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2023年8月27日日曜日

医学豆知識-11.2023年8月時点での梅毒患者の現状-

2021年1年間の梅毒患者数 7873人。


2022年1年間の梅毒患者数 12966人で2021年の1.65倍。


2023年8月13日まで 9213人で2021年1年間の患者数を超え、このまま流行すが続くと2022年の患者数を遥かに超えてしまいます。


感染者の男女の比率は、およそ7対3、年代別では20~50代の男性、20代の女性の感染者数が多く、30代以降は男性が多いものの、10代20代では女性が上回っています。


このように女性の感染者が多いことから先天性梅毒が危惧されています。


【感染対策の重要性】


予防にはコンドームの使用をと呼びかけられていますが、梅毒トレポネーマはHIVのようにコンドームによる予防効果は高くないので過信は禁物です。


梅毒トレポネーマは、性交渉やオーラルセックスで簡単に感染します。


感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することで感染しますから、いくらコンドームを正しく気使用しても、コンドームに覆われていない箇所に傷やタダレがあれば感染してしまいます。


予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防が出来ないことを念頭に置いておいて下さい。


梅毒は抗生物質で完治しますから、不安な行為をしてしまったときには適切な時期に梅毒検査を受けて早く治療することが大切です。


早期に発見し早期に治療を開始すればするほど早く完治します。



2023年8月20日日曜日

医学豆知識-10.世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年8月15日)-

 新たな変異株が報告されていますのでその概要を簡単に解説しとておきます。


その変異株とは「EG.5」です。


世界保健機関は、「EG.5」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、各国にモニタリングを呼びかけています。


「EG.5」は「エリス」の通称で呼ばれています。


EG.5は、オミクロン株から派生した変異株のひとつで、世界保健機関によると2023年2月に発見され、徐々に増加しています。


エリスというあだ名はギリシャ神話の女神にちなんだもので、ソーシャルメディア上で名付けられたものです。


世界保健機関は、現在手に入れられる証拠からはエリスが他のVOIと比べて重症化するという示唆はなく、リスクも同程度だと正式に述べています。


世界保健機関によると、これまでに中国、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、フランス、ポルトガル、スペインなど51カ国でエリスの感染が報告されています。


専門家らは、今のところこの変異株で新しい症状が出たという証拠はないとしています。


※ギリシャ神話に登場するエリスとは、ギリシア神話の不和と争いの女神です※


現在新型コロナウイルの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。

               ↓ 

           https://gisaid.org/


2023年8月13日日曜日

医学豆知識-9.全治と完治の違いとは-

全治・寛解・転移・再発など一般的に理解しにくい医学用語について解説させていただきます。 


【全治】


病気やけがが治療がもう必要がないまでに直ること。


【完治】


文字の通り、病気やケガが完全に治ること


【治癒】


治療によって「治癒した」というのは、治療がうまくいき、肉眼で確認できたり、組織の断面図などを確認した限り病気を治すことができた、うまく癌を取りきれたなどという時に「治癒」と言います。


【寛解】


症状の一時的な緩和、もしくは消えている状態のことを指します。


「病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま再発しないで,完全に治る可能性もあります。


寛解したあと、抑えられていた症状が悪化することを『再燃』といいます。


【臨床的寛解】


関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態。

※DAS28、SDAI、CDAIなどによる疾患活動性の評価を行って判断※


【構造的寛解】 

新たな骨破壊が見当たらず、関節破壊の進行が抑えられている状態。

※X線撮影などの画像診断て゛判断※


 【機能的寛解】

生活機能が改善している状態(衣服の着脱、食事、歩行、などの日常生活に不自由がない状態)。


【完全寛解】


治療の結果、がんによる症状や検査での異常が見られなくなり、正常な機能が回復した状態のこと。


【再発】


完治したあとに同じ病気に罹ってしまうことを『再発』といいます。


【増悪】


"ぞうお"とは読まずに"ぞうあく"と読みます。


病状がますます悪くなることです。


一時的に良くなった状態からまた悪くなることを『再発』『再燃』と言いますが,『増悪』はもともと悪かった状態がもっと悪くなることです」


【転移】


骨や肺など,はじめにがんができた乳房から離れた別の場所にがんが出てくることを「転移」あるいは「遠隔転移」といいます。




2023年8月6日日曜日

医学豆知識-8.無症候性梅毒に気をつけよう!!-

 依然として梅毒が大流行しています。


2021年1年間で届出のあった梅毒患者は、7978人(男5261人・女2717人)に上ります、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


※2023年は7月下旬時点で既に8349人の患者が報告されています※


梅毒トレボネーマに感染して、症状が出れば以上に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


梅毒トレポネーマに感染して、3週間以降に梅毒特有の症状を示す場合を顕症梅毒(第1期梅毒、第2期梅毒)と呼びます。


梅毒トレポネーマに感染して、梅毒特有の症状を示さないものを無症候性梅毒と呼びます。


要するに無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明します。


梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は38%存在するとの報告がなされています。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


2021年の統計の無症候梅毒患者は、


無症候梅毒 2035人で、、その内訳は男1029人・女1006人となっています



この結果からして、無症候梅毒が2035人25.6%も存在しています。


以上のことからして梅毒トレポネーマに感染する可能性のある行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けないと感染の判断はできないということになります。







2023年7月30日日曜日

医学豆知識-7.梅毒トレポネーマ感染を早く知ろう!!!-

2023年7月16日時点での梅毒患者数は、8040人となりました。


依然として大流行は収まっていません。


現在の大流行からしておよそ200~100人に1人が梅毒患者ということになります。


このように大流行していることから、不安な行為をしてしまったときには、必ず梅毒検査を受けてください。


梅毒トレポネーマは、性行為だけでなくオーラルセックスでも簡単にに感染しますし、コンドームでも完全には予防できません。


不安な行為をしてからSTS検査では4週以降、TP検査では6週以降に受けないと信頼できる結果が得られません。


その事から間待つのが大変という声を良く聞き、相談も受けます。


梅毒トレポネーマの感染を4週前に知る検査はあります。


梅毒トレポネーマ感染をいち早く知る検査法は、IgM-FTA-absです。


梅毒トレポネーマに感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


従って梅毒トレポネーマに感染後1ケ月を経過して、IgM-FTA-abs検査を受けると血液中のIgM抗体が減少していることから 偽陰性反応を起こすことがあります。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


そのことからして、いち早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。


よくIgM-FTA-absを受けるところがわからない、医師に検査を受けたいと言って医師がIgM-FTA-absの事を知らない、 この医療機関では検査をしていないなどと言われて受けることが出来ないという相談を受けますが、IgM-FTA-absは全国どこでも検査は受けられます。


自施設で検査をしていなくても全国どこでも検査専門の会社に検査を依頼して受けることは出来ます。


梅毒は皮膚科が専門診療科となりますから、皮膚科を受診することです。


皮膚科専門医は、IgM-FTA-absのことを正しく理解していますから問題なく受けることが出来ます。

【ご注意】

普通のFTA-absは、IgG-FTA-absで、IgM-FTA-abs検査ではありませんので、早く感染を知りたいときには必ずIgM-FTA-abs検査を受けたいと医師にはっきりといって受けてください。


2023年7月23日日曜日

医学豆知識-6.サル痘と梅毒の皮膚症状の違い-

日本国内におけるサル痘患者数は、2022年7月25日に国内1例目の患者が報告されてから、増加傾向にあり2023年7月21日時点で193人となっています。


サル痘は海外では減少傾向にあるにも関わらず、日本では逆に増加傾向にあります。


今まで知られていた古典的なサル痘では、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状が数日持続してから皮疹が出現するとされています。


皮疹は顔面から出現して、全身へと拡大し、全身の皮疹がある一時点においてすべて同一段階の状態で、赤い発疹から水ぶくれ、そしてかさぶたになっていくというのが一般的でしたが、現在流行しているサル痘では発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状がない症例も半数ほどあり、また皮疹の状態もそれぞれの部位で進み具合が異なる事例が報告されており、皮疹も特定の部位のみでみられることがあり、中でも肛門や生殖器の頻度が最も多く、体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏などでもみられることがあります。


更に口の中や直腸にも病変が見られるようになってきています


サル痘の皮疹は水疱という水ぶくれが見られることが特徴です。


通常赤い発疹から水疱になり、さらに水疱から、中に膿がたまる膿疱になり、それが破れてかさぶたになります。


これまでは水ぶくれの時期、かさぶたになった時期など様々な時期の皮疹が混在するのが水痘の特徴であり、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴とされていましたが、今回の流行ではサル痘でも様々な時期の皮疹が混在することがあるようです。


ただし、皮疹の部位が生殖器に多い、というのは今回の流行におけるサル痘の大きな特徴でもあります。


梅毒の場合は梅毒トレポネーマの侵入した箇所に感染後訳1ケ月後に傷みのない硬い出来物(初期硬結)がやがて潰瘍となります。


最近ではオーラルセックスによる感染で、唇や喉の粘膜にも病変が多く見られるようになってきています。


感染後2~3ケ月を経過すると、痒みも痛みもないバラ色の湿疹(バラ疹)が全身に出てきます。


サル痘と梅毒の湿疹の根本的な違いは、


◎サル痘では生殖器に水ぶくれなどの皮疹が出やすいが、梅毒では痛みのない硬い出来物ができやがてこれが崩れて潰瘍になります。


◎サル痘の皮疹は「赤い発疹→水疱→膿疱→かさぶた」と変化していきますが、梅毒では赤い発疹のままのことが多い。


※世界保健機関は、2022年11月28日サル痘(monkey pox)について、新たな名称として「M痘(mpox)」を使うと発表しています※


当面の間は、世界的な流行の最中に名称を変更することで引き起こされる混乱を軽減するため、名称変更は段階的に行われるとし、今後1年間は、サル痘とM痘(mpox)の両方が使われます。


【参考資料】

【第17回 サル痘に関する関係省庁対策会議幹事会 2023年2月28日】



2023年7月16日日曜日

医学豆知識-5.検診と健診の違い-

同じ読み方の"けんしん"には、検診と健診がありますがどう違うのでしょうか


検診は、特定の病気にかかっているかどうかを調べるために診察・検査などを行うことで、早期に病気を発見し治療することを目的とした検査です。


代表的なものには、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5大がんの早期発見を目的としたがん検診があります。


検診は特定の疾患をターゲットとして検査診断を行うことです。


特定の病気を早期に発見して早期に治療するための「二次予防」を目的としています。


一方健診は、健康診断のことで、特定の病気を検査するものではなく、健康状態を確認することを目的とした検査です。


健康診断あるいは健康診査を略して健診といいます。


健診には、職場の健診、学校健診、特定健康診査など、様々な種類があります。


職場の健診とは、企業に実施が義務付けられている健診で、業種にかかわらず実施義務のある「一般健康診断」と法律で有害と定められている業務に従事する労働者を対象として実施される「特殊健康診断」があります。


学校健診は、学校保健安全法に基づく健康診断です。


特定健康診査は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行いメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。


健康かどうか?病気の危険因子があるか?などを確かめることが目的です。


健康かどうか調べ、病気の危険因子を早く見つけることができる「一次予防」を目的としています。