血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年4月19日金曜日

風疹について-1.風疹とは-

風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。

風疹の症状は子供では比較的軽く、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が2,000人から5,000人に一人くらいの割合で発生することがあります。

また、大人がかかると、発熱や発疹の期間が子供に比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。

一週間以上仕事を休まなければならない場合もあります

【風疹の流行について】

2013年に14,344 人の流行以降、2014年319人、2015年163人、2016年126 人、2017年93 人と減少傾向であったが、2018年には一転して2,917人の患者がが報告され、2019年3月末で 1,112 人が報告されています。

【感染経路】

風疹ウイルスは、上気道粘膜より排泄されるウイルスが飛沫を介して伝播されます。

要するに患者の飛まつ(唾液のしぶき)などによって飛沫感染します。

【潜伏期間】

風疹ウイスルの感染から14~21日(平均16~18 日)の潜伏期間の後発症します。

【臨床症状】

発熱、発疹、リンパ節腫脹(ことに耳介後部、後頭部、頚部)が出現しますが、発熱は風疹患者の約半数にみられる程度です。

また不顕性感染が15%程度存在します。

風疹の3徴候のいずれかを欠くものについての臨床診断は困難であることに加え、溶血性連鎖球菌による発疹、伝染性紅斑、修飾麻疹、エンテロウイルス感染症、伝染性単核球症など似た症状を示す発熱発疹性疾患や薬疹との鑑別が必要になり、確定診断のためには検査室診断が必要となります。

【検査】

風疹ウイルスの分離が基本ですが健康保険適応でないことから一般的には実施されていません。

急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿から風疹ウイルス遺伝子をRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法等の方法で検出する方法が最も早期診断に有用ですが、実施可能な機関は一部の研究所や大学等に限られていることからあまり実施されていないのが実情です。

血清診断は健康保険適応となっていることから一般的に最も多く用いられています。

検査については次回詳しく紹介致します。

【治療】

発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤が用いられますが、特異的な治療法はなく、症状を和らげる対症療法のみしかありません。

【風疹に伴う最大の問題点】

妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染することより、胎児に風疹ウイルスが感染し、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が出現することがあります。

妊娠中の感染時期により重症度、症状の種類が様々発現します。

先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、白内障、色素性網膜症などがあります。

先天異常以外に新生児期に出現する症状としては、低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、黄疸、間質性肺炎、髄膜脳炎などがあります。

進行性風疹全脳炎、糖尿病、精神運動発達遅滞などが見られることもあります。

2019年4月12日金曜日

腎臓の働きを調べる推算糸球体濾過量(eGFR)

腎臓がどれくらい働いているかは、推算糸球体濾過量(eGFR:estimated glemerular filtration rate)で表します。

推算糸球体濾過量は、腎臓の中の糸球体が1分間に濾過している血液の量のことで、「年齢」「性別」「クレアチニン値」から計算します。

慢性腎臓病は、その重症度に応じてステージ1からステージ5の5段階に分けられます。

その指標となるのが推算糸球体濾過量(eGFR)です。

推算糸球体濾過量とは、腎臓がどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。

【慢性腎臓病(CKD)の重症度分類】

G1 (GFR90以上)・・・腎臓の働きは正常
G2  (GFR60以上90未満)・・・腎臓の働きは正常な腎臓の2/3くらい
G3  (GFR30以上60未満)・・・腎臓の働きは正常な腎臓の1/3~2/3くらい
G4  (GFR15以上30未満)・・・腎臓の働きは正常な腎臓の1/6~1/3くらい
G5  (GFR15未満)・・・腎臓の働きは正常な腎臓の1/6未満

【計算式】

eGFRは体表面積が1.73m2の標準的な体型(170cm、63kg)に補正した場合のGFR(mL/分/1.73m2)が算出されるため、体格の小さな症例では腎機能が過大評価されます。

さらに標準的な体格と大きく異なる場合は体表面積(BSA)で補正します。
 
 eGFR(ml/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287
                  (女性は×0.739)

※年齢・性別・クレアチニン値を入力するだけで簡単に自動計算が出来るサイトが多くありますから計算してみてください※

2019年4月4日木曜日

HIV検査を受ける際の注意点-10.HIV抗体検査が陽性となれば必ずHIVに感染しているのか??!!-

1.HIV抗体検査が陽性となった場合

適切な時期に受けて陽性となっても必ずHIVに感染しているとは言えません。

何故ならHIV抗体検査にも偽陽性反応があるからです。

この場合以下の確認検査を行います。

1)日を改めて再度採血してHIV抗体検査を行う、この場合一度陽性となった検査を再度実施する、異なる検査法で実施するのふたつの方法があります。

日を改めて採血して検査を実施すれば、本当にHIVに感染していれば陽性となりますが、感染していなければ陰性となります、陰性となれば前の検査での陽性は偽陽性反応と言えます。

陽性となった場合、HIV-1とHIV-2のいずれに感染しているかの判断はできません。

HIV-1とHIV-2のいずれに感染しているかは、HIV-1とHIV-2の鑑別検査をする必要があります。

2)確認検査としてウエスタンブロット検査を実施する。

本当にHIVに感染していれば陽性となりますが、陰性となればHIVに感染していないと言えます。

3)リアルタイムPCR検査を実施する。

本当にHIVに感染していれば陽性となりますが、陰性となればHIVに感染していないと言えます。

※但しこの場合は、HIV-1の感染で、HIV-2の感染の判断はできません※

2.抗原抗体検査が陽性

1)30~50日で陽性となる。

この場合はHIV-1の抗原が検出された可能性がありますので、リアルタイムPCR検査で確認検査をします。

確認検査のウエスタンブロット法ではこの時期検査をする時期として早すぎるために感染していても陰性(偽陰性反応)となってしまいます。

2)12週で陽性となる

・この場合はHIV-1抗体かHIV-2抗体のいずれか、また両方の抗体が検出された可能性がありますので、日を改めて再度採血してHIV抗体検査を行う、この場合一度陽性となった検査を再度実施するか、異なる検査法で実施する方法があります。

日を改めて採血して検査を実施すれば、本当にHIVに感染していれば陽性となりますが、感染していなければ陰性となります、陰性となれば前の検査での陽性は偽陽性反応と言えます。

・確認検査としてウエスタンブロット検査を実施する。

本当にHIVに感染していれば陽性となりますが、陰性となればHIVに感染していないと言えます。

・陽性となった場合、HIV-1抗体かHIV-2抗体のいずれかに感染しているかの鑑別検査が必要となります。

・リアルタイムPCR検査を実施する。

本当にHIV-1に感染していれば陽性となりますが、陰性となればHIV-1に感染していないと言えます。

※HIV-2の判断はできません※

3)リアルタイムPCR検査が陽性

ほぼ100%近くHIV-1に感染しているといえます。

確認検査としては日にちを改めて採血して、再度リアルタイムPCR検査を実施し、陽性となればHIV-1に感染していたと言えます、陰性となった場合は前回のリアルタイムPCR検査が偽陽性ということになります。

現実全自動で検査するリアルタイムPCR検査の偽陽性反応は、極めて低い確率でしか発生しません。

2019年3月22日金曜日

HIV検査を受ける際の注意点-9.HIV抗体検査が陰性であれば必ずHIVに感染していないといえるのか??!!-

"HIV抗体検査が陰性であれば必ずHIVに感染していないといえるのか"について解説してみます。

最終の感染機会から3カ月以上経過している時期にHIV抗体検査を受けて陰性であれば、感染は限りなく100%近くありません。

HIV抗体検査は、HIVに対する感染抗体を調べていることから、陽性になるまでに当然時間(血液の鉄人は12週と考えています)の経過が必要となります。

HIVに感染すると、まず血液中にHIV-1の抗原が増えてからHIV抗体ができることからして、現在大病院の検査室および検査依頼会社で主流で実施されている第四世代の抗原抗体検査では、不安な行為から30日でHIV-1の抗原を検出することが可能となっています。

それに比べて、スクリーニング検査の主流となっている即日抗体検査では、HIV-1/-2の抗体ともに感染するような行為があってから12週が経過しないと検出しづらいのが実情です。

HIVに感染すれば4~6週でHIV抗体は体の中に出来ますが、出来た抗体の量が充分でないとこの時期にHIV抗体検査を受けても陰性となってしまいます。

大切なことは、体内に検査で見つかるHIV抗体の量が十分にある時期にHIV抗体検査を受けることです。

言い換えると、HIVスクリーニングが陰性であることは、そこからさかのぼって3ケ月前から以前の不安な行為での、HIV感染はなかったということになります。

しかし、定期的に不安な行為をしていればいつ感染するかわかりませんので、HIV抗体検査が陰性であってもHIVに感染しているとは言い切れません。

このことに関して事例を上げて説明しますと、


HIV検査を受けた時期から数えて、3ケ月前、2ケ月前、20日前に感染する危険性のある行為をした場合、HIV検査が陰性であれば、3ケ月以前の行為でのHIV感染は否定できますが、2ケ月前、20日前の行為での感染は否定できません。

兎に角HIV検査が陰性であっても、本当に感染がないと言えるのはその検査に合った的確な時期に検査を受けないと本当に陰性であったとは言えないということです。

よく保健所では30日、60日で検査を受けても大丈夫と言っていますが、多くの人はこのことばかりを目にして肝心なことを見逃しています。

それは再度3ケ月で検査を受ける必要があるということを見逃しています。

2019年3月14日木曜日

HIV検査を受ける際の注意点-8.通販検査の落とし穴-

保健所や医療機関でHIV検査を受ける場合、プライバシーの保護を危惧する人が多くいることは周知の事実です。

特に保健所での検査がいくら無料であっても受けるのを躊躇している人が多いのも事実です。

その上保健所の都合で受ける日時が一方的に決められ、受けたい時に受けられない不便さもあります。

その為に通販でHIV検査キットを購入して自宅で検査をする人や、穿刺器具で血液を採取してその血液を民間の会社に郵送して検査を受ける人が増加しています。

現実、民間の郵送検査の利用件数が増加しつつあることは事実です。

人気の理由としては、以下が考えられます。

1.数千円の費用で気軽に検査ができる。

2.検査の際に他人と顔を合わせる煩わしさがない。

3.いつでも自分の希望した時に検査を受けられる。

しかし冷静に考えてみて、本当に自宅検査や郵送による検査には問題点がないのでしょうか?

問題点を以下に上げてみます。

1.検査を受ける時期が適切であったか。

2.正しく採血や検査が実施できたか。

3.陽性となった時の業者の対応は十分か。

4.検査キットそのもの信頼性。

5.検査を受ける業者の信頼性はどうなのか。

等が挙げられます。

これらを加味して自宅検査や郵送検査を受ける際の注意点を以下にまとめてみました。

1.検査を受ける前に自分が受けようとする検査の種類を確認する必要があります。

何故なら検査の種類によって受ける時期が異なるからです。

2.それぞれの検査に適した検査を受ける適切な時期に検査を受ける必要がある。

早すぎると信頼できる結果が得られません。

3.指示書通りに正しく検査を実施する。

4.自宅検査は、厚生労働省は認可していませんので、受けるのは自己責任で受ける。

5.郵送検査は検査を実施する会社が許可を受けて実施していますが、全ての会社が精度の高い検査で実施しているとは限らない事を理解して注意して選ぶ必要がある。

6.陽性となった場合は、即HIVに感染しているとは限りませんので、追加試験や確認試験などのフォロー体制のしっかりした会社を選ぶ必要があります。

実際検査が陽性なった場合のフォロー体制が不十分な会社も存在します。

自分で検査を実施して陽性となった時には、医療機関で追加試験や確認試験を受ける必要があります。

簡単で便利な検査は、それに伴うリスクが有ることを十分に理解して利用する必要があります。

2019年3月5日火曜日

HIV検査を受ける際の注意点-7.NAT検査は何処で受けることが出来るのか?-

NAT検査は何処で受けられるのかという質問を受けますので、今回はNAT検査の受けられる施設について解説致します。

ここで言うNAT検査は、リアルタイムPCR検査です。

本当のNAT検査は、血液センター専用の検査で医療機関では受けることは出来ません。

何度も申し上げていますが一般的にNAT検査と呼ばれるのは、リアルタイムPCR検査のことです。

NAT検査は全国何処の医療施設でも受けることが出来ます。

医療施設の大小(大学病院から個人のクリニック)は関係ありません。

検査の種類は膨大な数あり、幾ら大学病院でもすべての検査を自施設で検査することは不可能です。

当然中小の病院やクリニックではなおさら検査することが出来ません。

その為に医療機関から検査を請け負う検査専門の会社があります。

検査を請け負う会社は全国にあり、全国全ての医療機関の検査を請け負って検査します。

NAT検査ができない医療機関は、検査専門の会社に検査を依頼することになります。

全国の医療機関は大小にかかわらず全て検査専門の会社と契約をしています。

従ってNAT検査を受けることの出来ない医療機関はありません、全国どこの医療機関でも検査は受けることが出来ます。

では、何故NAT検査を受けられない医療機関があるのでしょうか?

以下に分析してみます。

1.医師がNA検査を検査専門の会社に依頼できることを知らない。

2.多くの人がNAT検査ということから、NAT検査は血液センター専用の検査で当然検査専門の会社でも検査できないと勘違いしている。

これは、NAT検査とリアルタイムPCR検査の区別ができない医師に多い。

3.HIV検査としてのNAT検査の依頼を受けること自体を嫌い、検査できないという医師がいることも事実です。

要するにHIV検査に関わりたくない医師もいることは事実です。

それではNAT検査を受けるためにはどうすればよいのか?

1.HIV検査のことを理解している性病専門の医師に検査を依頼する。

2.NAT検査という表現を避けてHIVのリアルタイムPCR検査を受けたいと申し出る。

3.自分の施設では出来ないと言われた時には、検査専門の会社に検査を依頼してほしいて申し出る。

上記のようにすればNAT検査は、全国何処の医療機関で受けることが出来ます。

お役に立ちましたでしょうか??!!

最後に一言、HIVのリアルタイムPCR検査は、2019年3月現在HIV-1しか検査できません。

HIV-2のPCR検査はありますが、一部の研究施設で研究として検査されていますが、検査として認可されていませんので当然保険適応もなく、医療機関で受けることは出来ません。

2019年2月28日木曜日

HIV検査を受ける際の注意点-6.リアルタイムPCR検査検査について-

リアルタイムPCR検査は、HIV-1の核酸の一部の見つける検査法です。

HIV-1の核酸を化学的な方法で1億倍程度に増幅して検査をすることから、非常に少ないHIV-1の検出が可能です。

検出感度も非常に高く血液中の微量のHIV-1を調べることが出来ることから、HIV-1感染の早期判断検査として広く用いられています。

またHIV-1感染者の治療指針として血液中のHIV-1の量を調べる検査法としても利用されています。

リアルタイムPCR検査は、コバスTaqMan HIV-1「オート」と呼ばれます。

リアルタイムPCR検査は、一般的にNAT検査と呼ばれていますが、本当はNAT検査は血液センター専用の検査ですから、医療機関や一部の保健所で受ける検査はNAT検査ではありません。

便宜上NAT検査と呼ばれているだけで、真のNAT検査ではなくリ正式名称はアルタイムPCR検査です。

前回に述べましたように真のNAT検査は、血液センター専用の検査ですから医療機関や保健所では受けることはできません。

本来リアルタイムPCR検査は、HIV感染者の治療の際に血液中に存在するHIV-1の数を調べて、治療効果の判定をする検査法ですが、検査の感度がよく感染初期から血液中のHIV-1を検出可能なことから、HIV-1のスクリーニング検査に利用されています。

不安な行為から11日以降いつ受けてもHIV-1に関しては信頼できる結果が得られます。

まことしやかに囁かれていることに、感染するリスクのある行為から、3ケ月以降受けると血液中のHIV-1の量が少なくなることから偽陰性反応が起きと言われていますが、これは誤りです。

リアルタイムPCR検査は、2019年2月現在も、HIV-2の検出は出来ません。

リアルタイムPCR検査は、以下の二つの検査があります。

1.TaqMan HIV-1「オート」

2.アキュジーン m-HIV-1

TaqMan HIV-1「オート」とアキュジーン m-HIV-1は、感度、特異性、検出可能なHIV-1は同じです。