血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2022年5月29日日曜日

原因不明の小児急性肝炎-1.概要-

 ウイルス性肝炎は、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こります。


ウイルスは、HAV、HBV、HCV、HEVと呼ばれています。


※これらの肝炎ウイルスに関しては、当ブログでも解説しています※


A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物から感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液によって感染します。


特にB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性肝炎という持続的に肝臓に炎症を起こす病態に移行することがあり肝硬変となり最終的には肝がんへと移行するひとあります。


ウイルス性肝炎に感染したときに急性肝炎という激しい肝臓の炎症が起こることがあり、特に肝不全にまで至るほど重篤な病態を"劇症肝炎"と言います。


これらの重篤な劇症肝炎では、肝移植が必要になることもあります。


これらのA?E型の肝炎ウイルス以外にも肝炎を起こす病原体は知られています。


例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどがあります。


そして、現在海外では原因不明の肝炎の症例が報告されています。


2022年4月5日、イギリスにおいてこれまで健康だった10歳未満の小児の間で、原因不明の急性肝炎患者が増加していることが報告されています。


これらの症例の多くは重度の急性肝炎を呈しており、AST、ALTという肝酵素の数値が500IU/L以上の上昇を認め(正常値は40IU/L未満)、多くの症例で黄疸がみられました。


また、一部の症例では、過去数週間に腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状を訴えていましたが、ほとんどの症例に発熱はありませんでした。


イギリスではこれまでに108症例の肝炎の小児が報告されており、このうち8人の小児が肝移植を受けたとのことです。


イギリスだけではなく、現在はアメリカのアラバマ州、スペインでも小児の原因不明の肝炎の症例が報告されています。


肝炎の原因は、現時点でははっきりしていません。


そのような中、検査した症例の77%がアデノウイルスが陽性であったという結果が得られていることから、アデノウイルスがこの肝炎の原因ではないかという仮説が立てらているようです。


日本国内においても同様の症状が出た症例が認められています。


世界保健機関(WHO)の報告によると、今月21日までに12カ国で169例が確認され、1人が死亡した。このうち、74例で夏風邪や結膜炎などの原因ウイルスである「アデノウイルス」が検出されている。症状は黄だんや肝障害の程度を表す肝酵素の数値の異常のほか、一部の症例では腹痛、下痢、嘔吐(おうと)などが報告されている。


 今回の症例は21日に自治体から国に報告があった。アデノウイルスは陰性で、肝移植はしていない。基礎疾患の有無は不明で、新型コロナウイルスは陰性だった。厚労省は症状や居住地、性別、年齢は明かしていない。


 WHOは23日、各国から情報を集めるために、原因不明の子どもの急性肝炎の暫定的な症例の中に「可能性例」を定義。16歳以下で、今年1月以降に確認された急性肝炎で、A~E型のウイルス性肝炎の症例は除外しています。


2022年5月22日日曜日

先天性梅毒増加

 先天性梅毒とは妊婦が梅毒トレポネーマに感染して治療を受けないと、梅毒トレポネーマが胎盤を通過して胎児に感染してしまいます。


新生児が梅毒トレポネーマ感染した状態で生まれた場合を先天梅毒と呼びます。


梅毒スピロヘータが胎盤を通過する妊娠16週から20週以前に母体の梅毒を十分に治療すれば、胎児への感染は予防可能です。


お母さんの梅毒トレポネーマがおなかの赤ちゃんに影響するのは、妊娠4ケ月以降です。

妊娠中の定期健診をきちんと受け、梅毒が発見されたらきちんと治療を受けることにより先天梅毒は防げます。


先天性梅毒の発生事例は、2013年以前は一桁にとどまっていましたが2014年以降二桁の患者が発生してます(2018年17人、2019年23人、2020年19人)。


先天性梅毒の増加は、若い女性の患者が増加しつつあることと、妊婦健診を受けない妊婦の増加が要因とされています。

2022年5月15日日曜日

不織布マスクマスクW折りで感染予防効果は上がる

 新型コロナウイルスの感染にはマスクの正しい付け方が大切です。


不織布マスクに付いているノーズワイヤを山折りにする人は多くおられると思いますが、ひと工夫してW折りにすることで顔との密着度が高まり、予防効果が上がります。


これはノーズワイヤをW折りにすることで鼻と?との隙間をふさぎ、感染リスクを減らすことができるということです。


要するにマスクをつける前に、鼻の形に合わせてノーズフィットを折り曲げW状にすることで、鼻の部分にすき間ができにくくなり予防効果が高くなるとともに、眼鏡が曇りにくくなります。


鼻出しマスク・あご掛けマスク・あご出しマスクは、予防効果がなくなりますからNGです。

参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=KYWhIsgb7Gc

2022年5月8日日曜日

マスクの必要性について

 新型コロナウイルスの流行に伴い、世界中でマスクが着用され、義務化されている国も多く存在しています。


日本国内においては、強制着用はされていませんが着用が一律に推奨されたままの状態が続いています。


それではいつまでマスクは必要となるのでしょうか?


2022年4月20日日本医師会の中川俊男会長は、「ウィズコロナの状態でマスクを外す時期が日本に来るとは思っていない」と発言しています。


日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大初期から、症状がなくてもマスクを着用する"ユニバーサルマスク"が推奨され、国民の多くが自主的に感染拡大防止に努めてきた事実があります。


中川俊男会長は国民の公衆衛生意識の高さが、感染者数や死者数を抑えるのに効果的だったと指摘し、「マスクを外すのは新型コロナが終息したときだ」と発言しています。


また日本政府も「マスクの着用が極めて重要であることは言うまでもない」と強調しています。


国立感染症研究所の脇田隆字(たかじ)所長は2022年4月27日の衆院厚生労働委員会で、「感染リスクが高くない場面では、着用は必ずしも必要ではない」との認識を示していますが、これからの季節は気温と湿度が高くなり熱中症リスクもあることから、「屋外で人との距離が十分ある場合は、マスクを外すことが推奨される」とも発言しています。


それに加えて「具体的にどのような場面でマスクを着けるか外すかまでは、直ちに提言できる状況にはない」とし、今後議論を進めていく必要性を強調しています。


一方海外に目を向けますと、英国は2022年1月下旬、オミクロン株対策として2021年12月に導入した公共施設でのマスク着用義務を撤廃し、同株の流行のピークが過ぎたことなどを考慮し、混雑した場所にいるときや普段会わない人と会うときなどは、引き続き着用が推奨されるとしています。


米国でも2022年3月下旬、ハワイ州を最後に全50州で着用義務が解除され、ほとんどの地域で、屋内でも着用が必須ではなくなっています。


米疾病対策センター(CDC)が2022年4月中旬にマスク着用義務の延長を決めましたが、フロリダ州の連邦地裁が「義務化は違法で無効」と判決を下したことから主要な航空・鉄道会社は乗客に着用を求めていません。


韓国でも見直しの動きがあり、屋内でのマスク着用義務は当面維持する一方、屋外については2022年4月2日から、スポーツ観戦時などを除き解除することを決めています。


日本においても一律のマスク推奨するのではなく、どのような場面で着用して、どのような場面では必要がないことを明確にし国民に理解しやすいように説明する必要があると思います。

2022年5月1日日曜日

百日咳について-2.百日咳抗原検査-

 2020年5月29日に承認され、2021年5月1日に保険収載されています。


販売名は、リボテスト百日咳です。


製造発売元 極東製薬工業 株式会社


【使用目的】


鼻咽頭拭い液中の百日咳菌抗原の検出


【測定原理】


鼻咽頭拭い液中の百日咳菌L7/L12 抗原を検出するイムノクロマト法です。


テストプレートは、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッドから構成されていて、コンジュゲートパッドには金コロイド標識抗百日咳菌L7/L12 モノクローナル抗体(マウス)が含まれています。


テストライン上には、抗百日咳菌L7/L12 モノクローナル抗体(マウス)が固相化されています。

 百日咳菌L7/L12 抗原を含む試料を試料滴下部に滴下すると、試料はサンプルパッドを通って、コンジュゲートパッドに移動し、試料溶液中の百日咳菌L7/L12 抗原が金コロイド標識抗体と反応して免疫複合体を形成され、この免疫複合体は毛細管現象によりメンブレン上を移動し、テストライン上の固相化抗体に捕捉されると、赤紫色のランが現れます。

また、百日咳菌L7/L12 抗原の有無に関わらず、金コロイド標識抗体はコントロールライン上に固相化されている抗マウス免疫グロブリンポリクローナル抗体に捕捉され、赤紫色のラインが現れます。


※リボテスト百日咳添付文書参照※


【測定時間】


15分


【判定】


肉眼で出現ラインを確認する。


陽性 コントロールラインとテストラインの両方に赤紫色のラインが確認される。


陰性 コントロールラインのみに赤紫色のラインが確認され、テストラインには確認されない。


判定不能 コントロールラインに赤紫色のラインが確認確認されないか不明瞭な場合。


※コントロールラインに赤紫色のラインが確認確認されず、テストラインにのみに赤紫色のラインが確認される場合も判定不能とします※


判定不能の場合は、再検査。


試料滴下後15分を過ぎてテストラインが出現した場合、陰性と判定する。



【PCRとの一致率】


陽性一致率 86.4%


陰性一致率 97.1%


陽性陰性一致率 95.9%

2022年4月24日日曜日

百日咳について-1.百日咳とは-

 百日咳は、主にグラム陰性桿菌の百日咳菌 (Bordetella pertussis) による呼吸器感染症の一種で、特有の痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症です。


主に1歳未満乳児が罹ると認識され、特に生後6ケ月未満では容易に重症化して死の危険も伴うなど、極めて重要な感染症とされています。


百日咳は世界的に見られる疾患で、乳幼児に限らずいずれの年齢でも感染します。


患者に占める成人の割合が2001年にはわずか2.8%でしたが、この10年間毎年増え続け、2010年(1~4月)には56%に達しまし、現在では半数以上が、おとなの患者なのです


【症状】


潜伏期間は通常7~10日で、次に普通の風邪症状を示すカタル期が1~2週間続き、さらに乾いた咳と発作性の咳嗽(がいそう)が特徴の痙咳期が3~6週間続きやがて回復します。


百日咳特有の咳は、短い連続した咳嗽(スタッカート)の後、息を吸い込むときに笛を吹くようなヒューという音(笛声 てきせい:ウープ)が出て、これが繰り返されます。


※ 咳が治まるまで約100日間(およそ3ケ月程度)続くことから、百日咳と呼ばれる※


※咳嗽(スタッカート)とは、顔をまっ赤にしてコンコンと激しく咳き込む発作※


※(笛声 てきせい:ウープ)とは、息もできないくらい咳き込んだあとヒューッと音を立てて大きく息を吸い込む発作※


咳嗽は夜間に多く、何かしらの誘発原因によって咳き込むと、息も詰まることから顔面浮腫や充血、そして最悪の場合は呼吸停止から突然死に至ることもまれにあります。


【検査法】


鼻咽頭を綿棒で拭いそのぬぐい液で遺伝子検査として、LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法やPCR( polymerase chain reaction)法。


血液による血清抗体検査。


鼻咽頭を綿棒で拭いそのぬぐい液での抗原定性検査。


【治療法】


マクロライド系抗菌薬を投与します。


エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、またはアジスロマイシン(AZM)が使用され、投与期間はそれぞれ14、7、5日間です。


【感染予防】


百日咳の防御はワクチン接種が基本となります。


全菌体を使用した単味の百日咳ワクチン(P)はジフテリアトキソイド(D)との二種混合(DP)、更に1968年からは破傷風トキソイド(T)も含めた三種混合(DTP)で接種が進められました。


日本国内における百日咳患者数は、全数届出が始まった2018~2020年の3年間に発生動向調査に届出された百日咳患者は31,909例となっています。


患者は, 2018年が11,190例(94%), 2019年が15,972例(95%), 2020年が2,671例(91%)、2022年(3月時点)132例となっています。


百日咳は、1年を通じて発生が見られますが、春から夏、秋にかけての発生が比較的多く、流行の周期は2~5年とされています。


2022年4月17日日曜日

新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2022年3月)

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2022年3月版)を2022年3月11日に公開しました。

ここには、COVID-19の感染者数・病原性・感染性・検査・治療・変異株について、現在の状況とこれまでに得られた科学的知見を11の知識として見やすくまとめられています。


今一度確認されることをおすすめします。


内容は以下から確認してください。


https://corona.go.jp/proposal/pdf/chishiki_20220311.pdf