血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年2月7日火曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その3.イムノクロマト法TPHA検査-


代表的な迅速検査法のエスプラインTPについて解説します。

【測定原理】

酵素免疫測定法を測定原理としたイムノクロマト法による血清または血漿中のTP抗体検出用試薬です。

この検査法は、TPの主要抗原と考えられているTpN47とTp15-17の2種類のリコンビナント抗原を使用しています。

検体滴下部に滴下した血清または血漿中にTP抗体が存在すると、酵素標識抗原〔アルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(TpN47)およびアルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(Tp15-17)〕と反応した後、展開液によりメンブレン上を移動し、判定部に固定されたTP抗原と結合して、血清または血漿中のTP抗体を介した3者のサンドイッチ複合体を形成し青色のラインが出現します。

反応確認用のレファレンスラインは、メンブレン上のTP抗原と異なる位置(下流側)へ抗ALP抗体を固定化したもので、固定化TP抗原とのサンドイッチ複合体形成に関与しなかったALP標識抗原と結合し、標識抗原の酵素反応によりラインが出現を確認することにより、血清または血漿、標識抗原、基質の展開および酵素反応が正常に行われたことを確認できます。

【操作上の注意】

血清または血漿を滴下後15分で判定する。

15分を経過後に青色のラインが出現しても陽性と判定しない。

必ずレファレンスラインに青色のラインが出現していることを確認する、レファレンスラインに青色のラインが出現していないときは再度検査を実施する。

【 判定方法 】

シート上に出現する青色ラインの有無を肉眼で判定します。

反応過程は複雑ですが、原理自体はいたってシンプルな方法を用いているため、従来の方法に比べ短時間で結果が得られます。

【判定ラインの画像】

1.陰性の画像

青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが認められなかった場合。



※レファレンスラインの画像は省略しています※

2.陽性の画像


青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが2本または1本認められた場合。


※レファレンスラインの画像は省略しています※

【検査のデメリット】

1.肉眼で判定するため、判定者個人による判定誤差が見られる。

2.測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある。

2012年2月1日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その2.TPHA検査-


TPHA(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、梅毒病原体である梅毒トレポネーマ・ハリーダム(以下TPと略します)の菌体成分を抗原として使用する検査方法です。

梅毒の病原体であるTPの菌体成分を吸着させたゼラチン粒子が、TPの感染抗体によりゼラチン粒子の凝集反応を起こす状態を見て判断します。

※発売当初は、TPの菌体成分をタンニン酸処理した羊の赤血球に吸着させたものでしたが、現在はゼラチン粒子に吸着させています。

梅毒検査にTPHAを採用することのメリットは、偽陽性反応を引き起こすことが極めて少ないことから本検査が陽性の場合は、ほぼ間違いなく梅毒と判断できます。

デメリットとしては、梅毒トレポネーマに感染しても、TPHAで陽性を示すのは、感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

そのために、早い時期にTPHAだけで梅毒の診断をすると感染を見逃すことがあります。

また、一度梅毒トレポネーマに感染してTPHAが陽性となると、抗生物質で治療して完治しても、陽性反応はまず一生涯消えることがありません。

そのためTPHA検査のみを使用して、陽性と判定されても、梅毒は治癒しているにもかかわらず、再度治療するという誤った認識をしている医師も見られます。

※治療判定の際の検査方法については、別途紹介します※

【附 則】

近年採用された全自動検査機器を使用しての『TPLA』は、従来のTPHAに比べて1週間前後早く陽性になる傾向があります。

2012年1月25日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その1.STS検査-


梅毒トレポネーマが、感染して生体の組織を破壊したときに血液中に出てくる脂質カルジオリピンに対する抗体を検出する検査法を総称してSTS(Serologic Test for Syphilis)と呼びます。

ガラス板法、RPRカード法があり、血液中に抗体がなければ陰性となりますが、抗体があった場合には陽性と判定され、梅毒に感染している可能性ありと判定されます。

1.ガラス板法

カルジオライピン・レシチン抗原で感作したコレステリン粒子と患者血清をガラス板上で混和し、凝集塊の有無を顕微鏡で観察する検査。

2.PRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)

カルジオライピン・レシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する検査。

これらSTSは、感度に優れ、比較的早期から陽性になる反面、梅毒に感染していなても陽性となる生物学的偽陽性(BFP:Biological False Positive reaction)には常に留意が必要です。

生物学的偽陽性反応は、肝疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患、妊娠などで非特異的に抗体が産生される結果、抗カルジオリピン抗体保有者となり、梅毒に感染していないにもかかわらず陽性反応を示すことがあります。

※また、全く健康な人でも検査のたびにSTSが常に陽性となる人も存在します。

従ってSTSが陽性となっても生物学的偽陽性反応の可能性があることから、すぐに梅毒に感染しているとは言えません。

※STSが陽性となれば、必ず梅毒トレポネーマを使用したTPHA FTA-absで検査をしてから梅毒感染の判断を行う必要があります。

【STS検査を受ける時期】

これらの検査は、梅毒に感染すると4週程度で陽性となることから、行為から30日で受ければ信頼できる結果が得られます。

2012年1月19日木曜日

性行為感染症検査-5.咽頭淋菌検査-


淋菌が咽頭に感染することがありますが、性器に感染したときに比べて症状がほとんどでないことから、感染に気づく人は非常に少ないのが現実です。

仮に感染があっても喉の違和感、軽い咳など咽頭炎の症状しか出ませんので、耳鼻咽喉科を受診しても淋菌に感染す可能性のある行為をしたと医師に申告しないと単なる咽頭炎と診断されて、淋菌感染を見逃すことになります。

咽頭の淋菌感染の検査は非常に難しいことを解説しておきます。

口腔内には非病原性菌の常在菌であるナイセリア属が、わかっているだけで11種も存在しています。

病原性のある淋菌も実はこのナイセリア属です。

淋菌咽頭感染検査には、PCR法は使用できない!!

遺伝子増幅法であるPCR法はナイセリア属と交差反応を示すため、このナイセリア属の細菌を淋菌と間違えて検出してしまい、淋菌に感染していなくても陽性となってしまいます。

いわゆる"偽陽性反応"が起こるわけです、そのために淋菌の性器感染検査に使用される遺伝子増幅法であるPCR法は咽頭感染の検査には適していません。

それでは、淋菌の咽頭感染検査にはどの様なものがあるのでしょうか?

咽頭淋菌感染の検査は、ナイセリア属と交差反応をしめさないSDA法(Strand Displacement Amplification)または、TMA法(Transcription Mediated Amplificatio)による検査を行います。

咽頭に淋菌が感染しているかどうか、SDA法やTMA法検査を受けてないと分かりません。

淋菌に感染している不安があれば検査を受けてみてください。

自覚症状がなくても感染するリスクのある行為をした場合は、必ず検査を受けることです。

2012年1月15日日曜日

性行為感染症検査-4.性器感染の淋菌検査-


淋病は淋菌によって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

淋病の症状

男 性

尿道内に感染して増殖し、尿道炎症状を引き起こします。

典型的な症状としては、感染後2~7日後に、灼熱感を伴う排尿痛があり、尿道口より膿が出ます。

しかし、排尿痛のみや尿道から少の膿しか出なかったり、全く症状の出ない場合もあります。

女 性
 
尿道に感染することは殆ど無く、膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。

症状としては、オリモノの増加、膿の混ざった悪臭のあるオリモノなどですが男性に比べ症状が少なく感染に気づく人は少ないのが実情です。

80%以上が無症状です。

感染に気づくことなく放置していますと、子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が進みます。

淋菌の感染率は、1回の性行為で低くて30%高い場合は80%です。

検査法

男性の場合は尿や性器からの分泌物(膿)を採取し、女性の場合には膣の分泌物を採取し検査します。

1.顕微鏡検査

検査物をグラム染色して、顕微鏡で淋菌の有無を検査。

非常に簡単な検査ですが、検査物に淋菌が少ない場合には、感染していても陰性となってしまう欠点があります。

2.淋菌培養検査

検査物から淋菌を採取して培養し、増殖させて光学顕微鏡で調べる。

淋菌の生命力が非常に弱いことから、検査物採取から時間が経過しますと、淋菌が死滅して感染していても陰性となることから、この検査法はあまり利用されていません。

3.核酸増幅検査法

1)PCR(Polymer Chain Reaction)法

淋菌のDNAを化学的に増幅させて検査する方法です。

非常に感度がよく優れた検査法です。

2)SDA(Strand Displacement Amplification)法

PCR法とは検査の原理が異なりますが、核酸増幅検査のひとつです。

この検査方法は、クラミジア感染症と淋菌感染症の同時検査ができることと、検査の感度、精度もPCR法と同等かそれ以上ある優れた検査法です。

3)TMA(Transcription Mediated Amplification)法

SDA法同様、クラミジア感染症と淋菌感染症が同時に検査出来ます。

2012年1月11日水曜日

性行為感染症検査-3.咽頭クラミジア検査-


咽頭クラミジアは、クラミジア・トラコマチスが喉に感染して起こる性行為感染症のひとつです。

感染経路は、キスやオーラルセックスで感染します、また性器に感染したクラミジアが喉へ感染することもあります。

咽頭クラミジアの症状は、殆ど無くあっても風邪の症状に似た症状あるいは軽い咽頭炎を起こす程度ですから大多数の人が感染しても分からないのが現実です。

症状が咽頭炎や扁桃腺炎などに似ているために内科や耳鼻咽喉科を受診しても、診察した医師がクラミジア感染に気づくことは殆ど無く、単なる細菌感染による症状と診断して、セフェム系の抗生物質を処方されて、服用することによりその抗生物質が効けばこれらの症状は改善され治癒してしまいますので、クラミジア感染があったとは夢にも思わないのが実情です。

咽頭クラミジアの検査は、喉の奥をスワブという綿棒で拭って検査する方法(ぬぐい液法)と口腔内のうがい液(うがい液法)を検体として核酸増幅法(PCR法)と呼ばれる検査方法で調べます。

咽頭クラミジア検査では、うがい液を使用した検査の方が検出率が良いことから、最近ではうがい液による検査が多く採用されています。

ディープキスやオーラルセックスを行い、数日後に喉に違和感があれば、直ぐに受診する必要があります。

しかし、現実は感染してもまず自覚症状がないことから、極端な話し、一度でもディープキスやオーラルセックスをした経験のある人ならクラミジアに感染している可能性は〝ゼロ〟ではなく、知らず知らずのうちに感染している可能性があるので、特に風俗店を利用したことがある、不特定多数の異性とディープキスやオーラルセックスの経験のある人は、一度、しっかりと咽頭クラミジア検査を受けることを強くお勧めします。

咽頭クラミジア検査は、耳鼻咽喉科の取り扱いとなりますが、すべての耳鼻咽喉科で検査を実施しているとは限りませんので、事前に問い合わせることをお勧めます、また最近では泌尿器科や性病科でも検査を実施している所が多くなってきています。

2012年1月8日日曜日

性行為感染症検査-2.性器クラミジア検査-


性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

男性の性器クラミジア感染症は、尿道に軽い炎症を引き起こし、排尿時に尿道が僅かに痛んだり、尿道から濃い分泌物が少し出ることから異常にに気づきますが、症状が軽い場合は、感染に気づくことはありません。

女性の場合は、全くといってよいくらい症状がなく、ほとんの人が感染に気づくことはありません。

仮に症状が出ても、わずかなおりものがや、不正子宮出血や下腹部痛が出る程度です。

男女とも多くの感染者が、感染に気づくことなく放置して、パートナーや第三者に感染させていることが危惧されています。

男性の検査法

早朝あるいは、排尿からかなり時間が経った後の排尿の最初の尿には、分泌物が多く含まれているのでこれを検査に使用します。

昔のようにペニスに綿棒を入れて検査をすることはありません。

尿でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。


女性の場合

子宮頸管から綿棒で組織の一部を拭い取り、その組織でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。

また、女性の場合は尿による検査は一般的には実施しません。

検査を受ける時期は、男女とも感染するリスクのある行為をした次の日から受けることができますが、余裕を持って1週間前後で受ければよいでしょう。。

※最近では、子宮頸部、尿道、肛門などを綿棒で軽くこすってその場でクラミジアを調べる迅速検査が多く利用されています。

※過去から現在までの間にクラミジアに感染したことがあるかどうかを血液で調べるクラミジア抗体検査もありますが、信頼性が低いことから検査を受ける価値はありません。

理由としては、血液でのクラミジアのIgG抗体とIgA抗体という2種類のクラミジア抗体を調べますが、過去の感染と現在の感染の区別化つきにくいことと、治療が完了してもIgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることがあるために、感染中なのか治癒しているのは鑑別ができないからです。