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2020年2月23日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-7.市中感染症と院内感染症の違いについて-

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)が原因で神奈川県の80代の日本人女性が死亡、東京都の70代タクシー運転手や、和歌山県の50代男性外科医ら日本人3人が感染し、感染者が増加しています。

そして北海道内で2月19日までに4人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、この4人の間に濃厚な接触がなく、いつどこで感染したか追跡できないことから"市中感染"の可能性が出ています。

市中感染とはどのようなことなのでしょうか?

市中感染とは病院外で体内に入った微生物によって発症した感染症を指す用語です。

健康な社会生活をしている人に起こる感染症の多くは、体外から侵入した病原体により発症する「外因性感染症」です。

要するに市中感染症とは、社会生活をしている健康人に起こる感染症で、多くは外因性感染症を指します。

一方院内感染とは、病院内で体内に入り込んだ微生物によって引き起こされる感染症を指す用語です。

院内感染は病院内での感染対策すれば感染防止は可能ですが、市中感染は何にどう気を付けていいか分からないことから、一般市民の間には不安が募ることになります。

一般市民が市中感染を防ぐ対策としては、以下のことがあります。

1.電車の吊り革、エスカレータの手すり、ドアノブを触った後には石鹸を使い流水で手洗いをする、手洗いができないときには携帯用アルコール消毒液で良く消毒する。

2.マスクは基本的には感染を広げないために着用するもので、混み合った場所や、屋内や乗り物などの換気が不十分な場所では1つの予防策と考えられます。

3.使い捨てマスクをそのまま再利用するのは、衛生的な観点から推奨できません。

4.マスクを外すときにはマスクの表面に触れないようにする、触れたときには十分に手洗いをする。

5.ウガイも感染予防にはあまり役立たないと言われていますが、しないよりするほうが良いでしょう。

2020年2月16日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-6.新型コロナウイルスの正式名称決定-

2020年2月11日、世界保健機関(WHO)は、中国武漢を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を"COVID-19(コービッド・ナインティーン)"に決定したと発表しました。

COVID-19(コービッド・ナインティーン)は「コロナ(Corona)」、「ウイルス(Virus)」、「病気(Disease)」という単語と、この病気がWHOに報告された「2019年」の組み合わせでできています。

この新型ウイルス自体の名前は、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)によって"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"と名付けられています。

国際ウイルス分類委員会とは、分類学的見地から、ウイルスの分類と命名法の認可を行なっている組織のことです。

ウイルスの分類と命名は国際ウイルス命名委員会で決めます、これは大原則であり、ここで決定されない限り正式名称にはなりません。

国際ウイルス分類委員会の分類では、全部で3万種くらいのウイルス存在しています。

まとめますと、新型コロナウイルスによる病気の正式名称は"COVID-19(コービッド・ナインティーン)で、これを引き起こすウイルスは"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"ということになります。

2020年2月10日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-5.新型コロナウイルスはマスクで感染防止できるのか-

基本的にマスクではかぜやインフルエンザそして新型コロナウイルスの感染予防はできません。

そもそもマスクは、感染予防のために使うものではなく、感染してしまった人が周囲に広げないために使うものなのです。

せきやくしゃみをすると、医学的見地からして1mから2mも唾液などの飛まつが飛ぶと言われています、そのため感染者の飛まつがウイルスを広げる大きな要因となります。

これはインフルエンザや通常のコロナウイルスそして新型コロナウイルスなど多くのウイルス性感染症で共通する特徴なのです。

従ってせきやくしゃみの症状がある人が正しくマスクをつけることは、他の人に感染させない、感染を広げないための"基本原則"と理解しておく必要があります。

では健康な人がマスクを付けることにはどの様な意義があるのでしょうか?

専門機関のホームページで確かめてみました。

1.WHO(世界保健機関)

マスクだけでは感染を防げる保証は無いとして、貴重な資源をむだにせず、また間違った使い方をしないためにも、症状のある人だけがマスクをするよう呼びかけています。

さらに「マスク使用のアドバイス」には、マスクで予防できるという科学的根拠は無いため、症状が無い場合はマスクは必要ないと記載されています。

※新型コロナウイルスの患者の看病などをする場合はマスクをつけるべきだとしています※

2.CDC(アメリカ疾病対策センター)

特別な状況にないかぎり、感染を避けるという目的で症状のない人がマスクを着用することは推奨しないとしています。

人混みを避けられない場合や、妊婦や高齢者など発症するとリスクが大きい人や、家族などでそうした人と接触する場合は、マスクを使用してもいいと記載しています。

結論としては、マスクだけでは、予防効果はあまり期待できないけれど、人混みの中など一定の環境では、ある程度の予防に役立つ可能性は否定できないが、感染予防に役立つという科学的なエビデンスは存在しないと解釈できます。

マスクで感染予防が出来るというエビデンスはなぜないのでしょうか?

その理由は以下のように考えられます。

マスクで感染予防が出来るということを確かめるには、統計処理の出来るできる多くの人たちを2グループに分け、必ずマスクをつけて生活するグループとマスクを全くしないグループで、どれだけ感染するかを調べる必要があります。

当然その調査期間は、長くなり感染症の流行している間ずっと続ける必要があるかもしれません。

そしてマスクをしたグループとしなかったグループにおいての感染者数を統計処理する必要がありますが、現実この様な調査は不可能で実施されていないことから、マスクによる感染予防のエビデンスはないというわけです。

最後にマスクの確かな効果についてまとめてみますと、

1.症状の無い人は、マスクはしないよりはした方がマシ程度に考えるべき。

2.マスクが無いならば、あまり気にせず、手洗いや睡眠をしっかりとって体調を整えておくなどの対策に力を入れるべき。

3.持病があったり、高齢であったり、またウイルスに感染しやすくなっている妊婦であったり、感染症のハイリスクとされる人たちは、マスクをつけるほうがつけないよりまし。

4.いくらマスクを使用しても正しく付けられていないマスクは感染予防の意味がまったくないことを理解しておく。

※マスクをしていても鼻が出ていたり、あごにかけているだけだったりと間違った使い方をしていると予防効果は無い※

5.以上のことからして現在、マスクが品薄と報じられていますが、パニックになる必要はありません。


2020年2月3日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-4.新型コロナウイルスの実質感染者とは-

今回武漢からの帰国者の1.4%が新型コロナウイルスに感染していたことになり、このことは武漢の人口が1108万人ですから、単純計算で武漢では10万人くらいの感染者がいるということになります。

ランセットに発表された論文によりますと武漢市での感染者数は75815人と推定しています。

Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study

ランセット(The LANCET)2020年1月31日DOI:https ://doi.org/10.1016/S0140-6736(20) 30260-9

今後感染者は、減ることはなく更に増加すること多くの専門家は分析しています。

こと更に怖がらず正しい知識を身に着けて感染予防をするしか現時点では対策はないようです。


【感染予防対策】

最も大事なことは手洗いです(アルコール消毒を含む)、外出して帰宅した際には念入りに手洗いをする必要があります。

手洗いは、流水で洗うか、アルコール消毒薬で手を消毒するかですが、家庭なら石鹸で洗い流水で念入りにすすげばよいでしょう。

手またなどは70%消毒用アルコールでの消毒、環境表面をふく場合は同様にアルコール消毒薬や次0.1%亜塩素酸ナトリウム(台所用亜塩素酸ナトリウムを薄める)などが有効とされています。

【マスクは感染対策に有用か】

感染予防にマスク着用を勧める人がいますが、症状のない人が予防的にマスクを着用することに確かなエビデンス(証拠・根拠)が少ないというのが国内外の専門家の認識です。

マスクを着用しても鼻が出ていたり、皮膚に密着していなかったりすると感染を防ぐことはできません。

更にマスクの着脱で触った手が最も汚れているので、その手で色々な環境表面を触ると、そこで2次感染が起きます。

多くの人たちは、マスクをして守られていると思っている人が多い様ですが、効果は限定的であることを理解して使用すべきです。

またマスクは飛沫を飛ばさないための「咳エチケット」と考えておくことです。

感染対策に粒子状物質の吸入防止に用いるN95マスクは、本来製造・建設現場のマスクとして使用されるマスクです、が結核・SARSなどの感染症防止に効果を上げたことからこのマスクを感染予防に使用することをすすめる人がいますが息苦しく気分が悪くなることから一般の人が使用することは適切ではありません。

医療専門家の間で一般的にN95マスクを着用するのは、はしかなどの空気感染するウイルスに対応する医師だけです。

2020年1月28日火曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-3.新型コロナウイルス感染症についての速報(2)新型コロナウイルスの感染力とは-

便宜上感染症の人から人へのうつりやすさを「感染力」とします。

感染症の人への感染のやすさの指標として、"基本再生産数"がよく使われます。

【基本再生産数とは?】

基本再生産数(R0; R naught)とは、簡単に言うと「1人の感染症患者から何人に感染させるか」を表す数です。

正確には1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均値のことを指し、感染症別の感染性の指標として利用されています。

これまでの患者の発生状況などから、推測して新型コロナウイルスの基本再生産数は1.4~2.5と暫定的に見積もられています。

1人の感染者からだいたい2,3人に感染するということになります。

その他の感染症の"基本再生産数"

インフルエンザは、1.4~4(1人のインフルエンザ患者から1人、最大4人に感染させる)

SARSは2~5人(1人のSARS患者から2人、最大4ー5人に感染させる)

麻しん(はしか)は、12~18人(1人の麻しん患者から12人、最大18人に感染させる)

風疹は、6~7人1人の風疹患者から6人、最大7人に感染させる)

以上のことからして、現時点では新型コロナウイルス感染症はSARSよりは広がりにくい性質を持っている考えられています。

しかし、今後この新型コロナウイルスが変異して、今以上に感染力が強くなる可能性も否定できていません。

※世界保健機関(WHO)や各国の疾病予防管理センターなどから収集した情報をもとに、米国ジョンズ・ホプキンス大学は、新型コロナウイルスの感染状況を地図上で可視化できるWEBページを公開していますので紹介しておきます※





2020年1月22日水曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-2.新型コロナウイルス感染症についての速報(1)-

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症患者増加に伴い急遽"中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について"の現状をお知らせしておきます。

【発見日時】

2020年1月7日、新型コロナウイルスと特定されています。

【命名】

初期段階では原因不明であるため、「原因不明の肺炎」と呼ばれていましたが、2020年1月7日、香港の保健機関は「重度の新型感染性病原体呼吸器疾患」と命名しています。

世界保健機関(WHO)は、このウイルスを正式に「2019年の新型コロナウイルス」(2019-nCoV)と命名。

中国側は「新型コロナウイルスの感染による肺炎」と呼んでいます。

【最初の報告】

新型肺炎の最初の発症報告は2019年12月12日で、病原体の候補として新型のコロナウィルスが検出されたのが2020年1月9日。

魚市場の関係者が感染したという事実以外、まだ潜伏期間や感染経路は十分に解明されておらず、そんな中、春節を迎えて大量の帰省客が武漢を訪れ、そのまま中国各地に戻っていくこと、さらにその後日本をはじめとする海外へ渡航することを考えると、場合によってはそれがパンデミックにつながる可能性が危惧されていました。

【中国政府の対応】

武漢市当局によると、新たに発症したのは25~89歳の男女136人、1月18日までに発症した計198人の患者のうち、3人が死亡、35人が重症で、25人が退院したと発表していますが、本当の患者数を発表しているとは考えにくいです。

以前から中国は自国(中国共産党)のためにならないことは、隠したり、偽ったりする傾向があることから今回の新型コロナウイルス感染患者数の発表も信頼できません。

現にイギリスインペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、2020年1月19日中国の湖北省武漢市で集団発生している新型コロナウイルスによる肺炎患者は公式発表よりはるかに多く、1700人を超えている可能性があるとの研究結果を発表しています。

2020年1月21日に習近平国家主席が対応を支持すると、国民は感染を期にし始め、行政当局も感染者が増加していると報告し始めています。

前回のSARSの時も中国政府の対応が遅く感染が広まった経緯があります。

【人から人への感染は】

この新型コロナウイルスは人から人へ感染することが明らかになっています。

そして人から人に感染するため、帰省や旅行で人の往来が増える春節(旧正月)の連休(24~30日)に、さらに発症者が増えるとの見通しも示しています。

【感染予防対策はどうすればよいのか】

この新型コロナウルスは、SARSウイルスやインフルエンザウイルスよりも感染力が弱く、重症化しにくいと言われていますが、手洗い・マスク着用・うがいなどをして予防するしかありません。

間違った情報などに振り回されることなく、日本国内で発表される報道をしっかりと読み正しく対応することです。

※信頼できる情報が入り次第逐次紹介します※

2020年1月19日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-1.コロナウイルスについて-

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について解説していきますが、第一回目としてはコロナウイルスについての解説です。

【コロナウイルスとは】

風邪などの呼吸器感染症を起こすウイルスで、表面に花弁状の突起があり、太陽のコロナのように見えることからコロナウイルスと呼ばれています。

飛沫感染や接触感染で伝播し、一般的には軽度から中等度の呼吸器症状を起こすが、SARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスのように重症化するものもあります。

コロナウイルスは人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスで、人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られています。

風邪を引き起こす4種類のウイルスと、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られていましたが、2020年1月中国武漢で新種のコロナウイルスが発見されています。

風邪を引き起こす4種類のコロナウイルス(HCoV:Human Coronavirus)は、、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1です。

風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする事が多く、冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験すると言われています。

多くの感染者は軽症ですが、中には高熱を引き起こす場合もあります。

特に深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)以外は、感染しても通常の風邪などの重度でない症状を起こすだけです。

次回は重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe acute respiratory syndrome)
について解説していきたいと思います。