間に強直が起こるのが特徴です。

強直性脊椎炎の原因は、未だ明らかにはされていません。

強直性脊椎炎の患者は、白人では0.4%と多く、日本人では、0.0065%と低く中国・韓国人は、発生頻度が高いとされています。

また、男女比は12:1と男性に多く、発症年齢は、10歳~35歳です。


しかし、強直性脊椎炎はHLAのうち、ある特定の遺伝子型であるHLA-B27をもつ人が多いことが明らかにされています。

しかし、強直性脊椎炎の患者の中には、HLA-B27以外のHLA型を有する人もいること、病気を起こすのはHLA-B27をもつ人の中でも一部であることからして、HLA-B27だけが強直性脊椎炎を引き起こすとは言えません。

※HLA-B27を有する人、即ち強直性脊髄炎ではありません※

現実、強直性脊椎炎の人の90%がHLA-B27陽性であるという事実は間違いありません。

このことは、HLA-B27の頻度の多い国でも少ない国でも同様の結果がみられます。

強直性脊椎炎とHLA-B27の関連については、

1)HLA-B27自体が関与するという説

2)HLA-B27と極めて近くに存在するほかの遺伝子が原因とする説

二つの仮説がありましたが、近年では、種々の研究結果からHLA-B27自体が原因であるという説を強く支持されています。

現在では、HLA-B27 がどのようにして強直性脊椎炎を引き起こす原因になるのかということが研究の焦点になっています。

2012年10月28日日曜日

HLA検査-3.HLAと関節リウマチの関連性-


HLAタイプと関節リウマチの発生率に関連性があることが現在では明らかにされています。

ある種のHLAタイプを持つ人は、間接リウマチになりやすい傾向があります。

関節リウマチの患者を調べた結果では、患者のおよそ70%がHLAのDR4を持っていることが明らかにされています。

その結果として、HLAのDR4を持っている人が関節リウマチになる危険率は、HLAのDR4を持っていない人の4~5倍であり、症状も重度になりやすくなります。

関節リウマチの人全てがHLAのDR4を持っているのではなく、関節リウマチの人の60-70%くらいが持ち、健康な人でもおよそ40%がこの遺伝子を持っているといわれています。

HLAは関節リウマチを引き起こす決定要因というよりは、関節リウマチの遷延化や重症化に関与するとも考えられています。

現時点では、何故間接リュウマチになるかという原因は解明されていませんが、関節リウマチの発症には遺伝的因子と環境的因子が複雑に関与していると考えられています。

では、素朴な疑問として関節リウマチ患者の家系内に関節リウマチの人が多いのは何故でしょう?

関節リウマチを引き起こす遺伝因子の影響は、絶対的なものではなく発症に関わる関与は遺伝がおよそ30%人が多く存在しても当然のことと言えます。

【注意】

※HLAのDR4を保有している人は、必ず間接リユマチを発症するとは限りません。

2012年10月21日日曜日

HLA検査-2.HLAと病気との関係-


多くの研究者により、HLAとある種の病気とに関係があることが明らかにされています。

自分自身のHLAを知ることによって、どのような病気に、どの程度かかりやすいかがわかることがあります。

ただし、ある種の病気を発症させるマーカーとなるHLAをもつ人が必ずその病気を必ず発症するわけではありません。

自分のHLAを知ることによって日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことが可能となります。

ひとつ例を上げますと、Ⅰ型糖尿病に他人より4倍なりやすいHLAのB54、DQB1*04:01、DRB1*04:05などを持つ人は、日頃から食生活に気をつけて生活することにより、糖尿病を予防することも可能となります。

次回からは具体的な病気とHLAの関係を解説しいたします。

2012年10月16日火曜日

HLA検査-1.HLA検査とは-


HLAは1954年に白血球の血液型として発見されたことから、「Human Leukocyte Antigen」と命名されてその頭文字を取って一般的にHLAと呼ばれています。

日本語では、「ヒト白血球抗原」と訳されています。

HLAは発見当初は、白血球だけに存在すると考えられていましたが、ほぼすべての細胞と体液に分布していていることから、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いていることが明らかにされています。

一般には、HLAは臓器移植の時に調べられる検査しとして認識されています。

HLAもメンデルの遺伝の法則に従って遺伝しますから、遺伝子は父親と母親から受け継がれることになります。

人はHLAの遺伝子型ごとにふたつの型を有します。

その理由としては、父親と母親の型を1つずつ受け継いでいるからです。

両親から受け継いだ遺伝子の染色体は一対で、そのためにHLAも同様に両親から受け継いだふたつの型が一対となってひとつのセットを形成しています。

これを「HLAハプロタイプ」と呼びます。

HLAはA,B,C,DR,DQ,DPなど多くの抗原の組み合わせで構成され、さらにそれぞれが数十種類の異なるタイプ(アリル)をもち、ハプロタイプの組み合わせは、数万通り存在します。

※ハプロタイプは、生物がもっている単一の染色体上の遺伝的な構成(DNA配列)のことを言います。※

HLAはある種の疾患やHIV感染に関与していることが明らかになってきています。

次回からはこれらについて順次解説していきます。

2012年10月7日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その3.PapiPlex(TM)法-


HPVタイピング解析法:PapiPlex(TM法)

PapiPlex(TM)法は、株式会社ジェネティックラボで開発されたHPV解析法で、迅速・簡便なおかつ低コストで高い再現性を有する優れた検査です。

PapiPlex(TM)法の検出感度は、反応液中に100コピーのHPVゲノムDNAが存在すれば、16種類全ての型で検出・同定が可能です。

【同定可能なHPV型】

HPVの6、11、16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66の16種類が特異的に検出できます。

更に複数の型のHPVが感染していた場合でも各々の型について同定することもできます。

【保険点数】

2000点で、健康保険が適応となりますから、自己負担は3割で600点即ち6000円です。

※受診してこの検査を受けると検査代金以外に、初診料・検査管理料・採血料などが加算されます※

2012年9月30日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その2.検出可能なタイプとは-


HPV検査は、14種のHPVハイリスク型の中の一種でも感染が見られれば「陽性」となり、その後細胞診で定期的な追跡検査が行われます。

しかし、この検査では感染しているHPVの型別の判定や、尖圭コンジローマを起こす6型・11型の診断はできません。

感染しているHPVの型を調べるのがHPVタイピング検査です。

HPVタイピング検査は、子宮頸癌と関係が深いハイリスク型の中で、特に日本人と関係が深い14種類(16,18,31,33,35,39,45,51,52,53,56,58,59,68型)と、子宮頸癌とは直接関係はありませんが性行為感染症のひとつの尖圭コンジローマを引き起こす6,11型の感染の有無も調べることが可能です。

HPVは、およそ80%の人が一度は感染しますが、多くは自然に体内から消えていきます。

がんになるのは、体内から消えることなく持続的に感染が続いたごく一部の場合です。

男性が問題になるのは6型、11型の感染によるイボの発症ですが、尖圭コンジローマは感染してから、3週間~8ケ月(平均で3ケ月)しないと、イボが発現して来ません。

そのイボは、男性では亀頭周辺だけでなく陰裏、肛門周辺や外尿道口など、女性では外陰部、膣、子宮頚部、肛門周辺や外尿道口などに出来ます。

当然この検査は、女性だけでなく男性も受けることが可能です。

2012年9月23日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その1.検査の意義


HPVはヒトの皮膚、膣、口腔などに感染してイボをつくるウイルスです。

このウイルスの中には子宮頸がんを引き起こす型があり、それらを「ハイリスク型」呼び、14種類が知られています。

また、「ローリスク型」と呼ばれる6型、11型は尖圭コンジローマを引き起こしますが、これらは子宮頸がんとは関係ありません。


HPVは、現在100種類以上の遺伝子型が同定されています。

例えば、子宮頸癌からは16, 18, 31, 33, 35, 39,45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 82, 26,53,66の各型が証明されています。

HPVの6型、11型は尖圭コンジローマの原因です。これらは子宮頸がんとは関係ありません。

子宮頸がんを引き起こすHPVは、16型、18型がその代表で、16型が全体の過半数、HPV18型が約10%を占めています。

この「ハイリスク型」のHPVの感染があるかどうかを調べる検査をHPV検査と言いますが、このHPV検査では、「ハイリスク型」のどの型に感染しているのかは判断できません。

その為に、高度な技術を用いてHPVの遺伝子(DNA)の型を解析し、HPVの遺伝子型を調べる検査が「HPVタイピング検査」です。

2012年9月16日日曜日

A型肝炎検査-5.HAV-RNA検査-


HAV-RNA検査は、血液中及び糞便中のHAVを直接検査する最も信頼性の高い検査ですが、現時点において技術的に確立された測定法がないことと、HAV-RNAを検査する検査キットがありません。

更にHAV-RNA検査を実施してたとしても、特殊検査となり健康保険の適用外であるために日本においては日常検査としては実施されていません。

従って、HAV感染の判断はIgM-HA抗体が第一選択肢となります。

IgG-HA抗体は、過去の感染を調べる検査で、衛生状態の悪い国へ出張・旅行をする前にはこの検査を受けて陰性であれば、HAV感染防御抗体がないいことからA型肝炎ワクチンを接種しておくことが無難です。

近年オーラルセックスによるA型肝炎の感染も報告されていますので注意が必要です。

2012年9月9日日曜日

A型肝炎検査-4.IgG-HA抗体検査-


IgG型抗体は、IgM型抗体にやや遅れて1~4週後に陽性化しますが、その後も長期間陽性のままとなります。

IgG-HA抗体を測定する理由としては、過去にHAVに感染したかどうかを調べることにあります。

【基準値】

単位:Cut off index

測定方法:EIA法

陰性 0.8未満

判定保留 0.8~1.2未満

陽性 1.2以上

※測定に使用する機種によっては、数値が若干異なる場合があります※

【検査結果の解釈】

陰性 過去にも現在もHAVに感染していない。

陽性 過去にHAVに感染し、現時点では治癒したと判断でき、再度HAVに感染することはありません。

A型肝炎の感染予防にはA型肝炎ワクチンがありますが、IgG型抗体が陽性の場合には、ワクチンの接種は必要ありません。

2012年9月2日日曜日

A型肝炎検査-3.IgM-HA抗体検査-


HAVに感染すると血液中に発症の初期(1~4週間)からIgM-HA抗体が出現し、約3~6カ月後に消失します。

血液中のIgM-HA抗体を検査して陽性であれば、最近HAVに感染したことを意味します。

従ってA型肝炎の鑑別診断にはIgM-HA抗体の測定がより確実な手段となります。

【基準値】

測定方法:EIA法

単位:Cut off index

陰性  0.8未満

判定保留  0.8~1.1

陽性  1.2以上

【検査結果の解釈】

陰性  HAVに感染していない。

陽性  3~6ケ月以内にHAVに感染したことを意味します。

2012年8月26日日曜日

A型肝炎検査-2.HA抗体検査-


A型肝炎検査は、血液中のHAVに対する抗体を調べます。

血液を採取して、血液中にHA抗体(A型肝炎ウイルスに対する抗体)が存在しているかを調べます。

HAVに感染したA型肝炎患者の血液中には、発症の初期にはIgM-HA抗体が出現し、約3~6カ月後には消失します。

一方、IgG-HA抗体は、IgM-HA抗体にやや遅れて1~4週後に血液中に出現しますが、その後も長期間陽性を持続します。

HA抗体検査は、

①IgM-HA抗体検査

②IgG-HA抗体検査

の2種類の検査があります。

これら検査についての意義・検査結果の解釈等は、次回解説致します。

2012年8月19日日曜日

A型肝炎検査-1.A型肝炎とは-



A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV:hepatitis A virus )によって起こされる急性のウイルス性肝炎です。

A型肝炎ウイルスの感染経路としては、A型肝炎に感染した人との接触、A型肝炎ウイルスに汚染された食品・魚介類、肛門を介したオーラセックスなどあります。

A型肝炎ウイルスの潜伏期は通常15-50日、平均で28-30日です。

症状としては、食欲不振、嘔気、嘔吐、腹痛、気分不快、発熱、頭痛などが挙げられます。

黄疸が現れる前に暗色の尿が出てから前触れ症状に続いて黄疸が現れ、黄疸の出現とともに、前触れ症状は消える場合もありますが、長引く場合もあります。

黄疸は日本人は肌が黄色いために分かりにくいですが、白い眼球の白目の部分が黄色く染まることから判断はできます。

黄疸などの症状が現れなくてもA型肝炎になっている場合がありますが、この場合は血液中のAST、ALTなどの肝機能検査や抗HAV抗体検査などをすることで感染の判断は可能となります。

A型肝炎ウイルスは、急性の肝炎を引き起こしますが、長期にわたる慢性の肝炎にはまずなりませんし、完治すれば、一生涯にわたる免疫を獲得することから、再度感染することはありません。

更にいつまでも感染源としてA型肝炎ウイルスを持ち続けることもありません。

※現在日本においては、A型肝炎ウイルスの流行はほとんど無く、発展途上国への旅行で、A型肝炎ウイルスに汚染された水・氷・女貝類・果物などから感染して帰国する人が多く見られます。

※肛門を口で愛撫するオーラルセックスで感染者(特に男性同性愛者)が多く発生しています。

2012年8月12日日曜日

C型肝炎検査-【附則】HCV感染予防ワクチンは何故出来ないか?-


多くのウイルス感染は、病原体であるウイルスに感染すれば、

1.感染指標となる感染抗体

感染の判断をするために調べる抗体(HCV抗体)

2.次回感染時にウイルスを無毒化する中和抗体(感染防御抗体)

が産生されます。

HCV の場合はHCVの外殻(エンベロープ)の一部が非常に変異を起こしやすいため、HCV に感染した宿主(人)がこの部分に対する抗体を作った時には、すでにHCVエンベロープのタンパク構造に変異が起こっているため、うまく抗原抗体反応を行うことができません。

このように、HCV には宿主に中和抗体(感染防御抗体)を作らせず、自分自身の身の保全を図っています。

このようにHCVは、エンベロープの変異を繰り返しながら持続感染状態を維持しています。

動物実験においても、感染させたHCVはエンベロープを次々と変化させて、生体の免疫機能の攻撃からうまく逃れて生存することが確認されています。

HCV はこのようなエンベロープの急速な変異を付く返す特徴を持っているため、現在のところ、感染を予防するために有効なワクチンや免疫グロブリンはまだできていません。

これは、HIVについても同じことが言えます。

2012年8月5日日曜日

C型肝炎検査-3.サブタイプ検査-


HCVは、いくつかの型に分類できます。

即ち、ジェノタイプ(genotype)とセログループ(serogroup)に分類できるということです。

これらの検査は、治療効果予測のために実施されます。

1.ジェノタイプによる分類(遺伝子型)

ジェノタイプ分類は地域別、疾患別のHCV型の頻度、感染源や感染経路の推定にも役立ち、C型慢性肝炎の病態把握、特にインターフェロンの治療効果の予測の上で重要な検査です。

HCVの遺伝子の塩基配列の類似性から分けられた遺伝子型で、1a型 1b型 1c型 2a型 2b型 2c型 3a型 3b型 4型 5a型 6b型に分類することができます。

日本では1b型が70%と多く、続いて2a型の20%、2b型の10%でこれ以外の型はごく少数にみられるに過ぎないことが明らかにされています。

2.セログループによる分類(血清型)

HCVの塩基配列の相違から作られる蛋白も異なり、それに対する抗体の違いから、その抗体を検出することによって分類する方法です。

1群(Group1):主に1a型 1b型 1c型
2群(Group2):主に2a型 2b型 2c型

※日本で見られるのは、主に1b型、2a型、2b型というタイプで、日本人に最も多いタイプは1b型ですが、インターフェロン療法の効果はあまり良くありません。

※インターフェロン療法の効果が最も期待できるのは、2a型と2b型のタイプです※

※ジェノタイプ検査は保険が通っていませんが、セロタイプ検査は保険適応となっています※

2012年7月29日日曜日

C型肝炎検査-2.HCV-RNA検査-


血液中のHCV遺伝子を検出する検査で、HCV(C型肝炎ウイルス)に感染しているかどうかの指標になります。

HCV抗体検査で陽性となった場合は、以下の区別をする必要があります。

1.現在HCVに感染していて体内にHCVが存在している状態(HCVキャリア)

2.過去にHCVに感染したが既に体内からHCVが排除された状態

HCVキャリアと過去に感染した人との区別を的確にするには、HCV抗体価を調べるのと同時にHCV-RNAの検出検査を実施する必要があります。

HCV感染既往者は、HCV抗体が陽性でも一般的には抗体価が低く、HCV-RNAは陰性ですが、HCVキャリアはHCV抗体が高く、HCV-RNAが陽性となります。

また、急性C型肝炎においてもHCV抗体の陽性化には感染後通常3ケ月を要するため、早期の確定診断には HCV-RNA定性検査を実施する必要があります。

現在HCV-RNA定性・定量検査法としては、リアルタイムRT-PCR法であるHCV-RNA定量(TaqMan)検査が広く採用されています。

【検査方法】 コバス TaqMan HCV 「オート」

【測定範囲】 1.2~7.8 LogコピーIU/ml

【基準値】 検出せず

【検査を受ける時期】 感染後約1週間後に血液中のHCV-RNAは検出可能となります。

2012年7月22日日曜日

C型肝炎検査-1.HCV抗体検査-


C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス (HCV) に感染することで発症するウイルス性肝炎のひとつです。

C型肝炎ウイルス(HCV)が体内に侵入すると、身体はこれに対抗するためにHCV抗体という感染抗体つくります。

HCVは、直径55~57nmの球形をしたRNA型のウイルスで、HCV粒子は二重構造をしており、ウイルスの遺伝子(RNA)とこれを包んでいるヌクレオカプシド(コア粒子)、そして、これを被う外殻(エンベロープ)から出来ています。

HCV抗体とは、HCVのコア粒子に対する抗体(HCVコア抗体)、エンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)、HCVが細胞の中で増殖する過程で必要とされるタンパク(非構造タンパク)に対する抗体(NS抗体:C100-3抗体、C-33c抗体、NS5抗体など)のすべてを含む総称です。

そのHCV抗体の有無及びその量(HCV抗体価)を血液検査によって調べるのがHCV抗体検査です。

HCV抗体陽性の人の中には、『現在HCVに感染している人(HCVキャリア)』と『HCVに感染したが治ってしまった人(感染既往者)』とが存在します。

そのため、HCV検査が陽性となった時は必ず、体内に今「HCVがいるかどうか」の精密検査が必要で、HCV抗原検査およびHCV核酸増幅検査を肝臓専門医によって調べて貰う必要があります。

HCV抗体陽性例のうち、HCV抗体「高力価」群では、その98%以上にHCV RNAが検出される即ちHCVキャリアですが、HCV抗体「低力価」群では、そのほとんどがHCV RNAは検出されないことから、ほとんどがHCVの感染既往例と判断されます。

HCVに感染した直後は、身体の中にHCVがいても、HCV抗体が作られる以前(HCV抗体陰性)の時期(HCV感染のウインドウ期)に検査を受ける場合もありますが、これは新規のHCV感染の発生が少ないわが国ではごくまれなこととされています。

C型肝炎は進行が極めて遅く、感染後10~20年たってから発病します。

急性肝炎では症状が現れず、気付かない人が殆どで、身体の中からHCVが排除されないまま無症候性キャリア(体内にウイルスがいるが障害が見られない状態)や慢性肝炎に移行します。

気付かないうちに病気が進行し肝硬変になると、10年後には70%の人が肝臓がんになります。

日本におけるHCV感染の原因は、20年ほど前までは注射針の共用や輸血用血液で大勢の人が感染した経緯があるので、1980年代以前に輸血を受けた人や針の使い回しで予防接種を受けた人は、症状の有無に関わらず検査を受けたほうがよいでしょう。

近年では、輸血時のHCV検査が行なわれているので、輸血によるC型肝炎は極めて少なくなってきています。

また、注射器の使い回しをしないことから予防接種や注射、採血からのHCV感染はありません。

【HCV抗体検査の受け方】

血液で調べます。

スクリーニング検査では、HCV抗原は測定せず、HCV抗体を測定して感染の有無をチェックします。

食事をしてからの検査でも何の問題はありません。

【基準値】

陰性(-)

※HCV抗体は感染後1ヶ月で血液中に現れるため、感染直後は陰性でも、1ヶ月後に陽性となることがあります※

※HCVの感染力は非常に弱く、現在では性行為での感染はまず無いと考えられています。

2012年7月15日日曜日

性行為感染症検査-14.梅毒血清反応定量法-


梅毒血清反応には、カルジオリピンを抗原とするSTS検査としてのガラス板法とRPR検査(現在ガラス板法はほとんど実施されていません)と梅毒トレポネーマを抗原とするTP検査があることはよく知られていることです。

これらの検査は、単に陽性(+)または陰性(-)だけを判定するのではなく、陽性の場合は血清を生理食塩水で2倍連続希釈して何倍まで陽性となるかを判定します。

これを抗体価と呼びます。

※事例 RPR法 128倍、TPHA 5120倍

単に陽性と陰性を判断するのは、「定性検査」と呼びます。

一方血清を希釈して何倍まで陽性であるを調べるのは、「定量検査」と呼びます。

「定量検査」は、梅毒の治療の判断のために必要な検査法です。

【定量検査の解釈】

1.RPR法4倍、TPHA陰性の場合は、偽陽性反応(BFP:生物学的偽陽性反応)の疑いが濃く、1ケ月後に再検査を行い、同じ結果であればSTSの偽陽性反応と判断します。

本当に感染していれば、1ケ月の時間経過により体内に梅毒抗体が産生されていることからSTSの定量値も高くなり、当然TPHAも陽性となっています。


2.RPR法16倍以上、TPHA陰性の場合は、1期梅毒と判断し治療を開始します。

この場合、FTA-absを実施して陽性を確認します。

3.RPR法16倍以上、TPHA640倍以上の場合は、2期梅毒と判断し治療を開始します。

4.RPR法陰性、TPHA640倍の場合は、無症候性梅毒あるいは過去に梅毒に感染したという梅毒既往ありと判断し治療せずに経過観察を行い、RPR法が陽性とならない場合は、過去の感染経歴として治療は行いません。

※TPHAは梅毒が完治した後も長期間或いは一生涯高い定量値のまま推移しますから、梅毒血清反応の解釈の不得手な医師により、治療か必要と誤診されて不必要な治療を加えられるケースが多く見られます※

性行為感染症の専門家でない医師は、抗生物質治療によってSTSが陰性化して、体の中の梅毒トレポネーマが死滅しているにもかかわらず、TPHAやFTA-absが陽性であることから、「梅毒は治っていない」として、TPHAやFTA-absが陰性化するまで抗生物質の投与が必要として治療続けますが、これは完全な間違いです。

幾ら強力に抗生物質を投与し続けても、TPHAやFTA-absが陰性化することはありません。

梅毒の治療効果の判定には、TPHAやFTA-absなどのTP検査は使用できません、STSの「定量法」で行います。

2012年7月8日日曜日

性行為感染症検査-13.唾液によるHIV抗体簡易検査


2012年7月3日、米食品医薬品局(FDA)は家庭で素早くHIV抗体検査(HIV-1/-2)が実施できる初の市販検査キットを承認しました。

FDAは1996年にも家庭で行えるHIVの検査キットを承認していますが、このキットは検体を検査機関に送付する必要があるものでした。

今回承認されされた簡易HIV抗体検査キットは、米国オラシュア・テクノロジーズ社が開発したもので、『オラクイック・インホームHIVテスト』と呼ばれるもので、歯茎を拭って採取した検体(唾液)を溶液の入った小瓶に入れると、陰性であればラインが1本、陽性であれば2本のラインが表示されるというもので、検査の所要時間は20分程度だということです。

この検査キットの信頼性は、危険な行為から3ケ月後に実施すればほぼ100%の信頼性が得られますが、3ケ月より早い時期に検査をすれば信頼性は低くなるとのことです。

※これはどのHIV抗体検査についても言えることです※

一方、偽陽性反応の出現率は、5000人に1人という結果が得られています。

※偽陽性反応の出現率は、血液を使用する迅速抗体検査に比べて低いと考えます※

この検査キットは、米国では、2012年10月上旬頃には店頭とネットで販売される予定です。

米国での販売が開始されれば、日本国内においても個人あるいは、代行業者によってこのキットを輸入して使用出来ると考えられます。

参考のために、オラシュア・テクノロジーズ社が提供した『オラクイック・インホームHIVテスト』の写真を紹介しておきます。




2012年7月1日日曜日

性行為感染症検査-12.ケジラミ症の検査


ケジラミ症は、ヒトシラミ科に属するシラミが寄生することにより発症します。

ケジラミの寄生している毛と接触すれば100%感染します。

ケジラミはアポクリン汗腺を好み、陰毛部でヒトの血を吸い生活しますが、24時間血を吸えないと死んでしまいますが、卵は約10日間栄養の補給がなくとも生き続けるため、 この期間に痒みがないことから治癒したと勘違いすることがありがちです。

性行為による陰毛どうしの接触感染が主なものですが、オーラルセックスによって肛門周囲の毛、わき毛、胸毛、太ももの毛、まゆ毛、まつ毛、口ひげ、頭髪などに寄生することもあります。

毛に寄生したケジラミが吸血することによって、激しい痒みに襲われます。

性行為やオーラルセックスをして、1~2ヶ月に毛の生えている箇所に激しい痒みが発生すれば、ほぼ間違いなくケジラミに感染しています。

【検査法】

皮膚科を受診して、痒みのある箇所の毛の中に体長1mm前後ケジラミの成虫または虫卵(長さ0.5mm)を検出することによって診断します。


【ケジラミの自己検査方法】

1.虫眼鏡やルーペなどので痒みのある部分の毛を注意深く観察すれば成虫や卵を見つけることができます。

2.白色の下着を1日身につけて、下着をよく観察して下着に黒色の点状のしみ(ケジラミの排泄する血糞)が付着していればケジラミが寄生していることになります。

※ケジラミの成虫や虫卵を発見したり、下着についた黒色の点状のしみを確認した場合は、直ぐに皮膚科を受診して治療を受けて下さい※

※ケジラミ症は性行為感染症の中で、唯一自己検査が可能です※