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2020年3月30日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-12.オーバーシュートとは何?-

予測の範囲を超えた突発的な感染者数の急上昇のことを意味する言葉としてオーバーシュートという言葉が使用されます。

言い換えますと爆発的拡大をオーバーシュートと呼びます。

どこかで感染に気付かない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じ、オーバーシュート(爆発的患者急増)が始まっていたとしても、事前にはその兆候を察知できず、気付いたときには制御できなくなってしまうというのが新型コロナウイルス感染症対策の難しさなのです。

日本国内での新型コロナウイルスの感染者は、2020年3月20日時点では何とか持ちこたえており、拡大防止の取り組み強化が必要性が強調される一方で、感染が確認されていない地域では学校活動や屋外スポーツなどの再開も奨励しています。

政府は、臨時休校などの自粛要請の一部を解除する方針です。

北海道においては、週末の外出自粛やイベント自粛、休校などの対策が進み、クラスター感染を把握して制御下に置くことができた結果、ある程度の新規感染者の増加を抑えられていると評価されているようですが、どのような対策や市民の行動の変化が最も効果を上げたかははっきり分かっていないのが現実です。

北海道以外においては、感染者1人からの2次感染者数の平均値(実効再生産数)が3月上旬以降は1を下回っていますが、感染経路不明の感染者が増えるとオーバーシュートが起きかねない状況です。

今後は、全国一律の対策を講じるのではなく、患者推計に基づく医療提供体制を整えた上で、感染状況別にバランスを取った対策を各地域に求めていく必要があります。

それは感染が拡大中の地域は一律自粛の必要性などの検討し実施していく。

一定程度に収まっている地域はリスクの低い活動から徐々に解除することを検討し実施していく。

感染が確認されない地域では学校活動などの再開していく。

症状が軽い患者や症状がない人は自宅療養とするなど重症者を優先する医療体制の準備必要となります。

感染者全てが医療機関を受診すれば現在の医療体制では対応できなくなり、医療体制が崩壊していきます。

2020年3月22日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-11.-新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は二種類存在する!!??

新型コロナウイルスは、2種類のタイプがあり感染力が違う可能性があると、北京大などの研究チームが2020年3月6日までに中国の英文科学誌ナショナル・サイエンス・レビューに発表しています。

国の内外で解読された103例の新型コロナウイルスのリボ核酸(RNA)を解析し、遺伝子を構成する塩基配列の違いから、L型とS型の存在が確認されたとしています。

L型が70%を占めるS型は30%存在していると報告しています。

そしてL型はS型から変化して出現し、感染力が強い可能性があり、中国武漢市ではL型が大半を占めたと報告しています。

L型(ロイシン)はS型(セリン)から変化して出現し、感染力が強い可能性があるとも報告しています。

L型はこのうち70%を占めてS型に比べて感染力が強く、「S型」は遺伝子の特徴がコウモリから検出されたウイルスに近く、「L型」より古い型とみられるとしています。

研究チームは地元メディアの取材に対し、「『L型』が、どうやって『S型』から進化したのかや、どちらのほうが毒性が強いのかはまだ分かっていない」としています。

また、多くの患者は1つの型にしか感染していませんが、湖北省・武漢に旅行歴のあるアメリカの患者など2人は、両方の型に感染した可能性があるとしています。

研究チームは、今後、突然変異が起きる可能性は排除できないとして、さらに遺伝子の分析を進める必要があると指摘しています。

今回の調査に直接関与していない専門家らは、調査結果は興味深いが、こうした暫定的な調査をもとに結論を急ぐべきではないとの指摘を行っています。

いずれにしても今後更に多くの新型コロナウイルスのリボ核酸(RNA)を解析し、遺伝子を構成する塩基配列の違いを調べる必要があります。

2020年3月15日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-10.クラスター感染とは-

これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の人は、他の人に感染させていない一方で、一定条件を満たす場所においては、一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています発表しています。

これは具体的にはどのようなことなのでしょうか?

具体的に言いますと、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウスなどクラスターの屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、クラスターが発生する可能性が示唆されます。

そして、クラスターが次のクラスターを生むことによって感染の急速な拡大を招くと考えられます。

※クラスターとは集団という意味で、クラスター感染=集団感染という意味で使用されています※

クラスター発生の三条件とは

1.近距離での会話

2.手の届く距離に多くの人がいる

3.密閉された空間で換気が悪い

上記の三条件がすべて重ならなくても、これらのうちの1つないし2つの条件があれば、なにかのきっかけに三条件がそろうことがあります。

クラスターの発生のリスクを下げる三原則とは

クラスターの発生のリスクを下げるための原則としては以下の三原則があります。

1.換気を励行する

2.人の密度を下げる

3.近距離での会話や発声、高唱を避ける

窓を開け換気を励行するとクラスターの発生は抑えられることは分かっていますが、どの程度の換気が十分であるかの確立したエビデンスはまだ十分にはありません。

人が多く集まる場合には、会場の広さを確保し、お互いの距離を1~2メートル程度あけるなどして、人の密度を減らす。

周囲の人が近距離で発声するような場を避ける、やむを得ず近距離での会話が必要な場合には、自分から飛沫を飛ばさないよう、咳エチケットの要領でマスクを装着する。

そして何よりも大切なことは、こまめに石鹸を使って流水での手洗いです。

2020年3月9日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-9.「飛沫感染」と「空気感染」の違いについて-

最初に結論を言いますと「飛沫感染」と「空気感染」は全く異なるものです。

それでは「飛沫感染」と「空気感染」の違いについて解説していきます。

咳やくしゃみをすると、口から細かい水滴が飛び散りますこの細かい水滴を飛沫と言い、この飛沫に病気の原因となる細菌やウイルスが含まれていた場合、これを吸い込むことで感染するのが飛沫感染です。

飛沫は最大でも2m程度しか飛ぶことができませんので、飛沫感染する病原体に感染した人がいたとしても、その人から2m以上の距離を保てば感染しないのです。

医学的にクシャミをすると約およそ0,000個以上の飛沫が飛び散り、5分間話す、咳をすると3,000個の飛沫核が飛び散るといわれています。

しかし、実際には口や鼻から飛び出す飛沫や飛沫核の数については、咳やくしゃみの程度によって異なりますので一概には言えません。

飛沫感染する病原体としてはインフルエンザ、百日咳、おたふくかぜなどがあります。

新型コロナウイルスも飛沫感染します。

感染者の体内から体外に新型コロナウイルスが放出される時は、"飛沫(水分)"に包まれて飛び出します。

唾液や鼻汁などの"飛沫(水分)"に包まれて新型コロナウイルスは体の外に放出され、第三者の顔や手指などの体やその他の手すり・ドアノブ・机などに付着することななります。

このとき飛沫に含まれたウイルスを医療用語で"飛沫核"と呼びます。

飛沫感染するウイルスの場合、飛び出た飛沫の水分が蒸発してしまうと、飛沫核(ウイルス)は感染力はなくなります。

要する新型にコロナウイルスは、飛び出た飛沫の水分が蒸発してしまうと、感染力はなくなり感染しなくなるということです。

飛び出た飛沫の中の新型コロナウイルス感染力を持っている時間は、完全に判明していないので、インフルエンザウイルスなどを参考にして平均で2~8時間と考えられています。

反面空気感染するウイルスは、飛沫の水分が蒸発して"飛沫核"となってもウイルスの感染力はありますので感染するということになります。

これが「空気感染」で、"飛沫核"は小さいし、水分がなくて軽い訳ですから、空気中にふわふわと漂いこれを吸い込んだ人は感染するというわけです。

新型コロナウイルスは、2020年3月9日現在「空気感染」はしないと確認されています。

一方空気感染とは、別の呼び方として飛沫核感染ともいいます。

飛沫核とは、飛沫の水分が蒸発した小さな粒子のことでこれを吸いこむことで感染するのが飛沫核感染、つまり空気感染ということなのです。

飛沫は水分を含んでいるためそれなりの重さがあり、体内から放出された後、すぐに地面に落ちてしまいますが、飛沫核は水分が無いぶん軽いため、長い時間たっても空気中に浮遊し、しかも遠くまで飛んでいくことができます。

病原体の中には、飛沫に含まれる水分が蒸発するとそのまま空気中を漂うものがあります。

しかも感染力を保ったまま空気中をプカプカ浮いている状態で存在していますから、このタイプの病原体は同じ空間にいると感染者から遠い場所にいても感染してしまう危険があるのです。

空気感染できる感染症は、麻疹、水痘、結核の3つしかありません。

これら3つ病原体は「空気感染」することから感染力が非常に強いということなのです。
部屋を換気して空気を入れ替えればウイルスを含んだ飛沫は乾燥して蒸発して飛び散り、そこで伝染性を失いますから、部屋の換気は十分にする必要があります密室は感染を広げますから、このことはライブハウスなど空気の入れ替えがなく空気の淀んだ閉鎖空間での新型コロナウイルス感染者の報告からも明らかなことです。

部屋を閉鎖空間とすることなく十分に換気を行うことにより新型コロナウイルスの感染は予防可能となります。

2020年3月1日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-8.新型コロナウイルスの家庭における消毒について-

ウイルスはその構造からエンベロープ(脂質性の膜)のあるウイルス(エンベロープウイルス)と、エンベロープのないウイルス(ノンエンベロープウイルス)に分けられます。

エンベロープウイルスは、アルコール消毒剤によりダメージを受けやすい特徴があります。

新型コロナウイルスは、エンベロープウイルスですから消毒用アルコールで死滅させることが出来ます。

【消毒用エタノール】

消毒用エタノールの濃度は、76.9~81.4 vol%のエタノールが、殺菌として最も強い作用を有していることから、この濃度のものを使用します。

日本薬局方では消毒用エタノールは、76.9~81.4 vol%と規格が定められています。

【イソプロピルアルコール】

イソプロピルアルコールはエタノールに比べて、脱脂作用が強く、やや毒性と刺激性が強いため、手指が脱脂されて手指が荒れる欠点があります。

消毒には50~70%のものが使用されています。

イソプロパノールはエタノールとほぼ同等の消毒効果を示すものの、親水性ウイルス(ノロウイルス、アデノウイルスなど)に対する効果はエタノールに比べて劣っています

【おまけ】

次に市販されている"ビオレu 手指の消毒液はエタノール"にはアルコールも含まれておりますが、有効成分はベンザルコニウム塩化物であることから新型コロナウイルスへの効果は確認できておりません。

【消毒用アルコールの作り方】

無水エタノールは、アルコールの一種で主に電気製品の掃除に使われます。

無水エタノールを76.9~81.4 vol%になるように調製すれば消毒用エタノールとして使用できます。

無水エタノールの注意事項に、「用途以外には使用しないでください」とありますが、希釈すれば「手指や皮膚の消毒液」として使うことができます。

作り方は以下のとおりです。

100ml作る場合を例に紹介しておきます。

無水エタノール80mlに精製水20mlを加え十分に混ぜる

これで無水エタノールと水の割合は、おおよそ8:2となります。

手作り消毒液を入れる容器は「高濃度のエタノール(アルコール)対応」の商品を使用します。

無水エタノールや精製水は薬局で購入出来ます。

消毒用エタノールが品不足で買えない場合は、無水エタノールと精製水で消毒用エタノールを家庭で作ってみてください。



2020年2月23日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-7.市中感染症と院内感染症の違いについて-

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)が原因で神奈川県の80代の日本人女性が死亡、東京都の70代タクシー運転手や、和歌山県の50代男性外科医ら日本人3人が感染し、感染者が増加しています。

そして北海道内で2月19日までに4人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、この4人の間に濃厚な接触がなく、いつどこで感染したか追跡できないことから"市中感染"の可能性が出ています。

市中感染とはどのようなことなのでしょうか?

市中感染とは病院外で体内に入った微生物によって発症した感染症を指す用語です。

健康な社会生活をしている人に起こる感染症の多くは、体外から侵入した病原体により発症する「外因性感染症」です。

要するに市中感染症とは、社会生活をしている健康人に起こる感染症で、多くは外因性感染症を指します。

一方院内感染とは、病院内で体内に入り込んだ微生物によって引き起こされる感染症を指す用語です。

院内感染は病院内での感染対策すれば感染防止は可能ですが、市中感染は何にどう気を付けていいか分からないことから、一般市民の間には不安が募ることになります。

一般市民が市中感染を防ぐ対策としては、以下のことがあります。

1.電車の吊り革、エスカレータの手すり、ドアノブを触った後には石鹸を使い流水で手洗いをする、手洗いができないときには携帯用アルコール消毒液で良く消毒する。

2.マスクは基本的には感染を広げないために着用するもので、混み合った場所や、屋内や乗り物などの換気が不十分な場所では1つの予防策と考えられます。

3.使い捨てマスクをそのまま再利用するのは、衛生的な観点から推奨できません。

4.マスクを外すときにはマスクの表面に触れないようにする、触れたときには十分に手洗いをする。

5.ウガイも感染予防にはあまり役立たないと言われていますが、しないよりするほうが良いでしょう。

2020年2月16日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症について-6.新型コロナウイルスの正式名称決定-

2020年2月11日、世界保健機関(WHO)は、中国武漢を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を"COVID-19(コービッド・ナインティーン)"に決定したと発表しました。

COVID-19(コービッド・ナインティーン)は「コロナ(Corona)」、「ウイルス(Virus)」、「病気(Disease)」という単語と、この病気がWHOに報告された「2019年」の組み合わせでできています。

この新型ウイルス自体の名前は、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)によって"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"と名付けられています。

国際ウイルス分類委員会とは、分類学的見地から、ウイルスの分類と命名法の認可を行なっている組織のことです。

ウイルスの分類と命名は国際ウイルス命名委員会で決めます、これは大原則であり、ここで決定されない限り正式名称にはなりません。

国際ウイルス分類委員会の分類では、全部で3万種くらいのウイルス存在しています。

まとめますと、新型コロナウイルスによる病気の正式名称は"COVID-19(コービッド・ナインティーン)で、これを引き起こすウイルスは"SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)"ということになります。