血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年4月12日水曜日

SH外来について

最近開設されたSH外来について紹介いたします。

当ブログを読まれる前に以下の注意をよくお読み下さい!!

【ご注意】

利用される場合は、以下をよく読まれて不明な点があれば直接該当施設にお問い合わせ下さい。

今回はSH外来とはどのような診療科であるかを血液の鉄人の知る限りで紹介しているだけですから、誤った箇所もある可能性も否定できません。

該当施設の説明と、当サイトの説明で食い違いがあれば、申し訳ありませんが該当施設の説が正しいとご理解頂きご容赦下さい。

受診される場合は必ず事前に該当施設にお問い合わせ下さい。

【SH外来とは】

SH外来とは"セクシャル・ヘルス外来"のことです。

【何処にオープンされたのか】

2017年1月より国立国際医療研究センター内にSH外来がオープンしました。

【ここでは何をするのか】

ゲイ・バイセクシュアル男性を対象に性感染症の検査と治療を行う専門外来です。

【外来の目的】

最もHIV感染の可能性が高いと考えられている肛門の性感染症とHIV感染の関連を明らかにするために、定期的に(概ね3ヶ月毎)HIV、梅毒、肛門の淋菌とクラミジア感染症の検査を受け目事のできる人が受診できます。

特に肛門の性感染症検査は、現在保険適応外ですから一般的には受けられませんが、この外来では研究という名目で無料で受けることが出来ます。

【受診できる条件】

1.日本語が理解できる国内在住者の16歳以上(対象年齢の上限はなし)の肛門性交を行っているゲイ・バイセクシュアル男性でHIV陰性の方または感染しているかどうか不明の方が対象となりますが、定期的に通院して研究参加に同意した人が対象となります。

※16歳以上の人は、親の同意無しでも本人の同意だけで受診できます※

2.検査項目は、HIV感染症、梅毒、肛門のクラミジア、肛門の淋菌感染症。

1)HIV第4世代抗原・抗体検査(無料)

2)梅毒検査 RPR定量と梅毒TPHA定量(無料)

3)肛門の淋菌とクラミジア同時検査 遺伝子診断法(無料)

4)上記以外の検査もオプション検査として受けることは可能ですが、これは有料となります。

【受診日】

月曜日と木曜日 8:30~15:00

【受診できる期間】

 2021年3月まで

※永続的にはに設置されませんので受診終了年月には注意して下さい※

【受診方法】

 初診受付にて保険証を提示後、「SH(エスエイチ)外来希望」と申し込む

【実施医療機関】

 国立研究開発法人 国立国際医療研究センターSH(Sexual Health)  外来

【問い合わせ先】

info_shc@acc.ncgm.go.jp

03-3202-7181(代)内線 4441 SH(エスエイチ)外来

【受診費用】

初診は2,820円、前回受診から概ね3ヶ月以内の受診は730円です。

SH外来は、紹介状は必要なく受診できますし、紹介状のない場合の特定医療費5400円は加算されません。

【結果を知る方法は】

後日結果を聞きに行くか、メールで受けとるか選択出来ます。

HIV検査については、希望により当日の結果説明が可能ですが、結果が出るまでに1時間30分程度かかります。

【治療が必要となった時には】

治療が必要な状態であった場合には、保険診療にて治療を受けることが可能ですし、他の診療科の受診が必要と判断される場合には、SH外来より他科へご紹介してもらえます。

またHIV陽性の場合は、当院の専門外来を紹介してもらえます。


 

2017年4月3日月曜日

結核-6.検査その4-クォンティフェロンTbゴールド(QFT)-

【クォンティフェロンTbゴールド(QuantiFERON®-TB Gold:QFT)とは】

結核菌に対する特異性が高い検査で、BCGには反応しないことが特徴です。

特異性が高いということは、偽陽性が少ないため、この検査が陽性であれば結核に感染している可能性が高いことになります。

【検査の原理】

患者の血液を結核菌特異抗原(ESAT-6とCFP-10)とともに20時間程度培養し特異抗原により刺激を受けたTリンパ球によって産生されるインターフェロン-ガンマー(IFN-γ)という生理活性物質の量を酵素免疫測定法により測定し、結核の感染を判定する方法です。

【結核菌に感染して検査が陽性となる期間】

概ね8週間と言われています。

家族内のように濃厚な接触がある場合には、4週間でも陽性となることがあります。

【感度と特異度】

感度・・・・93.7%

特異度・・・93.8%

【偽陰性の起こる要因】

・HIV感染などに感染し免疫機能に影響を受けている場合。

・糖尿病・白血病・リンパ種・悪性腫瘍などで免疫低下がある場合。

・免疫抑制剤の使用によって免疫が抑制されている場合。

【偽陽性の起こる原因】

検査様血液に5%以上の溶血がある場合。

【結果の計算方法】

1)測定値A(IU/mL)=TB抗原血漿のIFN-ガンマーA濃度(IU/mL)-陰性コントロール血漿のIFN-ガンマー濃度(IU/mL)

2)測定値M(IU/mL)=陽性コントロールのIFN-カンマー濃度(IU/mL)-陰性コントロール血漿のIFN-ガンマー濃度(IU/mL)

【判定】

・測定値Mの値不問で測定値Aの値が0.35以上・・・陽性(結核菌感染を疑う)

・測定値Mの値が0.5以上で測定値Aの値が0.1以上~0.35未満・・・判定保留

・測定値Mの値が0.5以上で測定値Aの値が0.1未満・・・陰性(結核菌感染無し)

・測定値Mの値が0.5未満で測定値Aの値が0.35未満・・・判定不可(免疫不全が考えられることからこの検査での判定は不可)

【この検査の欠点】

既に結核菌に感染し治癒している患者では過去の感染と最近の感染の区別が困難な場合があります。

6歳未満の乳幼児では反応性が低い場合が見られます。

2017年3月27日月曜日

結核-5.検査その3-結核菌培養検査-

結核菌は、およそ15時間に1回しか分裂しないことから、喀痰を培養しても結核菌のコロニー(集落)が見られるようになるには早くても3~8週間はかかります。

【培養検査の前処理】

培養検査は喀痰をNALC-NaOH法によって前処理して、抗酸菌のみを選択的に培養する検査です。

前処理に要する時間は1~2時間以内です。

【NALC-NaOH法とは】

NALC (N-acetyl-L-cysteine) は一種の還元剤で、ある一定量加えることにより粘稠な喀痰に多量に含まれるS-S結合を還元して ミSH HS-に解離させます。

NALC を加えることによって喀痰の粘稠性が失われ, サラサラとした喀痰になります

そしてNALC処理によって粘稠性が失われた喀痰に含まれる一般細菌は, より低い濃度のNaOH (最終1%) で充分殺菌されます。

NALCを用いる目的は, 一般細菌の殺菌に必要なNaOH濃度をできるだけ低くすることです。

NALC-NaOH法は, 小川培地やその他の培地での培養や後で解説するミジット検査培養の際にも使用します。

NALC-NaOH 法で用いる試薬は, 以下の三成分から成り立っています

1.喀痰融解のためのNALC―還元剤

2.結核菌以外の雑菌を殺菌する.NaOH

3.喀痰に含まれる重金属イオンを除き, NALCの作用を保護するクエン酸ナトリウム

【小川培地による培養検査】

前処理によって得られた抗酸菌を小川培地に植えて結核菌の有無を調べます。

結核菌がいないことを証明するために、小川培地に8週間培養を続けます。

結核菌がいる場合には、小川培地では4週間程度で陽性となります。

【培養検査の利点】

塗抹検査に比べて菌量が少なくてすみ(10~数百個/mL)、検出感度も高く、分離菌を用いて菌種の鑑別・同定や薬剤感受性検査などを行うことが可能です。

【培養検査の欠点】

結核菌は発育が遅いため、結果が出るまでに数週から2ケ月以上かかる点が欠点です。

【ミジット検査】

近年は、ミジット(MGIT:Mycobacteria Growth Indicator Tube)法と呼ばれる液体培地を使用します。

これは 液体培地を使用した酸素蛍光センサーを備えた抗酸菌検出システムです。

この培地には、結核菌の発育促進剤と結核菌以外の雑菌の発育を抑制する抑制剤が含まれています。

【ミジット検査の原理】

底の部分に酸素感受性の蛍光センサーを埋め込んだ試験管で抗酸菌を培養します。

結核菌の発育に伴い液体培地中の溶存酸素が消費されるのに伴って、センサー部に結合していた酸素が遊離し、センサー部が蛍光を発するようになります。

この蛍光を365nmの長波長紫外線の照明のもとに目視または機器で行います。

※全自動測定システムバクテックMGIT960(ベクトン・ディッキンソン社製)で検査を行います※

この検査では、以下の長所があります。

1.およそ2週間で結核菌を検出することができる。

2.結核菌の検出率は90%以上で、特に菌数の少ない塗抹陰性検体や喀痰以外の検体での検出率の向上が期待できる。

3.ミジットでの培養陽性後、直ちに薬剤感受性試験に移行できる。

【培養検査の長所】

一番感度がよいのが培養検査で、結核菌検査全てが陰性でも培養検査でのみ陽性になることがあります。

2017年3月20日月曜日

結核-4.検査その2-Tスポット.TB検査-

【Tスポット.TB検査検査とは】

結核の感染感染の診断を補助するインターフェロン-γ遊離試験(Interferon-Gamma ReleaseAssays:IGRA)のひとつです。

【検査材料】

ヘパリンを加えた血液

【検査にかかる日数】

3日~7日

【検査方法】

1.血液6mL以上を採血します(18~25℃で保管)
2.全血から末梢単核細胞(PBMC)を分離し、規定の細胞数となるよう調製します。
3.抗IFN-γ抗体を固相したマイクロプレートのウェルにPBMC検体を加え、結核菌特異抗原(パネルA抗原、パネルB抗原)と16~20時間反応させます。
4.ウェルを洗浄したのち、標識抗体試薬を加えます。
5.ウェルを洗浄して非結合の抗体を除去後、基質試薬を加えます。
6.IFN-γを産生したエフェクターT細胞の痕跡が暗青色の「スポット」として発現します。
7.この数をもって感染の有無を判定します。

【判定】

0~4スポット:陰性

8スポット以上:陽性

5~7スポット:判定保留

【感度】

97.5%

【特異度】

99.1%

【診断上の注意】

1. 交差反応

結核菌特異抗原として ESAT-6 および CFP10 の2種を使用しているため,BCG ワクチンや結核菌以外のほとんどの抗酸菌とは交差性は起こしませんが、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・ズズルイ(M.szulgai)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae) 感染では陽性の結果を示すことがあります。

従ってこれらの感染が疑われる場合には,他の診断方法を考慮する必要があります。

2. 感染から陽性化するまでの期間

Tスポット.TB検査は感染後,陽性化まで 8~10週さらに長期間経過後に陽性化することもあるので、検査実施時期や検査結果の解釈に際して考慮に入れる必要があります。

3. 感染時期

検査が陽性となっても最近起こった感染か,感染後長期間経過したかは判定することは出来ません。

この検査を発病事例の補助診断のために適用する場合は、Tスポット.TB検査が陽性であっても過去の感染を反映した結果で胸部X線異常は他の原因によることもあるので注意が必要となります。

※活動性結核と潜在性結核感染の区別は出来ず、また感染時期の特定も困難であるという制限を持つ検査です※

2017年3月12日日曜日

結核-3.検査その1-喀痰塗抹検査-

【痰とは】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物でその成分は、喉や咽頭・気道・気管支・肺から剥がれ落ちた細胞も含まれています。

喉や咽頭・気道・気管支・肺の細胞に炎症、細菌やウイルス感染、悪性腫瘍があれば、痰の中にウイルスや細菌、悪性細胞などが混ざり痰に変化があらわれます。

そのことから痰を調べれば、呼吸器のさまざまな情報を得ることができるのです。

【結核菌の喀痰塗抹検査】

採取した喀痰の一部を直接スライドグラス上に塗抹・染色して標本を作製し、顕微鏡で結核菌の有無を調べる検査です

【検査方法】

結核または結核の仲間の菌である抗酸菌を染色し、直接顕微鏡で観察する検査です。

染色には、特殊な抗酸菌染色である「チールニールセン染色」を行い顕微鏡で検査を行います

最近では判定しやすい蛍光顕微鏡を用いて結核菌を調べる蛍光法が多く採用されています。

【判定】

ガフキー0号 全視野になし
ガフキー1号 全視野に1~4個
ガフキー2号 数視野に1個
ガフキー3号 毎視野に1個
ガフキー4号 毎視野に2~3個
ガフキー5号 毎視野に4~6個
ガフキー6号 毎視野に7~12個
ガフキー7号 毎視野にやや多数(13~25個)
ガフキー8号 毎視野に多数(26~50個)
ガフキー9号 毎視野に非常に多数(51~100個)
ガフキー10号 毎視野に無数(101個以上)

【結核菌検査指針2007による判定】

蛍光染色標本での検査では明瞭な桿菌のみを陽性とし、球菌状のものは陽性としない。

前処理前の検体量当りに換算した検出菌数を、ガフキー号数に代えて1+(ガフキー2号)、2+(ガフキー5号)、3+(ガフキー9号)で記載する。

ガフキー1号は±(要再検)と記述し、同一検体からの塗抹標本を作り直すか、別の検体について再検査する。



新旧の判定法


【喀痰検査の感度】

結核菌の検出感度は分離培養法や核酸増幅法と比べて低いですが、患者発見の重要な手段のひとつの検査法であることと、結核菌を排菌しているかどうかを調べることが出来ることからして、結核患者の管理や治療効果の判定の上で重要な検査法です。

【塗抹検査陽性の場合の判定】

喀痰で結核菌が認められた場合は、結核菌を排菌している事になります。

結核菌か非結核性抗酸菌か鑑別できない場合もあります。

偽陽性反応…抗酸性に染まる他の細菌の可能性あり。

【塗抹検査陰性の場合の判定】

真に結核菌に感染していない。

痰に含まれる結核菌が少なければ、結核菌に感染していたとしても顕微鏡検査で結核菌が見つからない場合もあります。

【塗抹検査の欠点】

結核菌検出には喀痰1mL中に結核菌が5,000~10,000個以上いないと検出できません。

また結核菌以外の抗酸菌全般が染色されるため、結核菌と非結核菌の区別が出来ない欠点があります。

2017年3月6日月曜日

結核-2.結核菌とは-

結核菌は1882年ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(1843~1910)によって発見されました。

結核菌は抗酸菌の一種で、チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まり細長い棒状を示します。

※チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まった結核菌※

切手は1982年フィリピン発行の「結核菌発見100年記念切手」で、コッホとともにチールネルセン染色で鮮紅色に染まった結核菌が描かれていますので紹介します。

【結核菌の大きさ】

長さ2~10ミクロン、幅0.3 ~0.6ミクロンの細長の桿菌で、芽胞・鞭毛・莢膜はつくらない。

【結核菌の分類】

マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属しグラム陽性桿菌である抗酸菌と呼ばれる細菌の一種です。

【結核菌の種類】

以下の四種類が存在しますが、人に病原性を持つのはヒト型結核菌です。

1.結核菌:ヒト型結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)
2.ウシ型結核菌 (M. bovis)
3.マイコバクテリウム・アフリカナム (M. africanum)
4.ネズミ型結核菌 (M. microti)

稀にウシ型結核菌とマイコバクテリウム・アフリカナムが人に感染することがありますが、ネズミ型結核菌は人には感染しません。

【消毒方法】

日光の中の紫外線には弱いので殺菌灯(紫外線灯)が感染防止に利用されます。

乾燥・酸やアルカリおよび消毒剤に対してはかなり強い抵抗性を示す。

グルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムは消毒効果はない。

有効な消毒剤としては、クレゾール石鹸・両性海面活性剤・アルコール・ヨードホルム、およびグルタラールなどがある。

熱に対しては60℃で20~30分、70℃では5分で死滅する。


2017年2月27日月曜日

結核-1.結核とは-

【結核とは】

結核は、結核菌が体の中に入ることによって起こる病気で、毎年約18,000人が新たに発症しているわが国の主要な感染症のひとつです。

日本の結核罹患率は2010年に人口10万人あたり18.2人で、10人以下となっている欧米先進国に比べまだまだ結核は多く、世界の中では依然"中まん延国"とされています。

※2015年は24,995件の結核発生届(患者、無症状病原体保有者、疑似症患者)※

【結核菌の感染場所】

結核菌は主として肺の内部で増殖しますが、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。

【感染経路】

肺結核患者の咳やくしゃみなどによって、空気中に結核菌が飛び散り、その結核菌を吸いこむことにより感染します。

人から人へと感染します。

【潜伏期間】

生まれてはじめて結核菌を吸い込んだ場合は、10~15%の人はその後1~2年のうちに発症します。

それ以外の人の場合は、体内に入った結核菌は冬眠状態となり、体内に留まることになり、発症しなかった場合でも、加齢などで身体の抵抗力が落ちると、潜んでいた結核菌が活動を始め、結核を発症します。

この場合発症するのは、結核菌が体内に留まったケースの10~15%程度と言われています。

【症状】

咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪のような症状を呈することが多いです。

【死亡率】

治療をしない場合は、50%程度の死亡率と言われています。

現在は、医療の進歩によりかなり低くなってきていますが、髄膜炎を発症してしまった場合は、現在でも30%程度の死亡率となっています。

【HIVと結核の関係】

HIV感染によって免疫が低下してくると、結核菌に感染していて体内に結核菌が潜んでいる場合や、新たに結核菌の感染を受けた場合は、結核菌は増殖して結核が発症することになります。

1984年、結核が日本の3分の1に減少していた米国で結核の逆転上昇が始まり、その後の増加分の30%はHIV感染が原因とされています。

HIV感染者の多いアフリカでは結核の大爆発という悲惨な状況が展開されています。

2017年2月7日火曜日

梅毒迅速検査の落とし穴

梅毒の流行が以前止まりません。

そのことから梅毒迅速検査の落とし穴について解説してみます。

梅毒トレポネーマに感染すると、体の細胞の一部が破壊されてカルジオリピン抗体が血液中に出てきます。

カルジオリピン抗体は梅毒トレポネーマに感染して約1ヶ月で現れ、STS(Serologic Test for Syphilis)検査で見つけることが可能です。

TPHAなどのTP(Treponema pallidum)抗原検査に比べて早い時期に陽性となるため、早期診断に適しています。

この検査はカルジオリピンというリン脂質に対する抗体を調べているため、梅毒以外の原因でカルジオリピンが存在していると偽陽性となってしまいます。

例えば、妊娠、膠原病、肝疾患、梅毒以外の感染症などでもカルジオリピン抗体が陽性になることがあります。

これを生物学的偽陽性反応(Biological False Positive:BFP)といいます。

一方TP検査は、梅毒トレポネーマに感染して体内に出来る感染抗体であるTP抗体を見つける検査法です。

TP抗体を見つけることから偽の陽性反応を起こすことは殆どありません。

このTP抗体は梅毒トレポネーマに感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

最近梅毒迅速抗体検査を利用して、即日に検査結果がわかると保健所等では言っていますが、梅毒迅速抗体検査はTP抗原を利用したイムノクロマト法ですから、梅毒の早期検査には適していません。

不安な行為をしてから5週間後に受けないと梅毒トレポネーマに感染しても陰性(偽陰性反応)となってしまいます。

梅毒トレポネーマの感染を早期に発見したい場合には、4週間ではSTS検査を受ける必要があります。

2017年1月26日木曜日

臨床検査のデータの考え方とその読み方-1.臨床検査の位置づけ-

現代医学は臨床検査を的確に実施し、その検査結果を臨床にいかに活かすことが求められています。

このことは取りも直さず現代の医学は臨床検査なしでは成り立たないということです。

リアルタイムで次々と登場する検査をうまくこなすことは至難の業となっています。

医師や臨床検査技師、看護師はこれらの検査法を理解して正しい使い方に対する臨床的なエビデンスを習得する必要があります。

これらを怠れば不要な検査を実施し患者に経済的負担を与えたりするのと、検査の解釈の間違いから誤診を引き起こしているのが現実に存在します。

種々ある臨床検査は、ほぼ全てと言っていいくらい感度100%・特異度100%の検査法は存在しません。

その為に臨床症状と検査の異常をうまく捉えて、その裏に存在する病態とその原因となっている疾患を確定するのが"検査診断"です。

この"検査診断"に知っておくべき知識や落とし穴が多く存在します。

検査の原理・検査をする目的・異常値を示す理由・検査を実施する的確な時期・間違ったデータを引き起こす要因等を十分に理解して検査を実施する必要があります。

【語句の解説】

エビデンス・・・根拠・証拠

感度・・・ある疾患に感染している患者を検査してその患者中の検査陽性者の割合

特異度・・・ある疾患に感染していない患者を検査してその患者中の検査陰性者の割合

検査診断・・・臨床検査の検査結果から病気を診断する

病態・・・病気のぐあい・病状

臨床症状・・・医療において患者が、実際に呈している症状

2017年1月15日日曜日

梅毒感染に気をつけて下さい!!!

2016年1年間の梅毒患者が4518人(速報値)を超えました。

この患者数は1974年以来42年ぶりのこととなります。

患者全体の約80%を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されていますが、女性は20代が女性全体の50%超を占め患者増加が際立っています。

最近の梅毒は男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、異性間での感染も広がり患者増加傾向が見られますが、この増加の原因は突き止められていません。

特に妊婦が梅毒トレポネーマ感染すると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し先天性梅毒となります。

これを防ぐには妊婦健診を必ず受けることです。

異性間性交による梅毒患者増加は、その裏にHIV感染者の増加が考えられます。

梅毒トレポネーマにに感染すれば、HIVの感染リスクが極めて高くなりますので、不安な行為をした場合には必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒はコンドームでは完全に予防できませんし、オーラルセックスでも感染することを認識しておく必要があります。

梅毒トレポネーマは、性行為で性器や肛門、オーラルセックスでも性器や咽頭に感染します。

梅毒検査のただしす受け方に関しては、当ブログに紹介しておりますから再度ご確認下さい。


2017年1月2日月曜日

ヘルペスウイルスについて-8.HHV-8(カポジ肉腫ウイルス)-

【HHV-8とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種で、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8:human herpesvirus 8)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス,または単純にカポジ肉腫ウイルスと呼ばれています。

HHV-8は他のヘルペスウイルスとは異なり,カポジ肉腫や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発症と関連していることが最大の特徴です。

カポジ肉腫を発症するのは、主に地中海系またはユダヤ系の高齢の男性、アフリカの一部地方出身の小児と若い男性、臓器移植を受けて免疫抑制剤を投与されている患者、そしてエイズ患者です。

【感染経路】

HHV-8の感染経路は正確に把握されていません。

男性の同性間性的接触者(MSM)で感染率が高いことや,感染者の唾液にHHV-8が検出されることから,男性の同性間性的接触のアナルセックスや唾液から感染することが疑われています。

外国ではMSMに感染者が多いといわれ、特に米国ではMSMの8~24%がHHV-8に感染しています。

日本人の健常者でもおよそ1%が感染していますが、その殆どは感染経路が不明です。

ほかのヘルペスウイルスと同様一度感染したら生涯ウイルスは体内に潜伏すると考えられています。

健康な人であれば、感染しても何も症状は出ることがありませんので治療の必要はありません。

殆どの人は感染しても一生、発症しないで終わります。

非常に稀ですがHHV-8が原因で悪性リンパ腫などの悪性腫瘍を発症することがあります。


【HHV-8とHIVの関係】

HHV-8に感染している人がHIVに感染し、エイズを発症したり、何らかの理由で免疫不全になるとカポジ肉腫を発症する可能性があります。

日本ではエイズの人のおよそ5%がカポジ肉腫を発症しているといわれています。

【カポジ肉腫とは】

血管のがんの一種で、エイズの男性同性愛者に多いという特徴があります。

エイズの代表的な合併症として重要な疾患"エイズ関連カポジ肉腫"として知られています。

皮膚や口の中に赤茶色の斑点ができて、これが大きくなり、さらに肺や消化管などの内臓に発症すると死亡することもあります。

日本では外引くに比べて非常に少ないですが、HIV感染者の男性の同性間性的接触(MSM)のHIV感染者が増加し、カポジ肉腫も増えています。

"エイズ関連カポジ肉腫"は、殆どが男性の同性間性的接触(MSM)で、女性に発現することは極めて稀です。

ごくまれにですが、エイズとは関連がなく、高齢者や移植などの免疫不全症の人に発症する場合もあります。

【治療】

カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術または液体窒素で凍結させて除去します。

多数できている場合は放射線療法を実施します。

HIVを抑える薬が、カポジ肉腫にも有効であることがわかっています。

患者の免疫能が回復すると消退する症例もあり、プロテアーゼ阻害薬を含むAZT, ddIなどの強力な抗レトロウイルス療法(HAART:highly active anti-retroviral therapy )には抗カポジ肉腫効果も期待できます。

何れにしてもこれらの治療は初期の病変にはよく効きますが、進行した病変では効かないことがあります。

【検査】

HHV-8は健康な人でも約1%は感染しており,感染していても健康な人では症状はありませんので,一般的には検査は不要です。

HHV-8の検査には抗体検査とDNA検査があります。

1.抗体検査

一度でもHHV-8に感染すると血液中にHHV-8に対する抗体が存在しますのて、過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

この検査はこの血液中のHHV-8に対する抗体をエライサ法や免疫蛍光法で調べます。

過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

2.DNA検査

血液中のHHV-8を直接、PCRと呼ばれる方法で検出します。

DNAの検査はカポジ肉腫などを発症している人を対象にします。


【カポジー肉腫の種類】

1.古典的カポジ肉腫

エイズとは無関係に風土病的に発症するカポジ肉腫で、地中海沿岸のほか、世界各地に認められています。

2.アフリカ風土病型カポジ肉腫

アフリカの小児に発生するカポジ肉腫です。

3.エイズ関連カポジ肉腫

エイズ患者に合併するカポジ肉腫で、男性の同性間性的接触者(MSM)に限られる。

4.医原性カポジ肉腫

臓器移植など免疫抑制剤投与に関連して起こる医原性のカポジ肉腫。

2017年1月1日日曜日

迎春

明けましておめでとうございます。

皆様方のご健康とご多幸をお祈りいたします。

旧年中は皆様方にご利用いただきありがとうございます。

本年も皆様方のお役に立てるよう頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

平成28年 元旦 血液の鉄人

2016年12月25日日曜日

ヘルペスウイルスについて-7.HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)ー

【HHV-4とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種です。

HHV-4は、伝染性単核球症(伝染性単核症)を引き起こすウイルスです。

日本では2~3歳までに70%が感染し、 20代では90%以上がこのウイルスの抗体を持つという調査結果があります。

HHV-4の感染者の約15~20%は、無症状の状態でウイルスを持っており、唾液中に排泄している事からして、感染予防を行うことはまず不可能です。

言い換えれば、ほとんどの成人はすでに、小児期に感染して、抗体を持っていることからして、 特に感染予防法は無いのが実際です。

一度感染して症状が治まれば、再感染はしませんが、ヘルペスと同じように免疫力が低下した場合、発病することもあります。

【HHV-4の感染源と感染経路】

思春期以降は唾液を介して感染することから、多くはディープキスによって感染することから"キス病"とも呼ばれています。

ディープキスや飲み物の回し飲みなどから、唾液を介して口から感染します。

小児期に感染していない人が、HHV-4を含む唾液が口の中にはいると、ほぼ100%感染し、50%の人が発病します。

【HHV-4の感染の症状】

一般に、「発熱」、「咽頭痛」、「リンパ節腫脹」の三徴を特徴する症状が現れます。

1~2歳程度の幼少児の初感染では、発熱と口蓋扁桃の膿栓(白苔)を伴った腫脹・発赤が見られる程度の症状を呈さないことからして、この年齢の幼少児の初感染では伝染性単核球症と診断されないことが多く咽頭炎または扁桃炎と診断されている症例が多いのが実情です。

青年期あるいはそれ以上の年齢で初感染した場合は、発熱・全身倦怠感・口蓋扁桃の発赤腫脹・咽頭痛・全身特に頚部のリンパ節腫脹・肝脾腫を引き起こします。

【HHV-4の治療】

幸いな事にほとんど自然に治ってしまいます。

思春期以降に感染した場合、約50%が発病しますが、約4~6週間で症状は自然になくなると言われています。

6ヶ月以上症状が続く場合は重症化している可能性があり、注意が必要ですので受診されることです。

【検査を受ける時期】

唾液を介するオーラルセックスの後、4~6週後に症状が出ますので、その際に受診して検査を受けることです。

しかし、感染しても症状が出ない人もありますから、検査を受ける時期を判断するのは難しいです。

【HHV-4の検査】

血液検査では、ほとんどの症例でAST・ALT値の上昇が見られることから、肝炎と診断を誤ることがあります。

白血球総数は、正常かやや増加、好中球数は正常かやや減少し、リンパ球の著しい増加、異型リンパ球の出現(5%以上になることが多い)が特徴的です。

抗EBV EA-IgG抗体または、抗EBV VCA-IgM、抗EBV VCA-IgG抗体、抗EBNA-IgG抗体の抗体価を測定する。

抗EBNA抗体が初感染後、数ヶ月を経ないと出現しないのに対し、抗EA、VCM抗体は急性期にも出現します。

【感染パターンの分類】

1.初感染パターン

抗EBNA抗体陰性、抗VCA-IgGまたは/かつIgM抗体陽性となりますが、抗EA抗体は偽陰性が多いが、EA陽性ならば急性感染の可能性が高い。

2.既感染パターン

抗EBNA抗体陽性、他の抗体は(通常)陰性となれば、このような場合は症状の原因としてEBV感染は考えにくい。

EBウイルスについては、抗CMV-IgGおよびIgMを調べたり(IgM陽性例は急性感染の可能性が高い)、血液中のEBウイルスDNAを核酸増幅法(PCR)で調べることもある。

【治療】

伝染性単核球症に特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。

抗生物質は、伝染性単核球症それ自体には効き目がありません。

しかし、伝染性単核球症になると、比較的高率に細菌による混合感染を起こすことがあるので、血液検査所見から細菌による混合感染が疑われた場合には、抗生物質の投与を行います。

発熱が長期に持続する、全身状態が著しく不良である、血球減少が見られ血球貪食症候群の合併が懸念される、などの重症で例では、副腎皮質ステロイド投与やガンマグロブリン大量投与が行われることもあります。

【HHV-4とHIVの関係】

HHV-4感染は、性行為感染症でありませんので、HHV-4に感染してもHIVに感染しやすくなることはありません。

2016年12月19日月曜日

ヘルペスウイルスについて-6.HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス)ー

【HHV-5とは】

ベータヘルペスウイルス亜科に属し、ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV)と呼ばれています。

※サイトメガロウイルス(CMV)とも呼ばれます※

※本稿ではサイトメガロウイルス(CMV)と呼ばずにHHV-5として解説していきます※

宿主の細胞の核内に光学顕微鏡下で"フクロウの目(owl eye)"様の特徴的な封入体を形成する特徴があります。す。

※封入体とは、ウイルスに感染した細胞の核内にみられる顆粒状の異常な構造物のことをいいます※

このウイルスは種特異性が強く、ヒト以外の動物には感染しません。

日本人の場合、乳幼児期の感染率が高く大多数の人が感染し抗体を持っていることから再感染することはありませんが、ヘルペスと同様に再発することはあります。

健康な人は感染しても症状が出にくいですが、乳幼児期に感染していない人で、性的に活発な若い成人層に感染が多いとされています。


【HHV-5の感染源と感染経路】

HHV-5は、感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出され、これらの体液との密接な接触により感染します。

したがって性行為・オーラルセックスによって感染する。

以上のことから性行為感染症のひとつに分類されています

感染方法としては、

1.先天性感染

妊娠中に母親が初めて感染して、それが胎盤を通して胎児に感染した場合に、出産時に異常がある場合が1割程度あります。

2.後天性感染

感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出されるこれらの体液との密接な接触により感染します。

ただし、乳幼児期などに一度感染していれば再度感染することはありません。

一度感染すると再度感染しませんが、体内にHHV-5が潜んでいるため免疫力が低下すると症状が出ることがあります。

【HHV-5の感染の症状】

男女ともに同じような症状が出ます。

主な症状としては、

倦怠感(だるさ)
発熱
のどの痛み
首のリンパ節のはれ
湿疹が出る
肝臓や脾臓の拡大、肝機能異常など

【HHV-5の治療】

治療薬としてはガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬、抗CMV高力価免疫グロブリン、ヒト型抗CMV単クローン抗体などあります。

【検査を受ける時期】 

ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に症状が出ますが、感染しても全く症状のでない人もあります。

検査を受ける時期としては、ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に受ける必要があります。

また、何らかの自覚症状を感じたら医療機関で早期診断を受ける必要もあります。

【HHV-5の検査】

1.mRNAを検出するNASBA (nucleic acid sequence based amplification )法
2.ウイルス抗原を検出するantigenemia 法
3.DNA 検出するPCR 法
4.直接ウイルスを分離する方法
5.抗体検査

【抗体検査の判定方法】

○IgM陰性、IgG陰性の場合・・・過去・現在において感染なし。

○IgM陰性、IgG陽性の場合・・・過去にCMVに感染経験があり、既にCMVに対する免疫を保持しており、CMVは体内に潜んだ状態になっていると考えられる。

○IgM陽性、IgG陰性の場合・・・最近CMVに初めて感染したこと考えられます。。

○IgM陽性、IgG陽性の場合・・・比較的最近CMVに感染したと考えられますが、それが初感染か再感染または再活性化かの区別はできません。

【HHV-5と妊娠】

妊娠中にHHV-5に初感染すると、胎児に先天性の障害が発生する可能性があります。

最近では、妊娠可能な年齢の女性における抗体保有率が90%~70%まで下がっていることが明らかになっていることから、妊婦の間でHHV-5の初感染者が増えていまする。

したがって妊娠前にはHHV-5に感染した既往があるかを知っておく必要があります。

【HHV-5とHIVの関係】

AIDSで死亡した人の約70%以上にHHV-5感染が見られています。

HHV-5に感染しているとHIVに感染しやすくなるのではなく、HIVに感染して体の免疫機能が低下することにより、 HHV-5に感染しやすくなると言うことです。

2016年12月12日月曜日

ヘルペスウイルスについて-5.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その2.帯状疱疹について-ー

【帯状疱疹の感染源】

水痘が治癒した後に脊髄知覚神経節に潜伏感染したHHV-3が回帰発症して起こります。

また加齢、免疫抑制剤の使用等、細胞性免疫の低下によって潜伏しているHHV-3が再活性化し発症します。

※体内に侵入して感染したHHV-3は、感染者が免疫不全や体調不良に陥ると体内に潜むHHV-3は、再び目覚め(再活性化する)帯状疱疹を引き起こします、これを回帰発症と言います※

【帯状疱疹の症状】

ほとんどの場合、体の左側か右側のどちらか片方の神経に沿って帯状にあらわれ、体の両側にまたがることはほとんどありません。

虫に刺された様な、あるいは虫に噛まれたような痛みと赤いひとつの発疹が出来るのが最初です。

その後チクチクとした痛みが増し、痛みを感じた場所にブツブツとした赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなって帯状に広がっていきます。

この症状は、特に胸から背中、腹部などによくみられ、顔や手、足にも現れます。

この症状が現れるのは体の左右どちらか片側だけ、一度に2ヵ所以上の場所に現れることはほとんどありません。

約1週間水疱は痂皮形成し、2~3週間で色素沈着を残して治癒します。

【帯状疱疹の治療】

対症療法により2~3週間で治癒します。

薬剤としてはアシクロビル、ビダラビン(Ara-A)が有効です。。

※帯状疱疹治癒後の後遺症として,三叉神経第1枝や肋間神経に生ずる持続性で刺すように痛みが続くヘルペス後神経痛(「帯状疱疹後神経痛」)が起こることが多いです※

治りにくく1年以上も痛みが続くこともあります。

【帯状疱疹は他人に感染するのか】

帯状疱疹が他人に感染することはあまりありません。

しかし、水疱の中にはHHV-3が存在し、水痘にかかったことがない人には感染する可能性もあります。

この場合の感染は、帯状疱疹の症状ではなく、水痘と同じ症状が出ます。

帯状疱疹の水疱が治るまでは、水痘に感染したことのない赤ちゃんや子供、妊婦には接触しないようにする必要があります。

【水痘・帯状ヘルペス検査】

水痘・帯状ヘルペス抗体検査にはCF法、EIA法によるIgM抗体とIgG抗体検査があります。

初感染である水痘を疑う場合は、IgM抗体またはCF法ペア測定を行います。

再活動の帯状疱疹ではIgG抗体ペア測定を行います。

リアルタイムPCR検査もあります。

【ワクチンについて】

帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)は、日本では使用されていません。

アメリカで使用されている帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)と、水ぼうそうに使われるワクチン(Varivax)では濃度が全く異なります。

Zostavaxの濃度はVarivaxの10倍以上含まれています。

そのことから帯状疱疹ワクチン(Zostavax)を、水痘予防のために子供に接種することはありません。

水痘ワクチン(Varivax)を帯状疱疹の予防のために使用することもありません。

日本においては、帯状疱疹専用のワクチンは存在しますが、未だ広く認識されていないことから、費用は自費負担(2016年4月の時点)となり、およそ6,000~9,000円のところが多いようです。

※2016年3月から、現在まで水痘の予防の目的で使われていた乾燥弱毒生水痘ワクチン(「ビケン」)が、50歳以上の人に限って、帯状疱疹の予防にも使えるようになっていますので、帯状疱疹の予防について心配な方は、医師に相談されることです※

次回はHHV-6(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)について解説いたします。

2016年12月5日月曜日

ヘルペスウイルスについて-4.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その1.水痘について-ー

水痘・帯状疱疹ウイルスは、α-ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスで、HHV-3と呼ばれますが別称としてVZV(Varicella Zoster virus)とも呼ばれています。

ヒトに対して水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。

このウイルスは、初感染としては水痘を発症します。

水痘が治癒した後は、脊髄後根神経節に潜伏し続け何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。

顔面神経の膝神経節に潜伏していたものが再発した場合は、皮膚症状・顔面神経麻痺・難聴・めまいを引き起こします。

【水痘の感染】

患者の鼻腔粘液、水疱からでる浸出液との接触で感染します。

典型的な症状を引き起こす1~2日前から空気感染(飛沫感染)します。

潜伏期は11~21日です。

【水痘の症状】

顔から発疹が出始め、有髪頭部から体全体に出現し、やがて手足全体にも出現します。

発熱は発疹の出現する最初の3~4日のみ認めることが多いです。

発疹の出始めは、小さい紅疹で数時間で丘疹となりやがて水泡に変化していきます。

痂皮の脱落まで1~2週間かかります。

※すべての発疹が痂皮となれば、他人に感染させることはありません※

【痂皮とは】

皮膚の表面出来た小水疱、水疱あるいは膿疱が炎症を起こし破れ、壊死塊またはびらん面の分泌物が凝固して一時的に表面を覆ったものを言います。  

【水痘の終生免疫】   

HHV-3に感染して水痘となり、完治すれば終生免疫を獲得し、二度と水痘になることはありません。

しかし、回帰発症と言われるものがあります。

それが帯状疱疹です。

【水痘の合併症】

髄膜炎、脳炎、神経炎、肺炎。催奇形性あり。

※免疫抑制剤を使用中(免疫抑制状態)の時にHHV-3に感染すると、無数の水疱が出来出血することからは重症化しやすく(出血性発疹)死亡率が高くなります。

【検査】

体液性免疫の有無を見る血液検査と、細胞性免疫を調べる方法としての皮内テストがあります。

血液検査としては、水痘ウイルスの抗体を調べる検査としてELA法が一番多く用いられています。

水痘の抗体が血清中に残っていなくても、細胞の中に抗体がある場合もあることから、皮内テストも合わせて行います。

皮内テストは、水痘・帯状疱疹ウイルスの一部から作られた水痘抗原を皮内接種して反応を見るテストで、結核の抗体を調べるツベルクリン反応と同じ原理です。

※水痘の判断は視診が主となります※

現れた症状を見て行う場合がほとんどで、水痘による水疱は特徴的ですから発症後2~3日で診断はつきます。

子供の水痘の診断のために、上記のような検査を実施することはまずありません。

【治療】

ヘルペスウイルスなので、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルが有効です。

水痘、帯状疱疹とも同容量を使用します。

【予防】

水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチンを接種します。

日本では長く任意接種ででしたが2014年より定期接種となっていることから、1歳になってから間隔をあけて2度の接種を行う。

【大人の水痘予防について】

水痘の感染発症が心配なときは、抗体検査を受けるのではなく予防接種を受けることです。

仮に既に水痘に感染していて水痘に対する抗体があったとしても、予防接種を受けても健康上の問題はありません。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)の帯状疱疹について解説いたします。

2016年11月28日月曜日

ヘルペスウイルスについて-3.HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型)-

【HHV-2とは】

主に性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎、ヘルペス脊髄炎の原因となりうるウイルスで仙髄の脊髄神経節に潜伏感染する。

【感染者の実態】

5~10%の人が感染していると言われており再発を繰り返すのが特徴です。

推定年間72,000人が感染していると言われています。

そのうち、男女とも20代以降の性的活動が活発になる年代に感染者が多く、どの年代でも男性より女性の患者数が多く、女性がかかりやすい病気です。

HHV-2に感染している人のうち、60%は何らかの症状があるのに本人は気づいていないと言われています。

自覚症状がない場合も多く、患者本人が病気に気がつかないまま、性行為を通して感染が広がっているのが現状です。

【HHV-2の感染力】

HHV-2は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は仙髄の脊髄神経節に潜伏感染し、一生そこに棲みつき生体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

【感染場所と症状】

接触や飛沫による感染が一般的です。

男性の場合は亀頭や陰茎体部が多く、太ももやおしり、肛門周囲、直腸粘膜に症状が出ることもあります。

最初は患部の表面にヒリヒリ感やむずかゆさなどを感じ、2~10日ぐらいでかゆみを伴った赤いブツブツや水ぶくれが出来、やがてそれが破れて潰瘍ができると強い痛みがあり、発熱を伴う場合もあります。

更に太もものリンパ節の腫れや痛みもみられる場合もあります。

女性の場合は、外陰、腟の入口とおしりが多く、子宮頸管や膀胱まで感染が広がることもあります。

患部に水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みで排尿が困難になったり、発熱を伴ったりすることもあり、同時に太もものリンパ節の腫れや痛みがみられることもあります。

男女ともに、再発の場合は小さな水ぶくれや潰瘍ができるだけの軽い症状ですむのが一般的です。

再発の前には神経痛のような症状が出たり、局所がムズムズする違和感を感じたりすることがあります。

【体内に侵入したHHV-2は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-2を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-2の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法とHHV-2の抗ウイルス薬】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

バルトレックス、ゾビラックス、アラセナAなどがあります。

5~10日間、処方された薬を内服または軟膏塗布します。

何れも医師の処方を必要とします。

性器ヘルペスの薬と成分が似ている口唇ヘルペスの市販薬や、個人輸入代行業者を介した薬をインターネット等で入手した薬を使用すると危険な場合があります。

医師の診断のもとに処方された薬を使用しないと、かえってウイルスが広がったり、症状が悪化したりする恐れがあるので素人療法は厳禁です。

【再発に注意】

薬の使用により患部の症状が治まれば治療は終了ですが、性器ヘルペスにかかった場合、1年以内に80%以上の人が再発すると言われているので、その後も体調管理などの注意が必要です。

再発を頻繁に繰り返す場合は、「性器ヘルペス再発抑制療法」という治療法もあります。

【HHV-2の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうことがあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-2が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-2に感染した人は体内にHHV-2を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-2が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

身の回りのものは共用しないことです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-2の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査しています。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過しているものや再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法がありますが、やはりHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

結果は5日程で分かります。

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-2を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-2が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在その区別は出来ません※

【注意】

HIVや一部の性行為感染症はコンドームで予防可能ですが、現実ヘルペスに限って言えばそれほど高い効果は得られません。

なぜなら、コンドームは男性の性器を包むだけで、性器の周囲は無防備ですしコンドームに包まれている部分以外の箇所に病変があれば、感染してしまいます。

【HHV-2とHIVの関係】

性器ヘルペスに感染すると感染した性器に炎症など起こし、そこからHIVが侵入しやすくなります。

粘膜局所に炎症があると、正常な場合の2倍から5倍感染しやすくなり、まして潰瘍があると50倍から数百倍感染しやすくなります。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)について解説いたします。

2016年11月20日日曜日

ヘルペスウイルスについて-2.HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型)-

【HHV-1とは】

口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、カポジ水痘様発疹症、角膜ヘルペスなどを引き起すウイルスです。

【感染者の実態】

日本人の場合、HHV-1には50~70%、2型には5~10%の人が感染していると言われており、どちらも再発を繰り返すのが特徴です。

【HHV-1の感染力】

接触や飛沫による感染が一般的です。

HHV-1は感染力が極めて強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスその物は体内の神経節(※)に潜り込み、一生そこに棲みつき体から消えることはありません。

そのため、しばしば再発を繰り返します。

※神経節は、神経細胞が集まっている場所※

【症状】

唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさから始まり、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができます。

そして水ぶくれは破れてかさぶたとなり、2週間程度で治ります。

初感染(初めて感染した場合)の場合は、高熱などの重い全身症状を伴うことがあります。

もし感染してしまった場合にも、症状を悪化させずに早期に治療すること、人に感染させないこと、そして再発を予防していくことが重要となります。

【体内に侵入したHHV-1は排除できるのか】

現在の医学では、体内に侵入したHHV-1を完全に排除することは不可能です。

抗ウイルス薬を用いてHHV-1の増殖を抑えることは可能です。

早く治療すればするほど、症状は軽くてすみます。

【治療法】

抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。

全身症状が現れるなどの重症例や免疫不全の人に対する治療では、入院した上で抗ウイルス薬の点滴静脈注射を行います。

【HHV-1の抗ウイルス薬】

アシクロビル(経口薬・軟膏・点滴)、塩酸バラシクロビル(経口薬)、ビダラビン(軟膏)があります。

【HHV-1の感染予防対策】

人に感染する力が極めて強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうこともあります。

皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、HHV-1が侵入しやすくなるので注意が必要です。

一度HHV-1に感染した人は体内にHHV-1を持っているので、身体の抵抗力が低下すると、体内に潜むHHV-1が暴れ出し、再発しやすくなります。

再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

特にタオルの共用は避ける必要がありますし、コップやグラスなどの食器も、HHV-1の症状が出ている間は、症状の出ている人と同じものは使わないようにする配慮が必要となります。

【検査】

血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査します。

感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過している場合や再発型が疑われている場合は、補体結合検査によるヘルペス抗体価を測定し診断します。

また、イムノクロマト法による抗体検査もありますが、HHV-1とHHV-2の感染の区別はできません

その他の抗体検査法としては、中和反応、酵素免疫測定法があります。

結果は、即日から5日程で分かります。

※但、以上の抗体検査ではHHV-1とHHV-2の感染の区別はできません※

※gG ELISAは、ウイルスの外郭に存在するglycoplotein G に対する抗体を測定する方法で、抗体検査のうち、唯一HHV-1とHHV-2の感染の区別が可能ですが、研究室レベルでなければ検査は出来ず医療機関で一般に受けることは出来ません※

【HHV-1と性行為について】

HHV-1を発症しているときは、性的接触は避ける必要があります。

性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

たとえ自覚症状がなくても、唾液や精液などにHHV-1が排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。

※一昔前には上半身に感染するHHVは、HHV-1、下半身に感染するものはHHV-2即ち性器ヘルペスと言われていましたが、現在しその区別は出来ません※

次回はHHV-2(性器ヘルペス)について解説いたします。

2016年11月13日日曜日

ヘルペスウイルスについて-1.その種類-

人に感染するヘルペス科ウイルスは以下の8種類が知られています。

1.アルファヘルペスウイルス亜科

HHV-1(単純ヘルペスウイルス1型=herpes simplex virus-1)

HHV-2(単純ヘルペスウイルス2型=herpes simplex virus-2)

HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス=VZV:herpes simplex virus-2)


2.ベータヘルペスウイルス亜科

HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)

HHV-6(突発性発疹を引き起こす)・・・HHV-6AとHHV-6Bに分類される

HHV-7(突発性発疹を引き起こす)


3.ガンマヘルペスウイルス亜科

HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)

HHV-8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス=Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus:KSHV)

次回からこれらヘルペス科ウイルスについて順次解説していきます。

2016年10月20日木曜日

梅毒検査の適切な受け方

梅毒の流行が止まりません。

このことから、梅毒検査の適切な受け方を急遽ご紹介します。

多くの方が既に理解されており、何を今更と言われそうですが、再度ご一読下さい。

そして、不安な行為をしてしまった場合には必ず梅毒検査を正しく受けることをお勧めします。

梅毒患者の増加は、HIV感染者の増加に結びつくことを、夢々お忘れなく!!

梅毒の検査は、血液中に脂質抗体または、TP抗体があるかどうかで判定します。

※脂質抗体とは、梅毒トレポネーマが感染し、その結果体の組織が壊れて出てくるカルジオリピンに対する抗体※

※TP抗体とは、生体が創りだす梅毒トレポネーマの感染抗体※

1.脂質検査

STS検査と呼ばれ、カルジオリピンを抗原として、脂質抗体を見つけ出します。

脂質抗体は、感染後1ケ月で陽性となります。

但偽陽性反応をよく起こすので、TP抗体検査で偽陽性か真の陽性かを調べます。

2.TP検査

梅毒トレポネーマを抗原として検査をします。

TPHAが最もポピュラーです。

その他多くのTP検査が開発されていますが、TP抗体は感染して5週以降にできますから、早い時期に受ければ偽陰性反応を起こします。

TP検査で早く信頼できる結果を得るには、IgM-FTA-absを受けることです。

この検査、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

検査方法は、脂質抗原法とTP抗原法の2種類を組み合わせて総合的に判断するという。

TP検査は一度感染して陽性となるとと、一生陰性化することはないため、治療の具合を調べたり、完治した後に、再度感染した可能性がある場合は、脂質抗原法で検査する必要があります。

梅毒検査も受け方により間違った結果となってしまいますので注意が必要です。

2016年10月6日木曜日

電解質検査-6.マグネシウム(Mg)-

電解質のひとつであるマグネシウム(Mg)について解説いたします。

マグネシウム(Mg)は、体内では4番目に多い電解質です。

血液中には僅かしか存在しておらず、ほとんどは骨の中にあります。

【マグネシウム(Mg)の働き】

役割としては骨や歯を作るのにはなくてはならないもので、更に神経、筋肉を正常に働かせるためにも必要です。

酵素の働きにもマグネシウムが必要とされます、マグネシムがないと酵素はうまく働いてくれません。

マグネシウムは人間の体で3000以上の酵素の補酵素としてはたらいていることから、マグネシウムが不足すると人間のほとんどすべての臓器が正常に働かなくなります。

また、心臓や血管が正常に働くのも、マグネシウムがあってこそです。

善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減少させる働きをし、腸では水分を集めることで便通をよくすることも認められています。

更にマグネシウムはカルシウムと同様に、神経、筋肉の興奮に大切なミネラルです。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

マグネシウム(Mg)…1.4~2.1mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

高マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が2.1mEq/L(1.05mmol/L)を上回る

主な原因としては、

・腎不全

症状としては、低血圧,呼吸抑制,心停止を引き起こすことがある。

※グルコン酸カルシウムを静脈内投与する※

※腎臓が正常に機能していない場合や、高マグネシウム血症が重症である場合は、透析が必要となる※

低マグネシウム血症・・・血漿マグネシウム濃度が1.4mEq/L(0.70mmol/L)未満

原因としては,

・大量のアルコール摂取により、食物の摂取量が減少しその結果マグネシウム摂取量も減少するとともに、マグネシウムの排出量が増加する。

・長期間の下痢によりマグネシウムの排出量が増加し、不足に陥る。

・アルドステロン、抗利尿ホルモン、甲状腺ホルモンの濃度の上昇により排出量が増加し、マグネシウムが減少する。

・マグネシウムの摂取不足および吸収不足

・高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加

※欠乏症が現れたとき、もしくは症状が持続するときは、マグネシウムを経口で投与する※

※アルコール依存症の患者にはもれなくマグネシウムを投与する※

※マグネシウム濃度が非常に低く、重度の症状が起きている場合や、口からマグネシウムを摂取できない場合は、筋肉または静脈に注射で投与する※。

【おまけ】

マグネシウムの不足は、筋細胞や神経細胞の情報伝達に影響を与え、筋肉の痙攣を引き起こすと考えられています。

従って日常生活や運動時にマグネシウムが不足すると、筋肉の痙攣や筋疲労の原因となりますから不足しないようにマグネシウムの不足には気をつける必要があります。

毎日80~210mgのマグネシウムを摂取する必要があります。

マグネシウムを豊富に含む食物やサプリメントで補う必要があります。


2016年9月26日月曜日

電解質検査-5.クロール(Cl)-

電解質のひとつであるクロール(Cl)について解説いたします。

【クロール(Cl)の働き】

クロールは、細胞外液の総陰イオンの約70%を占める電解質成分の内のひとつで、ナトリウムと同様に主に食塩として摂取されて体内に取り込まれ、大部分は尿中に排泄され、一部は糞便や汗などと一緒に排泄されます。

クロールの主な働きは、他の電解質と相互関係にあり、水分の平衡と浸透圧の調節などに関与し、血液中におけるクロールとナトリウムの比率は100:140で、普通はこの比率のもとで濃度が変わって行きます。

健常者の場合、狭い範囲でしか変動しません。

クロールを調べる際は、単独で行われる事は少なくナトリウムとの比率を確認します。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。

【基準値】

クロール(Cl)…95~108mEq/l

※検査方法や施設によって若干異なります※

※クロールの値は一日の内での変化や運動などの影響は殆どありませんが、食後は胃酸として分泌されるので若干の低下があります※

【異常値】

クロールが高値…脱水症、腎不全、過換気症候群、低アルドステロン症、下痢、過換気症候群、呼吸性アルカローシス



クロールが低値…アジソン病、慢性腎炎、肺気腫、慢性腎炎、嘔吐、呼吸筋障害、呼吸性アシドーシス、水分過剰投与