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2023年8月6日日曜日

医学豆知識-8.無症候性梅毒に気をつけよう!!-

 依然として梅毒が大流行しています。


2021年1年間で届出のあった梅毒患者は、7978人(男5261人・女2717人)に上ります、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


※2023年は7月下旬時点で既に8349人の患者が報告されています※


梅毒トレボネーマに感染して、症状が出れば以上に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


梅毒トレポネーマに感染して、3週間以降に梅毒特有の症状を示す場合を顕症梅毒(第1期梅毒、第2期梅毒)と呼びます。


梅毒トレポネーマに感染して、梅毒特有の症状を示さないものを無症候性梅毒と呼びます。


要するに無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明します。


梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は38%存在するとの報告がなされています。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


2021年の統計の無症候梅毒患者は、


無症候梅毒 2035人で、、その内訳は男1029人・女1006人となっています



この結果からして、無症候梅毒が2035人25.6%も存在しています。


以上のことからして梅毒トレポネーマに感染する可能性のある行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けないと感染の判断はできないということになります。







2023年7月30日日曜日

医学豆知識-7.梅毒トレポネーマ感染を早く知ろう!!!-

2023年7月16日時点での梅毒患者数は、8040人となりました。


依然として大流行は収まっていません。


現在の大流行からしておよそ200~100人に1人が梅毒患者ということになります。


このように大流行していることから、不安な行為をしてしまったときには、必ず梅毒検査を受けてください。


梅毒トレポネーマは、性行為だけでなくオーラルセックスでも簡単にに感染しますし、コンドームでも完全には予防できません。


不安な行為をしてからSTS検査では4週以降、TP検査では6週以降に受けないと信頼できる結果が得られません。


その事から間待つのが大変という声を良く聞き、相談も受けます。


梅毒トレポネーマの感染を4週前に知る検査はあります。


梅毒トレポネーマ感染をいち早く知る検査法は、IgM-FTA-absです。


梅毒トレポネーマに感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


従って梅毒トレポネーマに感染後1ケ月を経過して、IgM-FTA-abs検査を受けると血液中のIgM抗体が減少していることから 偽陰性反応を起こすことがあります。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


そのことからして、いち早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。


よくIgM-FTA-absを受けるところがわからない、医師に検査を受けたいと言って医師がIgM-FTA-absの事を知らない、 この医療機関では検査をしていないなどと言われて受けることが出来ないという相談を受けますが、IgM-FTA-absは全国どこでも検査は受けられます。


自施設で検査をしていなくても全国どこでも検査専門の会社に検査を依頼して受けることは出来ます。


梅毒は皮膚科が専門診療科となりますから、皮膚科を受診することです。


皮膚科専門医は、IgM-FTA-absのことを正しく理解していますから問題なく受けることが出来ます。

【ご注意】

普通のFTA-absは、IgG-FTA-absで、IgM-FTA-abs検査ではありませんので、早く感染を知りたいときには必ずIgM-FTA-abs検査を受けたいと医師にはっきりといって受けてください。


2023年7月23日日曜日

医学豆知識-6.サル痘と梅毒の皮膚症状の違い-

日本国内におけるサル痘患者数は、2022年7月25日に国内1例目の患者が報告されてから、増加傾向にあり2023年7月21日時点で193人となっています。


サル痘は海外では減少傾向にあるにも関わらず、日本では逆に増加傾向にあります。


今まで知られていた古典的なサル痘では、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状が数日持続してから皮疹が出現するとされています。


皮疹は顔面から出現して、全身へと拡大し、全身の皮疹がある一時点においてすべて同一段階の状態で、赤い発疹から水ぶくれ、そしてかさぶたになっていくというのが一般的でしたが、現在流行しているサル痘では発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状がない症例も半数ほどあり、また皮疹の状態もそれぞれの部位で進み具合が異なる事例が報告されており、皮疹も特定の部位のみでみられることがあり、中でも肛門や生殖器の頻度が最も多く、体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏などでもみられることがあります。


更に口の中や直腸にも病変が見られるようになってきています


サル痘の皮疹は水疱という水ぶくれが見られることが特徴です。


通常赤い発疹から水疱になり、さらに水疱から、中に膿がたまる膿疱になり、それが破れてかさぶたになります。


これまでは水ぶくれの時期、かさぶたになった時期など様々な時期の皮疹が混在するのが水痘の特徴であり、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴とされていましたが、今回の流行ではサル痘でも様々な時期の皮疹が混在することがあるようです。


ただし、皮疹の部位が生殖器に多い、というのは今回の流行におけるサル痘の大きな特徴でもあります。


梅毒の場合は梅毒トレポネーマの侵入した箇所に感染後訳1ケ月後に傷みのない硬い出来物(初期硬結)がやがて潰瘍となります。


最近ではオーラルセックスによる感染で、唇や喉の粘膜にも病変が多く見られるようになってきています。


感染後2~3ケ月を経過すると、痒みも痛みもないバラ色の湿疹(バラ疹)が全身に出てきます。


サル痘と梅毒の湿疹の根本的な違いは、


◎サル痘では生殖器に水ぶくれなどの皮疹が出やすいが、梅毒では痛みのない硬い出来物ができやがてこれが崩れて潰瘍になります。


◎サル痘の皮疹は「赤い発疹→水疱→膿疱→かさぶた」と変化していきますが、梅毒では赤い発疹のままのことが多い。


※世界保健機関は、2022年11月28日サル痘(monkey pox)について、新たな名称として「M痘(mpox)」を使うと発表しています※


当面の間は、世界的な流行の最中に名称を変更することで引き起こされる混乱を軽減するため、名称変更は段階的に行われるとし、今後1年間は、サル痘とM痘(mpox)の両方が使われます。


【参考資料】

【第17回 サル痘に関する関係省庁対策会議幹事会 2023年2月28日】



2023年7月16日日曜日

医学豆知識-5.検診と健診の違い-

同じ読み方の"けんしん"には、検診と健診がありますがどう違うのでしょうか


検診は、特定の病気にかかっているかどうかを調べるために診察・検査などを行うことで、早期に病気を発見し治療することを目的とした検査です。


代表的なものには、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5大がんの早期発見を目的としたがん検診があります。


検診は特定の疾患をターゲットとして検査診断を行うことです。


特定の病気を早期に発見して早期に治療するための「二次予防」を目的としています。


一方健診は、健康診断のことで、特定の病気を検査するものではなく、健康状態を確認することを目的とした検査です。


健康診断あるいは健康診査を略して健診といいます。


健診には、職場の健診、学校健診、特定健康診査など、様々な種類があります。


職場の健診とは、企業に実施が義務付けられている健診で、業種にかかわらず実施義務のある「一般健康診断」と法律で有害と定められている業務に従事する労働者を対象として実施される「特殊健康診断」があります。


学校健診は、学校保健安全法に基づく健康診断です。


特定健康診査は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行いメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。


健康かどうか?病気の危険因子があるか?などを確かめることが目的です。


健康かどうか調べ、病気の危険因子を早く見つけることができる「一次予防」を目的としています。

2023年7月9日日曜日

医学豆知識-4.感染と伝染の違いとは-

 感染とはウイルスや寄生虫、細菌などの病原体が体内に侵入することを言います。


そしてそれら病原体が引き金となり病気を発症してしまうことが、感染症の概念だといわれています。


伝染とは、感染症を発症した動物や人が、自身の体内に保有している病原体を第三者の生き物に移した後、病原体を移された第三者が発症することを言います。


感染と伝染は、英語圏では的確に区別されています。


感染はinfection(インフェクション)、伝染はtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。


日本の場合は、感染も伝染も同じ様に使用されています。


例えば『インフルエンザに感染した(感染)』、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた(伝染)』と感染も伝染も同じ使い方がされています。


これを正しく言うと『インフルエンザに感染した』はそのとおりですが、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた』は『〇〇さんからインフルエンザが伝染した』


要するに日本語では、自分が病原体に感染すると人に病原体を移す(感染)は同じ様に使われ間違いではありません。


しかし英語圏では、自分が感染することはinfection(インフェクション)、第三者に感染させることはtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。

2023年7月2日日曜日

医学豆知識-3.マスクの素材での肌荒れについて-

 新型コロナの流行に伴い連日マスクを長時間つけていることで「肌荒れ」する人が増加しています。


特にマスクの素材によっては、マスクが当たる顔の皮膚から肌荒れする・マスクの素材を変えたら肌荒れしなくなった・不織布のマスクを使用すると湿疹が出るなどなどマスクの素材によって肌への影響が変わることが多くの人が指摘しています。


【マスクの素材によって肌荒れは起こるのでしょうか?】


一般的に"不織布マスク"を使用している人ほど肌荒れを多く経験しているようです。


マスクを付けてマスクの当たる顔の部分が、きれいにマスクの形に一致して肌が赤くなる人が増加しています。


症状としては、頬のマスクがよく当たる部分が赤くなったり、カサカサして少し腫れたり、かゆみが出たりしている人が多いです。


唇がマスクと触れやすい人は、『マスクをしていなかったときは何ともなかったのに、唇が荒れやすくなった』とおっしゃいます。


摩擦による荒れ以外に、マスクの下に隠れた部分の皮膚にいる『常在菌』のバランスの崩れが原因となるケースもあります。


その結果、普段はさほど悪さをしない、カンジダやマラセチアなどの真菌が繁殖して常在菌を上回りその結果ブツブツとした発疹ができることがあります。


マスクの着用によって肌が荒れやすい人の特徴としては、乾燥肌の人・反対に脂性肌の人が荒れやす傾向があります。


年齢や性別に特段差は見られないようですが、マスクをつける時間が長い人・汗をかきやすい人・マスクをつけたまま話をする機会が特に多い人などは注意が必要となります。


【マスクの素材による、肌への負担や影響の違いについて】


マスクの素材は、マスク内の『蒸れ』に関わることから蒸れることによって角質がふやけてふくらみ、肌のバリアー機能が弱まってしまうと、肌の内側からの水分蒸発が多くなり、乾燥しやすくなり、そこへ摩擦が加わると、蒸れによって弱った皮膚のバリアーが壊れていき、角質の層が薄くなるという悪循環に陥り皮膚が荒れるのです。


要するにマスクをすることによって皮膚が蒸れることで、肌がどんどん摩擦に弱くなり、ふやけ摩擦で皮膚が荒れてきます。


不織布のマスクを使用している人に肌荒れが多く見られています。


不織布マスクは、息苦しさ・蒸れを起こしやすいので肌荒れしやすいのです。


ウイルス防御効果が高いマスクほど通気性が悪く蒸れやすく、その結果肌荒れしやすくなります。


不織布マスクにも、通気性のいいものもあれば、悪いものもありますので、肌荒れを防ぐ対策として通気性の良い不織布マスクを使用するのも一つの選択肢となります


どうしても不快なほどの蒸れを感じる場合は、マスクの素材や形状を替えることも必要となります。


どうしても肌荒れしやすい人の場合、不織布マスクと顔の間に、綿や絹といった布製のマスクを挟むことで改善する場合もあります。


【マスクを使っていて肌に違和感が出た場合の対策】


1.マスクを使わない時間をできるだけ長くする。


2.違う素材のものに替える。


3.肌に違和感があるときは、特に必要がなければなるべく肌を触らないようにして、洗顔の時間なども短く軽く済ませる。


4.何をしても肌荒れが改善されないときは皮膚科を受診する。


【マスクの着用で肌トラブルが起こりにくいようにするために、日頃からできることは】


ぬれた状態で擦れることは肌にとって最もよくないので避けるべきです。


従って洗顔の時間は短く、軽く済ませ、保湿をする際も短時間で、手のひらで優しく押さえるだけにしましょう。


気をつけなければいけないのは脂性肌の人には、油分の強い保湿剤は控えて、セラミドなど、肌バリアーを修復する成分の入った保湿剤を選ぶことが良いとされています。

2023年6月25日日曜日

医学豆知識-2.家庭内でペットを飼育することにより子どもの食物アレルギーのリスクを低下させる?

 いくつかの研究によると、家庭内でペットを飼育することが子供の食物アレルギーのリスクを低下させる可能性があるとされています。


一部の研究では、犬や猫を飼育している家庭の子供たちは、アレルギーの発症リスクが低いことが示されています。


これは、動物と接することで免疫系が刺激され、アレルギー反応を引き起こすための抵抗力が高まる可能性があるためです。


ただし、すべての子供にとってペットを飼うことがアレルギーを予防する保証はありません。


また、すでにアレルギーを持っている子供にとっては、ペットを飼うことがアレルギーの症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。


総じて言えることは、ペットを飼うことが子供の健康に良い影響を与える可能性があるが、必ずしもアレルギーを予防するという証拠は十分ではないということです。


日本での研究では、犬を飼っている家の子どもでは、卵・牛乳・ナッツ類に対して、猫を飼っている家の子どもでは、卵・小麦・大豆に対してアレルギーを発症しにくいことが明らかにされています。


この研究結果の解析の結果、胎児期または幼児期初期に室内飼いの犬または猫に曝露することで3歳までに食物アレルギーを発症するリスクが低下することが明らかにされています。


この研究では、なぜペットを飼っている子どもで食物アレルギーの発症リスクが低下するのかは明らかにされていません。


この研究から分かることは、ペットを飼うことで食物アレルギーを防げるわけではなく、ペットを飼うことが食物アレルギーの発症リスク低下につながる可能性を示唆したに過ぎません。


この研究結果から家庭内でペットを買うことによりこのペットが原因で子どものアレルギーリスクが高まるのではないかと心配する親たちに、食物アレルギーの発症抑制という点では、胎児期と幼児期のペットへの曝露が有効に働くケースがあるかもしれないというメッセージと、ペットを飼うことから生じる弊害の懸念を軽減するのに役立つこと思われます。


【参考文献】


【ペットは子供の食物アレルギーの予防に役立つ】


【胎児期または乳児期のペット曝露と食物アレルギーとの関連性:日本環境と子どもの研究】