血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2022年6月26日日曜日

サル痘-3.間違った情報と正しい情報-

誤った情報がネット上に拡散していますので、呉れ呉れも惑わされないようにして下さい。


【誤った情報】


1.コロナワクチンの副反応


世界各国のSNSでは、最近のサル痘感染例が英アストラゼネカ製新型ウイルスワクチンの「副反応」だという誤った情報が広まっています。


その理由としては、同社製ワクチンがチンパンジーアデノウイルスを遺伝情報のベクター(運び手)として使用していることに関連していると推測されます。


サル痘を引き起こすのはアデノウイルスではなくポックスウイルスの一種であることなどから、この主張は誤りです。


サル痘の発見の経緯は、1958年研究に使われていたマカク属のサルから発見されたことからサル痘と命名されましたが、さる以外にも他の動物にも感染すます。


世界保健機関(WHO)は、サル痘の自然宿主はげっ歯類である可能性が高いと報告しています。


2.ファイザーがサル痘ワクチン製造


SNS上では、米食品医薬品局(FDA)が最近、米ファイザー製の新たなサル痘ワクチンを承認したとの投稿が広まっていますが、このような事実はありません。


米国内で唯一利用可能なサル痘ワクチンはデンマークの製薬企業ババリアン・ノルディック製で、2019年に承認されています。


ファイザー社は、同社製のサル痘ワクチンは存在しないと否定しています。


3.サル痘は帯状疱疹


SNS上では、カナダのCTVニュース(CTV News)の記事とされる画像が投稿され、カナダの当局が調査したサル痘感染例の95%が実は帯状疱疹だったとの情報が拡散されていますが、CTVニュースの親会社ベル・メディアの広報担当は画像に写っている記事はCTVニュースのものではなく、同局が「そのような記事を掲載したことはない」と否定しています。


サル痘も帯状疱疹も、水疱ができることから症状が類似する場合もありますが、原因となるウイルスはそれぞれ異なり、「全く別の感染症」です。


※呉れ呉れも誤った情報に振り回されることのないように、正しい知識を身に付けてください※


【正しい情報】


サル痘には天然痘のワクチンが有効とされています。


日本では1976年まで接種が行われていましたので、現在46歳以上の人は、そもそもサル痘にかかりにくい可能性が高いと指摘されています。


種痘中止後の世代(現在45歳以下)には天然痘やその仲間のウイルスに対する抗体がまったく認められませんが、種痘世代では調査時点で80%の人に抗体が認められています。


特に現在73歳以上の人たちは強い免疫を保持していたという調査結果があります。


これらのことからしてサル等に感染するリスクは若い世代に高いと指摘されています。

2022年6月19日日曜日

サル痘-2.流行状況-

 世界保健機関(WHO)は、2022年5月27日の総会で、動物由来のウイルス感染症「サル痘」が従来継続的に発生し、アフリカ以外で感染が広がっていることは「異例」として、警戒を発しています。


欧米を中心に36カ国以上で約2027人の患者が確認されたとし、今後の見通しは不透明としながらも、増加の恐れがあるとした(2022年6月15日時点)。


また世界保健機関は、疑い例を含めると3000人を超えると発表しています。


欧州疾病予防管理センター(ECDC)は2022年5月23日、患者の報告が相次ぐ「サル痘」について「欧州で複数の性交渉相手がいる人の間で拡散するリスクが高い」との評価を公表しています。


日本国内においては2022年6月17日時点では、患者の確認はされていません。


【参考サイト】


2022年6月12日日曜日

サル痘-1.概要-

 世界保健機関(WHO)は2022年6月8日、天然痘に似た症状が出るウイルス性疾患「サル痘」の発生状況について、世界の30ケ国で、1000件を超える患者を確認したと報告しています。


ではサル痘とはどのような感染症なのでしょうか。


サル痘(モンキーポックス:monkey pox)は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患で、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによって引き起こされます。


実験動物として採集されたサルの一部が感染し発症していたことが最初の発見契機であったため、サル痘と呼ばれますが、本来のウイルス保有動物は土着のリスやネズミ(げっ歯類)などです。


もともと中央・西アフリカの熱帯雨林などで確認されていましたが、現在欧米で広がりつつあります。


サル痘には、コンゴ民主共和国には強毒な「コンゴ盆地型」サル痘ウイルスが分布していますが、西アフリカには比較的弱毒の「西アフリカ型」サル痘ウイルスが分布します。


1.コンゴ盆地型は、強毒で致死率は1~1%で、人から人への感染が多く報告されています。


2.西アフリカ型は、比較で弱毒で致死率は低く、人から人への感染も認められています、現在流行しているのはこのタイプです。


【潜伏期間と症状】

サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされ、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現します。


発疹は典型的には顔面から始まり、やがて体幹部へと広がります。


※重症例では天然痘と臨床的に区別できず、サル痘に特徴的な所見としてはリンパ節腫脹が患者に共通に認められる※


症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然に回復しますが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もあります。


【感染ルート】

サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されています。


自然界ではげっ歯類が宿主と考えられていますが、自然界におけるサイクルは現時点では不明です。


ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられています。

 【治療】

治療としては対症療法が行われます。


一部の抗ウイルス薬について、実験室レベルおよび動物実験での活性が証明されており、サル痘の治療に利用できる可能性があるとされています。


天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効ですが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていません。


サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果が、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされています。


【丘疹の参考】

1970年にギニアから発行された「天然痘撲滅記念切手」で、黒人の少年の背中に生じた天然痘丘疹がリアルに描かれていますので紹介します。



【参考サイト】

疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)

https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/about.html


世界保健機関


https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox


2022年5月29日日曜日

原因不明の小児急性肝炎-1.概要-

 ウイルス性肝炎は、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こります。


ウイルスは、HAV、HBV、HCV、HEVと呼ばれています。


※これらの肝炎ウイルスに関しては、当ブログでも解説しています※


A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物から感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液によって感染します。


特にB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性肝炎という持続的に肝臓に炎症を起こす病態に移行することがあり肝硬変となり最終的には肝がんへと移行するひとあります。


ウイルス性肝炎に感染したときに急性肝炎という激しい肝臓の炎症が起こることがあり、特に肝不全にまで至るほど重篤な病態を"劇症肝炎"と言います。


これらの重篤な劇症肝炎では、肝移植が必要になることもあります。


これらのA?E型の肝炎ウイルス以外にも肝炎を起こす病原体は知られています。


例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどがあります。


そして、現在海外では原因不明の肝炎の症例が報告されています。


2022年4月5日、イギリスにおいてこれまで健康だった10歳未満の小児の間で、原因不明の急性肝炎患者が増加していることが報告されています。


これらの症例の多くは重度の急性肝炎を呈しており、AST、ALTという肝酵素の数値が500IU/L以上の上昇を認め(正常値は40IU/L未満)、多くの症例で黄疸がみられました。


また、一部の症例では、過去数週間に腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状を訴えていましたが、ほとんどの症例に発熱はありませんでした。


イギリスではこれまでに108症例の肝炎の小児が報告されており、このうち8人の小児が肝移植を受けたとのことです。


イギリスだけではなく、現在はアメリカのアラバマ州、スペインでも小児の原因不明の肝炎の症例が報告されています。


肝炎の原因は、現時点でははっきりしていません。


そのような中、検査した症例の77%がアデノウイルスが陽性であったという結果が得られていることから、アデノウイルスがこの肝炎の原因ではないかという仮説が立てらているようです。


日本国内においても同様の症状が出た症例が認められています。


世界保健機関(WHO)の報告によると、今月21日までに12カ国で169例が確認され、1人が死亡した。このうち、74例で夏風邪や結膜炎などの原因ウイルスである「アデノウイルス」が検出されている。症状は黄だんや肝障害の程度を表す肝酵素の数値の異常のほか、一部の症例では腹痛、下痢、嘔吐(おうと)などが報告されている。


 今回の症例は21日に自治体から国に報告があった。アデノウイルスは陰性で、肝移植はしていない。基礎疾患の有無は不明で、新型コロナウイルスは陰性だった。厚労省は症状や居住地、性別、年齢は明かしていない。


 WHOは23日、各国から情報を集めるために、原因不明の子どもの急性肝炎の暫定的な症例の中に「可能性例」を定義。16歳以下で、今年1月以降に確認された急性肝炎で、A~E型のウイルス性肝炎の症例は除外しています。


2022年5月22日日曜日

先天性梅毒増加

 先天性梅毒とは妊婦が梅毒トレポネーマに感染して治療を受けないと、梅毒トレポネーマが胎盤を通過して胎児に感染してしまいます。


新生児が梅毒トレポネーマ感染した状態で生まれた場合を先天梅毒と呼びます。


梅毒スピロヘータが胎盤を通過する妊娠16週から20週以前に母体の梅毒を十分に治療すれば、胎児への感染は予防可能です。


お母さんの梅毒トレポネーマがおなかの赤ちゃんに影響するのは、妊娠4ケ月以降です。

妊娠中の定期健診をきちんと受け、梅毒が発見されたらきちんと治療を受けることにより先天梅毒は防げます。


先天性梅毒の発生事例は、2013年以前は一桁にとどまっていましたが2014年以降二桁の患者が発生してます(2018年17人、2019年23人、2020年19人)。


先天性梅毒の増加は、若い女性の患者が増加しつつあることと、妊婦健診を受けない妊婦の増加が要因とされています。

2022年5月15日日曜日

不織布マスクマスクW折りで感染予防効果は上がる

 新型コロナウイルスの感染にはマスクの正しい付け方が大切です。


不織布マスクに付いているノーズワイヤを山折りにする人は多くおられると思いますが、ひと工夫してW折りにすることで顔との密着度が高まり、予防効果が上がります。


これはノーズワイヤをW折りにすることで鼻と?との隙間をふさぎ、感染リスクを減らすことができるということです。


要するにマスクをつける前に、鼻の形に合わせてノーズフィットを折り曲げW状にすることで、鼻の部分にすき間ができにくくなり予防効果が高くなるとともに、眼鏡が曇りにくくなります。


鼻出しマスク・あご掛けマスク・あご出しマスクは、予防効果がなくなりますからNGです。

参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=KYWhIsgb7Gc

2022年5月8日日曜日

マスクの必要性について

 新型コロナウイルスの流行に伴い、世界中でマスクが着用され、義務化されている国も多く存在しています。


日本国内においては、強制着用はされていませんが着用が一律に推奨されたままの状態が続いています。


それではいつまでマスクは必要となるのでしょうか?


2022年4月20日日本医師会の中川俊男会長は、「ウィズコロナの状態でマスクを外す時期が日本に来るとは思っていない」と発言しています。


日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大初期から、症状がなくてもマスクを着用する"ユニバーサルマスク"が推奨され、国民の多くが自主的に感染拡大防止に努めてきた事実があります。


中川俊男会長は国民の公衆衛生意識の高さが、感染者数や死者数を抑えるのに効果的だったと指摘し、「マスクを外すのは新型コロナが終息したときだ」と発言しています。


また日本政府も「マスクの着用が極めて重要であることは言うまでもない」と強調しています。


国立感染症研究所の脇田隆字(たかじ)所長は2022年4月27日の衆院厚生労働委員会で、「感染リスクが高くない場面では、着用は必ずしも必要ではない」との認識を示していますが、これからの季節は気温と湿度が高くなり熱中症リスクもあることから、「屋外で人との距離が十分ある場合は、マスクを外すことが推奨される」とも発言しています。


それに加えて「具体的にどのような場面でマスクを着けるか外すかまでは、直ちに提言できる状況にはない」とし、今後議論を進めていく必要性を強調しています。


一方海外に目を向けますと、英国は2022年1月下旬、オミクロン株対策として2021年12月に導入した公共施設でのマスク着用義務を撤廃し、同株の流行のピークが過ぎたことなどを考慮し、混雑した場所にいるときや普段会わない人と会うときなどは、引き続き着用が推奨されるとしています。


米国でも2022年3月下旬、ハワイ州を最後に全50州で着用義務が解除され、ほとんどの地域で、屋内でも着用が必須ではなくなっています。


米疾病対策センター(CDC)が2022年4月中旬にマスク着用義務の延長を決めましたが、フロリダ州の連邦地裁が「義務化は違法で無効」と判決を下したことから主要な航空・鉄道会社は乗客に着用を求めていません。


韓国でも見直しの動きがあり、屋内でのマスク着用義務は当面維持する一方、屋外については2022年4月2日から、スポーツ観戦時などを除き解除することを決めています。


日本においても一律のマスク推奨するのではなく、どのような場面で着用して、どのような場面では必要がないことを明確にし国民に理解しやすいように説明する必要があると思います。